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総説海藻からの紙-アルギン酸繊維紙の製法と応用-小林良生

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総説海藻からの紙-アルギン酸繊維紙の製法と応用-小林良生
総説海藻か らの紙-アルギン酸繊維紙の製法と応
海 藻 は 多 糖 類 の宝 庫 で あ るが, 今 ま で そ れ を紙 の 原料 とみ なす こ とは ほ とん どなか っ た。
陸 上 植 物 の細胞 壁 を 構成 す るセ ル ロー スか らは 年 間1億9千
い るが,
万 トンの 紙 ・板 紙 が作 られ て
海 洋 植 物 か らは 紙 が で きな い もの で あ ろ うか 。 そ の 解 答 と して, 本稿 で は, 褐 藻
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類 の 細 胞 壁 お よび 同 壁 間 層 を構 成 して い る ア ル ギ ン酸 を 紡 糸 して繊 維 を作 り, そ の繊 維 か
らち ょ うど レー ヨ ン紙 を 作 る よ うな 工程 で,
天然 パ ル プ紙 と同 じ よ うな繊 維 間 自己接 着 性
の紙 を 作 る方 法 と, そ の 特 性 を 活か した応 用 分 野 と して, 医療, 食 品 お よび 酵 素 固 定 化 な
どの 生 化 学 分 野 へ の 応用 に つ い て展 望 した。
は じめに 生化 学の分野 で も紙 は種 々の分野 で広 く使
ペ クチ ン, 植 物 粘 質物, 海 藻 の多 糖 類 は一 般 に は ヘ ミセ
用 され て い る。 た と え ば, ペ ー パ ー ク ロマ トグ ラフ ィ
ル ロー ス に は 含 まれ な い が, 広 く多 糖 類 を主 体 繊 維 とす
ー , 診 断 紙, バ イオ ペ ー パ ー^<1)>な
どで あ る。 紙 は 狭義 に
る紙 を作 れ ば, 複 雑 な紙 の物 性 解 明 に何 らか の寄 与 す る
は セ ル ロー ス繊 維 を 水 中 で分 散 させ, 水 の媒 介 に よ り薄
と ころ が あ るで あ ろ う。 筆 者 は こ の よ うな観 点 か ら, 多
く平 らにか らみ合 わ せ て乾 燥 に よ り膠着 さ せ 弾 性 を 回復
糖 類 と紙 との か かわ りを求 め て, キ チ ン, ペ クチ ン質 関
さ せ た薄 葉 状 物 (第1の 紙) で あ るが, そ の概 念 は拡 大
連 の研 究 を行 な い, 近 年 で は, ア ルギ ン酸 か ら の紙 作 り
さ れ, そ の構 成 繊 維 は セ ル ロー ス 以 外 に も化 合 繊 の短 繊
に成 功 した。 本 稿 で は, ア ル ギン 酸 か ら の抄 紙 の工 程 お
維 で も よ く (化繊 紙 : 第2の 紙),
さ らに 表 面 を 紙 状 に
加工 した フ ィル ム (フ ィル ムベ ー ス合 成 紙 : 第3の 紙)
よび 得 られ る紙 の用 途 な どを, 同化 合 物 の特 性 を主 と し
て生 化 学 の分 野 か ら解 明 しな が ら展 望 して み た い 。
ま で 含 まれ る に至 っ て い る。 この よ うな紙 の概 念 の拡 大
と と もに そ の機 能 も拡 大 され て き て い る 。紙 に付 与 され
I.
繊 維 原 料 と し て の ア ル ギ ン酸
た機 能 に注 目す る とき, そ の ジ ャ ンル を 「
機 能紙 」 と呼
ぶ が, 「海 藻 か ら紙 を作 る」 とい う研 究 も, 機 能 紙 研 究 の
1.
一 環 で あ る。
ア ル ギ ン酸 は, 海 藻 (algae) か ら命 名 され た よ うに,
と ころ で, “第1の 紙” の主 体 は セ ル ロー ス で あ る が,
紙 の諸 性 質 を 決 め る化学 的要 因 は非 セ ル ロー ス質,
とく
原 料資 源
褐 藻 類 の細 胞 壁 お よび 細 胞 間 層 を構 成 して い る ポ リウ ロ
ン酸 であ る。 した が っ て, 古 い文 献 で は海 藻 酸, 昆 布 酸
に ヘ ミセ ル ロー ス で あ る。陸 上 植 物 の種 類 に応 じて特 徴
あ る い はTang酸
あ る紙 が作 られ るが, これ に は繊 維 の物 理 的 特 性 や, 化
は, 1881-83年
学 的 に は セ ル ロー ス の重 合 度, 結 晶化 度 な どのほ か に,
カ リで抽 出 され て くる ア ル ギ ン酸 の水 溶 性 誘 導 体 に与 え
ヘ ミセ ル ロー ス の 種 類, 量, 分 布 が 大 き く左 右 し て い
た総 称 で, Na, K, NH_4塩
る。 ヘ ミセ ル ロー ス は 一種 の多 糖 類 で あ る。 デ ンプ ン,
レン グ リ コー ル エ ス テ ル な ど も包 含 して い る。 した が っ
Yoshinari
Kobayashi,
Institute,
Shikoku,
工 業 技 術 院 四 国工 業 技 術 試 験 所
Hananomiya-cho,
Takamatsu
(〒761
高 松 市 花 の 宮 町
761, Japan]
Papers from Seaweeds-Manufacture and Applications of Alginate Fiber Papers
Key 【
word
ア ル ギ ン 酸 】 【ア ル ギ ン 酸 繊 維 紙 】 【酵 素 の 繊 維 状 ・紙 状 固 定 化 】
1066
な ど とも訳 さ れ て い る。 アル ギ ン と
に Stanford が海 藻, と くに 褐 藻 か ら アル
2-3-3)
のみ な らず, 現 在 では プ ロ ピ
[Government
Industrial
Research
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海 藻からの紙-ア
図1.
ル ギン酸繊維紙の製法 と応用
59
原 料 褐 藻 類 の 分 類^<2)>
て, アル ギ ン酸 の研 究 が ス ター トしてか らち ょ うど1世
と くに コ ン ブを1つ
紀 が 経 過 した こ とに な る。
オ トピ ア2000” 構 想 を 推 進 して い る^<4)>の
で, 今 後 の原 料
ア ル ギ ン の原 料 は褐 藻 で あ るが, 商業 的 に は (1)
含有量
の多 い こ と, (2)大 量 に集 団 で 繁 茂 し, (3)採 取 が容 易 な こ
の軸 とす る地 域 開 発 シ ス テ ム “バ イ
調 達 事 情 は 大 幅 に 変 化 す る可 能 性 を 秘 め て い る。
褐 藻 中か らア ル ギ ン は直 接 繊 維 状 と して 抽 出す る こ と
と, とい う条 件 を 満足 す る とな る と, 褐 藻綱 の なか で コ
は で きず, ア ル カ リに よ り水 溶 性 の ア ルギ ン酸Naと
ン ブ 目 (Lamirariales)
て分 離 す る。 抽 出 され た 粗 アル ギ ン酸Naは,
と ヒバ マ タ 目 (Fucales)
とな り, 実 際 に採 取 され て い る の は10種
の2目
ぐらい に限 定
され て い る^<2)>(図1)。
わ が 国 で は, 北 海 道 を 中 心 と して コン ブ, カ ジ メ, ア
ラ メを産 し, 北 欧 ・英 国 は Ascophyllum,
で は酸 法, 海 外 で は 主 と してCa法
ケル プの 名 称 で 知 られ る Macrocystis pyrifera で あ り,
と呼 ぶ が, わ が 国
を採 用 して い る。精
あ る。
ア ル ギン 酸 は褐 藻 だ け で な く, 2種 類 の細 菌, Pseudomonas
な どであ る。 現 在 わ が 国 で
は アル ギ ン酸 メー カ ー は3社
の形 で再 沈 澱 させ
Laminariadigitata製法 の違 い は原 料 の 成 分 組 成 の違 い と用 途 によ る も の で
, L. cloustoni, 米 国 西海 岸 で は ジ ャイ ア ン ト ・
南 米 チ リ沿 岸 では Lessonia
はCaCl_2を 加 え て 遊 離 酸 ま た はCa塩
精 製 す る。前 者 を酸 法, 後 者 をCa法
し
鉱 酸 また
aeruginosaお よ び Azotobacter vinelandii
〔
紀文 フー ドケ ミフ ァ
で も生 成 され る こ とが知 られ て い る。 前 者 は 嚢 胞 性 繊 維
富 士 化 学 工 業 (株)〕 で あ る
症 患 者 の肺 か ら単 離 さ れ, そ の 生 成 物 は ラ ン ダ ム また は
が, いず れ も南 米か ら原 料 を輸 入 して い る。 これ らの褐
ポ リ (マ ン ヌ ロ ン酸) の ブロ ッ クポ リマ ー で ほ とん ど グ
藻 類 中 の ア ル ギ ンの 含有 量 は20∼40%で
ル ロン酸 成 分 に欠 け, 高 度 に アセ チ ル 化 され て い る^<5)>。
(株), 君 津 化 学 工業 (株),
あ り, わ が 国
で Lessonia
毎 を 輸 入 して い るの は そ の含 有 率 の 高 さか ら
後 者 の菌 株 か らは ニ トロ ソグ ア ニ ジ ンで 誘導 され, 最 適
で あ る。 第1次 石 油 シ ョッ ク以 来, 海 洋バ イ オ マ スか ら
培 養 条 件 の検 討 に よ り, 6.22g/lの
のエ ネ ル ギ ー 源 と 目され て い る Macrocystis
はアルギ
き る よ うに な っ た 。低剪 断 速 度 での 擬 塑 性特 性 が 海 藻 の
ン酸 含有 率 は そ う高 くは な い 。 しか し, わ が 国 で も (財)
も の よ りや や 大 き い ほか は, ゲル 形 成 性, 熱 安 定 性 な ど
日本 海 洋 開 発産 業協 会 が 中 心 に な り, 昭和56年
に差 違 は認 め られ て い な い^<6)>。
か ら58
ア ル ギ ン酸 が 生 成 で
年 に か け て 海 藻 利 用 の フ ィー ジ ビ リテ ィ研 究 が 行 なわ
れ^<3)>,
そ の後 も研 究 委 託 が 続 いて い る。 また, 石 川 島播 磨
2.
繊 維 化 の 立 場 か らみ た 分 子 構 造^<7)>
重工 業 (株) は北 海 道 の伊 達 市 と組 ん で海 洋バ イ オ マ ス,
ア ル ギ ン酸 は, Nelson,
Cretcher
に よ りD-マ ン ヌロ
1067
60
蛋 白 質
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図2.
ン酸
(M)
の 存 在 が,
セル ロー ス (I),
そ し て Hirst
で あ る こ とが 証 明 さ れ た が,
felに
よ りL-グ
た 。 さ ら に,
ル ロ ン酸
McDowell,
よ びMMG,
Haugら
MGGの
Vol. 31
No. 11
(1986)
ポ リマン ヌ ロン 酸 (II) お よび ポ リグル ロン 酸 (III) の分 子 構 造
に
Fischer,
合
Dor
の共在が明 ら か に さ れ
に よ っ てM,
ロ ッ ク ポ リマ ー ど う し の 間 はM/G比
MGお
酵 素
ら に よ り β-1, 4結
1955年
(G)
核 酸
が1で,
Gの
ブ
おそ らく
交 互 ポ リマ ー で 接 続 され
て い る の で は な い か と推 定 さ れ て い る 。Mブ
ロ ッ クポ リ
マ ー 部 の グ リ コ シ ド結 合 方 式 は equatorial-equatorial,
Gの
ブ ロ ッ ク ポ リマー 部 の そ れ は
axial-axial
で あ る。
そ の 立 体 構 造 を セ ル ロ ー ス と対 比 し て 表 わ せ ば,
図2の
よ うに な る。
Mブ
ロ ッ ク はC-2の
変 わ り,
水 酸 基 が equatorial
ポ リマ ー鎖 の フ レキ シ ビ リテ ィー は減 じて は い
る も の の,
セ ル ロー ス ときわ め て類 似 して い る。 固体 状
態 に お い て,
遊 離 酸 の 繊 維 中 で は セ ル ロ ー ス と 同 様2回
らせ ん で あ り,
Li,
K,
Na,
ン を 収 納 す る た め に3回
Gブ
か ら axial に
Ca中
で は 結 合 した カ チ オ
らせ ん に 変 わ っ て い る。 一 方,
ロ ッ ク は グ リ コ シ ドが axial-axial
レキ シ ビ リテ ィー の少 な いバ ッ クル 型
る 。 固 体 状 態 で は 遊 離 酸,
配 置 を と り,
フ
リボ ン構造 を と
塩 の い ず れ で も2回
らせ ん と
して充填 され て い る。分 子 模 型 で み る と, この 配 置 で充
図3.
ポ リ グ ル ロン 酸 部 の “egg-box”
構 造^<7)>
填 して い る直 鎖 間 には 大 きな 間 隙 が あ り, こ の間 隙 を 水
分 子 な り, カ チ オ ン な りで 充 填 させ る と, バ ッ クル 型 リ
よ うな構 造 な の で, これ を “egg box” 構 造 と呼 ん で い
ボ ン構 造 の協 同 的 相 互 作 用 は き わ め て 強 くな る。 つ ま
る (図3)。
り, Gブ ロ ッ ク は カチ オ ン配 位 子 と結 合 しや す い と い
うこ とに な る。 したが って,
2価 カチ オ ン, た と えば
2価 金 属 イオ ンがGブ
ロ ッ クに 迅 速 に配 位 して, egg
box 構 造 の不 活 性 ゲル に変 わ る とい うこ とは, ア ル ギ ン
Ca^<2+>が存 在 す る と, 2つ のポ リマ ー鎖 がCa^<2+>を抱 き込
酸 が 可 紡 糸 性 を 有 す る こ と と深 い 関 係 に あ る と筆者 は考
ん だ 形 で 配 列 され る。 鎖 状 間 の酸 素 分 子 が 整 列 して い る
え て い る。 しか し, これ だ け で は 繊 維 形 成 性 を 説 明 で き
空 間 に カ チ オ ンが 配 置 され た 形 は卵 ケ ース に卵 を入 れ た
な い。 同 じよ うに egg box 構 造 を 取 り うるペ クチ ン酸,
1068
海藻か らの紙-ア
ル ギン酸繊維紙の製法 と応用
つ ま り, ポ リ(D-ガ ラ クチ ュロ ン酸) が 紡 糸 で き なか った
表1.
61
褐 藻 中 のM/G比
とそ の 範 囲^<19)>
か らで あ る。 両 者 の差 異 は ど こ に あ る の であ ろ うか 。 分
子 構造 と繊 維 形 成 能 の発 現 との関 係 は充 分 解 明 され たわ
け で は な い 。 しか し, セ ル ロー ス, キ チン, ア ル ギ ン酸
が 紡 糸 で き て, ペ クチン 酸 が紡 糸 で きな い こ とを 考 え合
わ せ て み る と, そ の構 成 単位 の均 一 性 が 要 求 され る よ う
に思 え る。 前 三 者 は い ず れ も, そ れ ぞ れD-グ
N-アセ チ ル-D-グ リ コサ ミン, MとGの
ル コー ス,
ホ モ ポ リマ ー
であ る とい う均 一 性 が あ るが, ペ クチン 酸 は 必 ず しもそ
ピメ ラ ー ゼ の 支 配 に よ
うで は な く, ガ ラ クチ ュ ロ ン酸 の主 鎖 また は 側 鎖 に中 性
る も ので あ り, そ のMとGの
糖 類, 多 く はL-ア ラ ビ ノー ス, D-ガ ラ ク トー ス, L-ラ ム
酸, GDP-L-グ
ノー スお よびD-キ
る仕 方 に よ って 決 ま っ て く るの で あ る。
シ ロー ス, とき にL-フ
コ ース, D-マ
ン ノー ス, D-グ ル クロ ン酸 を含 む 不 均 一 ポ リマ ー な の で
配 列 はGDP-D-マ
ン ヌ ロン
ル ロ ン酸 が ア クセ プ タ ー分 子 に転 移 さ れ
以 上 の よ うにM/G比
は生 合 成 過 程 にお け る5-エ
ピ
メ ラ ーゼ の作 用 であ る が, 金 属 イオ ンに よ る ゲル 化 時 の
あ る^<8)>。
ア ル ギ ン酸 は, MとGの
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らな る よ うに して い る の は5-エ
ブ ロッ クお よび 交 互 ポ リマ
難 易 を決 め る重 要 な要 因 で あ る。 表1は 海 藻 の種 類 に よ
ー とい う比 較 的 規則 正 しい分 子 構 造 を とる の は ど う して
るM/G比
で あ ろ うか 。 そ れ は Hassid
い る も の は一 般 にMに 富 ん で い るが, Laminaria hyperborea
ら^<9)>の
Fucus gardneri
にお
け るア ル ギ ン酸 の生 合 成 の研 究 でか な り明確 に され て い
る。同海 藻 中 にGDP-マ
ン ヌ ロ ン酸 とGDP-グ
ル ロン酸
の 変 化 を 見 た も の で あ り, 工 業 的 に 使 用 して
のみ がGの 含 有 量 が 高 い 。 こ の比 は また 海 藻 の成
熟 度, 部 位, 季 節, 場 所 な どに よ っ て も変 わ っ て くる。
の存 在 を 発 見 し, 海 藻 が ヌ ク レオ チ ドの結 合 した ウ ロン
酸 を 合成 で き る と し, 光 合 成 サ イ クル で プ ー ル され る糖
リン酸 か ら 誘 導 され る マ ン ノー スー1-リ ン酸 か ら, 以 下
の よ うな シス テ ム で合 成 され る と して い る。
こ の 系 に お い て,
酵 素 系 と し て ヘ キ ソキ ナ ー ゼ,
ホス
ホ マン ノ ム タ ー ゼ, D-マ ン ノ ー ス ー1-リ ン 酸 グ ア ニ リル ト
ラ ン ス フ ェ ラ ー ゼ,
デ ヒ ド ロ ゲ ナ ー ゼ,
発 見 さ れ て お り,
グ ア ノ シ ン二 リ ン 酸-D-マン
ノース
マ ン ヌ ロ ン 酸 トラ ン ス フ ェ ラ ー ゼ が
こ れ ら がD-マ
マ ン ヌ ロ ン酸 を 生 成 さ せ,
ン ノ ー ス か ら, GDP-D-
つ い で,
これ を組 み 込 ん で ポ
リ ウ ロ ン酸 と し て の ア ル ギン 酸 を 作 っ て い る と考 え られ
て い る 。 つ ま り, MとGの2種
の構 成 単 位 の ウ ロン酸 か
図4.
ポ リマン ヌ ロン 酸 のX線 回 折 図^<10)>
点線は水素結合。
1069
62
3.
蛋 白 質
核 酸
ゲルの
結 晶 構 造 に 左 右 さ れ る と 考 え ら れ る。Atkins
と, Mブ
ロ ッ ク の ポ リマ ー は1.04nmの
ヘ リ ッ ク ス 構 造 を し,
合 したMが2分
子 含 ま れ,
ン を 取 っ て い る 。O (5)
水 素 結 合, O
(2)-HとO
β-(1,4)
結
子 型 の コン ポ メ ー シ ョ
(3)-Hと
の間 に は分 子 鎖 内
(5)
とは分 子 鎖 間 水 素 結 合 が 作
の ポ リマ ン ヌ ロン酸 カ
回 折 図 は 斜 方 晶 系 で,
格 子 定 数 はa=0.76nm, b
0.85nmで
る と,
よ うに
No. 11
(1986)
の2糖
鎖 が は い り,
格 子 定 数a=0.82nm, b=1.03
ア ル ギ ン酸 の も うひ とつ の ブ ロ ッ ク構 成 単 位 であ るG
ブ ロ ッ クポ リマ ー部 は前 述 の よ うに1C椅
子 型 の コンホ
メ ー シ ョ ンを と り, 分 子 鎖 は2回 ヘ リッ クス で繊 維 の繰
返 し単 位 は0.87nm, O
(2) Hと 隣 接 の残 基 のO (6) Dと
が 分 子 間 水 素 結 合 を し て い る。X線 回 折 図 は図5の
うで, 斜 方 晶系 の単 位 胞 はa=0.86nm, b
0.87nm, c=1.07nmで
よ
(繊 維 軸)=
あ り, 空 間群 はP2_12_12_1で あ
る。 乾 燥 を強 化 す る と, 繊 維 軸bは
変 化 な い がa=
若 干短 くな る 。Gブ ロ ッ ク もセ
ル ロー ス の結 晶構 造 とは一 致 しな い 。 こ の こ とは, 固 い
ゲ ル構 造 の ア ル ギ ン酸 カル シ ウ ム繊 維 と天 然 パ ル プ とは
混 抄 して も 自 己接 着 しに くい こ とを 示 して い る。
単 斜 晶 系 で あ り, 単 位 胞 中 に4個
グ ル コ ー ス 残 基 が は い る 計 算 に な っ て い る の で,
短 く, c
は 若 干 長 い こ とに な る。
0.77nm, b=1.06nmと
あ る。 こ れ を 天 然 パ ル プ と比 較 す
セ ル ロ ー スIは
nm, c=0.79nmの
図4の
(繊 維 軸)=1.035nm, c=
あ る 。単 位 胞 内 に は2つ
空 間 群 はP2_12_12_1で
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繰 返 し単 位 を
そ の なか に
C1椅
とO
らに よ る
用 し て い る。Fucus versiculosus
ル シ ウ ム 繊 維 のX線
Vol. 31
ン ヌ ロ ン酸 で は 繊 維軸 は ほ ぼ 同 じであ る がaは
ゲルの結晶構造
ア ル ギ ン酸 繊 維 が 自 己 接 着 を 持 つ か ど うか は,
持 つ2回
酵 素
の
ポ リマ
II.
1.
ア ル ギ ン酸 の 繊 維 化
繊 維 化 の歴 史^<12∼14)>
ア ル ギ ン酸 の分 子 構 造 はか な り規 則 性 を 持 ち, 繊 維 形
成 構 造 を持 つ 可 能 性 が 示 唆 され て い る。 実 際 に 繊 維 形 成
能 を 持 つ こ とに 気 づ いた の は か な り古 く,
Sarason
が1912年
ドイ ツ人 の
に “ア ル ギ ン酸 ア ル カ リを 紡 糸す る
方 法” とい う特 許 を 出 して い る。 同 化 合 物 を 中 性 ま た は
酸 性 硫 酸 塩 中 で紡 糸 す る も ので, 得 られ た フ ィラ メ ン ト
は 人 工 シ ル ク, 馬 巣 織 り用 に 使 用す る と 述 べ られ て い
る。
しか し,第1次 大 戦 のた め 後 続 の研 究 が絶 え, 日本 で は
1930年
代 初 め ご ろか ら盛 ん に研 究 され て い る。1934年
に 岡 山 の Tadashi
Gohda
(合 田?)
は アル ギ ン, マ ンニ
ッ ト, 蛋 白質, 粗 セル ロー ス か らな るゼ リー 状物 を 銅 ア
ン モ ニ ア溶 液 に溶 解 して, フル フ ラー ル と NaOH
か ら
作 られ る “フ ル フ ラ ール 塩”, 硫 酸 ナ トリウ ム, 酢 酸, ア
ル コ ー ル, ホル ム アル デヒ ドか らな る凝 固 浴 に 紡 糸 し,
得 られ た フ ィラ メ ン トを 硫酸 亜 鉛 で後 処 理 して い る。 彼
は, 同年, 紡 糸 浴 を多 少 変 更 した特 許 も出 して い る。 し
か し, 海 藻 中 の他 の成 分 と アル ギ ン酸 とを分 離 し よ う と
はせ ず, 凝 固 液 の複 雑 な こ と, 繊 維 組 成 が一 定 で なか っ
た こ と, 製 造 で きた 糸 に 欠 陥 が あ っ た こ とで工 業 化 ま で
に は至 らな か った 。 ま た, ほ ぼ時 を 同 じ く し て, 高 橋
(東 工 試, 後 東 大 生 産研), 毛 利, 大 橋 (日本 油 脂) も適
当 な凝 固浴 の研 究 を して い る^<15)>。
そ して, 合 成 繊 維 出現
以 前 の時 代 であ る ので, 用 途 を 「ヤ ン グ率 が 大 で あ り,
図5.
1070
ポ リグル ロン 酸 のX線
点 線 は 水 素結 合 。
回 折 図^<11)>
保 温 性, 難 燃 性 が あ り, か つ ま た, 捲 縮, 振 れ な どに よ
り繊 維 相 間 の結 合 性 の よい こ とな どか らみ る と, フ トン
海藻か らの紙-ア
ル ギン酸繊維紙の製法 と応用
63
綿, 真 綿 代 用 な どに最 も適 当 した もの で あ ろ う。 ま た,
非 ニ ュー トン挙 動 を 取 る^<16,17)>。
非 ニ ュ ー トン挙 動 は重 合
織 物 原 料 と して は手 紡 績 ま た は 紡毛 紡 績 に よ り紡績 を行
度, 濃 度 に よ って 増 大す る。
な い, これ を 緯 糸 に用 い, 絹 糸 ま た は人 絹 糸 を経 糸 に用
ア ル ギ ン酸Naの
重 合 平 均 分 子 量 (M_W)
い て 交 織 した もの は 首 捲 き, 毛 布 な どに あ る程 度使 用 し
溶 液 で用 い た場 合 に, Smidsrod
得 べ く考 え られ る」 と記 さ れ て い る。
関係 式 が 得 られ て い る。
は0.1N NaCl
の報 告^<18)>に
よる と次 の
アル ギ ン酸 繊維 の研 究 が 促進 され た の は, 第2次 世 界
[η]=2.0×10^<-5>×M_W
大 戦 で あ った 。 英 国 に お い て軍 事 施設 の カ モ フ ラー ジ 網
に 使 用 す る ジ ュー ト ・ヘ シア ン (南 京 袋 な どに用 い る荒
い 織 物) の代 替 物 が 必 要 に な った の で あ る。 必要 条件は
, 英 国 内に 資 源 を有 し, そ れ に 転 用 して も困 らな い も
の で, か つ 迅 速 に織 布 で き, 既 存 の 紡 糸 機, 織 機 が使 用
3%前
濃 度 は3%以
上
後 によって 無機 アルカ
リ塩 の添 加 効 果 が 異 な って い る。3%以
下 で は対 イ オ ン
効 果 で 粘 度 の低 下 を み るの に 反 し, そ れ 以 上 に な る と,
で き る こ とで あ っ た 。ち ょ うどそ の ころ, ア ル ギ ン酸Na
1価 無 機 塩 の 存在 に よ って イ オ ン強 度 が余 分 に増 加 し,
をCaCl_2溶
粘 度 に ほ とん ど影 響 を 及 ぼ さ な い^<19)>。
これ らの 事 実 は,
液 中 に 押 し出 して 透 明 フ ィル ム を 作 る とい
う Bonniksen
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紡 糸 用 ドー プで は, ア ル ギ ン酸Naの
で 行 な う こ とが 多 い が,
の特 許 が で て き た の で, ア ル ギ ン酸 繊 維
た とえ ば, 酵 素, 微 生 物 の 固 定 な ど で生 理 食 塩 水 溶 液 に
お よび ス ク リム(カ ー テ ン用 な どの 目の粗 い織 物) の 紡織
ア ル ギ ン酸Naを
評 価 をす る こ とに 決 定, 国 防 省 で1942年
な い こ とが らで あ る。
taulds社
に着 手, Cour
の織 物 工 業 部, Leeds 大 学, 軍 需 省化 学研 究 開
発 部 で研 究 が 行 な わ れ て い る。 基 礎 研 究 は
の J. B. Speakman
rlain,A.
Johnson
Leeds
大学
教 授 と 共 同研 究 者 N. H. Chambe
で あ る。 ア ル ギ ン酸Naか
溶 解す る と きに 留 意 して おか ねば な ら
温 度 の効 果 と して は, 制 限 され た 範 囲 で は あ る が, 温 度
が1℃
上 昇 す る こ とに ア ル ギ ン酸Naの
粘 度 は 約2.5%
低 下 す る といわ れ て い る。 加 熱 が 短 時 間 で あれば,
この
らの紡 糸 は
粘 度 低 下 は可 逆 的 で あ る。 しか し, 加 熱 時 間 が 長 けれ ば
湿 式 法 で当 時 隆 盛 を き わ め て い た ビス コー ス レー ヨ ンに
部 分 的 な 解重 合 を 起 こ して 粘 度 低 下 は迅 速 に進 行 す る。
類 似 して い た の で, “alginate rayon” とい う名 称 で,
Johnson,
Courtaulds
Speakman
ら は報 告 を 出 して い る。 こ の糸 は
社 で織 布 され,
alginate hessian
と呼ば れ
た。
pHの
効 果 と して は, pHが4∼10の
範 囲 で変 化 して
も 粘 度 は 若 干 変 化 す る に と どま る 。中 性 付 近 (pH6∼8)
で若 干 高 くな るの は, 負 に 帯 電 した カ ル ボ キ シ ル基 の反
発 効 果 で分 子鎖 が拡 が り, 保 水 容 量 が 増 大 す るか らで あ
こ の と き, 得 られ た織 物 につ い て は, (1)織 布 を湿 らせ
る。pH4.5以
下 に な る と, 水 素 結 合 と静 電 効 果 の た め 粘
た り, 乾燥 した場 合 に収 縮 が著 し く, 引 張 り, カ ー ル,
度 は上 が り, ゲル 化 はpH3∼3.5で
振 れ が 生 ず る, (2)吸 水性 が大 き く, そ の た め に び し ょび
pHが
し ょ した, 精 彩 の な い ス ク リー ム とな り, 運 搬 に も余 計
最 大 に な り, さ らに
下 が る と粘 度 低 下 をみ る。
ア ル ギ ン酸Naの
水 溶 液 はpH5∼10の
範 囲 で長 時 間
な 重 量 を運 ば な けれ ば な らず, (3)乾 引張 り強 度, 弾 性 率
室 温 で置 い て も安 定 で あ る。 しか し, こ の範 囲 を逸 脱 す
が 低 く, 湿 潤状 態 に な る と引 張 り強 度 が低 下 す る, (4)耐
る と劣 化 が大 き くな る。
候 性 が 低 く, もろ くな る な どの欠 点 が指 摘 され た, こ の
B.
欠 点 の うち, (2) と (3)
は ア ル ギ ン酸 の化 学 変 換, 不 純 物 の
水 溶 性 ア ル ギ ン酸 塩 の ドー プ は, 濾 過 機 は ビ ス コ ー ス
濾 過 と凝 固
除 去 で 回避 で き る が, (1) と (4)
はか な り本 質 的 な も の で は`
レー ヨ ン で は, 古 くか らフ ィル タ ー プ レス, シ ャ ー プ レ
な いか とみ な され た。 しか し, 熱 水 処 理, 部 分 ク ロム酸
ス式 遠 心 分 離 機 が使 用 され て きた 。 濾 材 は 多 くの場 合,
処 理 な どで あ る程 度 カバ ー で き る こ とがわ か っ た。
綿 ネ ル な どが 現 在 で も普 通 に用 い られ て い る。 最 近 で は
無 機 粉 末 の焼 結 成 型 技 術 が発 達 して い るの で, 筆 者 の研
2.
紡 糸 の プ ロセ ス
究 室 で はポ アサ イ ズ の 明確 な焼 結 成 型 品 を 濾 材 に使 用 し
A.
ドー プ の性 質
て い る。
紡 糸用 の 高分 子 の粘 度 の高 い高 分 子 溶 液 を一 般 に ドー
プ と呼 ぶ 。紡 糸 を行 な うに は ア ル ギ ン酸Naの
脱 泡 は紡 糸 時 の糸 切 れ の 防止 の た め で あ り, 通 常 は真
水溶液を
空 脱 泡 であ る。 ビ ス コー で は薄 い フ ィル ム 状 に 流 し, 高
(セ ンチ ポ イ ズ) であ
真 空 に して瞬 間 的 に脱 泡 す る瞬 間 脱 泡 機 が 多 く 用 い ら
る。重 合 度 の低 い ア ル ギ ン酸 塩 は ニ ュ ー トン粘 性 を 示 す
れ, 脱 泡 工 程 を短 縮 す る方 法 が と られ て い る。 ア ル ギ ン
用 い る。 粘度 は 数 百か ら 数 千cP
が, 紡 糸用 の ドー プ で は重 合 度 も高 く, 濃 度 も高 い の で,
酸Naの
ドー プの 場 合 に も, こ の 操 作 は 当 然 適 用 で き
1071
64
蛋 白 質
核 酸
酵 素
Vol. 31
No. 11
(1986)
る。
凝 固 の メ カ ニ ズ ム は, 前 述 の よ うに ア ル ギ ン酸 の ア ル
カ リ塩 と多 価 金 属 イ オ ンの イ オ ン交 換反 応 に よ る不 溶 性
の金 属 塩 形 成 に よ る ゲル 化 で あ る。
2価 イ オ ンの ア ル ギ ン酸 へ の 親 和 性 は, Mリ ッチかG
リ ッチか に よっ て 多 少 異 な る。Laminaria digitata
ら 得 られ たMリ
Sr>Ca>Co,
か
ッチ の も の^<20)>で
はPb>Cu>Cd>Ba>
Ni, Zn, Mn>Mg,
ま た, Gリ
ッチ のL.
hyperboreaの場 合 に は, Pb>Cu>Ba>Sr>Cd>Ca>
Co, Ni, Zn, Mn>Mgの
ま で に 必 要 な2価
順 位 で あ っ た 。 一 方,
イオ ン の濃 度 は, Mリ
ゲル 生 成
ッチ, Gリ ッチ
を 問わ ず一 致 して いて, BaくPb<Cu<Sr<Cd<Ca<Zn
<Ni<Co<Mn,
Fe<Mgの
順 序^<21)>で
あ っ た 。つ ま り,
金 属 イオ ンの ア ル ギ ン酸 に対 す る親 和 性 と金 属 イ オ ン の
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ゲ ル形 成 能 とは 異 な る の であ る。 また,
の 選択 係 数 はGリ
2価 金 属 イ オ ン
ッチ の アル ギ ン酸 のほ うがMリ
ッチ の
そ れ よ りも大 きい の であ る。
織 布 用 の 繊維 を 紡 糸 の場 合 には, 金 属 イ オ ン の凝 固 液
図6.
金 属 イ オン 含 有 量 とテ ナシ テ ィの 関 係^<22)>
中 に他 に い ろ い ろ の添 加 物 を 加 え て い る。 低 級 アル コー
ル を添 加す る と紡 糸 性 が よ く な る とい う。 また, 第1浴
ル ギ ン酸 繊 維 の 比 重 は 比 較 的 大 き く, Ca-Be繊
に酸 性 (た とえば, H_2SO_47.3%)
1.735, Ca-Crの そ れ で は1.780で
溶 液 を用 い, 第2浴 以
下 に 金 属 浴 を 用 い る な ど の方 法 もあ る。 さ ら に, CaCl_2,
Ca塩
HClの
あ るが, Cr, Be繊
水 溶 液 に 界 面 活 性 剤 で エ マル ジ ョン化 した オ リ
ー ブ油 を 添 加 す る方 法 も織 布 用 で は取 られ て い る^<22)>。
し
繊 維 は石鹸 (0.2%)
あ り, 不 燃 性 であ る。
やNaCO_3
維 は25ま
維 では
(0.2%)
た は40℃
に可溶で
で30分,
こ
れ ら の溶 液 で処 理 して も若 干弱 くな った だ け であ る。Ca
か し, これ ら はあ くま で織 布 用 の繊 維 の製 法 であ る。 織
繊 維 は弾 性 があ り, 通 常 の湿 度 で長 期 の保 存 が で き る と
布 用 の糸 の場 合 に は, 繊 維 表 面 は化 学 結 合 に使 用 され な
い うこ とであ る。
い こ とに留 意 す る必 要 が あ る。
以 上 は通 常 の湿 式 紡 糸法 で あ り, 得 られ る繊 維 は も っ
III.
ア ル ギ ン 酸 繊 維 の シ ー ト化
ぱ ら長 繊 維 であ る 。 これ を直 接短 繊 維 にす る 方法 が提 案
され た。 ち ょ う ど, か き 卵 子 を作 るの と同 じ よ うな方 法
1.
で, 2価 また は3価 の金 属 イ オ ン溶 液 中 に ア ル ギ ン酸 ア
ア ル ギ ン酸Ca繊
ル カ リ塩 の ドー プ を 勇 断 力 を 加 え な が ら混 合 す る方 法 で
あ る^<23)>。
平 織 リ (woven)
維 は, アル カ リ可 溶 性 を 活 用 して,
木 綿 あ る い は ア セ テ ー ト人 絹 に代 わ る繊 維 と して 考 え ら
れ た。そ の用 途^<12,25,26)>と
して は, (1)
織機が円滑にかか るよ
うに毛 羽 立 ち のあ る,あ る い は縒 りの ない 糸 に 巻 き上 げ
3.
ア ル ギ ン酸 繊維 の 特性
るた め の強 化 剤 と して, (2)
毛 の ク レー プ糸 の芯 と して, つ
上 述 の方 法 で 得 られ た 繊維 に 関 して, 吸 湿 性, 密 度,
ま り, ア ル ギン 酸 繊 維 の周 囲 に毛 で包 んだ ク レー プ糸 と
弾 性 率, 耐 アル カ リ性 お よび 耐 候 性 の評 価^<24)>が
な され て
真 直 な毛 の糸 とを混 織 し, ア ルギ ン酸 繊 維 を 溶 解 除 去 し
い る。 ア ル ギ ン酸 繊維 は か な り吸 湿 性 は 大 き く, Ca,
て ク レー プ を作 る の であ る。 また, (3) タテ 糸 お よび 充 填
Al, Cr, Be塩
物 中 に抜 糸 効 果 を 出す “spacing”剤 と して, (4)繊 細 な ウ
繊 維 いず れ も吸脱 着 はか な りの ヒス テ リ
シス がみ られ る 。Caお
よびBa繊
維 で は22.2℃,
65%
R. H. (相 対 湿 度) の吸 水容 量 お よび絶 対 強 度 は一 般 に金
ス テ ッ ドよ り, 織 布 後 溶 解 して, きわ め て 軽 量 な 織 物 を
作 るた め の “supporting thread” と して(本 法 を Chaux
属 含 有 量 と とも に増 大 して い る。 テ ナ シ テ ィは ア ル ギ ン
プ ロ セ ス とい う), そ の他, (5) 装 飾 用 糸 な どが研 究 され
酸100gあ
た。
た りCaで0.10,
に最 大 であ っ た (図6)。
1072
Baで0.06g原
子 の とき
金 属 含 有 量 が大 き いた め,
ア
海藻か らの紙-ア
2.
ル ギン酸繊維紙の製法 と応用
65
平 編 み (kitted)
軍 事 用 凝 装 の用 に 適 した ア ル ギ ン酸 ヘ シア ン は顔 料 で
着 色 した 連 続 糸 で 編 ん で 作 られ て い る^<13)>。
耐 候 性 を上 げ
る ため には, ク ロム 処 理 し, エ マ ル ジ ョン化 した 塩 素 化
パ ラ フ ィン ワ ッ クス に 懸 濁 させ た顔 料 を塗 工 す る の が よ
い とされ て い る。
3
不 織 布 (nonwoven)
ア ル ギ ン酸 繊 維 の 連 続 系 の トウ (tow)
を水 流 中 に拡
散 させ て, 多 量 の 水 で この 拡 散 した フ ィ ラメ ン トを濾 水
性 を も った 支 持 体 の 上 で 相互 に絡 み合 わ せ, そ の接 触 点
を加 熱 して 接 着 さ せ る とい う, 典型 的 な長 繊 維 湿 式 不 織
布 の方 式 が 最 近 提 案 され て い る^<27)>。
目的 は傷 創 用 衣 料 材
料 であ る。 ま た, 未乾 燥 の繊 維 を移 動 式 コ ンベ ア装 置 に
供 給 す る場 合 に, 繊 維 供 給 速 度 を コ ンベ ア の移 動 速 度 よ
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り速 く して 移 動 方 向 に繊 維 が 重 な り, 交 叉 で ウ ェー ブ形
成 が で き る よ うに して, つ い で 脱 水後,
ロー ラ ー を通 し
図7.
アルギン酸繊維紙の分子量 と耐折強 さとの関係
て繊 維 の延 伸, 破 断 を行 な い, で き るだ け繊 維 間 結 合 数
の少 な い不 織 布 を 作 る とい う提 案^<28)>も
あ る。 ま た, 工 程
ー
ト地 合 に は不 適 で, レー ヨ ンや 天 然 繊 維 の製 紙 の よ う
の詳 細 は不 明 で あ るが, それ を 医療 用 に使 用 す る とい う
に ス テ ー プ ル フ ァイバ ー状 に し, そ の 形 状 を 繊維 長/繊
報 告 が 発 表 され た^<29)>。
維 径, つ ま りア ス ペ ク ト比 を あ る範 囲 内 に あ る よ うにす
れば 自己接 着 を して, 充 分 強 度 の あ る紙 が 得 られ, しか
4.
紙 (paper)
もほ とん ど天 然 パ ル プ紙 と外 観 は 同 じ もの が 得 られ る こ
アル ギ ン酸 の不 溶 性 の短 繊 維 を水 溶 性 ア ル カ リ塩 水 に
入 れ, そ の 金 属 塩 を 部分 的 (15∼55%)
に ア ル カ リ金 属
で置 換 した の ち, 繊 維 を膨 潤 さ せ て これ らの繊 維 を フ ェ
とを 見 いだ した 。 た とえ ば, 耐 折 強 度 で み る と, 図7の
よ うに50回
の折 り曲げ に も耐 え る もの が 得 られ て い る
の であ る。 こ の形 成 法 に従 え ば, 繊 維 間 は 自己 接着 で あ
ル ト状 に 接 着 させ て紙 に し よ う とい う特 許 が 化 繊 紙 研 究
り, 繊 維 長, 繊 維 径, 繊 維 形 状, 重 合 度 な ど人工 的 に 自
時 代 の 初期 に Johnson
ら^<30)>に
よ って な され て い る。 ア
由 に調 製 で き る の で, 天 然 パ ル プ紙 の物 性研 究 の モ デ ル
ル ギ ン酸 ア ル カ リが水 溶 性 で あ り, 部 分 的 に水 溶 性 の部
とな る と提 唱 した 。 こ の方 法 で は, 長 繊 維 と して充 分 な
分 を 作 り, これ をバ イ ン ダ ー に して接 着 させ る とい うも
強 度 が な くて も, か な りの強 度 の あ る紙 が得 られ る こ と
ので あ る。 一 方, Rothmans
が 注 目 され る。
ras)社
International (旧 Carre
は, 水 不 溶 性 ア ル ギ ン 酸 塩 の繊 維 を 天 然 セ ル ロ
ー ス パ ル プ と同様 にビ ー タ ー で 叩解 して紙 料 を 作 り, 抄
紙 機 で シー トを形 成 させ,
pH7.0以
, バ イ ンダ ー な しで も シ ー ト形 成 が 認 め られ る こ とを
ア ル ギ ン 酸 繊 維 シ ー トの 機 能 と 用 途
1. 機 能 に つ い ての 考 え 方
アル ギ ン酸 繊 維 シ ー トの機 能 に関 す る考 え 方 は, 大 別
見 い だ して い る^<31)>。
筆 者 ら^<32)>は,
アル ギ ン酸 繊 維 は通 常 の天 然 パ ル プ の紙
料 調 製 法,
IV.
下 の水 で処 理 す れば
と くに叩 解 処 理 の よ うな機 械 処 理 は 良 好 な シ
図8.
ア ル ギン
す る と2つ に 分 類 す る こ とが で き る。 第1は,
繊維あ る
い は シー ト形 成 素 材 が ア ルギ ン酸 ま た はそ の不 溶 性 塩 で
酸 繊 維 紙 の 機 能 の 発 現
1073
66
蛋 白 質
核 酸
酵 素
Vol. 31
No.
11
(1986)
あ る こ とに基 づ くも の であ る。 こ の分 野 で の機 能 の発 現
は ア ル ギン 酸 の特 性 とそ れ が 繊 維 形 状, シ ー ト形 状 を な
して い る こ との特 徴 を活 か した も の であ る。 そ の発 現 過
程 を 山 田^<33)>の
被 服 の 性 能 に 及 ぼす 被 服 の 構 成 過 程 にお
け る諸 因 子 に基 づ い て きわ め て単 純 化 した形 態 で ま とめ
てみ る と, 図8の
よ うに な る。 この ス キ ー ム は, 今 後 の
研 究 開発 課 題 を 暗 示す る もの で あ る。
一 方 , ア ル ギ ン酸 の アル カ リ塩 が 水溶 性 で あ る こ とか
ら, 水 溶 性 の化 合 物, 水 懸 濁 の 微 粒 子 を 繊維 形成 時 に 包
括 で き る。 これ ら の共 存 物 の支 持 体 と して の繊 維
シー
図9. 止血
機 序
長尾 房大編 “消化器 内視鏡治療” (朝倉書 店) より引用
トとい う機 能 の発 現 方 法 が あ る。 これ は, 生 化 学 分 野 で ,
は, た とえば 酵 素, 微 生 物 の固 定 化 担 体 と して の機 能 な
る ので あ る^<40)>。
とく に, フ ィブ リン生 成過 程 で, ア ル ギ
どが 考 え られ る。
ン酸Naが
フ ィ ブ リンモ ノマ ーか らの重 合 を促 進 させ る
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と考 え られ て い る。 そ れ ばか りで な く, 赤 血 球 に対 して
2.
医療 分野 へ の 応 用
親 和 性 を もち, 赤血 球 の 凝 集 を はか り, 止血 血 栓 と して
A.
安 全性^<34)>
の赤 血 球 の役 割 を 高 め^<41)>,
ま た, 血 小 板 の一 次凝 集 の促
ア ル ギ ン酸,
1963年
同NH_4塩,
のFAO/WHO合
Ca塩,
は
進 を して い る^<42)>こ
とが 明 らか に され て い る。 これ らの作
同委 員 会 で 日常 の摂 取 は安 全
用 は, アル ギ ン酸 塩 の型 で は ほ とん ど差 異 は な い と考 え
と評 価 され て い る^<35)>。
慢 性 毒 性 も40匹
間, 5%ア
ル ギ ン酸Naを
K塩,
Na塩
の ラ ッ トで2年
含 む 餌 料 を 与 え て調 べ て い
られ て い る ので, ア ル ギ ン酸 繊維 の織 布, 不 織 布 で も同
様 の効 果 が 期 待 で き, 特 許 では 止 血 用 外 科 衣^<27,28,43)>,
絆
る が, 異 常 は認 め られ て い な い 。人 間 の 場 合 に は, 体 内
創 膏^<23)>,
生 理 ナ プキン/タン ポ ン^<23)>な
どの 用途が あげ ら
に 摂取 して もほ とん ど吸 収 さ れ な い 。
れ て い る。
B.
傷 創 被 覆 材 と して の 応 用
外 傷 用 衣 服 と して の Turner
が 提 示 して い る要 件 は,
維 の織 布 (ガ ー ゼ) は, 毛 細管 出血
(1) 過 剰 の浸 出液 と有 毒 成 分 を除 去 す る こ と, (2)傷 創 部 と
の カバ ー 材 に 使 用 して い る実 験 が あ る。 ネ コの 肝 臓 の 左
被 服部 との界 面 を高 湿 度 に保 持 す る こ と, (3)ガ ス交 換 が
葉 を 切 除 し, そ の 出血 部 を この ガ ーゼ で 被 覆 した 。6週
で き るこ と, (4)熱 的 不 導 体 とな っ て い る こ と, (5)微 生 物
間 ネ コは 生 存 して いた が, そ の間 に ガ ーゼ は 食 細胞 に よ
の 浸 入 を 防 止 して い る こ と, (6)粒 状 異 物 や 有 毒 な傷 創 汚
り消 化 され て 消 失 して しま った^<36)>と
い う。 また,
ア ル ギ ン酸Ca繊
アル ギ
染物 を 含 ま な い こ と, (7)衣 料 交 換 の際 に外 傷 を起 こ さず
間 以 内 で, 組 織 との反 応 は, 発
に 除 去 で き る こ とな どで あ るが, ア ル ギ ン酸 繊 維 の不 織
泡 フ ィブ リン, 酸 化 セ ル ロー ス, ス ポ ン ジ状 ゼ ラチン な
布 は これ に 適合 して い る と して い る^<29)>。
これ らの こ とか
ン酸Caの
消 失 は12週
ど と同様 であ った とい う。 初 期 は 白血 球 多 過 反 応 が 起 こ
ら考 え て, ア ル ギ ン酸 繊維 紙 につ い て もほ ぼ 同様 な こ と
るが, そ の後 は線 維 形 成 は 巨細 胞 反 応 も起 こ らず 通 常 顕
が 適 用 で き るで あ ろ う。
著 で あ っ た。 術 後2∼3カ
月後 に摘 出 され た組 織 か らみ
被 覆 材 と して の アル ギ ン酸 繊維 の織 布, 不 織 布 お よび
る と, 挿 入 した ア ル ギ ン 酸 塩 は 根 跡 も 残 っ て い なか っ
紙 に 対 して, も うひ とつ 興 味深 い の は そ の 薬用 作用 で あ
た^<37)>。
さ らに, 家 ウサ ギ 背部 に作 っ た皮 膚 欠 損 創 に対 す
る。 た とえ ば, ア ル ギ ン酸Naに
る 治 療 剤 と して ア ル ギ ン酸Naの5∼10%の
と くに Sarcoma-180
布 した とき, 5%前
軟 骨 を塗
後 は 創復 活 治療 剤 と して優 れ た作 用
が あ る こ とが 認 め られ た とい う報 告 もあ る^<34)>。
ア ル ギ ン酸Naは
現 在, 逆 流性 食 道 炎, 消 化 性 潰 瘍 の
つ い て は マ ウス腫 瘍
お よび Ehrlich 腹 水腫 瘍 な どに対
す る抗 腫 瘍 効 果 が 認 め られ た^<44)>こ
とがあ げ られ る。 これ
は 同化 合 物 が イ ン タ ー フ ェ ロン の誘 起 能 とマ ク ロ フ ァー
ジ の活 性 化 能 を もつ か ら であ り, ポ リア ニ オ ン, と くに
治 療 剤 であ るが, 後 者 の場 合, そ の作 用 機 序 は ゲル形 成
そ の ピ ラン共 重 合 体 が 制 癌 作 用 を示 して い る こ とか ら,
に よ る消 化 管 粘 膜 保 護 作 用^<38)>の
ほ か, 図9の
ア ル ギ ン酸 塩 の型 に は よ らな い も の と考 え られ る。
よ うに血 液
拡 散 に対 す る抑 制 作 用^<39)>,
フ ィ ブ リ ノー ゲン と steric
exclusion
と推 定 され る相 互 作用 を 持 ち,
フ ィブ リノ ー
ゲン か ら トロン ビン に よ る フ ィブ リン形 成 を促 成 してい
1074
C.
ア ル ギ ン酸 塩 の 体 内 停溜 ・排 泄 挙 動^<45)>
ア ル ギ ン酸Naは,
デ キ ス トラ ン が血 漿 増 量 剤 と して
使 用 され た こ とに ヒン トを 得 て, 同様 の用 途 に用 い られ
海藻か らの紙-ア
る よ うに な っ た。 点 滴 静 注 され た ア ル ギ ン酸Naの
半 減 期 は2時 間15分
ル ギン酸繊維紙 の製法 と応用
血中
表2.
67
アル ギン 酸 繊 維 お よび そ の 紙 へ の 酵 素 の 固 定
で比 較 的 短 く, 平 均1時 間 の点 滴
終 了 時 に は, 投 与 量 の19.8%,
24時 間 後 に は70.4%
が 尿 中 へ排 泄 され て い る。 比 較 的 持 続 時 間 が 短 い のは,
平均 分 子 量 が20,000と
い う
比 較 的 小 さ い た め であ る と 考 え られ て い る。24時
使 用 した ア ル ギ ン酸Naの
間以
後 は とい う と, 10日
目 で80.8%,
30日 目で82.8%と
尿 中排 泄 は きわ め て少 な くな って い る。 こ の間 の臓 器 内
の 同化 合 物 の貯 溜 は脾 臓 に 高 く, つ い で腎 肝 臓 で あ る こ
繊 維 中 に包 括す る方法, (2) 繊維 表面 に 共 有 結 合, 物 理 的
とが 液 体 シ ン チ レー シ ョン 計 測 に よ って 確 認 され て い
結 合 (吸着, 電 気 的) お よび 架 橋 的 な 方 法 で 結 合 させ る
る。 こ の よ うに輸 液 的 な 形 で 多 量 に 用 い られ て も大部 分
方 法 が 考 え られ る が, 紙 とい う シー ト形 態 を と る場 合 に
は体 外 に排 泄 され る こ とを 考 え る と, 消 失 性 の 被覆 材 と
は, 繊 維 表 面 に あ っ て シー ト形 成 に 関 与す る有 効 原 子 団
して使 用 され, 体 内 で 消 失 して も大 部 分 は 短 時 間 で排 泄
が低 減 す る と とも に, そ の形 成 を 阻 害す る酵 素 が 導 入す
され る と考 え て も よい で あ ろ う。
る の で, 強 度 的 に 良 質 の もの を 得 る こ とは難 しく な る。
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一方
3.
食品分野への応用
, 繊 維 状 に 包括 す る研 究 は比 較 的 少 な く, もっぱ
ア ルギ ンは, (1) ノ ンカ ロ リー で あ る こ と, (2)常温 で ゲ
らイ タ リア の グル ー プ, Dinelli, Morisi, Marconi
らの
一 派 がや っ て い る にす ぎ な い^<49)>
。 使 用 して い るポ リマ ー
ル を形 成 す る こ と, (3)生 成 した ゲル が 耐 熱 性 で あ り, (4)
は も っ ぱ らセ ル ロー ス トリア セ テ ー トで, 溶 媒 は 塩 化 メ
大 き な保 存 性 を有 す る こ とか ら, ダ イエ ッ ト食 品 と して
チ レン であ る。 濃 度 は7%程
注 目され て い る^<34)>。
ア ル ギン 酸 繊 維 は ダイ エ ッ ト繊 維 す
添 加 し, 懸 濁 状 態 で紡 糸 す る方 法 で あ る。反 応 は 冷 却 状
なわ ち繊 維 食 と して使 用 す る こ とは可 能 で あ る。
態 (1℃) で 行 な い, 凝 固 もそ の温 度 を 維 持す る。凝 固液
度 で, そ こ に酵 素 水 溶 液 を
さ らに, アル ギン 酸 フ ィル ム は 食 品 被覆 材 と して使 用
は トル エ ン であ る。 これ 以 外 の酵 素 を失 活 さ せ な い ポ リ
され てい る^<46)>。
これ に よ っ て保 存 性, 加工 性, 水分 損 失
マ ー と して は, 他 の セ ル ロー ス系 誘 導 体 (ジ ア セ テ ー
率 の減 少, 包 装 費 の節 約 な どに 役 立 た せ て い る の で あ
ト, エ チ ル 化,
ナ イ トレー ト) お よび ポ リ α-ア ミノ酸
る。 これ らの こ とか ら, ア ル ギ ン酸 繊 維 紙 は可 食性 の紙
が あ げ られ て い る。 しか し, こ の な か で は, (1)低 コス
と して食 品 分 野 の 包装 材 料 と して使 用 で き る可 能性 を持
ト, (2)微 生 物 の攻 撃 に対 す る耐 久 性, (3) 弱酸 の希 薄 液 を
っ て い る。
は じめ 通 常 の有 機 溶 媒 に耐 性 が あ り, (4)酵 素 を 包 括 して
も比 較 的 機 械 的 強 度 が それ ほ ど低 下 しな い こ と (約65%
4.
繊 維 状 お よび シ ー ト状 支 持 体 と して の応 用
上 述 の よ うに ア ル ギ ン酸Naか
ら紙 ま で の工 程 を み る
と, 全 工程 は 水系 で操 作 され て い る。 した が っ て, 抄 紙
保 持) こ とな どか ら, セ ル ロ ー ス トリア セ テ ー トが最 適
と され てい る。 しか し, セ ル ロー ス トリア セ テ ー トは疎
水 性 で あ り, 水 の吸 収 性 が 低 い と い う欠 点 が あ る。
工 程 の乾 燥 を温 度 制 御 した や り方 で行 なえ ば, 紡 糸 お よ
これ に 対 して, アル ギン 酸 繊 維 に 包 括 した場 合 は, そ
び 抄紙 ま です べ て低 温 で処 理 で き る の であ る。 この こ と
の製 造 の全 工 程 が 水 系 で行 な うこ とが で き, か つ, 酵 素
は一 般 的 に水 系 で安 定 な性 質 を 持 っ て い る酵 素, 微 生 物
を egg-box
の繊 維 状 お よび シ ー ト状 の 固 定 化 担 体 と して 応 用 で き る
配 向 を 伴 っ た 束 縛す る こ とが で き る し, また, ポ リマ ー
こ とを意 味 す る。 アル ギ ン酸Naの
水 溶 液 と生 体 触 媒 を
自身 が親 水性 で あ る とい う特 徴 が あ る。 しか も, 水 酸 基
混 合 し, CaCl_2の よ うな ゲル 化 剤 の 水 溶 液 中 に 滴 下 し
は ま っ た く使 用 さ れ て い な い の で, 自己 接 着 で シ ー ト化
構 造 とい うキ レー ト結 合 性 の格 子 内 に分 子
て, ビー ズ状 に固 定 化す る こ とは よ く知 られ て い る^<47)>。 が で き る とい うの は 前 述 の とお りで あ る。 セ ル ロー ス ト
この原 理 を 上 述 の方 法 に 応用 す れば, 繊 維 状 や シー ト状
リア セ テ ー ト で は,
に 固定 化 で き るの で あ る。表2は,
で, バ イ ン ダー で 接 着 させ るが, 織 物 ・編 み な ど の シ ー
筆 者 らの 実 験結 果 で
あ るが, 格 子 と して の “egg box” 構 造 が繊 維軸 方 向 に
配 列 す るた め に, ビー ズ 状 よ りも酵 素 の固 定 化 率 は 飛躍
的 に大 き い^<48)>。
繊 維 状 に 酵 素 を 固 定 化 す る方 法 に は, 上 述 の よ うに (1)
官 能 基 が す べ て 使 用 され て い る の
ト化 法 を と らざ るを 得 な い 。
と ころ で, 繊 維 状 ま た は シー ト状 に 固 定 化 した酵 素 の
応用 分 野 は, ビー ズ を 中 心 と した 通 常 の固 定 化 酵 素 以 外
に, まず 分 析 化 学 の分 野 とバ イオ メ デ ィカ ル の分 野 が考
1075
68
蛋 白 質
核 酸
酵 素
え られ て い る^<49)>。
セ ル ロー ス ト リア セ テ ー トの場 合, 前
Vol. 31
3)
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11
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ス+ペ ル オ キ シ ダ ーゼ, ウ レア ーゼ, ア ス パ ラ ギ ナ ー
燃 料 油 生 産 に 関す る調 査
び1983)
ゼ, ペ ニ シ リンア シ ラ ーゼ の繊 維 が 再 現 性, 精 度, 安 定
4)
性 よ く作 用 した と して い る し^<50)>,
後 者 では 繊 維 状 に 包 括
ア スパ ラ ギ ン濃 度 を低 減 した り, また, ウ レア ーゼ 固 定
5)
6)
に使 用 され て い る。 ア ル ギ ン酸 繊 維 ま た はそ の紙 に包 括
され た酵 素系 も この分 野 で は いず れ も使 用 で き る と考 え
Chen,
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よ う。
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9)
お わ りに
陸 上 植物 の生 体 骨格 を なす セ ル ロー ス が紙
とな る よ うに, 褐 藻 類 の 細 胞 壁 お よび 細胞 間層 を充 填 し
10)
て い るア ル ギ ン酸 か ら, ち ょ うど ビス コー ス レー ヨン紙
が で き るの と同 じ よ うな 方 法 で, 外 見 で は 天然 パ ル プ紙
11)
と区 別 ので きな い アル ギ ン酸 繊 維 紙 が で き る こ とを 明 ら
か に した 。 技 術 史 を 調 べ てみ る と, 織 物 よ りは 常 に 遅 れ
12•z
て 紙 が 登 場 して い る。 同 じ原 料 繊 維 で も 「織 り」 と 「抄
き」 は同 時 性 は な く, 植 物 繊 維 で は, そ の時 間 距 離 は 千
Lin,
T. -Y.,
241,
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21)
1)
E. E.:
16) ŠÃ—˜••Ži•E’†‘º–’•v : “ú‰»,
本稿を執筆にあた り文献調査に ご協力い た だ い た天 野製薬
(株)大野隆一, 横井信正お よび三島敏の諸氏に深謝致 します。
献
Mackie,
15) •‚‹´••—Y : ŠC‘”•H‹Æ, pp. 354-370, ŽY‹Æ•}•‘, “Œ
を期 待 した い 。
文
A.,
Biopolymers,
I. A.,
Smolko,
-Polysaccharides
また, アルギン酸の生理活性の多数の文献を ご送付いた だいた
堺化学工業(株)山地学氏に感謝申 し上げます。
I.
E. E.:
Nieduszynski,
Am.
W.
sern,9,
さ らに 高付 加価 値 分 野 に 拡 大 され よ うと して い る^<52)>。
こ
化 法 へ の 改 良 な どで, 広 く生 化 学分 野 で 活用 され る こ と
Smolko,
D.,
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Bashford,
‹ž
れ らの素 材 が 今後, 耐 水 性 の 付 与, 漏 出 の な い酵 素 固定
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14•z
教 え て くれ る。 セ ル ロー スか ら天 然 パ ル プ に はな い 機 能
膜 的 で あ る こ とな どの機 能 で 広 く活 用 され, また, 今 後
Biol.
Nieduszynski,
D.,
K.
Holden,
年 で あ っ た。 紙 史 は, 「
織 り」に 代 わ って 「抄 き」が 発 明
う と して い る。 紙 は 多孔 性, 比 表面 積 が大 き い こ と, 薄
T.,
K.
Woodward,
を も った ア ル ギ ン酸 繊 維 が紙 の新 素 材 と して見 直 され よ
J.
(1948)
年 以 上 であ っ た^<51)>。
アル ギ ン酸 繊 維 で は, そ の差 は約50
され る と, 「織 り」 以 上 に そ の普 及 が はや か った こ とを
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