...

現代日本の新聞読者層 - 大阪商業大学 JGSS研究センター

by user

on
Category: Documents
10

views

Report

Comments

Transcript

現代日本の新聞読者層 - 大阪商業大学 JGSS研究センター
JGSS研究論文集[3](2004.3)
現代 日本 の 新聞読者層
一J G S S - 2 0 0 2らのデ
か ータをもとにして
木村 雅文
( 大阪商業 大学総合 経 営学部 )
The Contelmporary Japanese Newspaper Readership
From The Data ofJGSS-2002
Masafumi KIMURA
The airn ofthis rrlonograph is some considerations on the contemporary Japanese
newspaper readership by the use of the data from JGSS‐
2002. We conf1111l three
c h a r a c t e r i s t i c f e a t u r e s a b o u t t h(i1s) Tthhee mfer。
equency of contemporary Japanese
reads some newspapers in a week is rather high. But it lean toward rliddle and old
ages。 (2)The reliance of contemporary Japanese on ne、
flfteen organizations that JGSS-2002 take up.(3)In preSent―
vspaper is the top among
day Japan,there are flve
national papers,namely ``Asahishinbun'ち``Sankeishinbun'', ``Nihonkeizaishinbun'',
``障
TainichishinbunⅢ
and ``YorniurishinbunⅢ
. We analyzed these papers readership
from point of sex, age, area, scale of cities, educational background, occupation,
falnily income, consclousness of belonging social stratiflcation,
position in vork,
、
supporl of political party and political consclousness.It is clear that these newspapers
readership has o、
vn individuality.
Key words : JGSS-2002
nc、
vspapcr rcadcrship
contcmporary Japancsc
本稿 の 目的は、」G S S 2 0 0 2 から得 られたデ ー タをもとに して現代 日本 にお け
る新 聞読者層 を考 察す る ところにある。ここで は、以下 の よ うな特徴 の ある こ
とが確認 され た。①現代 日本人 にお い ては、彼 らが新聞 を読む頻度 はかな り高
い。 しか し、それ は、中 ・高年齢層 に片寄 って い る。②現代 日本人 の新聞へ の
信頼度 は 高 く、
J G S S - 2 0 0 2 で取 り上げた 1 5 の組織 の なかで最高 にな って い る。
③現代 日本 にお い て流通 してい る朝 日新聞 ・産経新 聞 ・日本 経済新 聞 ・毎 日新
聞 ・読売新聞 の 5 つ の全 国紙 につい て 、 これ らの読者層 を性 ・年齢層 ・地域 ・
都 市規模 ・学歴 ・職業 ・従業 上の地位 ・世帯収入 。階層帰属意識 ・支持政党 ・
政治意識 によつて分析 してみ る と、これ らの新 聞 の読者層 がそれぞれ の個性 を
持 って い る ことが 明 らかにな った。
、
キーワー ド: J G S S - 2 0 0 2新聞読者層、現代日
本人
-59-
JGSS研究論文集[3](2004.3)
1_1ま
じ bに
コ ミュニ ケ ー シ ョ ンの 過 程 には 、 自分 の 精 神 活 動 に よ って 作 り出 した 意味 を 言 葉 や 文 字
あ る い は ジ ェスチ ャ ー な ど の 記 号 に変換 させ て メ ッセ ー ジと して 伝達 しよ うとす る ( 送 り
手 〉 と伝達 が 実際 に進 め られ て ゆ くチ ャネ ル 、 そ して メ ッセ
ー ジを 感 覚 器 官 で
受 けて解 読
し、 これ を 自分 の 精 神 活 動 に復 元 して 反 応 す る く受 け 手 ) を 必 要 と して い る ( 竹 内 郁 郎 、1
990、
9 頁 ) 。 この よ うな基 本 的 な原 理 か ら見 れば 、 マ ス ・コ ミュニ ケ ー シ ョ ン とイ ン タ ー
パ ー ソナル ・コ ミュニ ケ ー シ ョンと の 間 に 異 な る と こ ろ は な い 。 けれ ど も、 もちろん 両者
に は 、社 会 的 な現 象 と して 大 きな違 い が 存在 して い る こ とが 明 らか で あ る。 す なわ ち 、 こ
れ は 、次 の 3 点 に 大 体 要 約 され るで あ ろ う。
① マ ス ・コ ミュニ ケ ー シ ョ ンで は 、 ( 送 り手 》 が 新 聞社 。放 送 局 ・出版 社 ・通 信 社 な ど
と い った マ ス メデ ィア 産 業 で あ って 大 部 分 が 高度 に組 織 化 され て い る の に対 し、 ( 受
け手 》 の 側 は 匿 名 的 で 不特 定 多数 の 大 衆 で あ る。 そ こに は 、生 身 の 人 間 同士 の コ ミュ
ニ ケ ー シ ョンと い う よ り、組 織 と大 衆 と い う間接 的 な 関 係 が 成 立 して い る。
② マ ス ・コ ミュニ ケ ー シ ョ ンで は 、機 械技 術 が 駆 使 され るた め に 、製 作 され た メ ッセ ー
ジは 電 磁 波 ・電 波 ・フ ィル ム ・印 刷 物 な ど の 媒 体 に よ っ て 大 量 か つ 広範 囲 に 伝達 され
る こ とが で き、保 存 も可 能 で あ る。
③ マ ス ・コ ミュニ ケ ー シ ョ ンで は、 投 書 や 意 見 が求 め られ 、視 聴 率 や 販 売数 が ( 受 け手 》
の 反 応 と して 重視 され て い る けれ ど 、 日常 的 に は 〈送 り手 》 か らの 一 方 方 向 の 伝 達 が
1 2 3 頁) 。
行 わ れ て い る ( 木村 雅 文 、1 9 9 3 、
す な わ ち 、 マ ス ・コ ミュニ ケ ー シ ョ ンの 研 究 に お い て は 、 く送 り手 ) の 存在 が 大 き い こ
と もあ って く送 り手 ) の あ り方 の 方 が ず っ と認 識 され や す く、分 か りや す い 。 そ の た め に 、
本 稿 で 取 り上 げ る新 聞 に つ いて 見 て も、 さま ざ ま な視 点 か ら新 聞 を 論 じて い る の は 、現 職
や 経 歴 に新 聞記 者 な ど新 聞人 の 肩 書 を 有 して い る ( 送 り手 》側 に立 った 人 物 が圧 倒 的 に 多
くを 占 めて い る。
しか し、先 に 見 た よ う に コ ミュニ ケ ー シ ョ ンが 成立 す るた め に は 、 く受 け手 ) の 存 在 が
な くて は な らな い 以上 、 マ ス ・コ ミュニ ケ ー シ ョ ンの ( 受 け手 ) で あ る視 聴 者 や 読 者 な ど
に つ いて の 知 見 を持 つ こ と も大 切 で あ る。 これが 、 マ ス メデ ィア 産 業 の 企 業 戦 略 と して マ
ー ケ テ ィ ング調 査 の 重 要 な対 象 で あ る こ とは、 す で に 周知 の 事 柄 だ と思 わ れ る。 と りわ け、
ー
新 聞 の 読 者 層 を 分 析 す る こ と とは 、 「新 聞 の 社 会 的機 能 、 イ デオ ロ ギ 性 を把 握 す る の に
不 可 欠 な研 究 で … 新 聞 と社 会 の 相 関 を マ ク ロ、 ミク ロ的 に 、 しか も歴 史 的 、有機 的 に 把 握
す る こ とを 可 能 に す る 」 と され て お り、 ひ るが え って 「新 聞 そ の もの の 研 究 に 有 意 義 な こ
4 1 ∼4 2 頁 〉。
とは もちろ ん で あ る」 と して 高 く評 価 され て い る の で あ る ( 山本 武 利 、1 9 8 1 、
ー
本稿 は 、 か か る問題 意 識 か ら、 J G S S - 2 0 0 2 から得 られ た デ タを もと に しなが ら現 代 日
本 にお け る新 聞読 者 層 を 、不 十 分 で あ るけれ ど 、分 析 しよ う とす る試 みで あ る。
-60-
JGSS研究論文集[3](2004.3)
2_現
代 日本 人 に お け る新 聞 購 読 の 頻 度
及 され て い る の は 、 十 日本 の 発 行 部 数
現 代 │ 1 本に お い て 新 聞 を 話題 にす る と き に 多 く, す
を 1 位 で 一 人 1 1 千人 あ た りの 出! 数は 5 7 3 部、
は7 2 2 1 万8 0 0 0 部 ( 朝 r f l と
夕 刊の 合 計 ) で 、 │ │界第
ノル ウ ェ ー に 次 いで 第 2 位 … 非 常 に 高 い 浄及 存 を 誇 り、 + 1 本人 は 実 に よ く新 聞 を 読 ん で い
七で 行 数 の 新 聞 大 田 で あ る 」 と い った
る こ とに な る」 と い う事 実 か ら導 か れ た 「1 1 本は │ │界
2001、
3 0 貞 ) ◇ しか も、 そ の 新 聞 の 9 3 % が 宅 配 制度 に よ っ
よ うな析 摘 で あ ろ う ( 大井 長 1 1 、
て 家 庭 に 配達 され 、 自宅 に 居 なが らに して 子 に 入 れ られ る と こ ろか ら、新 聞 は 挙 籍 と 共 な っ
て 、 きわ めて 大 衆 的 に ゆ きわ た って い る メ デ ィア だ と 見 る こ とが 可能 で あ る。
と こ ろが 、 2 0 0 3 年4 月 に岩 波 新 書 の なか の 一 点 と して 刊 行 され た 中馬 清柄 氏 の 若 さ は 、
J新
そ の タ イ トル を ‖ 聞 は 生 き残 れ るか』 と付 けて いて 、 1 3 年前 に 同 じ新 誇 で 出版 され た 桂
敬 一 氏 の 著 書 が 『現 代 の 新 聞 』 と い う穏 当 な書 名 で あ っ た の と比 較 す る と、大 きな 危機 感
“
"と “
"
の あ る ことを あ らわ に して い る。 この よ う な 、新 聞 を め ぐる 新 聞 大 国
生 き残 り
と い う 2 つ の 現 実 の 間 に は 、 一 体 何 が あ る の で あ ろ うか。 そ こで 、 これ を現 代 日本 人 の 新
聞 購 読 の 頻 度 と い う点 か ら考 え て み た い。
は 、留 め 置 き調査 票 の 冒頭 の 設 間 で 「あ な た は どれ く ら いの 頻 度 で
さて 、 J C S S 2 0 0 2 で
"が
"が
7 5 . 1 % 、 “週 数 回
11.
新 聞 を 読 み ます か 」 と尋 ね て い る。 そ の 結 果 は 、 “ ほ ぼ 毎 日
3 % と な って お り、調 査 対 象者 の 9 割 近 くが新 聞 にか な り高 い頻 度 を も って 接 して い る こ
とが 分 か る。 これ は 、週 単 位 の 数 値 で あ る けれ ど 、 「国民 生 活 時 間 調 査 」に よ って 一 日の
なか に つ い て 見 て み る と、新 聞 を 購 読 して い る時 間 は 1 9 7 0 年の 1 9 分か ら2 0 0 0 年の 2 3 分まで
大 き な 変 化 を 示 して お らず 、 「こ こ ま で 変 化 量 の 少 な い行 動 は珍 しい 。 新 聞 は それ だ け 日
本 国民 全 体 に 安 定 的 に読 まれ て い る」 と され て い る の で あ る ( N H K 放
送 文 化 研 究所 編 、2
1 0 6 頁) ◇ こ う した 事 実 か らは 、新 聞 に つ いて 、 あ ま り過 大 な 危 機 意 識 は 必 要 な いの
002、
か も しれ な い よ うに も感 じられ る。
デ
で は 、新 聞 購 読 にお け る問題 点 は 、 ど こに あ る の で あ ろ うか。 それ は 、 J C S S 2 0 0 2 の
ー タ に よ って も証 明 され るよ うに4 0 歳代 以上 の 中 ・高 年 齢 層 に 片 寄 っ た 接 触 頻 度 が認 め ら
"が
"が
“
4 4 . 2 % 、 “週 数 回
2 6 % と い ったか
れ る こ とで あ り、 2 0 歳代 の 若 者 で は ほ ぼ 毎 日
"が
“
起 こ って い る こ とで あ る ( 図 1 ) 。 も
た ちで 他 の 世 代 と比 較 して 明 らか に 新 聞 離 れ
ちろ ん 、 それ に は 、現 在 の 若 者 の 生 活 や 関 心 が 新 聞 を 読 む の に あ ま り に も慌 た だ しい こと
3 4 ∼3 6 頁) 、 若 い世 代 ほ どテ レ ビの 影
に 原 因 が 求 め られ る の で あ ろ う し く中馬 清 福 、2 0 0 3 、
ー
響 を 受 け て 育 ち 、 と りわ け彼 らが 情 報収 集 にお いて イ ンタ ネ ッ トに い ち早 く適 応 して い っ
た こ とな ど の 事 実 も指摘 で き るで あ ろ う。
( 単位 名 : % 〉
□ ほは毎 日
物腫 数回
20歳 代
30歳 代
□腫 1同程度
40歳 代
田 それ 以 下
□ 全 く説 ま な い
-61-
JGSS研究論文集[3](2004.3)
5 ( ) 歳イ
(
6 ( ) 歳イ
(
7 ( ) 歳代
80歳 代
図 1 年齢層別新聞を読む頻度
そ の 1 1 に、 新 聞 の 発 行 部数 が 世帯 数 の 増 加 に追 いつ け な い と こ ろか ら、宅配 制度 に 支 え
“
"と
い う環 境 も崩 れ 始 め て い る 、 と 言 わ れ て い る ( 中1 5 、
られ て きた 田民 持 読
前掲 書 、3 1
∼ 3 2 真) 。 この 現 実 も、J G S S 2 0 0 2 の
デ ー タ で 見 る こ とが で き る。 す なわ ち 、新 聞 を 読 む
"が
と
頻 度 と世帯 類 型 別 との ク ロスを 行 うと、単 独 世 帯 で は 、 明 らか に ほ ぼ 毎 日
少 な いか
らで あ る ( 図 2 ) 。 単 独 ( 単身 ) 世 帯 に は 、親 元 を 離 れ て い る大 学生 が 一 定 の 比 重 を 占 め
て い るが 、 「彼 らが 新 聞 を 読 ま な くな った と言 わ れ て 久 しい 」 と され て い る ( 中馬 、前 掲
書 、3 2 頁〉。 そ して 、 この 単 独 世帯 で 暮 らす生 活 者 は 、独 身 の 社 会 人 や 配 偶 者 を 亡 く した
高 齢 者 に も多 く見 られ 、今 後 と も増 え る こ とが 予想 され るか ら、 や は り新 聞 の 将 来 が 危 倶
され る状 況 は なお 一 段 と続 くの で は な い か と考 え られ る。
( 単位 名 : % )
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100
□ ほぼ 毎 日
吻胆 数 回
核 家 族 ・親 子
□題 1 回程度
□ それ 以 下
圏 全 く読 ま な い
核家 族 ,夫 婦
他 の 親 族 世帯
単独世 帯
図 2 世 帯類 型別 新 聞 を読 む 頻 度
3、 新 聞 への信頼 性
この よ うに、新 聞 の読者確保 の将来 に不安 が隠 せ ない と した ら、新聞 へ の信頼性 は ど う
な って い るので あろ うか 。 これ につ いて も悲観 的 な意 見 が あ る。 た とえば 、 日本新聞協 会
が1 9 9 0 年代 に 5 回 にわた って実施 した新 聞 へ の信頼度調 査 の結果 を引 用 しなが ら、正確性
社会性 ・日常性 ・公平性 ・品位性 ・人権 配慮 ・信頼性 ・総 合 とい うどの項 目を と って 見 て
も 「総 じて否定 回答 が じわ じわ増 え 、 肯定的回答 が 漸減傾 向 にあ った」 とまとめ 、 9 9 年の
調査 では調査方 法 の変更 があ った こ と もあ って逆 の動 向 が現 れて い るのに もかかわ らず、
「新 聞 が 、読者 ・国民 の信頼 の面 で大 き くぐらつ いて い る実感 を物語 って い る」 と論 じら
7 4 ∼7 7 頁) 。 た しか に、新 聞
れて いるの は 、 そ の 1 つ であ ると思 われ る ( 本郷美 則、2 0 0 0 、
-62-
JGSS研究論文集[3](2004.3)
に つ いて は 、 これ まで もサ ン ゴす
な どィ
や松 本 サ リ ン ' l f 件
i t 映│ ! : 件
: i 頼を そ こな う誤 救 ゃ 虚 救
活
1 1 ∼9 3 ピ
が何 t t i lあ
か っ た わ け だ し ( 池 1 l lと
2000、
調 査 に 出 され て い る 各ィ
大、
〔) 、 信 t l l 度
rf H
に 1 対して は 常 に 注 意 を 払 わ な けれ ば な らな いの で あ るか ら、 か か る │ 1′戒の 意 識 を 持 って い
る ことは きわ め て 大 切 で あ ろ う◇
しか し、 J G S S 2 0 0 2 によ る組 織 へ の 信 頼 に 関 す る項 目 を 見 る と 、逆 に 大 いに i J 信を 付 け
るよ う に な る の か も しれ な い。 J G S S 2 0 0 2 では 、 1 5 の知i 織を取 り 1 二
げて 、 それ ぞれ へ の 信
" ・“
" ・“
ほ とん ど信 t F R し
てぃる
頼 度 を 、 “ とて も信 頼 して い る
て いない
少 しは 信 t r t し
" ・“
"の
わ か らな い
4 つ の 選 択 肢 を 掲 げ て 回 答 を 求 めて い る。 それ に よれ ば 、 新 聞 へ の
"が
2 2 % と 裁 判所 よ りは 健 差 で 低 い もの の 、 “
信 頼 度 に つ いて は 、 “ とて も信 頼 して い る
"が
“
6 7 % あ って 9 割 近 くが 何 らか の 信 P F R " を表 明 して お り、 1 5 の燕1
少 しは 信頼 して い る
織 の うちで 同 じマ ス メデ ィア に 属 す るテ レ ビ もか な りじ│ き離 して 信 頼 度 が も っ と も高 くな っ
て い るの で あ る ( 図 3 ) 。
( 単位 名 : % )
80
大企業
宗教 団体
学校
中央 官 庁
労 働 打1 合
新聞
病院
テレビ
裁 判所
学 者 ・研 究 者
国会 議 員
市 区町村 議 員
自衛 隊
替察
金融機関
00
100
言頼
□ とて もイ
露炒 しは信頼
□信 頼 して いない
□わ か らな い
圏撫 回答
図 3 組 織 への信頼度
す ぐに分 か る よ うに 、 これ ら1 5 の組 織 は 、 い ず れ も現 代 社 会 にお いて 公 共 性 が 非 常 に 高
く、 い ったん 不 祥 事 が 起 これ ば 厳 しく批 判 され る もの ば か りで あ る。 さ らに 、率 直 に言 え
ば 、新 聞 よ り重 要 な もの の 方 が 多 い。 に もか か わ らず 、新 聞 の 信 頼 度 が 高 いの は 、 日本 の
新 聞 の 一 般 紙 、 そ の 代 表 的 な もの と して の 全 国紙 が 発 行部 数 の 多 い 割 り には 報 道 中 心 に構
成 され て お り、欧 米 に お け る大 衆 紙 に 高 級 紙 の 性 格 を 併 せ 持 っ た 質 の 高 さを 維 持 して い る
か らで は な い か と思 わ れ る。
で は 、新 聞 へ の 信頼 度 に購 読 頻 度 に 見 られ た よ うな年 齢 差 は 存 在 す る の で あ ろ うか 。 た
"の
“
しか に 、 7 0 歳以上 の 高 年 齢 層 の 対 象 者 の 示 した とて も
信頼 度 は 、 か な り高 い と い う
“
"も
結 果 が 出 て い る。 しか し、 2 0 歳代 だ か らと い って 少 しは
合 わ せ る と決 して 低 い わ け
で は な い ( 図 4 ) 。 つ ま り、若 い世 代 は 、新 聞 を あ ま り読 ま な い けれ ど 、 これ は新 聞 に 強
く批 判 的 だ か らと い うの で は な く、何 とな く信 頼 で き る もの の 1 つ と して 考 え て い る の で
あ る。 この 事 実 か ら、将 来 あ る世 代 を 新 聞読 者 層 に取 り込 ん で ゆ くた め には 、 学 校 にお け
る新 聞 を 使 った 教 育 ( N I E ) な
どに よ って 新 聞 に青 少年 を して 早 くか ら親 しませ るた め
の 努 力 が 求 め られ るの で あ る。
-63-
JGSS研究論文集[3](2004.3)
位名 : % )
( t1キ
80
90
30歳 代
40歳
100
,f撤
□ とて もイ
ri如
殴 夕 しはイ
い
千
や
点け ごいた
Elf・
い
□わ か │ ) な
2 1 1 歳代
代
50歳 代
60歳 代
70歳 代
80歳 代
図 4 年 齢層別 新 聞 へ の 信 頼 度
4、 現 代 日本 の 全 国 紙 と そ の 新 聞 読 者 層
JCSS 2002で
は 、留 め置 き票 の なかで 、新聞 に関 して の 質 問 と して 「あなたが よ く読 む
i]
新聞 す べ て に① を つ けて くだ さい」 とい う項 目を設 け、回答 を求 めて い る。 そ の際 に 、デ
意 され た選択肢 には 、 1 朝 日新 聞 、 2 産 経新 聞 、 3 日 本経 済新 聞 、 4 毎 日新聞 、 5
ー
ー
ー
読売新 聞、 6 サ ンケイ ス ポ ー ツ、 7 ス ポ ツニ ッポ ン、 8 デ ィ リ スポ ツ、 9 日 刊
スポ ー ツ、 1 0 報 知新聞 、 1 1 】ヒ海道新聞、 1 2 東 京新 聞 、 1 3 中 日新 聞 、 1 4 西 日本新 聞 、 1
6 日 刊 ゲ ンダイ、1 7 夕 刊 フ ジ、 1 8 赤 旗 、 1 9 聖 教新 聞、 を挙 げて現 代
5 J a p a n T i m e s1、
日本 にお いて 名前 が広 く知 られ て い る新聞 を取 り上 げ て いる。 そ して 、 さ らに 、2 0 そ の
)を 設 け、 この 他 に よ く読 む 新 聞 が あ る の な ら、 そ の 新 聞 名 を記
他 〈具 体 的 に
入 して もら って いる。 これ らか ら現 れた新聞名 とそ の度数分布 は 、以下 の通 りであ る。 そ
の上 に、 この表 には 、2 0 0 2 年1 ∼ 6 月 の集 計 の各新 聞 の発行部数 を 付 け加 えて い る ( 春原
よ る回 答結果 は 、実際 の発行部数 と若干 の異 同 は
3 9 8 ∼3 9 9 頁) 。 J C S S 2 0 0 2 に
昭彦 、2 0 0 3 、
あ る ものの 、現状 を ほぼ反映 して いるよ うに見 る ことがで きる ( 表) 。
表 JCSS-2002に お ける各新 聞 の 度 数 お よび 発 行 部 数
名 称
度 敦 発行部数
“ "の
その他 新聞名
皮 数 発行部数
“ "の
その他 新聞名
度 数 発行部数
朝 日新 聞
663( 832) 静 岡新聞
5 8 〈 74)
佐 賀新 聞
15(
14)
産経新 聞
131( 202) 中国新聞
5 1 〈 75)
山形 新 聞
14(
21)
日本 経 済新 聞
255( 307) 新 潟 日報
50(
50)
山陰 中央 新 報
14(
18)
毎 日新 聞
274( 396) 神戸新聞
42(
56)
四 国新 聞
14(
21)
読 売新 聞
821(1018)
34(
51)
大 分 合 同新 聞
14(
25)
高知新 聞
12(
23)
9)
サン
ケイスポーツ
スボーツニァ
ボン
ースポーツ
デイサ
日刊 ス ポ ー ツ
河北新報
77(X137) 信 濃毎 日新聞
33〈 4 8 )
88)
山陽新聞
33(
46)
十勝 毎 日新 聞
11(
48(買 58)
京都新 聞
29(
50)
岩 手 日報
1 1 ( 23)
115( 100) 下野新聞
28(
31)
神奈 川新 聞
1 0 ( 23)
138(
-64-
JGSS研究論文集[3](2004.3)
報 知新 聞
北 海道 新 聞
東 京新聞
中 日新 聞
西 日本 新 聞
Japan Times
59(
6 3 ) 南 日本 新 聞
28〈
1 1 2 ( 1 2 3 ) 北 日本 新 聞
40)1室
25( 23)1琉
蘭民 報
9〈
球新報
9(
20)
6)
6 3 ) 熊 本 日 日新 聞
25( 39)1沖
縄 タイ ム ズ
9(
20)
2 5 2 ( 2 7 4 ) 宮 崎 日 日新 聞
25( 24)1岐
阜新聞
8(
18)
22( 32)1福
島民友
7(
20)
20( 5)1岩
手 日日新 聞
5(
6)
葉 日報
4(
19)
海新報
4(
鹿新 聞
4(
明新 聞
3(
22(
61(
8 5 ) 愛媛新 聞
7(
6 ) 東奥 日報
日刊 ゲ ンダイ
13〈
タ刊 フ ジ
25(X156) 福 島民報
赤旗
43(
)
)
秋 田魁新報
19( 27)│千
19( 30)1東
山梨 日日新聞 18( 21)1北
) 福井新 聞
)
)
聖教新聞
103(
そ の他
911
上毛新聞
16( 30)十
日本農業新聞
13(X 39)
いずれも
ていない
選択し
167
茨城新聞
16( 12)十
日刊工業新聞
3(H 52)
18( 20)1公
日本海新聞
16( 17)1中
日スポ ー ツ
の他のスポーツ
虹
17(
徳 島新聞
16( 26)│そ
長崎新 聞
16( 20)│そ
の他 ・
不明
26
北 国新 聞
15( 33)1無
回答
18
)
)
7
まは、自
た。
社公称部数。発行部数の邸位は万部。日書に
記載のとい部数は空白にし
さて 、表 を見 ると、 “ その他
"に
多 くの地方紙 (県紙 )や 業界紙 が挙 が って い る こ とが
分 か る。 周知 の よ うに、 日本 の新 聞界 は 、明治初期 以来 の長 い歴史 を有 して い る。 ただ し、
そ の現 在 に至 る起 源 と しては 、太平 洋戦争 の戦時 下 に進 め られ た政 府 によ る新 聞統制 に従 っ
て1942年に 日本新 聞会 が 設立 され 、 この下 で数多 くの新聞社 の統廃 合 が 行 われ た こ とによ っ
て全 国紙 ・プ ロ ック紙 ・地方紙 (一県 一 紙 )の 体 制 が確立 した と ころにあ る、 と言 われて
い る (有山輝雄、1995、
46頁 )。 す なわ ち、 ほ とん どの県 には 、 それ ぞれ有 力 な地方紙 が 1
∼ 2紙 あ って 、県 内 にお ける販売 シェアで全国紙 と競合 しつつ 、 む しろ優 位 に立 つ くらい
にな って存在 して い るの であ る (佐塚正樹 、2000、
40∼42頁 )。
この よ うに、現 代 日本 の新 聞読者 層 につ いて は 、 プ ロ ック紙 (と くに 中 日新 聞 )や 地方
紙 の重要性 を無視 で きな いので あ るが 、本稿 では読売新 聞 や朝 日新 聞 の よ うに発行部数 に
お いて世界第 1位 ・世界 第 2位 で あ り (佐塚 、
前掲書 、39頁 )、 日本 の代表 的 な新聞 と して
知 名度 が高 く、か つ互 い に話題 に され る ことの多 い朝 日新 聞 ・産経新 聞 ・日本経済新 聞 ・
毎 日新 聞 ・読売新 聞 の 5つ の全 国紙 を 中心 に分析 す る こ とに した い。
4.1性 別
男女 の別 に分 けて見 ると、全体 と しては 、宅配 制度 によ って 家庭 で読 まれて い ること も
あ ってか女性 の方 がやや 多 い。 しか し、産経新 聞 と日本経済 新 聞 で は 、男性 の 割合 が高 く、
と りわ け 日経 の高 さが 日立 つ (図 5)。
これは、 日本経済新 聞 の読者層 と して 、今後 の分
-65-
JGSS研究論文集[3](2004.3)
析 と も1 l業係 して く る と こ ろで あ ろ う。
j 性の読 者制 合が7 0 % を
J 紙にお いて 夕
そ して 、何 よ り も特 徴 的 なの は 、 スポ ー ツ紙 と ク ロ
血
F で低俗的 な り
, 性文 化
容 には 、 あ る十
か な り越 え て い る ことで あ る。 これ らの 新 聞 の 記 ' ! f 内
が現 れ て い るよ うに思 わ れ る◇
( 単f 立
名 :%)
80
90
100
□男性
性
EB女
9 1 1 弾f 踏1
た雑 新 聞
日本 経 済 新 聞
毎 1 1 新掛l
説売新 聞
図 5 全 国紙の性別読者層
4 _ 2 年 齢層 別
年 齢 層別 で は 、先 に 見 た 新 聞購 読 の 頻 度 に も述 べ た こ と と同 じ通 りの 傾 向 が うか が え る
( 図 6 ) 。 す なわ ち 、 2 0 歳代 の 若 い世 代 が 少 な く、4 0 歳代 か ら増 え 、 5 0 歳代 が も っ と も多
い 。 また 、 日本 経 済 新 聞 の 読 者 で4 0 ∼5 0 歳代 の 数 字 が や や 高 いの は 、 この 世 代 が ビジ ネ ス
界 の 第 一 線 に い るか らで あ ろ う。 そ の 代 わ り、 同紙 で は 、定 年 を 過 ぎ る6 0 歳台 以上 に な る
と他 と比 べ て ぐ っ と少 な くな る。
これ に対 して 、産 経 新 聞 と毎 日新 聞 で は 、読 者 が 高 齢 者 層 に 片寄 って い る。 産経 新 聞 も
毎 日新 聞 も紙 面 の 刷 新 には 意 欲 的 で あ るが 、発 行 部数 が 伸 び 悩 ん で い る。 それ は 、古 くか
らの フ ァ ンは い る の だ が 、新 しい 読 者 を なか なか 獲 得 で きな い か らで あ ろ う。 この現 実 は 、
か つ て の 三 大 紙 の 1 つ で あ った 毎 日新 聞 に い っ そ う よ く当 て は ま るよ うに思 わ れ る。
(単 位 名 :%)
□ 20歳 代
物 30歳 代
朝 日新 聞
□ 40歳 代
□ 50歳 代
圏目60自 訂モ
§ 70歳 代
圏 80歳 代
産経 新 聞
日本経 済新 聞
毎 日新 聞
議売新 聞
図 6 全 国紙の年齢層別読者層
4_3地 域別
J C S S - 2 0 0 2 では 、 日本 全 体 を北 海 道 ・東 北 、関 東 、 中部 、近 畿 、 中国 ・四 国 、九 州 の 6
つ の 地 域 に 分 け て サ ンプ リ ング を 行 って い るが 、 それ ぞ れ の 全 国紙 にお け る地 域 別読 者 層
-66-
JGSS研究論文集[3](2004.3)
は以 下の通 りにな って い る ( 図 7 ) 。 それ によれば、全 国紙 にお いては 、東京 と大 阪 とい
う大都 市圏 を含 んだ 関東 と近畿 にお ける読者層 の比 重 が 高 い。 やや細か く見ると、 朝 日新
聞 とと りわ け読 売 新聞 は関東 の 、産経 新聞 は近畿 の読者層 が厚 い と い う傾 向 があ る。 これ
は 、各新聞 の歴史 と販売力 を反映 してい るか らなので あろ う。
言 うまで もな く、 名古屋 と い う大都市圏 を有 す る中部 は 、中 日新 聞 の 強固 な地 盤 で あ る
か ら、 それぞれ の全 国紙 の なか の読者層 は比 較 的少 ない。 さ らに、 プ ロ ック紙 や有 力地方
紙 の 多 い北海道 ・東北 、中国 ・四 国、九州 で も同様 で 、発 行所 か ら遠 くて 流通 に難 の あ る
“
"と
全 国紙 はむ しろ補完的 な地 位 に甘 ん じて い る。 つ ま り、 自宅 で 取 って い る新 聞
言え
ば 、 5 つ の全 国紙 だ けをほぼ思 い浮 か べ るの は 、大阪 日日新 聞 とい う知 名度 の低 い地 方紙
しか な い大阪府民 にとっての常識 か もしれ ないが 、他 の都道 府県 ではそ うで もな いので あ
る。
(単位名 :%)
田Hヒ海道 。東北
物関 東
□障部
田距 畿
田 中国 ・四国
M州
朝 日新 聞
産経 新 聞
日本経 済新 聞
毎 日新 聞
説売新 聞
図 7全 国紙の地域別読者層
4.4都 市規模別
JGSS-2002では 、4.3で紹介 した よ うに全 国 を 6つ の地 域 に分 けたの に続 いて 、 それぞ れ
の なかで上3大市 (札幌市 ・仙台市 ・千葉市 ・東京都 区部 ・川崎市 ・横浜市 ・名古屋市 ・京
都市 ・大阪市 ・神戸市 ・広島市 ・北九州市 ・福 岡市 )、 そ の他 の市 、町村 とい う地方 公共
団体 の規模別 によ って標本抽 出 を行 った。 これ らの 3つ の都市規模 の段 階 にお け る全 国紙
の読者層 を見 ると、13大市 の 占 め る割合 が幾 らか高 く、全 国紙 が都会 的 であ る ことが 示 さ
れて い る (図 8)。
と りわ け、朝 日新 聞 ・日本経済新聞 ・読 売新 聞 には 、 それが濃 く現 れ
て い る。逆 に、産経新 聞 と毎 日新 聞 は、やや中小都市 か ら町村 的 で 、戦 後 日本 の 巨大 な都
市化 に遅 れを と って きた と言 え そ うであ る。
( 単位 名 : % )
目 13大 市
物 その他 の市
国H村
朝 日新 聞
産経新 聞
日本経 済新 聞
-67-
JGSS研究論文集[3](2004.3)
毎 日新 聞
一
″
読売新 聞
22.7
図 8 全 国紙の都市規模別読者層
4_5学 歴別
現 代 日本 は 、教 育 の 普 及 して い る日 と して 知 られ て い るが 、 それ ぞれ の 全 i J 紙の 学 歴 別
読 者 構 成 は ど うな って い る の で あ ろ うか。 ここで は、 該 当者数 が 少 な い こ とで もあ る の で 、
旧 制 の 尋 常 小学 校 と高 年 小 学 校 卒 業者 を 旧制 初 等 教育 、旧 制 の 中学 校 ・高 等女 学 校 ・実 業
日制 中等 教 育 、 旧 制 の 高 等 学 校 ・専門 学 校 ・高 等 師 範 学 校 ・大 学 ・
学 校 ・師範 学校 卒 業者 を 十
大 学院 卒 業者 を旧 高 等 教 育 と して 統 合 して 表 示 して い る ( 図 9 ) 。
結 果を 見 る と、 日本経 済 新 聞 読 者 が 、 旧 制学校 卒 業 者 は 少 数 なの に か か わ らず 、新 制 の
・
大 学 と大 学院 を 合 わせ た 卒 業 者 で 半 数近 くに達 し、短 大 高 専 まで 含 め る と6 2 % に 及 ん で
い る こ とに 気 が 付 く。 す なわ ち 、 これ は 、 日経 の 購 読 者 の 増 加 が比 較 的最 近 で 、 しか も彼
らが 高 学歴 で あ る こ とを 物 語 って お り、 この 数字 は 次 の 職 業 別 構 成 と大 き く関連 して い る。
ー
次 いで 、朝 日新 聞読 者 の 学歴 も高 く、同紙 が 「知 的情 報 で イ ンテ リ階 層 に ア ピ ル して き
89頁)、
た 」 と い う指 摘 も うなず け る と こ ろで あ る し 〈岩 崎 恭 裕 ・尾 上 進 男 、1 9 9 2 、
「全 体
に 論 評 が 多 い … 読 ませ る新 聞 と い え よ う… こ こが 他 紙 と の 最 大 の 差 別 部 分 と い え る 」 とす
1 8 頁) 。
る と こ ろ に も朝 日の 読 者 層 が 反 映 して い る ことが うか が え る ( 戸 田 覚 、1 9 9 8 、
一 方 、毎 日新 聞 と読 売 新 聞 の 読 者 は 、 明 らか に新 制 高 等 学 校 卒 業 者 が 大 きな ウ ェ イ トを
占 めて いて 、学 歴 別 構 成 は 低 くな って い る。 そ こで 、読 売 新 聞 は 、人 気 の あ るプ ロ野 球 興
行 を は じめ とす るイ ベ ン ト戦 略 を 駆 使 して 部 数 を 仲 ば して きた の で あ り、 「大 衆 と進 む と
前 掲 書 、9 3 頁 ) 、 社 論 の 統 一や 提 言 報 道
い う姿 勢 が うか が え る」 ば か りで な く ( 岩崎 ほか 、
“
"の
に よ って 大衆 を 良 識
線 に導 こ うと い うよ う な 動 き も行 って い る の で あ ろ う。 毎 日新
聞 が 、 「紙 面全 体 を通 じて 『わ か りや す さ』 に主 眼 が 置 か れ て い る」 と され る の も同紙 の
読 者 層 を念 頭 に 入 れ て の こ とで あ ろ うが ( 戸 田、前 掲 書 、2 0 頁 ) 、 読 売 新 聞 と朝 日新 聞 の 間
に は さ まれ て 方 向 を徹 底 で き な い憾 みが 残 るよ うで あ る。
(単位 名 :%)
偶初等教育
□ 1同
日前 中等 教 育
物十
□ 旧制 高等 教育
回断 鋼 中学校
田断 制 高校
朝 日新 聞
産経 新 闘
§断 制短大 ・高専
圏断 制大学
国断 制大学院
田め からない
日本経 済新 聞
毎 B新 閲
議売新 聞
国 9全
国紙 の学歴 別 読 者 層
4,6職 業別
-68-
JGSS研究論文集[3](2004.3)
それぞ れ の全 国紙 の読者 に お け る職業別構成 は 、 どの よ うにな って い るの で あろ うか 。
ただ し、職業分類 は 、か な り複雑 で あ るの で 、 ここで は上層 ホ ワイ トカ ラー ( 専門 職 ・管
理職 ) 、 下層 ホ ワイ トカラー ( 事務職 ・販売職 ) 、 プル ー カ ラ ー ( 熟練 労働者 ・半熟練 労
働者 ・非熟練 労働者 ) 、 農林漁業 〈農林 漁業従事者 ) の 4 つ の カテ ゴ リー に簡素化 し、 こ
れ に無職 を加 えて分析 した ( 図1 0 ) 。
職業別 の構成 では、 日本経済新 聞読 者 が上 層 ・下層 を問 わ ず ホ ワイ トカ ラー が 合 わせて
6 7 . 4 % を 占 め 、 と くに他 と比 較 して上層 ホ ワイ トカ ラ ー の 多 さが 日立 って い る。 ここか ら、
日経 が経済専門紙 と して の性格 か ら 「個人宅 では な く、事業所 で の購読 率 も高 い… ビジネ
ス層 にはお しなべ て人気 が あ る」 とい う大 きな特 徴 を持 って い るとす る記述 の正 しさが よ
く分 か る ( 戸田、
前 掲書 、2 2 頁) 。 そ して 、朝 日新聞読者 が 、上層 ホ ヮイ トカラ ー で 日経 に
次 いで い るが 、 この事実 も学歴 との関連 で 明 らか で あ る。
これ らに対 して読売新 聞読者 は 、産経新 聞読者 とと もに ブル ー カラ ー の割合 が 大 き く、
読者層 がかな り異 な って い る。毎 日新 聞読者 で無職 が半数近 くもあ るの は 、高 齢者 が 多 い
ためであろ うが、 ここに も同紙 の将来 に と つて の 懸念材料 が あ りそ うに感 じられ る。
( 単位名 : % )
□ 上 層 ホ ワイ ト
物 下 層 ホ ワイ ト
ー
ー
ロ プル カ ラ
田膜 林漁楽従 事者
田ほ 職
朝 日新 聞
産経新 聞
日本経 済新闘
毎 日新 聞
議売新 聞
国1 0 全 国紙の職業別読者層
4 _ 7 従 業上 の地 位別
“
個人 が 行 って い る仕事 の 種類 を言 う職業 と関連 の あ る もの に、個人 が どの よ うな従業
"と
い う社会的 なカ テ ゴ リー が あ る。本 節 では 、 それを経
上 の地 位 の もとで働 いて い るか
営者 ・役 員、常時雇 用者 ( 役職 あ り) 、 常時雇 用者 ( 役職 な し) 、 臣 時雇 用 者 ・派遣社 員 、
自営業者 ・家族 従業者 ・自由業者 、無職 に分 け、 これ らが 各全 国紙 の読者 層 に どの くらい
あ るかを調 べ た ( 図 1 1 ) 。
ここで も日本経済 新 聞 の読者層 の なかが 、法人 の経営者 ・役 員 で突 出 し、 さ らに正 社 員
や正 規職員 であ る常時雇 用者 まで を含 め て6 1 . 6 % と 多 く占 め られて い る こ とが 分 か る。 や
は り、 日経 には、会社 に勤務 す る ビジネ スマ ンの支持 が 強 いの であ ろ う。 朝 日新 聞 が 、 こ
れ に続 いて いる。 一 方 、読 売新聞 と産経 新 聞 の読者層 では 、非 正 規社 員 で あ る臨時雇 用 や
派遣 、 自営 ・家族従業者 ・自由業 の比重 が 高 い。 このよ うな点 には 、 職業別構 成 と類似 し
た状 況 が見 られ る。
-69-
JGSS研究論文集[3](2004.3)
:%)
(lll 名
f立
40
50
60
70
80
90
100
□ 経営者 ・役' 1
l j 活‐役職あり
陽順 ナ
I〕
古 ・役職 なt ノ
□腰 ナ
□匹時雇用 ・派通
朝 日新 聞
産経 新 闘
田 白ヤ ・家族賀 葉若
§ 無段
日本 経 済 新 聞
毎 日新 聞
読売新 聞
図 1 1 全 国紙 の従 業 上 の地 位 別 読 者 層
4 _ 8 世 帯収 入別
帯 の 年 間収 入別 に 見 て み よ う ( 図 1 2 ) 。 こ こで 、個 人 収 入別 に しなか った の は 、
次 に、 1 性
す で に 説 明 した通 り、現 代 日本 の 新 聞 が宅 配 制度 に よ つて 世 帯 ご とに購 入 され て い る例 が
大 部 分 だ か らで あ る。
この 結 果 で は 、 ど の 新 聞 に つ いて も無 回 答 が 多 い が 、 なか で も 日本 経 済 新 聞 の 読 者 に8 5
0 万円 以上 の 高 所 得 者 が2 4 . 7 % と 多 く現 れ 、逆 に3 5 0 万円未 満 の 低 所 得 者 9 . 4 % と 少 な い こ
ー
とが 注 目 され る。 これ も、前掲 の 職 業 別 構 成 で 日経 読 者 に 上 層 ホ ワイ トカ ラ が 多 か っ た
こ と と従 業 上 の 地 位 が 高 か った り、雇 用 が 安 定 して いた こ とが 関連 して い る と言 え るで あ
ろ う。 した が って 、朝 日新 聞 と産経 新 聞 とが 日経 に続 き、 毎 日新 聞 と読 売新 聞 とで は読 者
の うち8 5 0 万円 以 上が 1 0 % 台 前半 で 少 な く、逆 に3 5 0 万円 未 満 が2 0 % を 超 え て い る の も、 そ
れ ぞれ の 新 聞 の 読 者 層 が 持 って い る職 業 と地 位 と い う社 会 生 活 上 の現 実 を 反 映 して い る の
で あ ろ う。
(単位名 :%〉
酌 5 0 万円未満
絡 5 0 ∼5 5 0 万円 未満
B 5 0 ∼ 8 5 0 万円未満
齢 5 0 万円以上
国際 回答
朝 日新 聞
産経新 闘
日本 経 済 新 聞
毎 日新 聞
読売新 闘
図1 2 全 国紙の世帯収入別読者層
4 _ 9 階 層帰属意識 別
この よ うに、 日本 経済 新 聞 の読者層 には 、第 二 次世界大戦後 の 日本 にお け る経済大 国化
を リー ドした人 材 が 多 く含 まれ て いるこ とが 明 らか で あ る。 つ ま り、日経 が 「日本経済 の、
成長 を その まま反映 したよ うな形 で部数 を 仲 ば し、専門家 の新 聞 だ った もの が 、今 や経済
に関係 した人 の必読 の新 聞 と い う趣 きさえあ る」 と い う指摘 が ま さ しく当 を得 て い ると言
え るの であ る ( 岩崎 ほか 、
前掲書 、9 4 頁) 。 ただ 、同紙 が部数 で 4 位 にな って い るの は 、 日
-70-
JGSS研究論文集[3](2004.3)
本経 済 新 聞 と似 た よ うな 読 者肘 を 持 つ 朝 │1沖F聞 に比 べ て 経 済 専│‖
l紙 で あ る こ とか らrrl読者
の 広 が り と い う1角
Fで限 界が あ るか らだ と思 わ れ る。 これ らに 対 して 、読 売 新 聞 の │ど
モ大 さは 、
そ の 1大 衆 性 を 売 り物 Jに す る こ とで (岩 崎 ほか 、甫
Ttt ifゃ
、99貞 )、 1止
的 に も っ と も多 い 郁
市的 な 大衆 を な 盤 を 置 い て 成功 して きた結 果 の 表 れ で あ ろ う。 tt ti新聞 は 、他紙 と の 競 争
の なか で ど の よ う な読 者 に ア ピー ル す るに つ い て 「崚 昧 な 路線 を 走 らざ るを 得 なか った
」
と され て い るよ うに (岩 崎 ほか 、前掲 ■、99貞 )、 しだ い に発 行 部数 が 減 り、 読 者 悟 が 高齢
化 して い る の で あ る。
それ で は 、読 者 の 階 肘 帰 属 意 識 は ど うで あ ろ うか 。 JG錨 2002で は 、 これ を _上・中 の _1二
・
中 の 中 ・中 の ド ・下 の 5段 階 法 に よ って 尋 ね て い る。 この 方 法 だ と 、 当然 に ど の 新 聞 読 者
“
"意
“
で も 中 の中
識 が 半数 前後 に な るが 、 や は り日本 経 済新 聞 読 者 で は 中 の 上"の 方 向
‐
力
に 、読 売新 聞 や 毎 日新 聞 読 者 で は “
中 の 卜 の 方 に集 ま る傾 向 に あ る。 それ に 、産 経 新 聞
“ "が
で 下
多 いの も注 目 され る (図 13)。
( 単位 名 : % )
80
90
100
朝 t ] 新聞
ELL
産経 新 聞
物 中の L
□ 中の中
国 中の下
肺
日本 経 済 新 聞
毎 [ J 新聞
読売新聞
図 13全 国紙 の 階層 帰属 意識 別 読 者 層
4 _ 1 0 支 持政党別
毎 日配達 されて来 る新聞 に は 、各新聞社 で レイア ウ トに若干 の違 い はあ る ものの 、紙面
構成 は どれ も似通 って いるな と い う印象 があ る。 ニ ュー スの取 り上 げ方 も日本経済新 聞 が
経済専門紙 と して の独 自性 を持 って い るほかは、全 国紙 あ る い は一 般紙 と して比較 的大 き
な出来事 などの あ った ときには同 じよ うにな って い る日が 多 い。 この こ とか ら、新 聞 とは、
“
"み
たいだ とされた り、新聞 の販売員 は 「どの新 聞 を取 って も同 じよ うな もの
金太郎飴
で す よ」 と言 って勧誘 して い るの か もしれ な い。 と りわ け、政 治的 な姿勢 に関 して は 、 日
“
"を
本 の新聞 が 不偏 不党
旗印 に して い る こと もあ って 、欧米 の新 聞 が特定 の政党 や候補
者 へ の支持 を 明確 にす る こ とが あ るの とは異 な って い ると考 え られて きた。
ところが 、 1 9 6 0 年代後 半 か ら7 0 年代 にな ると状況 に変化 が現 れ 、 「まず 『産経新聞』 が
政府 ・与党寄 りに姿勢 を転 じ…右 寄 り路線 を 明確 に し…朝 日攻撃 の論陣 を張 った。 一 『読
売新 聞』が 、 そ の後 、大 転換 を遂 げる。 時期 はち ょうど中曽根政権 が誕生 した8 2 年前 後 か
"と
らであ る。 … 『読売 新 聞』 の この大転換 で 、 “読売 ・産経 " 対 “
い う構 図
朝 日 ・毎 日
がで きあが り…新 聞論調 の二 極分化 と呼 ばれ る状 況 が生 まれた 」 と論 じられ るよ うにな っ
-71-
JGSS研究論文集[3](2004.3)
40∼42頁)。つ ま り、 かか る経過 か ら 「時 の争点 に関 して朝 日、毎 日、
た (柴田鉄治 、1997、
東京 (中 日)新 聞 の グル ー プ と読 売 、産経 とが区分 け して語 られ る こ と も多 い」 とま とめ
57頁 )。
られ て いるので あ る (高尾義彦 、2001、
最 近 で も、 この論調 の分化 は 、本稿執筆時 の ニ ュ
ー スで言 えば 、 イ ラク復興支援 へ の 自
衛隊派 遣基本計画 の閣議決定 (2003年12月9日 )に 関 す る翌 10日の各社社説 に も明 らか に
示 され て い る。 す なわ ち、政 府決定 を全面的 に支持 し、 自衛隊 を積極的 に激励 す る論説 を
掲 げ た産経新聞 と読売新 聞 に対 し、 日本経済新 聞 は賛成 の立場 で も派遣 の必要性 を認 め る
程度 に留 め、毎 日新聞 は憲法 の枠 内 で と慎重 の うえ に も慎重 を 、 と い う姿勢 を 出 して い る。
そ して、朝 日新聞 は、危険性 を指摘 し、 は つ き り と反対 の意 見 を表 明 して い るの で あ る。
もちろん 、 この よ うな社説 は 、固 す ぎて 、 あま り読 まれ ない の か も しれ ない。 しか し、各
社 は 、 自社 の論調 に もとず いて紙 面 づ くりを して い るの だか ら、新 聞 を開 けば誰 で も目が
行 くはず の 「見 出 しだ けで新 聞論調 の違 いが透 けてみえて くる」 こ と も大 いに有 り得 るの
130頁)。
ではな いか と思 われ る (北村肇 、2003、
したが って 、 それぞれ の論調 を持 って いる各全 国紙 にお け る読者層 の政 治的意識 の動 向
には 、政 治的社会 化 の 例 と して 注意 す べ き点があ ると考 え られ る。 そ こで 、 まず読者 の 支
持政 党別構成 を見 てみた い。 と言 って も、 JGSS-2002の調査 以降 には 、周知 の よ うに2003
年 11月に衆議院議 員総選挙 が 行 われてお り、 この前後 に民主 党 と 自由党 との合併 、保守党
の保守新党 へ の衣替 え と保守新党 の 自民党 へ の合 同 とい った 変化 が起 こって い る。 これ ら
の 出来事 を無視 す るわ け にはゆか な いが、取 り敢 えず の参考 にはな るで あろ う (図 14)。
'が
“
60%を 超 え るほど も占
結果 によると、 どの新 聞読者 に も 特 に支持 す る政 党 はな い
めて いて 、 いわ ゆ る無 党派層 が 大部分 であ る。 しか し、 そ う した なかで も朝 日新 聞読者 の
自民党支 持 が17.6%と 、他 と比 較 してやや低 い事 実 が 注 目 され る。 や は り、朝 日の読者 は 、
積極的 とは言 え ない ものの 、反 自民 な の であろ うか。 それ に 、毎 日新 聞読者 が続 いて い る
・
が、む しろ毎 日読者 の方 に野 党支持 が 多 い。 これ に対 して産経新 聞 ・日本経済新 聞 読売
新 聞読者 の 自民 党支持率 は 、互 い にかな り高 くな って い る。 これ は 、 日経 が 、現 代 日本社
会 にお いて経済 ・社会 的 に高 い層 を読者 に持 って い る こ とが 反映 して い るの で あろ う。 す
で に見 たよ うに、朝 日新 聞 と日本経済 新 聞 では、読者層 に近 似 して い るところが あ るのだ
が、両読者 の政 治的 なス タ ンスが 異 な って いる ことが 明 らか で あ る。 そ して 、産経新 聞 と
読売新 聞 とは、大衆 に根強 く存在 す る 自民党支 持 の心 情 に適 合 して い るの で あ ろ う し、読
者 が 両紙 の与党寄 りの論調 に影響 を受 けて いる こ とも当然 に想定 され る。 なお 、数 は少 な
い けれ ど、産経読者 にお いて 、小 沢一 郎党 首 の強 い保守 的 な個 性 で 鳴 ら した 自由党 へ の支
持 が他 と比 べ て 高 い こ とは、同紙 の政治 へ の姿勢 に関連 して 気 にな る と ころであ る。
□ 自民寛
物限主完
朝 日新 聞
-72-
JGSS研究論文集[3](2004.3)
□膝 明党
□ 山山党
圏 共産党
産経新 聞
§牲氏党
日本経 済 新聞
圏 支持 す る政 党 な し
日 め か らな い
毎 日新 聞
読 売新 聞
図 1 4 全 国紙 の支持政党別読者層 は、
な
かっ
た)
貯者は
保載 ・
祝 成見の
4 . 1 1 政 治 意識 別
それ で は 、次 の テ ー マ と して 各 全 国紙 読 者 の 政 治 意識 に つ いて 見 る こ とに しよ う。 J G 鞘
- 2 0 0 2 では 、調査 対 象 者 の
政 治意 識 を 、 1 : 保 守 的 、 2 、 3 、 4 、 5 : 革 新 的 まで の 5 つ
の 段 階 の どれ に 当 た るか 、 で 尋 ね て い る。 もちろ ん 、 この 方 法 で は 、 3 の 中間 値 に集 ま り
や す い傾 向 が あ って 、 こ こで も同 様 な分 布 に な って い る ( 図 1 5 ) 。
しか し、結 果 か らは 、産 経 新 聞 と読 売新 聞読者 にや や 保 守 的 に 寄 っ た 意 識 が あ る こ とが
現 れ て いて 、 や は り両紙 が 保 守 層 に好 まれ て い る こ とが 明瞭 で あ る。 これ に対 して 、朝 日
新 聞 と 日本経 済 新 聞読 者 で は 、 と もに革 新 的 に傾 いた 意 識 が 示 され て お り、 と りわ け 日経
“
"が
読 者 の方 に 革 新 的
強 い。 前節 で は 、朝 日新 聞 と 日本 経 済 新 聞 読 者 で 政 党 支持 の 違 い
が 明 らか に な ったの に 、何 故 なの で あ ろ うか。 つ ま り、朝 日新 聞 読 者 が 政 党 支持 で 野 党 的
で あ るか ら革 新 的 な の は 一 応 分 か る と して も、 日経 読者 が 政 党 支持 で 与 党 的 なの に 革 新 的
で あ る と い う こ とが 理 解 し難 いの で あ る。 これ に は 、 1 9 5 5 年体 制 以 来 の 保 守 ―革 新 と い う
対 立 軸 と与 党 一野 党 と い う対 立 軸 が 重 な る と い う構 図 が通 用 しな くな っ て きて ぃ る こ とが
表 れ て い るか らで は な い か と思 わ れ る。 日本 経 済新 聞 の 読 者 層 は 、変 化 の 激 しい経 済界 で
働 く、第 一 線 の ビジ ネ ス マ ンが 多 い 。彼 らが意 識 と して 保 守 的 で あ るよ り も革 新 的 に な ら
ざ るを 得 な いの は 、政 治 的 な 意味 を 離 れ た 当然 な傾 向 な の で あ ろ う。
(単 位 名 :%)
朝 日新 聞
□ 1 : 保 守的
22
産経新 闘
□3
□4
圏 5 : 革 新的
日本経 済新 聞
毎 日新 聞
読売新 聞
図 15全 国紙 の政治 意識別 読 者層
5.む
すび
" ・
で り上 げ られた新聞 に関 す る設間、す なわ ち “
本稿 は 、 J G S S 2 0 0 2 取
新 聞購読 の頻度
"の
“
" ・“
1 5 の組織 の なかでの新 聞 の信頼性
3 つ の テ ー マにつ いて分析 を
よ く読 む新 聞
-73-
JGSS研究論文集[3](2004.3)
行 った。 もとよ り、新聞 あ る いはマ ス コ ミに関す る特 別 な調査 をすれば 、 さ らに多 くの成
果 が挙 が って くる もの とは想像 され る。 けれ ど も、 ここでは 、 JCSSとい う総 合的社会 調査
の利点 によ って 各種 の デ ー タが多数 もた らされ ると い う長所 を活 か し、 ク ロス集 計 に 力 を
注 いだ 。 そ して 、 と くに 中心的 な課題 と しては、 5つ の全国紙 に関 して 、 それ ぞれ の読者
一
層 が どの よ うに構成 されて い るかを 多角的 に考察 した。 この 作業 によ って 、 日 に現 代 日
本 の 全 国紙 と言 って も、各新 聞 の歴史 や個 性 に もとづ いて読者層 に も互 いに か な りの特 徴
'の
“
部分 で 紹介 した 山本武 利
が あ る こ とが分 か った。 この結果 か らは、本稿 の は じめに
氏 によ る新聞読者層研究 の意義 が確認 され た よ うに考 え られ る。
す
まず、 日本経済新聞 には 、 そ の経済専 門紙 と して の性格 か ら個 性 が顕著 に現 れて い る。
なわ ち、読者層 には 、都市 の ビジネ スマ ンを主体 と しつつ 、 と りわ け経済 的 ・社会 的 ラ
ンク にお いて上位 に位置 づ け られ る人 た ちが 目立 つ 。 そ して 、彼 らは、政 治的 に与 党寄 り
"を
“
望 んで いる こ とが 明 らか にな った 。
で あ るけれ ど、現状維持 よ りは 革新
朝 日新聞 には 、 日経 と比較 的近 い属性 を有 す る読者 が 多 い。 これ は 、朝 日と日経 の 併読
前掲書 、23頁 )。 朝 日につ いて
率 が 高 い、 と言 う こ とと も関係 して い るので あろ う (戸田、
は 、 「文句 な く日本 を代表 す る新 聞 であ り、世界的 に い って もそ の権 威 は確立 されて い る」
前掲書 、87頁)、 論調 を反映 して い るた め か 、野 党寄 りで
と述 べ られ て い るが (岩崎 ほか 、
革新指 向 の読者 の い る こ とがか な り認 め られ る。
読売新 聞 は 、 日経 や朝 日とは幾 らか異 な って 、東京 に代表 され る大都会 の市井 に暮 らす
一 般 庶民 か らな る読者 層 を大量 につ か んでお り、 「戦後 に急速 に発展 し…一 種驚異 の成長
前掲書 、91頁 〉。読売 は 、論 調 も読者 も、現 代 日本
を遂 げ た」新 聞 だ とされ る (岩崎 ほか 、
の大衆社会 に潜 んで い る保守性 に根 を置 こ う と して いるとい った感 じであ る。
ー
一
産経新 聞 には 、読売 よ りも、読者 に対 し 段 と保守性 をア ピ ル しよ う とす る姿勢 が う
一
かが え る。 これ につ いて は 、 「全 国紙 の ステ レオ タイ プ化 へ 多様性 の 端 と して 、評価 し
ー
て もよ い」 と言 われ 、 「世論形成 にお いて 『左傾化Jを 防 ぐとい うプ レ キ の役 割 と して
一
政 府 に と つて好 ま しい と い う 面 と、世論 の多元 化 とい う民主主義 の基盤造 成 に貢献 す る
258
とい う一 面 とが あ る こ とを 見逃 せ ま い」 と指摘 され て い るの で あ る (田村紀雄 、1995、
頁 )。
毎 日新聞 には 、読者層 の高齢 化 に ともな う発行部数 の漸減 と い う現 象 が起 こってお り、
方 向 を徹 しきれ なか った と い う課題 が大 き く残 って い る。朝 日と読 売 の二 大新 聞 によ る言
論 の二 極分 化 と言 われ る状 況 の なかで 、毎 日の 「相対 的 な地 位 の低下 は 自由 な競争 を弱 め
ー
る もの と して好 ま しくな い」 と述 べ られ て いるなか に同紙 へ の エ ル が あ る もの と思 いた
い (田村 、
前掲書 、258頁)。
現 代 日本 の新 聞界 には 、急速 に進 むデ ジ タル化 と い う技術 革新 へ の対応策 が つ きつ け ら
“
"か
分 か らな い と言 う
れ てお り、新 聞社 は と もか く、新 聞紙 の方 は いつ まで 生 き残 れ る
の が 実情 であ る。 こ う した メデ ィア環 境 の激変 のなか にあ って 、新 聞 に対 す る国民 の意識
-74-
JGSS研究論文集[3](2004.3)
が どの よ うに変化 して ゆ くのかについ ては、 さらなる調査 が必 要 になるであろ う。
( 本稿 にお けるデ ー タ処理 に当た つては、保 田時男先生 のお助 けを頂 きま した。厚 く感謝
を申 し上 げます。)
[Acknowiedgement]
日本版 General SociaI Surveys(JGSS)は
、大阪商業大学比較地域研究所 が、文部科学省 か
ら学術 フロンテ ィア推進拠点 としての指定を受けて (19992003年度)、東京大学社会科学研究
所 と共同で実施 してい る研究プ ロジェク トである (研究代表 :谷岡一郎 ・仁 田道夫、代表幹事 :
佐藤博樹 ・岩井紀子、事務局長 :大澤美苗)。デー タの入手先は、東京大学社会科学研究所附属
日本社会研究情報セ ンターSSJデー タ ・アー カイブである。
[参考 文献 ]
新井直之 ・
桂敬 一編,『新聞学 〔
有山輝雄,1995,「
新 聞の略史 (2)一 日本」稲葉三千男 ・
第 3版 〕
』
日本評論社.
誤報 ― その構造的問題点 に迫 る』 倉叫
池 田龍夫,2000,『
樹社.
新聞の虚報 ・
マス コ ミ業界』教育社.
尾上進勇,1992,『
岩崎恭裕 ・
NHK放
日本人の生活時間 ・2000 -NHK国
送文化研究所編,2002,『
民生活時間調査』 日本
放送出版教会,
.
大井員二,2001,『
新FFqの
未来」.アエ ラム ック 『
新マス コ ミ学 がわかる』朝 日新PHq社
わかる」
北村肇,2003,『
技術』 講談社.
新聞記事が 「
大衆社会 とマス ・コ ミュニケー ションJ.木 村雅文 ほか.『
木村雅文,1993,「
増訂 社会学講義』 八
千代出版社.
佐塚正樹,2000,「
新聞」.藤竹暁編,『図説 日本 のマスメデ ィア』 日本放送出版協会.
戦後 50年 か ら 21世 紀へ 新聞はいま」.桂敬一編,『21世 紀 のマス コ ミ01新
柴 田鉄治,1997,「
聞 ―岐路 に立つ新聞 ジャーナ リズムのゆくえ』 青木書店.
1・
高尾義彦,2001,「
岡満男編,『メデ ィア学 の現在 〔
新版〕
新 聞J Hl日功 丁
渡辺武達 ・
』世界思想社.
マス ・コ ミュニケー シ ョンの社会理論』 東京大学出版会.
竹内郁郎,1990,『
ブ ロ ック紙 ・
全国紙 ・
田村紀雄,1995,「
県紙 ・コ ミュニテ ィペーパー ・ミニコ ミ」.稲葉 三千男 ほか
編,前掲書,
中馬清福,2003,『
新聞は生き残れ るか』岩波書店.
戸田覚,1998,『
活用 自在 日本 の新聞デー タブ ック』 こ う書房 .
四訂版〕 -1861年 ∼2000年』新泉社.
春原昭彦,2003,『日本新聞通史 〔
本郷美則 ,2000,『
新聞があぶない』文藝春秋.
近代 日本 の新聞読者層』法政大学出版局.
山本武利,1981,『
-75-
Fly UP