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「オラクルのシェアを奪う」 IBM、マイクロソフトが仕掛ける
技術・製品 technology DBMS 製品最新動向 「オラクルのシェアを奪う」 IBM、マイクロソフトが仕掛ける DBMS(データベース管理システム)大手 3 社の争いが、激しさを増している。トッ プシェアのオラクルに対しIBMとマイクロソフトが低コストや移行の容易さをうた い「乗り換えキャンペーン」を展開。オラクルは機能拡張で迎え撃つ。3 社はデー タウエアハウス (DWH)分野にも専用機を投入。市場が熱気を帯びてきた。 「あくまで私見だが、Oracle Data- を増してきた。 を上回るという(表1) 。同社が5月に発 baseを超えるOracle Databaseにな 米IBMは10月9日、DBMSソ フ ト 表したDB2 9.7は、Oracle Database る」 。これはオラクルの担当者の言葉 「DB2 9.7」のオプション機能として、 用のSQL言語「PL/SQL」や関数への ではない。日本IBMの中林紀彦インフ 「DB2 pureScale」を11月に追加する 対応が機能拡張の目玉。これらの機能 ォメーション・マネジメント ソフトウ と発表した。オラクルのディスク共有 拡張はすべてオラクルからの移行を促 ェア・エバンジェリストが語った言葉 型のクラスタソフト「Real Application すためのものだ。 だ。オラクルのシェアを奪うべく、 Clusters(RAC) 」と同じアーキテクチ マイクロソフトは10月2日、同社の IBMとマイクロソフトの攻勢が激しさ ャを採用したうえで、その性能はRAC DBMSソフト「SQL Server 2008」の 拡販策として、新たなライセンス体系 表1◉大手 3 社の商用 DBMS(データベース管理システム)の最近の動き 企業名 IBM 製品名 DB2 9.7 マイクロソフト SQL Server 2008 最近の動き オラクルからの移行容易性を高める ディスク共有型クラスタソフト「pureScale」や、PL/SQL 互換機能などを加え、 オラクル DBMSとの互換性をアピールすることで移行を促す オラクルに比べた割安感を打ち出す ライセンスの価格改訂や、無償の移行アセスメントサービス、機能理解・比較の ためのセミナーなどを実施。機能面では、標準機能としてレポーティングや OLAP (オンライン分析処理) などの BI (ビジネスインテリジェンス) 機能を搭載す ることで割安感を強調する シェア争いが激しさを増す オラクル Database 11g Release 2 グリッドの実現に向けた機能を充実 ディスク共有型クラスタソフト「Real Application Clusters (RAC) 」に、複数 のデータベースサーバーを一つのリソースプールとして扱う「サーバープール技術」 や、サーバーのリソース追加や削除を容易にするための「グリッド・プラグアンド プレイ技術」を追加。データウエアハウス用途向けに、クラスタを構成するサー バーのメモリー上にデータを分散配置して並列で処理する機能「In-Memory Parallel Query」を追加した を発表した。 「新ライセンスにより、オ ラクルに比べて大幅なコストダウンが 実現できる」 (同社の斎藤泰行アプリケ ーションプラットフォーム製品部エグ ゼクティブプロダクトマネージャ)と する。 迎え撃つオラクルは、9月に発表し た「Database 11g」のRelease 2で更 なるスケーラビリティの向上をアピー ル。RACでクラスタ接続した複数の DBサーバーを一つのリソースプール として扱う「サーバープール技術」な NIKKEI COMPUTER 2009.10.28 97 技術・製品 technology ど様々な新機能を盛り込んだ。 「どれも 他社にはない技術」 (同社の根岸徳彰デ ータベース製品戦略推進部シニアプロ ダクトマネジャー)と強調した。 新たなDB戦争がぼっ発 3社の主な争点は「コスト」 「機能」 トは初期ライセンスコストや保守費を 含め約6600万円で、オラクルの約半額 になるとする。これらの効果を示すよ 「中堅・中小企業への拡販」の三つだ。 うに、9月24日に「コストダウンを理 こうしたDBMSソフトの機能強化が コストの内訳を見ると、まず導入・ 由に米コカ・コーラ・ボトリングなど 進む一方、DWH分野では“専用機”の 保守コストが挙げられる。さらに、オ 多くの企業がオラクルからDB2に移行 台頭が著しい。テラデータやネティー ラクルからの移行を狙う2社は様々な した」と発表した。 ザなどの専業ベンダーに加え、前述の 施策により、移行コストが抑えられる マイクロソフトも、初期ライセンス DBMS大手3社やサイベースなど参入 とアピールする。 コストと保守費用を含め、複数年使用 企業も増えている。 「Oracle Database IBMとマイクロソフトは現在展開中 した場合の比較を提示している。同社 Machine」に代表されるように、 「処理 のキャンペーンにおいて、オラクルと は、DBMSをクアッドコアプロセサ2 性能を高めるには、ソフトだけでなく のライセンス・保守コストの比較を示 個搭載した10台のサーバーにインスト ハードの処理能力を生かした専用製品 し、自社製品に移行したら大幅なコス ールし、3年間利用する場合で試算。 が必要」という考え方は各社に共通し トダウンが可能と強調する(図1) 。 新ライセンスプログラム「Enrollment ている。 日本IBMが提示するのは、DBMSを for Application Platform(EAP) 」を 新たなDB戦争の論点、そしてDWH シングルコアプロセサ8個のサーバー 適用したマイクロソフト製品のコスト 専用機の実態を順番に見ていこう。 で5年間使った場合。IBM製品のコス は約6700万円で、オラクルに比べ8割 安くなる計算だ。EAPは新規ライセン 図1◉日本 IBM、マイクロソフトが提示するオラクルとの価格比較 日本IBMの提示例 スを従来から最大40%値下げした。 DBMSをシングルコアプロセサ8個のサーバーで使用し、5年間 利用する場合。高可用性オプション、パーティショニングツール、 チューニングツールなどを使用 オラクルの場合 (Enterprise Editionで計算、 1CPU当たりのライセンス価格は 516万3000円) 初期ライセンスコスト+初年度保守費用: 7616万8992円 2∼5年間の保守費用:5494万1568円 計:1億3111万560円 日本IBMの場合 (Enterprise Server Editionで計算、 1CPU当たりのライセンス価格は 461万7000円) 初期ライセンスコスト+初年度保守費用: 3693万6000円 2∼5年目の保守費用:2954万8800円 計:6648万4800円 オラクルの 約半額 マイクロソフトの提示例 初期ライセンスコスト :2億652万円 保守費用:4543万4400円 (年間保守費用) ×3 計:3億4282万3200円 98 NIKKEI COMPUTER 2009.10.28 が違う。適正に比較すればオラクルの 方が安い」と反論する。 根岸マネジャーがまず指摘するの は、運用管理にかかるコストだ。 「自動 チューニングなど、オラクルは自動化 が進んでいる部分が他社より多いため、 運用管理工数が少ない」とする。 加えて、 「ライセンスコストなど製品 で比較することが必要だ」 (根岸マネジ マイクロソフトの場合 (Enterprise エディションで計算) ャー) 。オラクル製品はRACや、ハー ドウエアリソースを管理する「Cluster Ready Services(CRS) 」などの機能に 保守費用込みライセンスを 3年間均等払い:2239万×3 計:6717万円 ルの根岸マネジャーは「比較する対象 単体で見るのではなく、システム全体 DBMSをクアッドコアプロセサを2個搭載した 10台のサーバーにインストールして3年間利用する場合 オラクルの場合 (Enterprise Editionで計算) これらの価格比較について、オラク オラクルに 比べ80%の コストダウン より、複数のDBサーバーをクラスタ 接続し、そのリソースをアプリケーシ ョンサーバーごとに動的に割り振るこ