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子宮外妊娠と妊娠反応(100614)

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子宮外妊娠と妊娠反応(100614)
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子宮外妊娠と妊娠反応(100614)
身体診察の本を読んでいたら、「妊娠反応陰性の子宮外妊娠もあり、検査に頼ると痛い目にあ
うことがある」と記載があった。では、疑った時にはどうするのがスタンダードなのか。基本的な知
識が無いので勉強してみることにした。以下の項目も参照を。
「若い女性の腹痛(子宮外妊娠、卵巣出血、卵巣腫瘍茎捻転、卵巣腫瘍破裂)」
http://rockymuku.sakura.ne.jp/sannfuzinnka/wakaizyoseinofukutuu.pdf
「妊娠週数の判定と計算の基本」
http://rockymuku.sakura.ne.jp/sannfuzinnka/ninnsinnsyuusuu.pdf
一般的には、妊娠反応陽性なのにもかかわらず、子宮内に胎嚢が認められない場合に子宮外
妊娠を疑う。このような状況は産婦人科的にはよくある問題だと思うし、これはこれで問題だが、
一般医が直面する問題はこれとは少し違う。産婦人科以外の医師がよく遭遇するケースは、当直
などで診察する腹痛患者のケースだ。患者に下腹部痛やダグラス窩の液体貯留などがあって、
症状や所見が子宮外妊娠で矛盾が無ければ、妊娠反応陰性でも子宮外妊娠を否定できないの
かというところが最も関心の高いところではないだろうか。通常、妊娠反応が陰性だったら、子宮
外妊娠は否定して、普通は卵巣出血とか、虫垂炎、腫瘍、膠原病、肝硬変・・・・とか別のものを考
えることになるからだ。
妊娠のごく初期にも、症候性の子宮外妊娠があるとすれば、妊娠反応陰性だった場合でも安易
に除外できない。参考文献 1 には子宮外妊娠が疑われる場合は、まず高感度の妊娠反応を行う。
検査が陰性の場合は、2~3 日後に早朝尿を用いて再度妊娠反応を行う。それでも反応陰性な
ら子宮外妊娠はほぼ否定される。あとは経過観察とする。という記載もあり、検査陽性の境界付
近でも子宮外妊娠を否定できない記載がある。
先日、産婦人科の先生に聞くチャンスがあったが、妊娠反応陰性でも子宮外妊娠は否定できな
いが、少なくとも緊急に手術を要するものでは無いと考えておけばよいとのことであった。必要な
ら数日後にもう一度検査が必要な状態と認識しておくのがいいようだ。
□ 基本的な部分の復習

性行為感染症(とくにクラミジア)の蔓延に加え、不妊治療の進歩により、子宮外妊娠は増加
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の傾向にある。 1)

子宮外妊娠のリスクファクターとしては、①卵管形成術後、②子宮外妊娠の既往、③頻回の
人工妊娠中絶、④卵管性不妊に対する配偶子操作などが重要。(配偶子操作では内外同時
妊娠の発生もそれほど珍しくない(1~2%)。体外受精による妊娠では子宮内に胎嚢を確認
しても安心はできず、妊娠 9 週頃までは内外同時妊娠を念頭に置く。 1)

以前は急性腹症、大量の腹腔内出血や出血性ショックを呈し、緊急開腹術が行われることが
多かったが、近年の経膣超音波法の普及や高感度 hCG 検出薬の出現により、早期の無症
状の時期に診断される頻度が増加している。(逆に確定診断が困難で、対応に苦慮する症例
が増加している) 2)

妊娠反応は最も早ければ受精成立から 12 日目(妊娠 3 週 5 日)には、うっすらとではあるが
陽性に出る。しかし、確実に子宮内に胎嚢が確認できるのは通常妊娠 5 週半ばなので、詳細
なる問診や BBT から受精日が特定できて、診察日がこの 3 週 5 日から 5 週 3~4 日に相当
する場合には、たとえ子宮内に胎嚢が見つからないとしても外来フォローとしてよいことにな
る(→妊娠反応陽性、エコーで未確認のケース)。 4)

しかし、実際には受精日が特定できないことのほうが普通なので、5 週半ばは超えているよう
だと思える症例での取り扱いが問題となる。何も症状がなくても、一般の診療所ではこの時
点で高次病院への紹介でもよい。 4)

子宮外妊娠の自覚症状としては、①無月経、②性器出血、③下腹痛が主なものである。(無
月経は患者が不正出血と月経を混同して、それと気付いていないことが少なくないため、最
終月経については、量および持続期間について詳しく問診することが大切。出血の量が通常
より少なく、かつ日数が短い場合は不正出血の可能性が高い。) 1)

他覚所見としては、腹腔内出血の症状が主なものである。 1)

初期の子宮外妊娠の診断には、内診はほとんど役立たないと報告されている。 1)

子宮外妊娠が疑われる場合は、まず高感度の妊娠反応を行う。検査が陰性の場合は、2~3
日後に早朝尿を用いて再度妊娠反応を行う。それでも反応陰性なら子宮外妊娠はほぼ否定
される。あとは経過観察とする。 1)

妊娠反応が陽性の場合は、ただちに経腟超音波検査を行う。子宮腔内に胎嚢が認められれ
ば、子宮内妊娠であり、子宮外妊娠は否定される。 1)

子宮内に胎嚢を認めない場合は、子宮外妊娠を考えて、付属器領域を超音波で注意深く検
査するとともに、尿中 hCG(できれば血中 hCG も)の定量を行う。 1)

子宮外妊娠を疑う所見が認められた場合は、比較的躊躇なく腹腔鏡下手術が実施される傾
向にあるが、誤診の例として、妊娠黄体または黄体血腫を胎嚢と誤診したものが報告されて
おり、画像診断上妊娠黄体と胎嚢の鑑別は重要。 3)

血中β-hCG 値は子宮外妊娠の診断にあまり有用でないとする意見もある。 3)

腹腔内出血の有無や量はダグラス窩のエコーフリースペース像から判定する。 1)

正常子宮内妊娠では 5 週+2 日(排卵日を 2 週+0 日として計算)でほぼ 100%子宮内に
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胎嚢が検出される。したがって、妊娠 5 週+2 日を過ぎて子宮内に胎嚢が認められない場合
はまず子宮外妊娠を考えなければならない。 1)

子宮外妊娠の確定診断には、これまで腹腔鏡が用いられてきたが、最近では腹腔鏡検査は
とくに必要ないといわれている。 1)

参考文献 4 で紹介されていた外来での流れ。(妊娠反応陽性で、エコーで確認できない時の
流れ。)
(参考文献 4 より引用)
「妊娠反応陰性ですが、症状や所見が子宮外妊娠でも矛盾がないため否定できません。子宮外
妊娠以外の確定診断がつかない場合は、数日後にもう一度妊娠反応検査を行います。その時の
検査で陰性であれば子宮外妊娠を否定できます。」と説明しようと思う。これでいいのか十分な自
信は無いけれど・・・。
参考文献
1.
井上正人.子宮外妊娠の取り扱い-内視鏡的治療の取り扱い- .日産婦誌,51(9):1999.
2.
松本幸代ら.子宮外妊娠診断法の工夫.産科と婦人科, 76(3) : 321-324, 2009.
3.
氏平崇文ら.子宮外妊娠の診断における pit fall-子宮外妊娠ではなかった 5 例の検討.日本産
科婦人科内視鏡学会雑誌, 24(1) : 196, 2008.
4.
梁善光.子宮外妊娠が疑われる症例(suspected ectopic pregnancy)の取り扱い.産科と婦人科,
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75(9) : 1149-1151, 2008.
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