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次世代新規分光装置(近接場PL, 高空間分解能CL,紫外ラマン 顕微鏡

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次世代新規分光装置(近接場PL, 高空間分解能CL,紫外ラマン 顕微鏡
●次世代新規分光装置(近接場PL,高空間分解能CL,紫外ラマン顕微鏡)による微細構造および欠陥評価
次世代新規分光装置(近接場PL,
高空間分解能CL,紫外ラマン
顕微鏡)による微細構造
および欠陥評価
構造化学研究部 村上 昌孝
径100nmの近接場プローブを使用しており、原理的には
開口径程度の空間分解能が得られる。いずれも、1500nm
角の領域を150nmステップでマッピングした結果であ
り、同一箇所を測定している。
362nmはGaNのバンド間遷移に相当しており、発光は
レーザー励起により発生した電子-正孔対の再結合に由
来する。近接場PLイメージでは100-300nm径の非発光中
心が不均一に分布していることが確認できる。この非発
光中心の形状や分布状態は断面TEM解析やCL測定によ
1.はじめに
り観測される貫通欠陥のそれらと一致しており、基板界
弊社ではNEDOの基盤技術研究促進事業「近接場利用
面に発生した貫通欠陥が膜表面にまで達し、非発光中心
次世代カソードルミネッセンス及びラマン分光装置開
として存在することが確認できる。
発」プロジェクトを通じて近接場光を利用したカソー
また、この結果から近接場PL法では100nm程度の空間
ドルミネッセンス(CL)及びラマン分光装置の開発を
分解能を有することが確認できる。
行ってきた。本装置は世界最高性能の走査型電子顕微鏡
(SEM)を用いたCL法と近接場分光法を融合することで
ナノメータースケールの空間分解能でナノテク材料やナ
ノデバイスの形態観察と歪み・欠陥・組成・電子状態を
同時に評価することのできる世界初の分光装置を目指し
ている。これまでに、近接場ラマン分光法により100nm
以下の空間分解能でSiの応力や結晶性の評価が可能であ
ることや、CL分析による発光デバイスの評価により数
十nmオーダーでの欠陥構造解析が可能であることを示し
た1),2)。
図2 SiドープGaNの発光強度分布
本稿では、青色発光ダイオードやレーザーダイオー
ドに使用されているGaN系発光材料の欠陥構造解析を例
に、高空間分解能CL分析 と新規機能である近接場フォ
3.InGaNの微細構造評価
トルミネッセンス(PL)分析を紹介する。近接場PL法
は近接場法を利用した発光分析であり、基本的な測定原
₃.1 近接場PLによる面内組成分布分析
理は近接場ラマン法と同様となる。図1に装置の概略図
図3は、 開口径100nmの 近接場 プ ロ ー ブ を 用 い て、
を示す。
100nmステップの近接場PLマッピング測定により得られ
た、InGaN膜の発光ピーク波長分布である。InGaNの発
光波長はIn組成比に顕著に依存することから、この発光
波長分布はIn組成比の面内分布を反映していると考えら
れる。
図4(a)は図3中に示した1-3の各点におけるスペクトル
を示しており、図4(b)は同一箇所を近接場プローブ無し
(顕微PL)で測定した結果である。近接場プローブの有
無により、スペクトル形状が明確に異なっている様子が
確認できる。測定点2に顕著に認められるように、プロー
ブ無しのスペクトルでは不連続な組成分布を反映した複
数のピークが検出されており、また、383nm付近に認め
図1 装置の概略図
られるピークについては、面内組成からは説明できない。
このことから、プローブ無しのスペクトルは面内組成分
2.近接場PLによるSiドープGaN膜の欠陥分布評価
3)
布に加えて、深さ方向の組成情報も反映されていると考
えられる。
図2はサファイア基板上にエピタキシャル成長させた
近接場光の電場が試料深さ方向に作用する距離はおお
SiドープGaN膜の362nm発光強度分布である。図2(a)は
よそ開口径程度であり、ここでは100nmが限界値となる。
顕微PL(レーザースポット径:~ 700nm)
、図2(b)は近
そのため、近接場PLではより表層の構造を反映したス
接場PLの測定結果である。近接場PLの測定には、開口
ペクトルが得られていると考えられる。このように、近
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東レリサーチセンター The TRC News No.112(Jan.2011)
●次世代新規分光装置(近接場PL,高空間分解能CL,紫外ラマン顕微鏡)による微細構造および欠陥評価
接場PLは、面内の空間分解能が高いだけでなく、高い
深さ分解能を有した手法と言える。
図7 400nmピークの強度変化(A-B間)
図3 近接場PLにより得られたInGaN膜のピーク波長分布
面部ではInの組成が大きく変化していることが分かる。
また、詳細な解析の結果、V-defect近傍では基板との間
に強い局所応力が作用していることやV-defectの中心部
では欠陥成長の核になると推測されるInの凝集構造が存
在すると判断される。
4(a) 近接場
図
PLスペクトル
4.まとめ
近接場PL法 お よ びCL法 を 用 い た 高空間分解能 の 発
光分析事例を紹介した。近接場PL法ではプローブ開口
図4(b) 顕微
PLスペクトル
径である100nm程度の空間分解能での構造解析が可能と
なった。また、CL法ではより空間分解能の高い分析が
可能となり、試料によっては、数nmサイズの構造変化を
捉えられることを示した。
材料分析において、このような高空間分解能の分光手
3.₂ 高空間分解能CLによる欠陥構造の分析4)
法が適用されている例は少なく、これまでにはなかった
図5は、InGaNの単一量子井戸構造に形成される V-defect
新たな情報が得られる可能性を有している。本稿では無
と呼ばれる逆ピラミッド型の表面欠陥のSEM像である。図
機系発光試料についての分析例を示したが、近接場PL
6に5nmステップで測定したV-defect近傍のCLスペクトル
法については有機系の発光材料についても有効であると
を示す。
考えられ、有機太陽電池や有機EL材料の構造解析など
365nmお よ び580nmの ピ ー ク は バ ッ フ ァ ー 層 で あ る
への応用が期待できる。
GaNのバンド端発光および欠陥由来の発光に、400nmお
よび450nm付近に認められるピークはInGaNの量子井戸
構造 に 由来 す る 発光 に 帰属 さ れ る。V-defect近傍 で は
5.参考文献
InGaNに由来する発光ピークに連続的な変化が生じてい
ることが確認できる。
400nmの発光線はInが欠損した組成変質層の発光線に
帰属され、図7に示した発光強度変化から V-defectの斜
(2007)
1)吉川正信、村上昌孝, The TRC news, 100, 35
(2007).
2)M.Yoshikawa et al., Appl. Phys. Lett., 91, 131908
(2006).
3)M.Yoshikawa et al., Appl. Phys. Lett., 88, 161905
(2009).
4)M.Yoshikawa et al., Appl. Phys. Lett., 94, 131908
■村上 昌孝(むらかみ まさたか)
構造化学研究部 構造化学第 2 研究室 研究員
略歴:2004 年大阪大学大学院工学研究科化学系専攻
博士課程修了。㈱東レリサーチセンターでラマン分
光法を用いた工業材料の分析に従事。
趣味:肉体改造。
図5 V-defectのSEM像像
図6 A’-B’間のCLスペクトル
32・東レリサーチセンター The TRC News No.112(Jan.2011)
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