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添付資料 - TOKYO TECH OCW
波動工学-5.doc 09/04/13 49 5.平面波の反射、屈折 この章では無限平面境界に平面波が入射したときの振る舞い、つまり電磁波の散乱 現象について説明する。単純な問題であるが、より複雑な現象を考察する場合にも参 考になる問題である。また、球や無限長円筒による散乱問題も解くことができるが、 講義の範囲を超えるので扱わない。一般に散乱問題を解くことができる構造は座標系 に沿って境界条件を与えることができる構造である。ここで、「解くことができる」 とは解を解析的(analytic)に閉形式(closed-form)で表すことができる、つまり、「解を 初等関数(冪乗, sin, cos, exp, log など)および既知の関数(特殊関数など)と、それらの 四則演算(+,-,×,/)および合成関数で表すことができる」ということである(もちろ ん、特殊関数を次々に追加していけば解析的に解ける問題は増える訳であり、解析的 に解ける・解けないというのは絶対的な言い方ではない。このようなことを詳しく論 じたのはフランスの数学者ガロア(1811∼1832, フランス)である。5 次以上の方程式 に対する解の公式は存在しないということを証明したことで有名である)。 直角直交座標、円筒座標、球座標(や他のいくつかの座標系)の座標軸に沿った構 造物による電磁波の散乱問題は解くことができるが、その他の複雑な形状の構造物に よる電磁波の散乱問題は解くことができない。そこで、普通はマクスウェルの方程式 を数値計算で解き、電磁界解析する。数値計算で電磁界解析する分野は計算電磁気学 (Computational Electromagnetics)と言われる。数値計算による電磁界解析法としては主 にモーメント法(Method of Moments, MoM)、有限要素法(Finite Element Method, FEM)、 有限差分時間領域(Finite Difference Time Domain, FDTD)法などがよく用いられる。そ れぞれ長所と短所があり、オールマイティーの解析法は今のところない。 この章で学ぶ無限平面境界による平面波の反射と透過の問題は任意構造物の解析 に比べたら単純なものであるが、基礎を学ぶことはより複雑な問題を扱うためには大 切であり、基礎の問題をよく考察していると、より複雑な問題を扱うときにも結果が 正しいのか何かおかしいのか判断することができる。このような意味で、解析的に解 くことができる簡単な問題を規範問題(canonical problem)と言い、規範問題に対する理 解を深めることにより数値計算結果の解の妥当性を判断したり、現実の複雑な問題を 簡単化してマクロに現象を理解したりすることができる。 c.f.: http://www-antenna.ee.titech.ac.jp/~hira/hobby/edu/em/fresnel/index-j.html 波動工学-5.doc 09/04/13 50 5.1 垂直入射波の透過・反射 境界条件を用いて、電磁波が媒質境界面で反射、透過をする現象を解いてみる。 基本は平面波。上から入射する。上への反射平面波、下への透過平面波を求める。 Hi Ei x ε1, µ z y ε2,µ 反射波 R、透過波 Tを仮定。 R,Tを選び 境界条件を全て満足するか? YES → 唯一性(8.2 節)から OK Hi → 仮定やり直し E i NO Er z Hr y (1) x (2) H t E t 入射波、反射波、透過波のそれぞれが Maxwell の方程式の解であるように、磁界をそ れぞれに対して求めておく。すると、反射係数R,透過係数Tをどのように選んでも、 それら3つの和の波は Maxwell の方程式の解である。残るは、境界条件が満足される ようにR,Tを決めればよい。 波動工学-5.doc 09/04/13 51 Hi Er Ei z Hr y (1) x (2) H 平面波の条件 電界のx成分 E = E0 e i 仮定 + jk1 z E ≡ RE0 e r − jk1 z E t ≡ TE0 e + jk2 z t E t 磁界のy成分 E H i = − 0 e + jk1z p.26 H = η1 H = r Er η1 Ht = − = Et η2 η1 E0 e =− T η2 − jk1 z E から H を求める。 E0 e + jk2 z n̂ は表面電流 J がないから zˆ,− zˆ どちらでもよい 境界条件( z = 0 において) nˆ × (E1 − E 2 ) = 0 , nˆ × (H1 − H 2 ) = 0 zˆ × E1 = zˆ × E 2 , zˆ × H1 = zˆ × H 2 E R T E0 + RE0 = TE0 , − 0 + E0 = − E0 η1 η1 T η2 η +η2 2η 2 2= 1 T ∴T = η2 η 2 + η1 1+ R = T , 1− R = k̂ × E η の平面波の性質を利用して R R:反射係数 T:透過係数 η1 1 ⎧⎪E1 = E i + E r ⎨ ⎪⎩E 2 = E t ⎧⎪H1 = H i + H r ⎨ ⎪⎩H 2 = H t η2 ここで、 η1 ε = 2 η2 ε1 境界面上で η − η1 R= 2 η 2 + η1 ε2 ≡ n (屈折率) ε1 1− n 2 , T = R= 1+ n 1+ n 1 1 η n = 3の時 R = − T= η2 = 1 2 2 3 透 入 − 1 η1 − H E 1 3 =− 2η 2 2η1 1 1 2 y − 反 1 2η1 z − 1 2 x 入+反=透 波動工学-5.doc 09/04/13 52 一方が完全導体である場合、 Hi Er Hr Ei z n=∞ R = −1 n̂ H j y j = 2 H i [ A / m] j T =0 x E −1 ( ) ( E = E0 xˆ e + jkz + R e − jkz = E0 xˆ e + jkz − e − jkz = E0 xˆ 2 j sin kz −1 H=− E0 η1 yˆ e + jkz + RE 0 η1 yˆ e − jkz = − E0 η1 ) yˆ e + jkz − E0 η1 yˆ e − jkz = − H i yˆ 2 cos kz ⎞ ⎛ E j = nˆ × (H1 − H 2 ) z =0 = zˆ × ⎜⎜ − 2 0 yˆ cos kz ⎟⎟ η1 ⎠ z =0 ⎝ 0 E = 2 0 xˆ = 2 H 0 xˆ η1 電界と磁界の定在波の瞬時値は位相が 90°ずれている。 誘電体の場合には、境界条件を適用して、与えられた入射波から、反射係数、透過係 数が決定される。一方、完全導体や完全磁性体の場合には、反射係数と、導体表面に 誘起される表面電流 j[A/m] が求められることになる。透過係数はゼロ。 <導出> 媒質が導電性の時 特に損失が大きい良導体で、 複素誘電率 z σ >> 1 が成り立つとき jωε (ε 1 , µ1 , σ ) (ε 2 , µ1 ) 波動工学-5.doc 09/04/13 53 ∇ × H = i + jωε 1E ⎛ σ ⎞ ⎟E = σE + jωε 1E = jω ⎜⎜ ε 1 + jω ⎟⎠ ⎝ ε2 ε 2 = ε1 − j εr = σ ω ε2 σ σ = 1+ ≅ >> 1 ε1 jωε 1 jωε 1 µ1 ε2 ≡ n → ∞(屈折率)Qη 2 = →0 ε1 ε 1ε r T= 2η2 η −η ≅ 0 R = 2 1 −1 ≅ η2 + η1 η2 + η1 透過波は Et = TE0 e jk2 z Ht = − T η2 E0 e jk2 z σ − jπ σ e = k1 (1 − j ) 2ωε1 ωε1 k2 = ω ε 2 µ2 = ω ε1µ1 ε r = k1 e jk2 z = e jk1 σ 2 ωε 1 (1− j ) z =e jk1 σ 2 ωε 1 z + k1 σ 4 2 ωε 1 z =e σ jk1 2 ωε 1 σ z k1 2 ωε 1 e z 表皮の厚さ(skin depth): 振幅が e −1 = 1 / e に減衰する距離 σ z e = −1 2ωε 1 k1 ze = − 1 k1 2ωε 1 σ =− 2 ωµ1σ 位相が 2π 進む距離=波長 2π σ zλ = 2π , k1 = ω ε 1µ1 = λ1 2ωε 1 k1 z λ ≡ λ2 = 2π 2ωε 1 = λ1 σ k1 透過波の図示(斜め入射の絵となっているが、透過波の振る舞いは同じ) 完全導体の場合 − Hi Ei z σ → ∞ とおくと、 jωε 1 T =0 R = −1 y x Et 位相 -H t 等位相面 λ 2 = λ1 2ωε 1 σ 振幅 等振幅面 1/ e 倍 2 ωµσ 波動工学-5.doc 09/04/13 54 5.2 一般的な斜入射 入射波: E = Ae − jk ⋅r 1 H = kˆ × E E H η k̂ ( ) ① k = ω εµ A ⋅k = 0 入射波の電界、磁界は①の関係を満たす。 E, H の傾きも任意で、進行方向も任意であ る。 問題の設定: z=0(x-y 平面)を境界に z>0 の上側は誘電率 ε 1 の媒質で、z<0 の下側は誘電率 ε 2 の媒質 で満たされている。媒質 1,2 の透磁率は同じ µ とする。y 方向には一様な構造をして このとき、 いる。 この媒質 1 側から電磁波が z 軸からの角度 θ i で入射しているとする。 電磁波がどのように反射・透過するか考える。 z R k̂ i k̂ r θi θr (ε 1 , µ1 = µ ) y x (ε 2 = ε r ε 1 , µ 2 = µ ) θt k̂ t T kˆi = sin θ i xˆ − cosθ i zˆ kˆr = sin θ r xˆ + cos θ r zˆ kˆ = sin θ xˆ − cosθ zˆ ② t ④ k1 = ω ε 1 µ 1 , k 2 = ω ε 2 µ 2 = k1 ε r ⑤ t t r = ( x, y , z ) η1 = µ 1 ε , 1 未知数: θ r ,θ t , R, T η 2 = µ 2 ε = η1 εr 2 ③ ⑥ 波動工学-5.doc 09/04/13 55 電磁波は偏波があり、①のように入射波の電界と磁界はどの向きを向いているかわか らず、上で設定した問題は解きにくい。そこで、ある方向に進む任意の平面波は2つ の直交する偏波を有する平面波の線形結合で表すことができることを利用し、任意の 偏波を次の 5.1, 5.2 の2つの直交する偏波に分解して考える。マクスウェルの方程 式は線形だから、それぞれの偏波の問題を解き、必要に応じて後で重ね合わせればよ い。 k$i − z$ 5.2.1 直交偏波(入射面 に垂直な電界) 未知数 i : 入射(incidence) k̂ i Hr z Hi k̂ r θi θr Ei T, R θ r ,θ t Er r : 反射(reflection) (ε 1 , µ ) x y Ht θt (ε 2 , µ ) t : 透過(transmission) Et k̂ t 入射波に対し、反射波と透過波をそれぞれ1波ずつ仮定し、未知数: θ r , θ t , R , T を用 いて、ベクトルで書き下す。θ i を入射角(incident angle)、θ r を反射角(reflection angle)、 θ t を透過角(transmission angle)、 R を反射係数(reflection coefficient)、 T を透過係数 (transmission coefficient)と呼ぶ。また、入射波の波数ベクトル k̂ i と媒質の法線ベクト ル ẑ を含む面を入射面(incident plane)と呼び(この問題では入射面は x-z 平面)、入射波 の電界が入射面に垂直で、入射面と直交しているので、この入射波の偏波を直交偏波 と呼ぶ。電界が入射面に直交しているので TE 波(Transverse Electric Wave)または S 波 (ドイツ語の「垂直」を意味する senkrecht)、あるいは磁界が入射面内にあるから H 波 とも言われる。 波動工学-5.doc 09/04/13 56 E i = yˆ e − jk i ⋅r = yˆ e − jk1 (sin θi x−cosθi z ) 1 1 H i = kˆ i × Ei = ( zˆ sin θ i + xˆ cos θ i )e − jk1 (sin θi x−cosθi z ) ⑦ E r = Ryˆ e − jk r ⋅r = Ryˆ e − jk1 (sin θ r x+cosθ r z ) 1 R H r = kˆ r × E r = ( zˆ sin θ r − xˆ cos θ r )e − jk1 (sin θ r x+cosθ r z ) ⑨ Et = Tyˆ e − jk t ⋅r = Tyˆ e − jk2 (sin θt x−cosθt z ) 1 T H t = kˆ t × E t = ( zˆ sin θ t + xˆ cos θ t )e − jk2 (sin θt x −cosθt z ) ⑪ E1 = E i + E r , E 2 = E t ⑬ H1 = H i + H r , H 2 = H t ⑭ η1 ⑧ η1 η1 ⑩ η1 η2 ⑫ η2 つぎに、未知数を決定するための方程式を x-y 平面(z=0)における境界条件より導出す る。 境界条件 (z=0 において) zˆ × (E1 − E 2 ) = 0 zˆ × (H1 − H 2 ) = 0 ⑮ ⑯ ⑰ − jk1 x sin θ i E: + R e − jk1 x sin θ r = Te − jk2 x sin θ t y e cos θ i − jk1x sin θi cos θ r T H: e − R e − jk1 x sin θ r = cos θ t e − jk2 sin θ t x η1 η1 η2 ⑱ 上式が、任意の x に対して成立する条件を書くと、 光の屈折の法則 k1 = ω ε 1 µ1 ni = ki ε i µi = k0 ε 0 µ0 位相について、 k1 sin θ i = k1 sin θ r = k 2 sin θ t θi = θr ε 1 sin θ i = ε 2 sin θ t は屈折率(refractive index)に対応 ⑲ ⑳ (反射の法則) (スネルの法則) ∵) ⑰,⑱の各項は x 方向の周期関数になっており、すべての周期が同じでなければ 任意の x について成り立たないからである。 これより、 ⑲は位相整合条件と呼ばれる。 波動工学-5.doc 09/04/13 57 振幅について、 1+ R = T cos θ i R cos θ r T − = cos θ t η1 1− R = η1 Ⅰ η2 η1 cos θ t T η 2 cos θ i Ⅱ これを解いて、 2η 2 cos θ i 2 = η cos θ t η 2 cos θ i + η1 cos θ t 1+ 1 η 2 cos θ i η cos θ i − η1 cos θ t R = 2 η 2 cos θ i + η1 cos θ t T= Ⅲ Ⅳ さて、この直交偏波の場合にはどのような媒質条件、入射角で も(ただし、 ε 1 = ε 2 は除く) R = 0 になることはない。 180°位相変化 ε1 : 小 ε2: 大 位相変化なし 位相変化なし ε1 : 大 ε2: 小 位相変化なし 証明 (i) ε 2 > ε 1 のとき、 η 2 < η1 また、スネルの法則より、 θ i > θ t つまり、 cosθ i < cosθ t よって、 R の分子は η 2 cosθ i − η1 cosθ t = 小 × 小 − 大 × 大 < 0 (高校物理の「光波」で習った(?)屈折率の低い媒質から高い媒質に 向かって垂直入射して反射するときに固定端反射[位相が 180°反転]と なることの説明) (ii) ε 2 < ε 1 のとき、 η 2 > η1 また、スネルの法則より、 θ i < θ t つまり、 cosθ i > cosθ t よって、 R の分子は η 2 cosθ i − η1 cosθ t = 大 × 大 − 小 × 小 > 0 (高校物理の「光波」で習った(?)屈折率の高い媒質から低い媒質に 向かって垂直入射して反射するときに自由端反射[位相が同じ]となるこ との説明) よって、(i), (ii)より R ≠ 0 ■ それに対して、5.2 節で説明する平行偏波は R = 0 となる入射 角(ブリュースター角)が存在する。 波動工学-5.doc 09/04/13 58 図解 位相整合条件(反射の法則、スネルの法則)の図解説明 λ1 θi θi θt θt λ2 λ1 λ = 2 sin θi sin θt 2π 2π λ2 = λ1 = λx ≡ k1 k2 sin θt = sin θi ⋅ λ2 k1 = sin θi λ1 k2 1 = εr sin θi 振幅条件(反射係数、透過係数)の図解説明 1 1 η1 1 R η1 η1 T η2 cosθ i − R η1 cosθ r T η2 T 接線成分が等しいためには、 電界 磁界 R 1+ R = T cosθi − R cosθr η1 = T cosθt η2 cosθ t 波動工学-5.doc 09/04/13 59 コーヒー ブレイク(フレネルの反射係数について) マクスウェルは「光の電磁波説」の説得性のために(光速と電磁波の速度が同じこと はわかったが、それだけでは光と電磁波が同じものだと言うにはちょっと信頼性に欠 ける)、光の分野で反射・屈折波の振幅を与えるフレネル(1788∼1827, フランス)の 公式(1823 年)を電磁波の分野で求めたかったが、残念ながらそのために必要な境界条 件を見出すことができなかった。境界条件(4 章)は後にヘルムホルツにより見出され る(1870 年)が、ヘルムホルツはフレネルの公式の問題に取り組まなかった。そしてヘ ルムホルツの本を読み、この問題を解いたのがローレンツであった。ローレンツは 1875 年*1 にライデン大学の就任講演で発表した。これによって、マクスウェルの唱え る「光の電磁波説」はより確実性を増した(当時はヘルツの実験による電磁波が確認 された 1887 年より前であり、マクスウェル理論の同調者は少なかった)。 参考文献 ○ 徳丸仁, 基礎電磁波, 森北出版, p.59, 1992. *1 H.A. Lorentz: Academisc profschriff, Leiden (1875) 波動工学-5.doc 09/04/13 60 媒質が導電性の時 z σ >> 1 が成り立つとき jωε 特に損失が大きい良導体で、 (ε 1 , µ1 , σ ) 複素誘電率 ∇ × H = i + jωε 1E ⎛ σ ⎞ ⎟E = σE + jωε 1E = jω ⎜⎜ ε 1 + jω ⎟⎠ ⎝ ε2 ε 2 = ε1 − j ε2 σ σ = 1+ ≅ >> 1 ε1 jωε 1 jωε 1 ⑳ より θt ≒ 0 Ⅴ σ ω Ⅵ εr = Ⅶ Ⅷ Ⅲ より T ≒0 Ⅸ Qη 2 = Ⅳ より R ≒ −1 Ⅹ 透過波は ⑪, Ⅷ より Et = Tyˆ e jk 2 z Ht = T η2 xˆe jk 2 z σ − jπ e ωε 1 k 2 = ω ε 2 µ 2 = ω ε 1 µ 1 ε r = k1 jk1 σ 2 ωε 1 (1− j ) z =e jk1 σ 2 ωε1 z + k1 XI σ (1 − j ) 2ωε 1 = k1 e jk 2 z = e 4 σ 2 ωε 1 z =e jk1 σ 2 ωε 1 z k1 e σ 2 ωε1 z XII −1 表皮の厚さ(skin depth): 振幅が e = 1 / e に減衰する距離 k1 σ z = −1 2ωε 1 z=− 1 k1 2ωε 1 σ =− 2 ωµ 1σ XIII 波長 k1 2π σ z = 2π , k1 = ω ε 1 µ1 = 2ωε 1 λ1 z ≡ λ 2 = λ1 2ωε 1 σ XIV µ1 →0 ε 1ε r 波動工学-5.doc 09/04/13 61 透過波の図示 位相 Hi Ei 振幅 z θi y Et x Ht 等位相面 λ 2 = λ1 完全導体の場合 T =0 R = −1 2ωε 1 等振幅面 1/ e 倍 σ 2 ωµσ σ → ∞ とおくと、 jωε 1 θi = θr Mathematica でより詳細に描いた等振幅面のグラフを示す( σ を変化)。 62 波動工学-5.doc 09/04/13 62 完全導体(PEC)による反射 反射領域 直交偏波では、 Ei = yˆ e − jk1 ( x sin θi − z cosθi ) Hi = 1 (zˆ sin θ i + xˆ cos θ i )e − jk ( x sinθ − z cosθ ) 1 η1 i i E r = − yˆ e − jk1 ( x sin θi + z cosθi ) Hr = − 1 η1 (zˆ sin θ i − xˆ cos θ i )e − jk ( x sinθ + z cosθ ) 1 i i Et = H t = 0 total field は E1 = E i + E r = yˆ e − jk1x sin θi ⋅ 2 j sin (k1 z cosθ i ) 63 ⎡ zˆ ⎤ xˆ H1 = H i + H r = e − jk1x sin θi ⎢ 2 j sin (k1 z cos θ i ) sin θ i + 2 cos(k1 z cos θ i ) cos θ i ⎥ η1 ⎣η1 ⎦ 64 この場合、表面電流を計算してみる。 z=0 E1 = 0 H1 = xˆ J = nˆ × H1 = yˆ 2 cos θ i η1 2 cosθ i η1 65 e − jk1x sin θi [ m] A e − jk1x sin θi 66 z (= 2nˆ × H i ) Hi θ i θ r = θi Hr J [ A / m] y x 導体板が受ける力 F = lI × B 電流がローレンツ力により受ける力 1m2 当たり 瞬時値表現 ⎧ 2 cos θ i ⎫ ⎧ 2 cos θ i ⎫ 4µ cos 2 θ i f = ⎨ yˆ cos(ωt − k1 x sin θ i )⎬ × ⎨µxˆ cos(ωt − k1 x sin θ i )⎬ = − zˆ cos 2 (ωt − k1 x sin θ i ) 2 η η η 1 1 1 ⎩ ⎭ ⎩ ⎭ − zˆ 2µ η1 2 cos 2 θ i [N] 時間平均 時間平均で 1/2 このように、電磁波は物体を押す能力(電磁運動量)を持っている。今のように物体 に及ぼす力を放射圧と言う。(例:網膜剥離のレーザー治療、太陽風に押される彗星 の尾など) 波動工学-5.doc 09/04/13 63 領域 1 は定在波となる z Ei θi θ r = θi Er x y E i = Eyˆe − jk (− z cos θi + x sin θi ) E r = − Eyˆ e − jk ( z cos θi + x sin θi ) E = E i + E r = yˆEe − jkx sin θi ⋅ 2 j sin (kz cosθ i ) 定在波 z v= 等位相面 ω k sin θ i = c sin θ i 谷 山 谷 山 谷 π k cosθ i λ 2π = 0 k sin θ i sin θ i y x 波動工学-5.doc 09/04/13 64 コーヒー ブレイク(物理光学近似について) 式 66 の J s = 2nˆ × H i は完全導体で出来た無限平面の散乱体に入射波 H i を当てたときに 散乱体上に誘起される電流である。J s = 2nˆ × H i を公式として用い、散乱体が曲面とな っている場合でも、散乱体が波長に比べて十分に大きい場合には散乱体上に J s = 2nˆ × H i という表面電流が誘起されると仮定して、この電流が放射する界を計算 (その際、界等価定理から散乱体は取り除いて自由空間で計算する)して散乱界を計 算する手法がある。この計算手法は物理光学(Physical Optics)近似、略して PO と呼ば れる。厳密にはマクスウェルの方程式を境界条件の下で解く必要があるが、高周波で は PO 近似は良い精度となる。 波動工学-5.doc 09/04/13 65 全反射(Total reflection) ε r = ε 2 / ε1 平行、直交偏波いずれも εr <1 θt > θi 56 sin θ i = ε r sin θ t スネルの法則より 2 (cosθ t )2 = (1 − sin θ t2 ) = 1 − sin θ i εr 57 これが負となる θ t は虚数 1− sin 2 θ i εr ≡0 全反射が起こり始める 入射角 sin θ i = ε r 臨界角(critical angle): θ 0 = sin −1 ε r cosθ t = jα 58 (式 59 において、 z → −∞ で電磁界は減衰しなければならな いので α は負の実数である) 透過波を求めると、 E t = Tyˆ e − jk2 ( x sin θ t − z cosθ t ) ( 直交偏波 ) E t = T zˆ sin θ t − xˆ cosθ t e − jk2 (x sin θ t − z cos θ t ) 指数部 e − jk 2 ( x sin θ t − zjα ) = e − jk2 x sin θ t − k 2αz 平行偏波 z 方向に減衰 59 R = η 2 cos θ i − η1 cos θ t η cos θ i − jη1α = 2 =1 η 2 cos θ i + η1 cos θ t η 2 cos θ i + jη1α 直交偏波 R = η1 cos θ i − η 2 cos θ t η cos θ i − jη 2α = 1 =1 η1 cos θ i + η 2 cos θ t η1 cos θ i + jη 2α 平行偏波 a, b ∈ R (実数) a − jb a − jb a2 + b2 = = =1 a + jb a + jb a2 + b2 60 波動工学-5.doc 09/04/13 66 入射波等位相面 入射波+反射波の等位相面 εr <1 2π 2π = k1 sin θ i k 2 sin θ t 透過波等位相面 透過波等振幅面 振幅は指数関数的に減衰 媒質2にも電磁界は染み込んでいるが、電力が漏れていくことはない。このように染 み込んでいるが、電力としては全てはね返る波をエバネッセント波(evanescent wave) と呼ぶ(それに対して、損失を受けながら減衰する波を attenuating wave と呼ぶ)。 全反射では媒質2にも電磁界が染み込むところが完全導体による反射とは異なる。光 ファーバーではこの全反射を利用して電力を閉じ込めている。 total field の位相 ⑦, ⑨より、 E i = yˆ e − jk1 ( x sin θ i − z cos θ i ) E r = Ryˆe − jk1 ( x sin θ i + z cosθ i ) ∴ R = e jα ′ R =1 ( ) E1 = E i + E r = e − jk1 x sin θ i e jk1z cosθ i + e − jk1z cosθ i e jα ′ yˆ =e − jk1 x sin θ i e j α2′ = e − jk1x sin θ i e (e j α2′ jk1 z cos θ i e − j α2′ + e − jk1 z cos θ i e j α2′ α′⎞ ⎛ ⋅ 2 cos⎜ k1 z cosθ i − ⎟ yˆ 2⎠ ⎝ z 等位相面 )yˆ v= 61 ω k1 sin θ i = c sin θ i 谷 山 π 谷 2 π 2 山 谷 −θi 2π k1 sin θ i π −θi k1 cosθ i y x 波動工学-5.doc 09/04/13 67 コーヒー ブレイク(全反射について) ●現在の高速情報通信を支える光ファーバーは全反射を利用してエネルギーを伝送 している。光ファイバーは基本的には下の図のように、屈折率が高いコアとその周り を取り囲むクラッドで構成されている。コアを伝わる光はコアとクラッドの境界で全 反射を起こし、コアに閉じ込められて伝送される。全反射によるエバネッセント波は クラッドにある。エバネッセント波はエネルギーを外に漏らさないとは言っても、そ れはその領域が無限に広い場合に通用することであり、もしクラッドを無くして空気 を利用してコア剥きだしの光ファイバーを作ったとしたら、コアに何かを接触させた とたんに接触物によりエバネッセント波が再放射を起こしてしまう。従って、エバネ ッセント波が十分減衰し、何かを接触させても問題ない程度の厚さのクラッドで念の ためにコアを覆っているのである。 半径 この境界で全反射 コア 屈折率 クラッド さらに光ファイバーには下の図に示すようにマルチモードとシングルモード(モノモ ード)がある。光ファイバーに入射するレーザーは様々な角度でコアに入射する可能 性がある。そのとき、様々なモードが励振されるが、多くのモード(2つ以上)を伝 搬させるものをマルチモード、1つだけのモードを伝搬させるものをシングルモード と言う。マルチモードの場合、各モードの伝搬速度は異なり、変調波形の歪が問題と なるため、短距離で用いられる。マルチモードではコアの屈折率分布はステップ・イ ンデックス(コア内は一定の屈折率)とグレード・インデックス(コア内で屈折率は 中心が大きく、放射状に変化)がある。グレード・インデックスは外側を通るモード は屈折率が低い領域を通過するので速度が早くなり、より短い内側の経路を通るモー ドは速度が遅くなるようになっており、最後の出力ポートで全てのモードを重ね合わ せても変調波形が崩れないようにできている。シングルモードは1つの経路の光しか 通さず、波形が歪まないのでマルチモードよりも特性が良い。ただし、同じ波長で使 うならばシングルモードにするためにはコアの径を小さくする必要があり、コストが かかる。 波動工学-5.doc 09/04/13 68 Input t マルチモード (ステップ・インデックス) Output t t t t t マルチモード (グレード・インデックス) t t t t シングルモード t t シングルモード 性能 コスト ○ × マルチモード (グレード・インデックス) △ △ マルチモード (ステップ・インデックス) × ○ ●水面下にいる魚は空を見ることが出来るだろうか?水の誘電率は空気の誘電率よ りもかなり大きい。従って、魚が斜め上の空を見ようとしても、全反射が起こり、見 ることはできない。左下の写真はこのことを確認したものである。水中カメラで海中 から海面を撮ったものである。海面は鏡のようになり、空を見ることができない。一 方、空気側から海水中は右下の写真のように(水がすきとおっていて波がなければ) 簡単に見ることができる。 サイパン オーストラリア、グレートバリアリーフ (海面は鏡のようになり、空を見ることが できない) 波動工学-5.doc 09/04/13 69 5.2.2 平行偏波 Hi r : 反射(reflection) z i : 入射(incidence) k̂ r Hr k̂ i θ i θr Ei Er y θt Ht k̂ t (ε 1 , µ1 ) x (ε 2 = ε 1ε r , µ1 ) t : 透過(transmission) Et 入射波の電界が入射面内にあり、入射面に平行なので、この入射波の偏波を平行偏波 と呼ぶ。磁界が入射面に直交しているので TM 波(Transverse Magnetic Wave) または P 波(「平行」を意味する parallel)、あるいは電界が入射面内にあるから E 波とも言われ る(単なる定義である)。(直交偏波, 平行偏波), (TE 波, TM 波), (E 波, H 波)の呼び方 は主に電磁波の分野で使われ、(S 波, P 波)の呼び方は光波の分野で使われることが多 い。 直交偏波の場合と同様に、入射波、反射波、透過波を書き下す。 Hi = yˆ η1 e − jk i ⋅r = yˆ η1 e − jk1 ( x sin θi − z cosθi ) 35 E i = η1H i × kˆ i = (− zˆ sin θ i − xˆ cos θ i )e − jk1 ( x sin θi − z cosθi ) yˆ yˆ H r = R e − jk r ⋅r = R e − jk1 ( x sin θr + z cosθr ) η1 η1 ( ) E r = η1H r × kˆ r = R − zˆ sin θ r + xˆ cos θ r e − jk1 ( x sin θr + z cosθr ) yˆ yˆ H t = T e − jk t ⋅r = Te − jk2 ( x sin θt − z cosθt ) η2 η2 E t = η 2 H t × kˆ t = T (− zˆ sin θ t − xˆ cos θ t )e − jk2 ( x sin θt − z cosθt ) E1 = E i + E r , E 2 = Et H1 = H i + H r , R : 反射係数 T : 透過係数 H2 = Ht 36 37 38 39 40 41 波動工学-5.doc 09/04/13 70 z = 0 における境界条件 nˆ × (E1 − E 2 ) = 0 nˆ × (H 1 − H 2 ) = 0 42 関係のある電磁界成分を書き下す。 − jk1 x sin θ i E: + R cosθ r e − jk1x sin θ r = −T cosθ t e − jk2 x sin θ t x − cos θ i e T − jk2 x sin θ t 1 − jk1x sin θ i R − jk1 x sin θ r H: e + e = e y η1 η1 η2 43 44 位相は k1 sin θ i = k1 sin θ r = k 2 sin θ t θr = θi 45 (反射) sin θ t = 1 εr sin θ i (スネル) ここで、 ε r = ε 2 / ε 1 振幅は − cosθ i + R cosθ r = −T cosθ t 1 R T + = η1 η1 46 47 η2 46 より、 (− 1 + R ) cosθ i = −T cosθ t = − η2 (1 + R ) cosθ t η1 48 結局反射係数、透過係数は以下のように求まる。 η1 cosθ i − η 2 cosθ t η1 cosθ i + η 2 cosθ t 2η 2 cosθ i η T = 2 (1 + R ) = η1 η1 cosθ i + η 2 cosθ t R= 49 50 波動工学-5.doc 09/04/13 71 ブリュースター角(Brewster Angle) *1 *1 D. Brewster: Phil. Trans. Roy. Soc., 105, 125-159 (1815) θ t < θ i , η1 > η 2 (ε 2 > ε1 ) 51 平行偏波の場合には、式 49 において R = 0 となる入射角 θ i が存在する。 η1 cosθ i − η 2 cosθ t = 0 , cosθ i = 1 εr cosθ t 1 スネルの法則⑳より sin θ t = θ t を消去すると ε r cos 2 θ i + εr 52 sin θ i sin 2 θ i εr 53 =1 ε r 2 (1 − sin 2 θ i ) + sin 2 θ i = ε r εr −εr2 ε sin θ i = = r <1 2 1+ εr 1− εr 2 sin θ i = θ b = sin −1 εr 1+ εr 反射係数が 0 となる、つまり 入射波が全て透過する入射角 εr 1+ εr (Brewster Angle) 54 η2 1 = 55 η1 εr ちなみに、直交偏波の場合には、IV で η 2 cosθ i − η1 cosθ t = 0 となるためには、 この時 T= cosθ i = ε r cosθ t sin θ i = ε r sin θ t cos 2 θ i + sin 2 θ i = ε r > 1 θ b は存在しない 等位相面 λ1 = k1 / 2π θb λ2 = k 2 / 2π θt 波動工学-5.doc 09/04/13 72 直交偏波と平行偏波の反射係数 反射係数と透過係数をもう一度まとめる。 η 2 cosθ i − η1 cosθ t ⎧ ⎪ R⊥ = η cosθ + η cosθ ⎪ 2 i 1 t ⎨ 2η 2 cosθ i ⎪T = ⊥ ⎪⎩ η 2 cosθ i + η1 cosθ t η1 cosθ i − η 2 cosθ t ⎧ ⎪ R// = η cosθ + η cosθ ⎪ 1 i 2 t ⎨ 2η 2 cosθ i ⎪T = // ⎪⎩ η1 cosθ i + η 2 cosθ t (直交偏波) (平行偏波) 反射係数 R の入射角依存性( T// は入射側の媒質と異なるので、オーダーも異なるから 描かない) 屈折率 n1=1, n2=2 のとき 絶対値は等しい ブリュースター角(63.4°) 屈折率 n1=2, n2=1 のとき 絶対値は等しい 全反射している。R は 複素数だが、|R|=1 臨界角(30°) ブリュースター角(26.6°) 波動工学-5.doc 09/04/13 73 コーヒー ブレイク(ブリュースター角について) 直交偏波ではどうしても異なる媒質境界で反射波が出てしまうが、平行偏波ではある 特殊な角度(ブリュースター角)で入射する場合、完全に他方の媒質に沈み込む。ち ょっとブリュースター角について説明する。 ●例えば、川の水面下にいる魚を飛んでいって捕まえる鳥がいるが、場所によっては 太陽光の反射が眩しくて水面下を見ることができない場合がある。このとき、鳥が水 面を見下ろす角度と太陽光が水面に入射する角度は等しく、その角度がブリュースタ ー角だったとする。そのような鳥は目に平行偏波しか通さない偏光板を持っており、 水面で反射した太陽光は 100%直交偏波なので、それをカットすることができる。水 中から来る光は水中から見ると透過波なので、両方の偏波を含んでおり、これによっ て、水中から来る光のみを見ることができ、魚を簡単に捕らえることができるのであ る(さらに前述の「全反射について」のコーヒーブレークを見ると魚は全反射によっ て斜め上の空を見ることが出来ないので、鳥は斜め進入して水中の魚を狙えば非常に 有利なことがわかる)。実際には物理現象はそんなに急峻ではないために、厳密にブ リュースター角でなくても効果がある。ブリュースター角は反射波の偏波に偏りを持 たせる角度なので偏光角とも呼ばれる。 p Esun v E sun 空気 水中 p E fish v E fish 波動工学-5.doc 09/04/13 74 このことを、(ここから2つめの●で)後述する偏光板を使って確認した写真が下の 写真(2006 年 1 月 27 日、東工大のひょうたん池)である。左の偏光板は電界が(水 面に対して)横方向に振動する光を通すが、右は電界が縦方向に振動する光を通すよ うに置いている。S 波をカットして P 波を観測すると池の底が見える。 http://www-antenna.ee.titech.ac.jp/~hira/hobby/edu/em/fresnel/brewster_ang/index.html ●屋外からガラス窓を通して屋内を見るときのことを考えよう。そのとき、屋外には 太陽があり、太陽光がガラス反射して映ってしまい眩しくて屋内が見えないときがあ る。この状況も上の例と同じような状況である。上の例における水がこの例のガラス に対応する(もちろん、ガラスの厚さは有限なので、上のような簡単な議論にはなな い。この問題はそんなに難しくないが、授業の範囲を超える。しかし、今はガラスの 厚さは有限だがその反射特性はガラスの厚さが無限のときと同じような特性だとし よう)。しかしそのようなときでもある偏波面を持つ直線偏波しか通過させない「偏 光板」を持っていれば、太陽光の直交偏波成分がガラスに沈み込むブリュースター角 から屋内を覗き込み、偏光板を回転させて太陽の反射光だけをカットすれば屋内を見 ることができるのである。 例えば、地下鉄では斜めに窓ガラスを見ると車内の蛍光灯や風景が映ってしまってト ンネルの壁が見にくいが、偏光板を使って斜めの角度でも反射光をカットしてトンネ ルの壁を見ることもできる。 また、プラスチックなどのピカッと光る反射光を偏光板の角度を変えながら眺めてい 波動工学-5.doc 09/04/13 75 ると、ピカッと光る反射光を消すことができる。スキーのゴーグル(偏光サングラス) で雪の斜面の太陽光のまぶしい反射を軽減するのもこれと同じ原理である。 ●偏光板について 光と電波(電磁波)は同じ物理現象であるが、電磁波の“偏波”のことを特に光では “偏光”と言う。電界はいろいろな向きに振動しているが、偏光板(polarizer)を透過 させるとそのうちある1つの軸方向の電界の向きを持った光のみ透過する。 偏光板は立体映画の眼鏡に使われていたり、写真撮影機材として売られていたり、ス キーのゴーグル(偏光サングラス)に使われていたりする。偏光板そのものを買うこ ともできる。 偏光板。東急ハンズで入手可 偏光面を合わせると光を透 偏光面を 90°ずらすと光 偏光面を 45°ずらすと、全然 能。1 枚¥140 程度。 過させる。 を通過させない。 ずらさないときの半分の量 の光を透過する。 偏光板を使うと偏波の復習もできるし、いろいろ面白いことがわかる。例えば最近普 及してきた液晶ディスプレイは斜めの直線偏波の光を出していることもわかるし、ち ょっと高度な話題なので後で微小ダイポールを習ってから説明するが、空が青い理由 (下の URL 参照)も偏光板を使って実験してみることもできる。いろいろ遊んでみよ う。 偏光板の動作原理 偏光板は細長い分子からなるスリットと考える とわかりやすい。そして、スリットは人工誘電体 と考えるとわかりやすい E E 分極小 (ε: 小) 分極大 (ε: 大) 反射小。透過大。 反射大。透過小。 ε E ①反射量は偏 光板と偏波の 角度で異なる ②反射が少ないな らば透過は多い。 (偏波フィルタ) http://www-antenna.ee.titech.ac.jp/~hira/hobby/edu/em/sky_polarization/index-j.html