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情報転送専門委員会 - TTC 一般社団法人情報通信技術委員会
◉TTC主催会合報告 TTC Report 2013. July Vol.28/No.2 2012年第4四半期 専門委員会標準制定状況 情報転送専門委員会 網間論理インタフェースSWG 1.はじめに 情報転送専門委員会では、網間インタフェースや光 2. 2 適応範囲 MPLS-TPレイヤネットワークアーキテクチャは、 アクセス網および情報通信装置のEMI関連技術の技術 サーバレイヤのトランスポート技術やプロトコルに依 標準化を主なミッションとしている。特に網間論理イ 存しないため、OTNやSDHだけでなくイーサネット ンタフェースSWGでは、網間インタフェースの論理 レイヤネットワーク(ETH)上のクライアントとし 的側面から、OTN、SDH、パケットトレランスポー て適用できる。一方、本標準では詳細は述べることは ト技術等について検討を行っている。 しないが、クライアントレイヤのトランスポート技 本委員会では、2013年3月のITU-T G.8110.1 術やプロトコルにも依存しないため、イーサネットフ “Architecture of the Multi-protocol Label Switching レームやIPプロトコル若しくはSDH等をペイロード transport profile layer network”の制定に伴うダ として伝送することが可能である。 ウンストリームの検討を行い、JT-G8110.1第1版 本標準では、トランスポートネットワークに対して として原案を2012年度第4四半期の第91回標準化 MPLS-TPを適用するためにIETF RFCを引用しなが 会議に付議し、2013年5月23日に制定された。 ら以下の事項を定義した。 レイヤ構成、トポロジとラベル 2.JT-G8110.1「MPLS-TPレイヤネットワーク のアーキテクチャ」の標準説明 2. 1 要約 JT-G8110.1第1版では、マルチプロトコルラベ ルスイッチング(MPLS)というプロトコルに依存 しないパケット転送技術を、トランスポートプロファ サーバ/クライアント OAMのアーキテクチャ 故障耐性 Diff-Serv また、付録として引用するIETF RFCのレジュメを 添付した。 イル(TP)としてトランスポートネットワーク向け 具体的には、特に同一ルート・双方向のLSP(ラ に適用したMPLS-TPに関して、そのアーキテクチャ ベルスイッチパス)上のシングルセグメントの疑似ワ の定義を行った。 イヤ(PW)上を伝送されるイーサネットサービスを 本標準は、MPLS-TPレイヤネットワークの機能群 モデル化するために必要な機能要素のみを定義した。 をITU-T G.805“トランスポートネットワークの一 なお、他のクライアントの伝送については将来の検 般的機能アーキテクチャ”に従って表現する。これに 討事項としている。また、OAMの詳細やプロテクショ よって、同様に表現されたSDHやOTN等の他のトラ ン技術に関しては将来の標準化を予定している。 ンスポート技術と容易に統合することが可能となる。 本標準における機能群の表現では、MPLS-TPの 転送機能、OAM機能およびネットワーク障害耐性を ネットワークレベルの観点からモデル化しているが、 制御プレーンおよび管理プレーンに関する定義は別途 の標準として提供予定であるため、必要に応じて参照 してほしい。 なお、本標準はIETFによるRFCと整合的である。 図1 MPLS-TPにおける役割とレイヤ 23 ◉TTC主催会合報告 TTC Report 2013. July Vol.28/No.2 2. 3 MPLS-TPのレイヤ構造、トポロジとラベル 2. 4 OAMのアーキテクチャ MPLS-TPレイヤネットワークはパスレイヤのネッ MPLS-TPで特筆すべきは、OAMのアーキテクチャ トワークであり、再帰的なラベルスタックにより構成 である。OAMの挙動については、別途TTC標準化す されたサブレイヤを用いて定義される(図1) 。 る予定であるが、機能要素については本標準の範囲で この階層的なレイヤ構造を、MPLS-TPではラベル スタックを用いて実現している(図2) 。 あるため、ここで解説する。 MPLS-TPのOAMは、G-ACh(Generic 図2は、左から順に、ペイロードを伝送するフレー Associated Channel)とGAL(G-ACh Label)お ム構造、PWレイヤのOAMフレーム構造、LSPレイ よびACH(Associated Channel Header)に特徴 ヤのOAMフレーム構造、セクションレイヤのOAMフ を有する。 レーム構造を表している。 ペイロードと同じレイヤであるPWレイヤのOAM ペイロードを伝送するフレーム構造は、ペイロー は、CWと ペ イ ロ ー ド の 代 わ り にACHとACH TLV ドをPWラベルフィールドでカプセル化した後、さら およびOAM PDUをPWラベルフィールドとLSPラ にLSPラベルでカプセル化している。本標準で直接 ベルフィールドでくるんだ構造を持ち、PWに随伴し 的に定義することはしていないが、さらに複数回の て転送されることになる。このPWに随伴するOAM LSPラベルフィールドでカプセル化することも可能 パケットを監視することによりPWレベルのオペレー である。 ションやマネジメントを実現する。 このように複数のラベルフィールドを用いて多重に 一方、LSPレイヤのOAMはLSPラベルフィールド カプセル化した場合には、最も内側のラベルフィール の内側が、PWラベルフィールドではなくGALと呼ば ドはS(ボトム オブ スタック)ビットが1であること れる特殊なラベルフィールドであることが、PWレベ により識別する。 ルのOAMと異なる点である。ただし、ACH、ACH TLV、PDUについては同様である。 図2 MPLS-TPのフレームフォーマット 24 ◉TTC主催会合報告 TTC Report 2013. July Vol.28/No.2 こ のLSPレ イ ヤ のOAMは、LSPに 随 伴 し て 転 送 およびTCフィールドに基づく優先制御(E-LSP)の され、このパケットを監視することでLSPレベルの 2種類を定義している。TCフィールドは3ビットから オペレーション等を実現する。なお、LSPレイヤの なり、1つのLSPラベルフィールドあたり最大8個の OAMの実現方式は、複数のLSPラベルフィールドに QoSクラスを定義することができる。 くるまれたパケットに対しても一般化できる。 特に、MPLS-TPのセクション(MTS)に対応す るOAMパケットは、対応するLSPラベルフィールド このTCフィールドに基づく装置挙動はユニフォー ムモデルとショートパイプモデルに大別できるが、詳 細は標準の本文および引用文献を参照してほしい。 を使用しない構成もありうる。この場合にはGALの 外側にLSPラベルフィールドを用いることなく、直 接サーバレイヤに格納されることとなる。 3.まとめ 日本国内の情報通信網は、提供すべきサービスの高 OAMパ ケ ッ ト を 監 視 す る 場 所 は、MEP 度化に伴って、さらなる信頼性向上が求められてい Maintenance Entity Group End Point)や、 る。一般化されたラベルベースの転送プロトコルを用 MIP(Maintenance Entity Group Intermediate いることにより、いったん適切にカプセル化されてし Point)と呼ばれる場所である。 まえば、同一の装置で転送することができる。個々の 図3は複数のオペレータのMPSL-TPネットワーク をタンデム接続した場合の各オペレータおよびサービ ス提供者のMEGの例である。 プロトコルに依存せずにシンプルな方法で伝送できる MPLS-TPはこの目的に最適である。 このような背景のもと、今回はMPLS-TPのアーキ テクチャの標準化を行ったが、今後はMPLS-TPの 2. 5 Diff-Serv OAMにかかる標準の制定や、プロテクションに関す MPLS-TPでは、ラベルに基づく優先制御(L-LSP) る検討を行う予定である。 図3 MPLS-TP管理ドメインのMEG 25