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わがまちの防災は われわれで
わがまちの防災は われわれで ∼地域防災力の向上のために∼ 平成17年3月 地域防災組織活性化検討会 はじめに 平成16年は新潟・福井豪雨に続き、観測史上最多の上陸回数を記録した台風 により兵庫県など全国各地で水害が多発し、さらには最大震度7を記録した新潟 県中越地震、国外では未曾有の被害を出したスマトラ島沖地震と、自然の驚異に 人々が翻弄されました。 今年は、平成7年の阪神・淡路大震災から10年、平成12年の鳥取県西部地 震から5年という節目の年にあたります。 災害そのものを防ぐことは難しくても、事前に対策をとることにより被害を少 なくすることは可能です。県や市町村などが施策として行う「公助」を充実させ るとともに、県民自らが災害から身を守る「自助」、地域社会でお互いを助け合う 「共助」が重要です。共助のかなめとなるのが自主防災組織ですが、現在、県内 には自主防災組織がない地域もあれば、組織があっても活動が活発ではない組織 であったりと、決して十分であるとは言えません。 この冊子は自主防災組織による地域防災力の向上をめざすため、自主防災組織 ・消防団・ボランティア・消防局・企業・行政など現場で活躍する者が参加して 四回にわたって地域防災組織活性化検討会で検討してきた現状の課題や対応策を とりまとめたものです。また、地域の防災力を向上させるための様々な活動事例 も紹介しています。 わがまちの防災はわれわれがするという、あなたの地域の防災活動が高まる きっかけとなれば幸いです。 目 次 1 防災に関心をもとう(防災を意識しよう) ……………………………1 2 組織づくりをして活発に取り組もう ……………………………………4 3 防災教育で子どもたち、家庭、地域を守ろう ………………………14 4 お年寄りなどを地域で支える仕組みづくり …………………………17 5 互いに手を携えて ………………………………………………………20 (参考資料) 自助・共助の取組みを支援する平成17年度の県予算の概要……………23 (表紙写真)鳥取市立川町一丁目自主防災会の活動(児童への防災教育) 1 防災に関心をもとう(防災を意識しよう) 災害による被害を最小限に食い止めるためには、住民一人ひとりが防災の知識 や技術を身につけ「自分の身は自分で守る」「自分たちの地域は自分たちで守る」 という自覚を持ち、自発的に防災活動を行うことが重要です。 課題 ○住民の危機意識が低い。 危機意識を持つのが難しいワケ ○「防災」とは特別なことという 住民の意識があり、日常生活の 社会心理学で「正常化の偏見」ということばがあり 一部としてとらえていない。 ます。 ○鳥取県西部地震が防災意識につ ながらず風化しつつある。 私たち人間の心はとても繊細で、災害が実際に自 分の身にふりかかると思ってしまうと大変なストレ ○住民の行政への依存心が高い。 スがかかります。これを軽減するために「自分のと ○いざというときには一人ひとり ころには地震はこない」「なにがあっても自分や家 が支援を求める側にまわりやす 族は大丈夫」と無意識に思い込むことで自分の心を く、自分ができることを少しで 守るのだそうです。 もやろうという意識をもちにくい。 ○手軽に防災の知識、危機意識を学ぶ場所がない。 自分がやらなくても…と思っていませんか? 災害はいつ襲ってくるかわかりません。災害時には関係機関へ通報が殺到し、関係機関も総力 をあげてそれに応え、防災活動に取り組みます。しかし、特に同時多発的に発生する大規模な災 害時には電話がつながらなくなり、道路や橋は損壊し、電気・ガス・水道などは寸断され、消防 署をはじめとする防災関係機関などの活動に支障をきたすことが考えられます。また、広域的な 応援体制の確立にはさらに時間がかかる場合も考えられます。初期には近隣などのそこに居合わ せた人たちの救助によって人命が救われることもあります。 そこで、地域住民一人ひとりが「自分の身は自分で守る」「自分たちの地域は自分たちで守る」 という自助・共助の精神で、日ごろの備えや、いざというときの心構えが大切です。さらに、地 域で災害がおきた時の救助や避難について手立てを考えるなどの自主的な取組みが欠かせません。 -1- 対応策 【自主防災組織の取組みに向けて】 ○住民へ自主防災会の活動を積極的に紹介し、参加を促してはどうか。 ○地域で自主防災組織を立ち上げ、自主防災活動をすることを通じて住民の防災意 識が向上してくるのではないか。 ○清掃活動や運動会など、地域住民が集まる時に防災活動も組み入れてはどうか。 ○研修会の開催において平日に時間の余裕のある者や休日しか余裕のない者への考 慮をした方がよいのではないか。 ○老人クラブや親子会など既存組織の活動に防災に関係した事業をとりいれてはど うか。 ○テレビなどを使って啓発してはどうか。子どもが見て、家族を守る父親に期待を かけることで、若い父親の訓練への参加がすすむのではないか。 ○鳥取県西部地震を体験された方、阪神・淡路大震災で支援活動をされた方など、 災害経験のある方を招いて講演を行うことで危機意識の向上を図ってはどうか。 ○防災訓練に消防ヘリや起震車などの目玉になるものを取り入れると参加者が増え るのではないか。 ○福祉ボランティアなどと連携して、日常生活に近い感覚で自主防災活動をすすめ てはどうか。 <<「鳥取県西部地震を再体験してみよう」∼米子市上後藤2区防災会∼>> 起震車を活用した防災訓練の例 平成12年の鳥取県西部地震により、上後藤 地区は家屋全壊3戸、半壊10戸の被害を受け ました。このような経験をされても、時間の経 過とともに住民たちの危機感が薄れてしまう可 能性があります。 上後藤2区防災会では 「鳥取県西部地震を再体験してみよう」と スローガンを掲げ、地震体験車を使った鳥取県 西部地震のような強震度体験を行うことで、文字通り住民の危機意識が揺さぶられました。 -2- 【市町村の取組みへの提言】 ○防災に関連する事業を住民に積極的にPRしてはどうか。 ○災害リーフレットを作成し、住民(全戸)に配布してはどうか。 ○市町村単位で発行している電話帳や各地域のゴミ収集カレンダーにも掲載して、 住民の目に触れる機会を増やすようにしたらどうか。 ○市町村が発行する広報誌へ防災に関する記事を継続的に掲載してはどうか。 ○幅広い年齢層の住民に啓発するよう、ビデオなどの視聴覚教材を活用してはどう か。 ○毎月、防災器具点検の日などを設け、防災行政無線などで住民に呼びかけ、家庭 内での防災活動を促してはどうか。 ○訓練の参加率をあげるため、幼児や老人の救助など生活に密着した訓練内容にす るとよいのではないか。 ○建物の耐震診断や土地利用の変遷調査を行い、正しい情報を住民へ提供してはど うか。 ○防災センターのような防災情報の発信場所を設けてはどうか。 【県の取組みへの提言】 ○地震や風水害などに関する研修会を開催してはどうか。 ○電話帳レッドページの充実をはかってはどうか。 ○市町村と協力し、鳥取県西部地震の時の対応を検証し、災害対策を共有してはど うか。 ○防災センターや災害資料館を設置してはどうか。 -3- 2 組織づくりをして活発に取り組もう 地域の皆さんが防災活動を効果的かつ組織的に行うためには、災害に対する正 しい知識や防災活動の技術を習得した実践的なリーダーの存在が欠かせません。 「自主防災組織」ってなに? 地域の人たちが「自らの地域は自らで守る」という精神をもって、自治会、町内会などの地域 活動の組織や自警団、自衛消防団などで自主的に防災活動を行う組織です。 普段は、防災に関する知識を広めたり、危険な箇所の確認、避難や救護などの防災活動の技術 の習得や、火を使う器具の点検などの活動を行います。災害がおきたときには、初期消火や情報 の収集・伝達、負傷者などの救出・救護や住民の避難誘導などの活動を行います。 災害がおきたときには、「自助」と地域の「共助」との連携プレーが大きな効果を発揮します。 課題 ○自主防災組織がない、また、自主防災組織があっても活動していない地域がある。 ○防災訓練が形骸化している。 ○都市化に伴い地域コミュニティが衰退し、自主防災活動の基本となる地域活動が 活発ではない。 ○自治会の業務が多岐にわたり平素の運営で手一杯で、防災活動をする余裕がない。 ○過疎化、高齢化や個人主義化により、リーダーや役員のなり手がいない。 ○自主防災組織リーダーを自治会長が兼ねているところでは、会長の任期が中長期 であればいいが、2年などの短期で交替してしまう場合は、在任中に得た防災の 知識や経験が次代に継承されにくい。 ○自主防災組織のリーダーによって防災活動への熱意にばらつきがある。 ○リーダーの資格としてわかりやすく、また、リーダーの意識づくりにつながるも のとして「防災士」資格は有効であるが、資格取得には経費と時間がかかる。 ○リーダー研修会などの防災研修の場が少ない。 ○自主防災組織が活動内容や組織運営について相互に相談できるような場がない。 ○たいていの組織構成員は地域外で働いているため、平日昼間の災害に対応できな い。 -4- ○元気なお年寄りが地域の防災活動に参加してもらう機会が少ない。 ○自治会のなかで、連絡網が整備されていない。 ○自主防災組織には資金が乏しく、災害時の活動に必要な資機材の確保ができな い。 対応策 【自主防災組織の取組みに向けて】 ○住民同士の連携をはかり、人間関係づくりを行うとともに自主防災組織の存在を 浸透させるとよいのではないか。 ○資機材の整備状況や訓練・研修の実施状況などの記録を行うことにより、それぞ れの自主防災組織における課題を明確にしてはどうか。 ○月ごと、季節ごとなど年間を通して計画的に、避難・救助訓練や消火訓練、資機 材の点検などを行うようにしたらいいのではないか。 ○自主防災活動を行う自治会の中で、権限を分散し、中長期的に防災に取り組める 役職を設けてはどうか。 ○地域内の看護士や消防士OBを把握し、自主防災活動への協力を依頼してはどう か。 ○地震や火災、水害などさまざまな状況に対応できる避難経路の確認を行おう。 ○「わが町再発見」などと題した体験活動を実施し、地域の防災マップを作っては どうか。 ○自主防災組織の設立や自主防災活動を活発化するためにみんなで手軽にできる図 上訓練を取り入れてはどうか。 ○非常時に誰が誰の安否確認をするか、話し合っておこう。 ○避難所への宿泊避難訓練(避難生活や避難所の運営)などの実践的な訓練を行っ てはどうか。 ○軽トラックをもっている、料理が得意、火をおこせる、大工仕事が得意など、自 分がもっている物や技術で非常時に活用できるものを互いに確認しておこう。 ○資機材整備については、行政に頼るばかりでなく、竹ざおとTシャツ、シーツを 使った簡易担架など、身の周りにあるものを活用した備えや訓練をするなどの工 夫をしてはどうか。 ○災害がおきたときに緊急連絡ができるよう、連絡様式を作成し、責任者が持つよ うにしてはどうか。 -5- 自主防災組織の効果と組織率 平成15年7月の水俣豪雨災害では、自主防災組織のある3つの地区(740世帯。組織率 7%)では、災害の予防活動をはじめ、避難勧告などに対して避難者数に有為な変化がみられる など有効に機能し死亡者ゼロでした。 この災害を契機に各地域で自主防災組織を設立する機運が高まり、自主防災組織に加入する世 帯は2,591世帯23.4%(16年9月現在)になっています。 平成7年の阪神・淡路大震災では倒壊家屋で生き埋めになった人の77%が近隣住民により助 け出されています。20%しかなかった自主防災組織の組織率は現在では100%になっています。 知識や訓練を積んだ住民が必要なワケ どうしてよいかわからないとき、周囲の人と同じ行動をとることが安全と思い込む「多数派 同調バイアス」という心理状態が災害時によく見られるそうです。 災害に立ち向かう正しい知識や訓練の経験を持っている人が、地域の皆さんに声をかけあっ て正しい行動をとれるようにしましょう。 <<「住民みんなが顔見知り」∼米子市緑ヶ丘グリーンハイツ防災会∼>> 地域コミュニティを活発にした活動例 この地区は郊外型新興住宅地ですが、団地内の暴走行為や窃盗など、悪質な行為が目だったこ とから、住民の安全を確保するため「防犯・環境委員会」を設置されました。 毎週2回の団地内の夜回りや年4回の清掃活動、ふれあい祭りなどを通して住民のコミュニケ ーションが活発になるよう取り組んでおられ、住民の結束も固く、防災訓練などの行事へも多く の方が参加しておられます。 独居者や高齢者、障害者のお宅を訪問して声をかけたり、名簿を作成して災害時に備えるなど の取組みもしておられます。 -6- <<「訓練は、より現実的に」∼日野町黒坂地区自主防災委員会∼>> 災害時に役立つ防災訓練の例 平成12年の鳥取県西部地震のとき、黒坂地区は 幹線道路の寸断で一時孤立状態となり、役場との交 信が途絶えました。これを教訓に黒坂地区連合区は、 平成14年に「自主防災委員会」を設立し、鳥取西 部地震の轍を踏むまいと熱心に訓練を行っています。 ・通信手段が絶たれた時を想定した伝令(自転車や 走者)による災害状況報告訓練 ・けが人の状況や避難人数、避難終了時刻など詳細な 報告内容が書き込める様式を使用した情報伝達訓練 ・日赤日野支部と連携し、一度に100食以上の炊飯ができる炊飯装置を使用した炊き出し訓練 など、いずれも災害時に実際におこりうる想定とされています。 いざ非常時に直面すると思ったような行動がとれないものなので、このような実践的な訓練を 積んでおくことで、万一の災害時に適切な対応ができるよう努められています。 <<地域でする簡易型図上訓練(DIG)∼日野町黒坂地区自主防災委員会∼>> 日野町黒坂地区自主防災委員会では、県と日野町 の支援を受けて平成15年12月に30人の参加を 得て日野町公民館で DIG を行われました。 地図に道路や河川、消防署、警察署などの記入や 色塗りからはじまり、指定避難所や黒坂地区独自に 設けている仮避難所、消火栓、さらには一人暮らし の高齢者などの災害時要援護者を確認した上で、実 際に災害が発生した時にどう対応するのか具体的に 話し合われました。 参加者からは「自分の手で作業するので、災害対応を実施しているようだ。」「区域により消火 栓数に差があることが分かった。」など DIG が非常に有意義だったとの意見がありました。 -7- <<「留守はまかせろ!」∼江府町池の内自主防災組織「老人クラブ常盤会」∼>> お年寄りの力と既存組織を活用した防災活動の例 池の内集落の昼間人口は78人。その全員が65 歳以上であるため、昼間に集落外の会社などに働き に出る若者から「昼間のアクシデントが心配」とい う声が多数寄せられました。これに発奮した老人ク ラブ池の内常盤会では、平成16年1月に常盤会を 中心とした自主防災組織を結成し、熱心に防災訓練 を繰り返しておられます。若者からは「安心して留 守をまかせられる」と頼りにされ、老人クラブへの 加入率も100%となっています。 <<「即戦力となるアマチュア集団」の育成強化∼鳥取市若葉台南6丁目自主防災会∼>> 実践的な自主防災組織リーダーによる防災活動の例 コミュニティが育ちにくいと言われている新興住宅 地ですが、防災会長の強いリーダーシップにより、住 民に防災意識や協働精神が根付いています。平成6年 9月には「婦人消防隊」平成9年1月には「シルバー 消防隊」を結成され、平日昼間の災害に備えています。 また、夜間や休日の災害には成年男性による消防組織 「レスキュー隊」が対応します。 この地区は無火災15年目を迎え、 「最後の砦は我々である」との自覚の もと、ますます積極的に防災活動を行 っておられます。 -8- <<「住民主体の避難所設営」∼境港市米川町防災会∼>> 地域住民の固い絆による防災活動の例 米川町防災会は、阪神淡路大震災で生き 埋めになった人の約7割が近隣住民に助け 出されたということを知った会長夫妻の呼 びかけにより、平成9年に結成されました。 平成12年鳥取県西部地震の際は発災後 すぐさま自転車で町内を走り回り町民の安 否確認を行ったり、詳細な被害状況を調査 したりと、日ごろから訓練されていた防災会のメンバーが大活躍されました。 また、地域の中心部付近にある敷地で炊き出しのおにぎりを配り、テントを設営してお年寄り を保護するなど迅速で的確な対応をされました。 地域のハザードマップを作ったり、消防署員を招き、てんぷら油火災対処法講習・救命講習を 開催するなど、日常生活に潜む危険を意識した活動を活発に行っておられます。 【市町村の取組みへの提言】 ○自主防災組織が未結成の地域に、組織の結成促進を図ってはどうか。 ○昼を預かる元気な高齢者を構成員とする自主防災組織についても結成を働きかけ てはどうか。 ○平日・休日や昼夜別の地域における動員力を調査し、対応策を検討してはどうか。 ○平日・昼間に地域におられる主婦や自営業者などを中心とした防災訓練を行って はどうか。 ○地域におけるNPOやボランティアなどとも連携して住民活動を活性化させては どうか。 ○市町村職員は、自主防災組織の訓練に参加するとともに、地域の実情に合った指 導をすべきではないか。 ○市町村は自主防災組織の活動に必要な資機材の確保対策を講じるべきではないか。 ○自主防災組織などへの資機材整備の助成制度を活用するよう働きかけてはどうか。 -9- <<「自主防災組織での活動中の死傷を補償します」∼倉吉市役所∼>> 倉吉市では、自主防災組織に対する住民の認識率を高めるため「倉吉市自主防災組織育成要綱」 を作成し、自主防災組織の育成支援を行っています。また、自主防災組織の活動環境を整備する ため、自主防災活動時の事故に対する補償についても取組みを進めています。 <<「自主防災組織の活動を促します」∼境港市役所∼>> 平成14年度までは自主防災組織が存在している自治会に一定額の助成を行っていましたが、 平成15年度からは「年一回以上の訓練を行っていること」を条件に加え、より内容の充実を図 った助成制度としています。また、資機材不足を解消するよう、新規に自主防災組織を結成した 際に災害救助道具セットを貸与する制度も設けています。 【県の取組みへの提言】 ○地域の自主防災組織リーダーに対する防災リーダー養成研修を行ってはどうか。 ○地域防災力の向上に役立つ簡易型図上訓練(DIG)を普及させてはどうか。 ○自主防災活動や災害ボランティアなどの活動に関する優良事例を広く紹介すると よいのではないか。 ○防災士などの資格取得にかかる経費に対して支援制度を導入してはどうか。 - 10 - みんなで手軽にできる簡易型図上訓練 県では、地域防災力の向上を目的に「自ら災害を知り、地域を知り、人を知ろう」をスローガ ンに掲げ、自主防災組織の整備促進や自主防災活動の活性化を図るため、住民主体の簡易型図上 訓練(DIG)の普及・支援を行っています。 DIGとは参加者が地図を囲みながらゲーム感覚で、イメージを膨らませ、積極的に災害時の 対応策を考える簡易型の図上訓練で、地震などの災害が発生した場合に、地域にどのような被害 が発生し、どのような対応をとればよいのかなどを考えていただく機会を提供するものです。 日ごろ気づかなかった安全なまちづくりの課題や目標が明らかになります。 <主な特徴> ・地図との対話によって地域をより深く理解できます。 ・地図への書き込みを通して災害について考えることができます。 ・全員参加でコミュニケーションすることにより防災の意識が高まります。 - 11 - 3 防災教育で子どもたち、家庭、地域を守ろう 災害に対する正しい知識と災害発生時の適切な行動を理解することは、子ども たち自身のみならず家庭や地域社会を守ることにつながります。 課題 ○「自分自身が災害から逃げる訓練」に重点を置いている。 ○地震や火災訓練などの内容がマンネリに陥っている。 ○災害から身を守る訓練のみではなく、災害を知る教育や訓練が必要である。 ○避難するだけではなく、避難後どうするかという訓練も必要である。 ○学校での訓練は万全でも、学校を離れたとき災害に対処できない可能性がある。 ○学校と地域が、校区内の危険な箇所などについて認識をもつ必要がある。 ○社会に守られている環境では、子どもなりの危機意識が薄れている。 <<「さあ、地図を持って探検に出かけよう」∼鳥取市立川一丁目自主防災会∼>> 児童への防災教育 明日を担う子供を中心とした防災イベン トを行っています。危険箇所や防火設備の 調査、起震車や消防車での消火訓練などを 楽しみながら体験し、防災に関する基礎知 識を学んでいます。 防災マップを作ることにより自分たちの町 の危険なところを再認識し、具体的で積極的 な防災活動に取り組む手がかりとしています。 - 12 - 対応策 【自主防災組織の取組みに向けて】 ○誰でも参加できる訓練を取り入れ、地域の防災訓練への児童や生徒の参加率を上 げる工夫をしてはどうか。 ○児童や生徒に防災訓練の企画段階から参加してもらってはどうか。 ○地域で防災活動ができるよう、日頃から地域の人たちと顔見知りの関係になるよ うな活動をするとよいのではないか。 <<「火の用心!」40年間続いている子供たちの夜回り∼岩美町田後地区∼>> 子供たちによる意識啓発の例 「ひぃーのよーぅじん!」。 長い歴史の中で先輩たちから受け継がれてい ます。子供たちによる毎晩の啓発活動は、住民を なごませ、地域の絆を強くしているのではないで しょうか。 この地区では、住民の防災意識が非常に高く、 年に何回もの初期消火訓練の実施はもちろんのこ と、地区の人たち総出の避難訓練なども活発に 行われています。 【市町村の取組みへの提言】 ○災害時に学校が避難場所となったときの訓練を市町村や地域、学校などが連携し て行ってはどうか。 ○防災指導者養成研修の修了者や自主防災組織リーダーに防災訓練の指導者となっ てもらってはどうか。 ○中学生に災害時の対処法や救命講習などを学んでもらってはどうか。 ○子どもの視点で地域の防災マップを点検してもらってはどうか。 - 13 - 【学校の取組みへの提言】 ○小中学校の「総合学習」などの時間に防災関連の教育を取り入れてはどうか。 ○防災教育の普及には、具体的な事例で子どもたちの心を動かすようにしたらいい のではないか。 ○危険箇所を知ってもらうために校区内の防災マップを作成してはどうか。 ○生徒を対象とした救急救命講習を行ってはどうか。 ○避難訓練とあわせて、高齢者などの災害時要援護者の救助訓練を行ってはどうか。 ○災害発生初期を想定した電気やガスを使わない避難所体験サバイバルキャンプを 行ってはどうか。 ○高校生にも防災教育を行うとともに、災害時のボランティア活動についても働き かけてはどうか。 ○阪神・淡路大震災の教訓を子どもたちにつなげるために設立された「人と防災未 来センター(神戸市)」などを修学旅行コースに取り入れたらどうか。 <<「小中学生に地域ぐるみで防災教育を」∼神戸市明親校区防災福祉コミュニティ>> 中学生への防災教育の例 小中学校における防災教育に力を入れており、放 水体験訓練、市民救命士資格取得講習(心肺蘇生法 及びケガの手当)などの防災教育を行っています。 また、仮設トイレの組み立てや市民救命士資格を 活かした高齢避難者への救急措置など、災害時に学 校が避難所として使用されることを想定した、校区 内の住民との共同訓練も活発に行っています。 さらに、地元企業7社と災害時応援協定の締結を 結んでおり、共催の防災訓練や各企業で毎年発生す る詰め替え期の消火器を使った実物消火訓練なども 行っています。各企業への小中学生の見学授業が増 えたことで、企業の防災への取組みが強化されるな どの効果もあがっています。 - 14 - <<「大人の代わりに僕たち、私たちが!」∼横浜市日限山中学校∼>> 地域の戦力と期待される学校の例 横浜市港南区日限山では昼間の人口が半減するため、住宅地における災害時の戦力として中学 生に期待しています。平成13年度からは全校が授業の一環として地域の防災訓練に参加し、地 域住民との交流を深めながら防災の知識や作業方法を学んでいます。女子生徒が仮設トイレを30 分以内で組み立てたり、男子生徒が鍋釜での炊き出しができるようになったりと、誰でも非常時 に対応できるよう訓練を重ねています。平成16年度には中学生4人1組で災害時要援護者の安 否確認と避難誘導訓練にも取り組んでいます。 <<学校でのアドベンチャー&サバイバル∼愛知県豊橋市立津田小学校∼>> 学校における防災教育の例 数年前から子供の冒険心を満たす活動として「学校 お泊り会」を実施してきましたが、平成14年に地域 住民と学校が一緒になって行う防災訓練「津田小アド バイバル」として新たに計画・実施されました。 地域住民は学校へ避難し、児童とともに防災対応訓 練を行います。昼の部は水道・電気・ガスが絶たれた 場合を想定して炊き出しを行ったり、ペットボトルを 使ったろ過器作りを体験したりと、楽しみながら 防災の知識を身につけています。夜の部は図上防災 シミュレーションやダンボールハウス作りなどを 行います。 保護者はもとより自主防災会、老人会など学校の 子どもたちをはるかに上回る地域住民が参加して おり、まさに地域ぐるみの防災活動といえます。 - 15 - 「ぼうさい探検」隊マップコンクールに応募しよう! 社団法人日本損害保険協会では関係機関との共催により小学生 を対象とした「ぼうさい探検隊」マップの作成支援とマップコン クールを実施しています。「ぼうさい探検隊」とは小学生向け実 践的防災教育プログラムで、子供たちが楽しみながら自分たちの 町を歩き、自分の目で確かめながら交番や消防署、病院、公衆 出典・日本損害保険協会 電話、消火栓など、防災や防犯に関する設備を発見し、それをも とにオリジナルの防災マップを作成するものです。小学校の授業で作成されたマップが対象で、 マップ作成に必要なビデオ資料やマニュアル、町なかを探検するときに着用するジャケットな どの貸し出しもあります。 さあ、町の探検をはじめよう! 【小学生の"ぼうさい探検隊"マップコンクール事務局ホームページ】 http://www.sonpo.or.jp/action/release/news_bosaimap.html - 16 - 4 お年寄りなどを地域で支える仕組みづくり 災害時に自力で避難することが困難なお年寄りや障害を持つ方々(災害時要援 護者)を地域住民で支えるための仕組みづくりが必要です。 課題 ○災害時要援護者は自力で避難場所まで到達することが難しい。 ○平日昼間の災害においては災害時要援護者を避難誘導する人員の確保が難しい。 ○災害時要援護者の情報をとりまとめている自主防災組織が少ない。 ○民生委員は災害時要援護者の情報を持っているが、自主防災組織とのつながりが ないため、災害時に情報を活用できない。 ○支援するためには災害時要援護者の情報が必要であるが、プライバシーへの配慮 も必要である。 ○災害時要援護者からの情報提供が進みにくい。 ○災害時要援護者情報は最新のものにしておく必要がある。 対応策 【災害時要援護者の皆様へ】 ○災害が発生したときに、自分が受けたい支援内容などの情報を、支援いただく人 に提供しておかれるといいのではないでしょうか。 【自主防災組織の取組みに向けて】 ○責任者は住民の病気や障害・家族構成などの情報をとりまとめてはどうか。 ○各機関と連携して、災害時要援護者情報を共有するとよいのではないか。 ○お年寄りなど災害時要援護者の避難計画をつくり、訓練を行ってはどうか。 ○避難場所よりも近く、集合しやすい場所に仮避難所を設置し、まずそこで集合点 呼を行ってはどうか。 - 17 - <<「自宅の近くで集合、点呼」∼日野町黒坂地区自主防災委員会∼>> 災害時要援護者の視点で考えた例 災害時に避難所までたどりつくのが難し いお年寄りなどのため、地区内に仮避難所 を22箇所設けています。災害時には自宅 から一番近い仮避難所に集まって点呼を行 い、その後集団で避難所へ移動します。 また、訓練時には仮避難所に集まった人数を 発表することで、参加率のアップにつながって います。 <<「上後藤2区を災害に強いまちにしよう」∼米子市上後藤2区防災会∼>> 災害時要援護者情報を登載した防災マップの例 地区内の独居老人など災害時に自力での 避難が困難な方の調査に取組み、自宅の状 況や最寄の避難所の場所を地図に書き込こ んだ災害時要援護者防災マップを作成して います。プライバシーの問題から難航しま したが、お年寄りや障害者などのいる全家 庭を民生委員と防災会役員で根気よく説得 に努められ、成し遂げられたものです。 また、現場が混乱する非常時でも冷静に 対処できるよう、詳細な避難誘導マニュアルも作成し、構成員全員に配布されています。さらに それらを使って、災害時に迅速・的確に対応できるよう簡易型図上訓練(DIG)も開催してい ます。 - 18 - 【市町村の取組みへの提言】 ○災害時要援護者登録制度を創設し、自主防災組織と地域などが連携した要援護者 支援体制を構築してはどうか。 ○市町村と自主防災組織などが協力し、要援護者救助マニュアルを作成するといい のではないか。 ○民生委員と自主防災組織との情報交換の場を設けてはどうか。 - 19 - 5 互いに手を携えて 地域の防災力を向上させるためには、自主防災組織相互の情報交換や合同訓練 などを通じた自主防災組織同士の連携や、自主防災組織と他団体との連携を進め ることが、いざというときの防災活動に役立ちます。 課題 ○県内の自主防災組織には横の連携がない。 ○行政や企業、学校、住民との連携のための協議や調整の場がなく、パイプ役もいな い。 ○自治会と子ども会や長寿会との連携がとりにくい。 ○各機関相互の得意分野を活かした総体的な取組みが必要である。 対応策 【自主防災組織の取組みに向けて】 ○地域における他の団体との交流を進め、防災活動における協力体制を整えるとい いのではないか。 ○小学校区や中学校区単位で定期的に自主防災組織の活動会議などを開催してはど うか。 ○複数の自主防災組織が合同で研修会や訓練などを行ってはどうか。 ○災害時に相互協力できるよう地域企業と連携するといいのではないか。 ○地域の消防署や消防団などに研修会や訓練などを指導してもらったらどうか。 - 20 - <<「徒歩5分。みんなが知ってるあの場所へ」∼米子市福生東10区自主防災会∼>> 地元企業と連携した取組みの例 日野川の下流に近い福生東10区では、指定避難 場所への避難に20∼30分もかかるため、万一大 雨で日野川が氾濫した場合の避難がうまくできるか、 かねてから懸念されていました。そこで自主防災会 長は、同じ校区内にある縁で何年も前から地区の運 動会へ招待するなどして交流を深めていた地元企業 へ「災害時の仮避難所としてお借りすることはでき ないか」と相談を持ちかけられ、実現にこぎつけら れました。自主防災会では仮避難所への避難訓練も行われています。 <<「お誕生日おめでとう!」高齢者誕生月企画∼日野ボランティアネットワーク∼>> お年寄りと地域の絆を強める例 「被災地の高齢者見守りとボランティア育 成」として高齢者誕生月プレゼント企画を行 っています。毎月イチゴ大福やおこわ、フラ ワーアレンジメントなどを小中学生から高齢 者まで幅広い年代のボランティアが一緒に手 作りし、誕生日を迎える高齢者宅に直接届け て祝うとともに、生活の困りごとなどを聞い て地域の課題の把握に努めています。地域に おいて、年代を超えた交流を重ねることで地 域住民のコミュニティの活性化にもつながっ ています。また、この訪問企画は、ボランティアセンターと高齢者、地域での人と人とのつなぎ 役になっています。 【市町村の取組みへの提言】 ○日赤やボランティアセンターと連携し、情報の伝達方法・救助法・給食・ボラン ティアの運営など災害時に役立つ訓練を行うとよいのではないか。 - 21 - 【県の取組みへの提言】 ○組織運営の研修や自主防災組織相互の情報交換などを目的とした、鳥取県自主防 災組織連絡協議会のような組織を設置してはどうか。 ○災害ボランティア団体と自主防災組織連絡協議会との情報交換の場を設けてはど うか。 ○多様なメディアを活用した防災情報の交換や情報共有を充実させてはどうか。 ○平日昼間の災害に対応できるよう、その地域の企業に救急救命講習や防災士資格 取得の推進を図り、優良企業へは知事が表彰してはどうか。 【消防・警察の取組みへの提言】 ○学校や地域が実施する訓練や防災意識の普及にアイデアを提供してほしい。 ○防災組織を育成強化するため、消防施設(消防署)を防災組織に開放してはどうか。 <<「わがまちの局長さんは防災の専門家」∼因幡特定郵便局長会∼>> 郵便局と地域の連携の例 因幡特定郵便局長会では会員43名の防災士資格の取得を推 進し、その知識を活かした活動を行っています。 会員を地域の防災研修会へ講師として派遣したり、防災士のい る郵便局に防災士ステッカーを掲示することで、地域住民と一 体となった「災害に強い地域づくり」に積極的に取り組んでお られます。また、月に一度発行している防災情報誌「ポスト防 災情報」は「今すぐ出来る地震対策[家具・家屋補強編]」「今 すぐ出来る地震対策[非常時への備え編]」など、生活に密着し、すぐに活用できる情報ばかり を集めたもので、来訪者が持ち帰れるよう鳥取県東部すべての郵便局の窓口に設置しています。 地域に根付いた郵便局ならではの啓発活動といえます。 防災士って? 自助・互助・協働を原則として、社会のさまざまな場で減災と社会の防災力向上のための活 動が期待され、かつ、そのために十分な意識・知識・技能を有する者として、特定非営利活動 法人日本防災士機構が発行する認証を受けた方のことをいいます。 災害発生時には、それぞれの所属する団体、企業や地域などの要請により、避難や救助・救 命、避難所の運営にあたり、ボランティアと協働して活躍します。 - 22 -