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インド・インドネシア・中国の ソーシャルコマース市場

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インド・インドネシア・中国の ソーシャルコマース市場
2012 年 12 月 17 日
インド・インドネシア・中国の
ソーシャルコマース市場に関する調査結果 2012
-インドは OtoO、インドネシアは物販系、中国は物販・デジタル系が有望-
【調査要綱】
矢野経済研究所では、次の調査要綱にてインド・インドネシア・中国のソーシャルコマース市場の調査を実施した。
1.調査期間:2012 年 8 月~11 月
2.調査対象:インド・インドネシア・中国のソーシャルコマース関連企業、ソーシャルプラットフォーム運営企業等
3.調査方法:当社専門研究員による直接面談、電話・e-mail によるヒアリング、ならびに文献調査を併用
<ソーシャルコマース市場とは>
本調査におけるソーシャルコマース市場とは、ソーシャルメディア・ソーシャルツールを介して行われる商業活動(物販
およびサービス)を指す。当該市場には OtoO(Online to Offline)型も含まれるが、市場規模はオンラインで完結する商
業活動(物販およびサービス)のみを対象に算出している。
【調査結果サマリー】
‹ インドのソーシャルコマース市場規模は 2012 年で 2.2 億米ドルの見込み、
2015 年で 31.8 億米ドルを予測
インドでは EC(電子商取引)市場は成長分野だが、現状は物流環境の悪さや決済環境の特徴などによ
り、参入に対する投資コストは高いと考えられる。一方で、ソーシャルメディア人口は多く、ソーシャルプラ
ットフォームのアクティブ率が高い。また影響力も強いので、OtoO(Online to Offline)型の活用分野がより
有望であると考える。
‹ インドネシアのソーシャルコマース市場規模は 2012 年で 1.1 億米ドルの見込み、
2015 年で 4.2 億米ドルを予測
インドネシアは、ジャワ島、特にジャカルタを中心にすでに EC 市場が急成長している。ソーシャルプラッ
トフォームの利用率・アクティブ率も高いため、物販系のソーシャルコマース分野は有望であると考える。
一方のデジタル系については、課金・コンテンツ開発等の課題から、市場創出・形成の段階にあるため、
デジタル系ソーシャルコマースの成長性には中長期の視点が必要である。
‹ 中国のソーシャルコマース市場規模は 2012 年で 491.3 億米ドルの見込み、
2015 年で 897.3 億米ドルを予測
中国は、物販系・デジタル系サービスとも EC 市場はすでに大きく成長している。これに伴い、複数のロ
ーカル(主に中国の地元企業)のソーシャルプラットフォームも成長しており、売上規模も拡大している。
物販系・デジタル系ともソーシャルコマースの成長性が高く、今後も市場規模の拡大が見込まれる。
◆ 資料体裁
資料名:「アジア新興国でのソーシャルプラットフォームにおけるビジネス展望」
発刊日:2012 年 11 月 26 日
体 裁:A4 判 275 頁
定 価:199,500 円(本体価格 190,000 円 消費税等 9,500 円)
‹ 株式会社 矢野経済研究所
所在地:東京都中野区本町2-46-2 代表取締役社長:水越 孝
設 立:1958年3月 年間レポート発刊:約250タイトル URL: http://www.yano.co.jp/
本件に関するお問合せ先(当社 HP からも承っております http://www.yano.co.jp/)
㈱矢野経済研究所 営業本部 広報チーム TEL:03-5371-6912 E-mail:[email protected]
本資料における著作権やその他本資料にかかる一切の権利は、株式会社矢野経済研究所に帰属します。
本資料内容を転載引用等されるにあたっては、上記広報チーム迄お問合せ下さい。
Copyright © 2012 Yano Research Institute Ltd.
2012 年 12 月 17 日
【調査結果の概要】
1.インドのソーシャルコマース市場~有望分野はオンライン完結型ではなく OtoO 型
1-1. 市場環境と特性
インドのインターネット人口は、インドの IAMAI (Internet & Mobile Association of India)の統計データ
によると、2012 年末で約 1 億 2,000 万人を超えるとされる。ただし、その多くはインターネットカフェやオフ
ィスなど自宅外からの利用である。したがって、インターネット先進国のように常時接続が前提ではなく、
サービスや目的、時間を決めて、インターネットを利用するスタイルが一般的である。モバイルインターネ
ット利用率はまだ低い。
インドでは、数あるインターネットサービスの中で電子メールやチャットなどコミュニケーション系サービ
スの利用率が高く※、特に昨今ソーシャルメディアが急速に普及している。Facebook や Twitter 等、ローカ
ル(インドの地元企業)よりは外資系のソーシャルツールが普及している。
また、コミュニケーション系サービスのアクティブ率が高く※、ソーシャルメディアやソーシャルツールも利
用者が急増している。詐欺などのトラブルが多い国ともいわれるなか、友人・知人からの情報やつながりが
非常に重視される傾向が強い。また、インターネット事情がよくないことから、検索などを駆使したネットサ
ーフィンよりは、予めサービスや目的を特定した上でインターネットを利用する傾向もある。そのため、ソー
シャルメディアを頻繁に利用することでアクティブ率はますます上昇する。
事実、インドでは結婚や交際のマッチングなど、インドの地元企業によるソーシャル・ネットワーキング・
サービス(SNS)で急成長しているサービスもあり、ソーシャルプラットフォームを活用したビジネスは将来
性があるものと考える。
※参考データ:IAMAI
1-2. 市場現況と予測
インドにおいては物販系のソーシャルコマースは、まだほとんど立ち上がっていないのが現状である。
インドの EC(電子商取引)市場自体は伸びているが、大部分が航空券・チケット予約などであり、物販系
はまだ弱い。その要因は、概して物流環境の悪さや決済環境の特徴にある。クレジットカードや銀行口座
の普及率は低く、概して決済は代引きが 9 割を超える。ソーシャルメディア人口が多いため、ソーシャルコ
マースの潜在性はあるものと考えるが、市場環境のインフラ整備の必要性などを考慮すると、現状ではソ
ーシャルコマース参入に対する投資コストは高いと考えられる。
一方のデジタル系のソーシャルコマースも、まだ立ち上がったばかりである。オンラインゲームやソーシ
ャルゲームサービスの利用者は増加しているが、前出の決済環境などによりユーザ課金率、ARPU
(Average Revenue Per User)ともに低い。したがって、デジタルコンテンツ系のソーシャルサービスも、オン
ラインでビジネスを完結させるタイプのものが浸透するのは中長期の視点が必要だろう。
こうしたことから、インドではソーシャルメディアやソーシャルツールは、モノではなく情報流通プラット
フォームとしての有望性が非常に高い。物販であれば、OtoO(Online to Offline)戦略のためのツールとし
ては非常に有効に機能すると考えられる。なお中期的には PC 系経由が中心となると見込まれる。
インドにおけるソーシャルコマース市場規模は 2012 年で 2.2 億米ドル、2015 年には 31.8 億米ドルを予
測する。
図 1. インドのソーシャルコマース市場規模予測
(億米ドル)
35
31.8
30
25
18.9
20
15
10
5
7.0
2.2
2012年
2013年
2014年
2015年
(見込)
(予測)
(予測)
(予測)
矢野経済研究所推計
注 1: 事業者売上高ベース
注 2: 市場規模はソーシャルコマース(物販およびサービス)のうち、オンラインで完結する商業活動(物販およびサービス)
のみを対象とし算出。広告収入を含まない。
注 3: (見込)は見込値、(予測)は予測値
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2012 年 12 月 17 日
2.インドネシアのソーシャルコマース市場 ~物販系有望、デジタルコンテンツ系は中長期的視点で
2-1. 市場環境と特性
インドネシアのインターネット人口は、ITU(International Telecommunication Union)の統計データによる
と、2011 年末で約 2,700 万人であったが、その多くはインターネットカフェやオフィスなど自宅外からの利
用である。都市部では街の Wi-Fi スポットからの利用も増えている。ブロードバンドは、低速度帯の
ADSL が中心である。群島国家のため、固定系のブロードバンドインフラが拡充しにくいという背景があり、
昨今はジャワ島を中心にモバイルインターネット利用者も増加傾向にある。スマートフォンはジャカルタな
ど、都市部を中心に普及し、昨今では、Android ベースの低価格スマートフォン端末が市場を牽引してい
る。
インドネシアでも、昨今ソーシャルメディアが急速に普及しているが、ローカル(インドネシアの地元企
業)よりは外資系のソーシャルツールが多く利用されている。
2-2. 市場現況と予測
インドネシアでは、EC(電子商取引)市場が急成長している。物流などの市場環境インフラに関して懸
念はあるものの、人口集中しているジャカルタなどジャワ島を中心に、効率的にサービス運用している EC
事業者もある。インターネット先進国ほどではないが、オンライン決済も比較的浸透してきており、今後成
長が見込まれる有望分野である。
インドネシアはソーシャルメディア人口が非常に多いといわれ、またクチコミの影響力も大きいことから、
物販系のソーシャルコマースは有望であると考える。
またジャカルタを中心に、クーポン系の市場が急成長している。Android ベースの安価なスマートフォン
の登場により、モバイルインターネットユーザも増加していることから、モバイル系ソーシャルプラットフォー
ムのサービスに関する成長性も高いとみる。
ただし、モバイル系は現状はプリペイド決済が主流であるため、課金に関して課題がある。日本ではモ
バイルインターネットサービスにおいてキャリア決済(通信会社の決済代行)を行うことができたことで、急
速に普及してきた背景があるが、プリペイド決済が中心のインドネシアではその環境に違いがある。
また 3G など高速ネットワークサービスはまだ高価であるので、インターネット先進国のように常時接続
が前提のアプリケーションではなく、通信環境を考慮したサービス開発が重要である。
一方、デジタル系のソーシャルコマースは、まだ立ち上がったばかりである。
ソーシャルゲームや動画配信など、デジタルコンテンツ系サービスは堅調に伸びてはいるが、デジタルコ
ンテンツに課金をするという習慣にはなっておらず、またコンテンツそのものも成熟してはいない。その意
味では、まだ市場創出・形成の段階にある。
インドネシアにおけるソーシャルコマース市場規模は 2012 年で 1.1 億米ドル、2015 年には 4.2 億米ド
ルを予測する。物販系のソーシャルコマースの成長性が高い一方で、デジタルコンテンツ系の市場の成
長性には中長期の視点が必要である。
図 2. インドネシアのソーシャルコマース市場規模予測
(億米ドル)
5.0
4.2
4.0
2.9
3.0
1.9
2.0
1.1
1.0
2012年
(見込)
2013年
(予測)
2014年
(予測)
2015年
(予測)
矢野経済研究所推計
注 4: 事業者売上高ベース
注 5: 市場規模はソーシャルコマース(物販およびサービス)のうち、オンラインで完結する商業活動(物販およびサービス)
のみを対象とし算出。広告収入を含まない。
注 6: (見込)は見込値、(予測)は予測値
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2012 年 12 月 17 日
3.中国のソーシャルコマース市場 ~物販系・デジタル系とも有望、プラットフォームはローカル系中心
3-1. 市場環境と特性
国連の統計データによると、中国の人口は約 13 億 7,000 万人、国土・人口とも世界最大規模である。東
南アジアの新興国と比較して年齢層はやや高い。近年、中間層以上が増加している。人口規模は、イン
ドと近いが中間層の厚さという面では、圧倒的に大きなマーケットである。
中国国家統計局のデータによると、2011 年末でインターネットの利用者数は約 5 億 1,300 万人、モバイ
ルインターネット利用者は約 3 億 5,000 万人を超えると見られる。
中国では外資系のインターネットサービスが大きく制限されていることもあり、普及しているのは基本的
にローカル系(主に中国の地元企業)のソーシャルプラットフォームやツールである。インドやインドネシア
とは異なり、中国では新浪、捜狐、開心網、人人網、腾讯などのサービスが普及している。事業者数も多
く、それぞれ特色がある。昨今は、SNS だけではなく微博などのマイクロブログも広く普及している。
3-2. 市場概況と予測
中国では、物販系のソーシャルコマースが成長している。EC(電子商取引)市場が CtoC を中心に既に
大きな市場を形成している。加えて、昨今のソーシャルメディアやツールの普及により、ソーシャルプラット
フォーム内や経由における EC 利用が増加している。特に、中国の EC では、ニセモノや粗悪品の流通も
少なくないとされ、利用者は店舗や、サービスの評判や信頼度を非常に重視している。そのため、EC に
おけるクチコミの影響力は特に大きい。大手のソーシャルプラットフォーマーは自社運営の SNS 上で物販
系やクーポン系の EC サービスを展開しているが、クチコミの影響もあって売上規模が伸びている。
一方でデジタル系のソーシャルコマースも、成長している。
中国では、一般的に海賊版や違法コンテンツといった課題が指摘されていることもあり、パッケージ系市
場が育たなかった一方で、従来からオンラインゲーム市場が成長している。ユーザ課金に成功している例
も多く、上場企業も多数ある。PC 系のソーシャルゲーム市場も成長しており、デジタルコンテンツ系のソー
シャルコマースは有望である。現状は PC 系が中心であり、モバイル系は、まだ立ち上がり段階であるが、
スマートフォンの普及とともにモバイル系市場は成長しつつある。
ただし中国では Android 搭載のスマートフォン市場が特に大きいことを考慮する必要がある。また山寨
機と呼ばれる中国ローカルの端末が多数存在し、OS のバージョンも混在している。そのため OS バージョ
ンや端末に依存するネイティブ系のアプリケーションの開発コストは高くなる傾向がある。
中国におけるソーシャルコマース市場規模は 2012 年で 491.3 億ドル、2015 年には 897.3 億ドルを予測
する。概して中国に関する諸問題への懸念が存在する一方で、物販系・デジタル系ともソーシャルコマー
スの成長性は高く、市場規模も拡大が見込まれる。
図 3. 中国のソーシャルコマース市場規模予測
(億米ドル)
1,000
897.3
900
762.0
800
700
600
500
626.6
491.3
400
300
200
100
2012年
(見込)
2013年
(予測)
2014年
(予測)
2015年
(予測)
矢野経済研究所推計
注 7: 事業者売上高ベース
注 8: 市場規模はソーシャルコマース(物販およびサービス)のうち、オンラインで完結する商業活動(物販およびサービス)
のみを対象とし算出。広告収入を含まない。
注 9: (見込)は見込値、(予測)は予測値
Copyright © 2012 Yano Research Institute Ltd.
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