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メディア符号化専門委員会 - TTC 一般社団法人情報通信技術委員会
TTC Report 2012. April Vol.27/No.1 ◉TTC主催会合報告 2011年第3四半期 専門委員会標準制定状況 メディア符号化専門委員会 メディア符号化専門委員会 マルチメディアシステムSWG 1.はじめに メディア符号化専門委員会 マルチメディアシステ そ の 後、 電 話 交 換 網 は ア ナ ロ グ 回 線 か らISDN (Integrated Services Digital Network:総合ディジタ ムSWGは、マルチメディア通信の相互接続を実現す ル通信網)に移行し、通信チャネル(1B:64kbps) るための技術仕様の検討を推進している。その活動の を非制限ディジタル通信モードで使用することで、モ 一環として、 2011年度第3四半期の第84回標準化 デム通信の速度より高速な速度で音声以外の情報の通 会議にて、TTC標準 JJ-40.20「NGN環境下のSOAP/ 信が可能となり、テレビ電話やG4-FAX、インターネッ HTTPを利用したコンテンツ転送システム」 (第1版) ト接続の普及を加速させた。このときも、送信機器、 (2012年2月23日)を制定した。本稿では、本標準 の概要を紹介する。 受信機器間の情報交換のための通信方式が規定され ており、テレビ電話に関する勧告(H.320等)、G4FAXに関する勧告(T.90(JT-T90))、パソコンから 2.JJ-40.20「NGN環 境 下 のSOAP/HTTPを 利 用したコンテンツ転送システム」(第1版)の インターネット接続ポイントまでの通信標準(PPP: RFC1661等)がある。 説明 2. 1 制定した経緯 アナログ回線を使って音声通信を行っていた電話接 続サービスは、サービスの多様化により音声以外の情 報を通信する要望がでてきた。音声以外の情報には ファクシミリ(FAX)通信のスキャンした画像情報、 図2 ISDNでのデータ通信 パソコン通信の文字情報などがある。いずれも符号化 された情報をアナログ回線を使って通信する必要があ さらに、ISDNからNGN(Next Generation Network) り、そのために符号情報を音響信号(モデム信号)に に移行した。NGNはIP技術を使った次世代の情報通 変換して音声通信と同じ通信回線(アナログ回線)を 信ネットワークであり、従来の音声、テレビ通信に加 使って相手に送信していた。このモデム信号による送 え、ハイビジョンも可能な映像通信、さらに高速な情 信機器、受信機器間で情報の交換を可能とするための 報の通信を提供する。 通信手順が規定されている。例えば、モデムの通信速 日本ではNTTが2008年3月から「フレッツ光ネク 度に関するITU-T勧告(V.21、V.32等) 、モデム通信 スト」と称してNGNのサービスを開始した。インター のコマンド体系に関する勧告(V.25bis) 、G3-FAXに ネットへの接続は電話接続サービスとは別にインター 関する勧告(T.30(JT-T30) )等がある。 ネットプロバイダへPPPoEで接続し、電話接続サー ビスでは音声とテレビ(映像)の通信を提供した。 2010年5月からその電話接続サービスにおいて、電 話番号を使って通信相手と接続し、音声、テレビ(映 像)以外の情報の通信(以下:データ通信)を行うこ とができる通信サービスを開始した。ISDNでは、テ レビ電話もG4-FAX、インターネット接続も全て、音 図1 アナログ回線でのモデムによるデータ通信 14 声通信以外の情報通信として位置づけられていたが、 TTC Report 2012. April Vol.27/No.1 ◉TTC主催会合報告 NGNでは音声通信、テレビ(映像)通信、データ通 イルにはスキャンした画像情報以外に、写真ファイル 信と明確に識別して利用される事になり、送信機器と や資料ファイル、動画ファイルなど多様なコンテンツ 受信機器間で音声通信、テレビ(映像)通信、データ ファイルが存在する。 通信を同時に利用したり、個別に利用したりすること が可能となった。 NGNの電話接続サービスで提供するデータ通信で、 多様なコンテンツファイルを電子ファイルのまま送信 できれば、受信側機器で、受信したコンテンツファイ ルを保存したり、さらに編集したり、大画面テレビに 映したりすること等が可能で、音声、テレビ(映像) 通信しながら写真を送って大画面テレビに映して会話 をする等の従来の音声、テレビ(映像)通信から発展 したシーンの実現も可能となる。そこで、コンテンツ ファイルを送信する通信方式の実現に向けて、FAXの 通信方式を参考に検討を進めた。 FAX通信では、画像情報を受信側機器に送信するた めに送信機器、受信機器間で通信速度など通信相手機 図3 NGNの利用イメージ 器の能力を確認するための能力確認を行っている。そ の次にモデム信号を使って画像情報を送信する。これ 音声通信、テレビ(映像)通信は、音声の高音質化 はG3-FAXの手順であり、T.30(JT-T30)にて勧告 や映像のハイビジョン化など既存の通信方式を拡張し され標準化されている。全てのG3-FAXはこのT.30 て利用できるが、新たに識別されたデータ通信につい (JT-T30)に従っているため、異なるメーカーのFAX ては送信機器、受信機器間で行う通信方式は何ら規定 されていないため、送信機器、受信機器間でデータ通 機器であっても相互通信が可能である。 同様に、NGNの電話接続サービスで提供するデー 信を行うことはできず、 相互接続もできない。そこで、 タ通信を使ってコンテンツファイルを送信する通信方 機器間でデータ通信を可能にするためにデータ通信を 式を規定することで利用シーンの実現と、異なるメー 利用したシーンを考え、シーンを実現するための通信 カーの機器やアプリケーションであっても相互通信が 方式の検討を行った。 可能となる。 2. 3 コンテンツを転送する通信方式のシーケンス及 びメッセージ例 NGNの電話接続サービスにて受信側の相手機器に 発信する。電話が接続された後、データ通信サービス を利用して、写真ファイルや資料ファイル等のコンテ ンツファイルを送信するために、送信側機器と受信側 機器のそれぞれの機器のプロトコル種別、機器間で扱 図4 NGNでのデータ通信の課題 うことができるファイルフォーマット等の能力確認を 行うこととした。 2. 2 コンテンツを転送する通信方式の検討 次に、コンテンツファイルは電子ファイルであるた 送信機器、受信機器間で行うデータ通信を利用し め、送信する前に、そのコンテンツファイルのファイ たシーンとして分かり易くイメージし易いシーンは、 ル名、ファイルサイズを送信側機器から受信側機器に FAX通信のように資料を送るシーンである。FAX通信 通知することにし、その後、実際にコンテンツファイ で送信する資料は一度スキャンされ、画像情報として ルを送信する。以上のようなシーケンスを規定した。 受信機器に送信され、受信機器で印刷または保存され シーケンスで取り交わすメッセージは、SOAPにて る。これは、スキャンした画像情報と言うコンテンツ 規定し、伝送プロトコルとしてHTTPを利用している。 ファイルを送信していることになる。コンテンツファ その理由として 15 TTC Report 2012. April Vol.27/No.1 ◉TTC主催会合報告 ⑴ TCPコネクションを用いた通信プロトコルにおい て、HTTPが最も利用されているプロトコルである データ通信を行うことができる。 本標準を使った利用シーン例は、TTCの技術レポー ⑵ SOAPはWEBサービスの広まりと共にリモート・ トTR-1041「NGN環境下のSOAP/HTTPを利用した プロシージャ・コール(RPC)の標準として利用 コンテンツ転送システムのユースケース」にまとめて されている いるので参照して頂きたい。 ⑶ 多くの開発環境が整備されており、短期間での開 発が可能である 今後、本標準を搭載した機器やアプリケーション間 でコンテンツファイルを送信するだけでなく、送信後 ⑷ SOAP上で関数定義が自由に実現できるため、拡 張が容易である にそのコンテンツファイルを指定の場所に保管する、 指定の用紙に印刷する、指定の機器に表示するなどの 送信後のコンテンツファイルの扱いについても、本標 であり、本標準を簡単に使って頂けるようにした。 規 定 し たSOAPメ ッ セ ー ジ の 例 は 図5の 通 り で あ 準を搭載した機器やアプリケーション間で指示等でき るように、本標準JJ-40.20の拡張検討を進めている。 る。その他のSOAPメッセージについては本標準JJ- この拡張する機能は現在、TTCの技術レポートTR- 40.20を参照して頂きたい。 1040「SOAP/HTTPを利用したコンテンツ転送シス テムの応用」でまとめており、今後本標準に追加する 3.まとめ 予定である。 本標準を機器やアプリケーションに搭載すること な お、 本 標 準 は2012年3月 に 開 催 さ れ た「The で、NGNの電話接続サービスが提供するデータ通信 11th CJK IT Standards Meeting」にて各国に紹介を を利用して、電話番号を用いて、セキュアに、簡単に 行った。 図5 コンテンツを転送するために規定したシーケンスとSOAPメッセージ例 16