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足関節捻挫(080620)

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足関節捻挫(080620)
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足関節捻挫(080620)
脚立から足を踏み外して足関節を受傷した患者を診察。最終診断は足関節捻挫。捻挫は高頻
度疾患であり、しっかりと知識を整理しておきたい。足関節捻挫について勉強しなおしてみた。
■解剖
まず解剖。足関節捻挫と一口に言っても、靭帯を意識した診察を心がける必要がある。主な靭
帯は以下のとおり。
(参考文献 1 より引用)
■診察
参考文献 3 によると、足関節に捻りがかかると、脛骨下部と腓骨上部が折れることがあるため、
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見逃しを防ぐため触診は下腿の一番上から始めて、下へ触診していくとしている。また、老人は
20-30cm の高さから足を踏み外しただけでも踵骨骨折を起こすことがあり、踵骨の触診も忘れず
に行う。
外果のほうが内果より下方にあるため、内反による損傷(外側の靭帯の損傷)が外反(内側の
靭帯の損傷)の数倍から 10 倍頻度が多い。
足関節の靭帯は関節内靭帯なので、外傷は関節内血腫をつくる。よって、外側の捻挫でも関節
を介して内側に出血斑を認めることもある。その場合には軽度の捻挫ではないと判断しなくてはな
らない。
診察の時には、圧痛の部位を丁寧に診察して、どの靭帯の外傷かを判断する(上記の解剖を
参照)。足関節捻挫と思われる患者の中に、二分靭帯の損傷や第 5 中足骨基部骨折を認める患
者もいるので、同部位の圧痛も確認する。参考文献 3 でも大体、4 箇所(①外果のすぐ前下方の
前距腓靭帯 ATFL、②外果のすぐ後下方の踵腓靭帯 CFL、③第5中足骨基部:短腓骨筋の剥離
骨折、④前距腓靭帯と第5中足骨の中間あたりの二分靭帯)を触診すればよいとしている。
二分靭帯のみの圧痛の場合にはギプス固定や手術は必要なく、整形を受診しなくても良いとさ
れている。それ以外はギプスや手術の可能性があるので慎重に判断する。診察の時には関節の
可動域を健側と比較しながら行う。また、不安定性も健側と比較して調べる。内反ストレスは足関
節を 30 度底屈位(靭帯が緩んだ肢位)で踵骨を持って内反強制をして不安定性をチェックする。
健側と差があると判断される場合には X 線でストレス撮影をする。健側と比較して talar tilt の差が
5 度以上なら ATFL 単独、8 度以上なら ATFL と CFL の 2 本の損傷と判断することもあるようだ(一
般に内反すると ATFL→CFL→PTFL の順に損傷されるという)。前方引き出しテストは踵を保持し、
他方の手で下腿を把持して足部を前方に引き出して不安定性をチェックする。受傷直後では疼痛
と腫脹のために判断が困難なことが多いとされる。
参考文献 4(http://www.wheelessonline.com/ortho/radiographic_studies_for_ankle_sprains)に X 線
写真入りで解説があり、分かりやすい。
■分類
参考文献2にいろいろな重症度分類が紹介されている。
●古典的分類
Ⅰ度(軽症)
疼痛のみで皮下組織までの損傷,
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Ⅱ度(中等症)
疼痛と腫脹が著明で靭帯の部分損傷
Ⅲ度(重症)
不安定性が著明で靭帯の完全損傷
この分類は診察だけでは確証が得られないため、実際の臨床ではやや使いにくい・・・・。
●Beynnon の分類
Grade-I
ATF か CF の部分損傷(不安定性なし)
Grade-Ⅱ ATF の断裂(前方不安定性あり)はあるが CF は損傷していない(内返し不安定性な
し)
Grade-Ⅲ ATF の断裂(前方不安定性あり)と CF の断裂(内返し不安定性あり)」とする
この分類では臨床的に損傷靭帯の不安定性の程度で判断できるため、古典的分類よりは使用し
やすい。ただし、受傷直後は疼痛のため判断が困難としている。
●加藤らの分類
軽症
圧痛が ATF のみ
中等症
圧痛が ATF と CF のみ
重症(脱臼に近い)
圧痛が ATF と CF と PTF まで進行
参考文献2の著者はこの分類が実践的であるとしている。この分類であれば私にも分かりやす
い。
■治療
前述のとおり、二分靭帯のみの圧痛の場合にはギプス固定や手術は必要ない。
その他の靱帯損傷の場合、手術治療か保存治療かの選択は専門家でも意見が分かれるよう
だが、参考文献 2 では、ATF と CF の損傷は(完全断裂でも)保存療法、スポーツ早期復帰を望む
なら装具を利用しての早期からの運動療法、CFL と PTFL まで損傷されて脱臼状態であれば手術
療法という意見が多いと紹介している。
初期治療(2~3 日間)の原則は PRICE と覚える。(学生時代は RICE と覚えた気がするが、P が
加わっている)
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Protect(固定)
Rest(安静)
Icing(氷冷)
Compression(圧迫)
Elevation(高挙)
参考文献2の著者らの施設では Grade-I の ATF 単独損傷か ATF と CF の損傷で損傷部分の
圧痛はあるが不安定性は著明でないレベルでは「鐙(アブミ)状のギプスシーネ」(オルソグラスア
ンクルなど)で固定し、直ちに痛みを感じない範囲での底背屈可動域訓練と部分荷重歩行を開始
するとしている。Grade-Ⅱの ATF 断裂のために前方不安定性が著明なレベルや Grade― Ⅲの
ATF と CF の完全断裂で前方と内反の不安定性が著明なレベルは下腿からのヒール付きフルキャ
ストで固定するとしている。
参考文献1にも重症度とその治療方針が紹介されている。基本的な重症度の分類と治療方針
は以下のとおり。
Ⅰ度(捻挫、ストレステストで左右差 4 度以下)
靭帯の一過性の伸張のみで断裂はない
RICE 療法後、弾性包帯固定 3~7 日
Ⅱ度(部分断裂、ストレステストで左右差 5~7 度)
3 週間ギブス包帯後、テーピングか装具療法
Ⅲ度(完全断裂、ストレステストで左右差 8 度以上)
関節の不安定性が出る
断裂した靭帯を手術で縫合する
一般の診療所で足関節捻挫を診ていく場合には軽症(Ⅰ度、Grade-Ⅰ)が多いと思われる。弾
性包帯やサポーターで経過観察する場合でも、系統的な診察の上で判断が出来るようになりたい
と思う。ただ、参考文献 5 によると、正確に靭帯が切れているかどうかを診断するのは非常に難し
いとされている。(最新のMRIを動員しても、100%の診断つかない。)無理に負荷をかけて部分
断裂の靭帯を切ってしまうよりは、痛みや腫れ、内出血の程度からひどい捻挫で靭帯が断裂して
いる可能性が高いと診断されたら、直ぐギプスで固定するのが最善の治療としている。詳しい評
価も時には必要だが、一見してひどそうな捻挫の場合には無理せず専門医に紹介することも躊躇
してはならないと思う。
参考文献
ROCKY NOTE : http://rockymuku.sakura.ne.jp/ROCKYNOTE.html
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1.
黒田栄史.7.足関節 -捻挫と骨折-の臨床診断.痛みと臨床, 6(4) : 431-435, 2006.
2.
栗山節郎.足関節捻挫の病態と整形外科的治療.理学療法, 25(1) : 295-299, 2008.
3.
仲田和正.手・足・腰診療スキルアップ.東京,CBR,2004.
4.
Radiographic Studies for Ankle Sprains. Wheeless' Textbook of Orthopaedics ホームページ
http://www.wheelessonline.com/ortho/radiographic_studies_for_ankle_sprains
5.
井口 傑. 足関節捻挫.goo ヘルスケア.
http://health.goo.ne.jp/medical/search/10591000.html
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