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民間が支え、育てる 国際感覚 - 公益社団法人 北海道国際交流・協力
網走管内 北見市 民間が支え、育てる 国際感覚 ばれ続けている。いかに夫妻が人々に慕われていたかを端的 それぞれの特徴を持つ3つの 姉妹・友好都市提携 に物語っているといえる。 こういった経緯から、北見市はピアソン夫妻の離道後41年 北見市は古くから3つの都市と姉妹・友好都市提携を結ん 経った1 969年(昭和4 4年)、ピアソン氏の故郷であるエリザ でいる。提携の経緯は違うが、それぞれが外に開かれた風土 ベス市に姉妹都市の提携を申し入れ、快諾を得た。 と歴史、それを支える市民レベルの活発な活動―という同市 開拓時代の歴史の重みを今日でも呼び起こすユニークな提 ならではの共通の特徴がうかがえる。が、経緯と同様、提携 携といえる。 の内容、現状もさまざまで、姉妹都市のありようを比較検討 それ以降、公式訪問団の相互訪問、青年ジェット研修団の 出来るユニークな側面をも合わせ持っているといえる。 派遣、76年には83人の北見交響吹奏楽団の親善訪問・演奏を はじめ、91年(平成3年)の開基95年・北見市制施行50周年 記念式典にはエリザベス市の姉妹都市副委員長夫妻らが来北 ピアソン牧師夫妻への想いも新たに し、エリザベス市が「北見市の日」を制定するなどの心のこ もった交流が続いた。 [エリザベス市(米ニュージャージー州) ] 1914年(大正3年) 、当時野付牛村だった北見(北見市に 同時にエリザベス市を訪れた人々がエリザベス会を発足さ なったのは1942年=昭和17年)にエリザベス市出身のピアソ せ、北見商工会議所も北米経済視察団を派遣するなど、民間 ン牧師夫妻が宣教師として滞在、以来1928年(同3年)まで 交流の芽も膨らんできた。 しかし、96年(同8年)の北見市開基100年記念式典にエ の14年間、北見を拠点に道東・道北の伝道活動を続けた。 リザベス市長代理として姉妹都市委員長夫妻が出席して以 ピアソン夫妻は1888年(明治21年)に来日、北見に来る前 降、残念ながらエリザベス市からの来訪は途絶えている。 も函館、室蘭、小樽、札幌、旭川の各地で伝道に当たり、北 海道での活動は実に35年間もの長きにわたった。遊郭設置阻 その一方で北見市では、旧ピアソン邸(現在のピアソン記 止など布教を超えた社会活動もあって、人々の篤い信頼を集 念館)の保存とピアソン夫妻の思想、業績の記録を残すこと めた。 などを目的に98年にピアソン会が発足し、2002年(同14年) には特定非営利活動法人(NPO法人)の認可を受けた。 離道後もピアソン夫妻の私邸は「ピアソン記念館」として 会員数は125人。ピアソン便りの発行のほか、毎夏ピアソ 残り、同記念館に面した道は現在でも「ピアソン通り」と呼 ピアソン牧師夫妻を偲んでピアソン記念館前で毎年開かれているグリーンコンサート=2004年夏 101 ン記念館の緑の樹木に囲まれた前庭で同会主催によるピアソ ン夫妻を偲ぶグリーンコンサートが開かれる。ピアソン夫人 が愛用していたオルガンの伴奏による独唱や小中学生、女性 コーラスの合唱、ブラスバンドの演奏など、市民の楽しみの 1つになっている。 また、同会はピアソン邸を設計した米国の有名な建築家メ レル・ヴォーリズ氏のさまざまな資料を収集して、エリザベ ス市との姉妹提携の盟約書などの資料を展示しているピアソ ン記念館2階に04年、ヴォーリズ記念室を新設し、着実に国 ポロナイスク市を訪れ意見を交換する北見市の訪問団 際交流の幅を広げている。 こういった活動が評価され同年、北海道新聞社が実施して 例えば、2004年(同16年)ポロナイスク市で開いた第9回 いる「もっと北海道」運動の一環として「第3回北のみらい 平和に関するシンポジウムでは、①民族の相互理解のため、 奨励賞」を受賞した。 伝統芸能の交流を深める②観光交流の拡大のため、ポロナイ NPO法人認可に合わせ、ピアソン牧師夫妻の資料収集、 スクでの釣り、登山などの実施③柔道などのスポーツ交流― 調査のためエリザベス市を訪れた同会理事の長尾宗一さん など8項目の具体策が合意された。 は、エリザベス市長から「姉妹都市交流といっても市長が税 これに基づいて05年7月には、ポロナイスク市で柔道を 金を使って日本に行くことが許されない。申しわけありませ 習っている青年5人が北見北斗高校で初めて“柔道交流”を ん」と謝られたという。 行うなど「親善の輪」はさらに深まりを見せている。 しかし、各種のレセプションに招待され、調査には人々か 金子泰憲・同協会会長は「両国の相互理解と友好親善だけ ら心温まる協力を受けた。 でなく、子供たちの国際感覚を育てるためにも、今後も意義 長尾さんは「やはり、姉妹都市交流の実績は生きている。 ある活動を続けていきたい」と語っている。 エリザベス市にはピアソンさんの遺族もおらず、ピアソンさ [晋州市(韓国) ] ん自体が人々の記憶から遠ざかっているが、もう一度その業 績を掘り起こすことで、姉妹都市交流も取り戻せれば…」と ポロナイスク市との関係以上に晋州市との姉妹都市提携は 語る。 民間主導だったといえる。 歴史が生み出した姉妹都市交流が、新たな歴史の扉を開く 民間の有志によって北見地区日韓親善協会が設立されたの か、注目していいようだ。 が、1978年(昭和53年)のこと。その後、同協会による韓国 訪問は84年までに実に11回を数え、両国のアマ・レスリング [ポロナイスク市(ロシア・サハリン州) ] 大会開催なども開かれるようになった。 旧ソ連時代の1972年(昭和4 7年) 、サハリン州からの要請 また、両市のロータリークラブも79年に姉妹クラブ提携を を受けた形で友好都市提携を結んだ。旧ソ連との姉妹・友好 結ぶなど、民間交流は次第に大きな広がりをみせてきた。こ 都市提携は66年の小樽―ナホトカ、67年の旭川―ユジノサハ の動きに合わせるように市民から姉妹都市提携の要望が強ま リンスクに次いで3番目、サハリン州の自治体とは旭川市に り、85年に北見市はついに提携の正式調印に踏み切った。 次ぐ2番目の古い歴史を持つ。 以来、ポロナイスク市と同様、隔年毎の相互訪問のほかに、 「同じ北方圏に住む隣人同士として親善を」と翌年の73年 小中学生の美術交流、合唱団、交響吹奏楽団の文化交流、北 には北見日ソ親善協会(9 2年に日ロ親善協会に名称変更)が 設立され、隔年毎の相互公式訪問団の派遣と共に民間ベース での交流がスタートを切った。 97年(平成9年)の提携2 5周年には、ポロナイスク市で北 見市の小、中、高校生が林間学校を体験、民間の劇団「河童」 が「鶴の恩返し」の特別公演をし、翌年には北見市でロシア の北方少数民族のアンサンブル「メグンメ・イルガ」と北見 盆地風雪太鼓が共演するなど交流は多岐にわたっている。 さらに、同協会とポロナイスク北見友好協会は訪問の度毎 にシンポジウムを開き、向こう2年間の友好親善推進のため の行動方針を協議する、という他に余り例を見ない活動をし ているのも特徴だ。 民間の活動が姉妹都市提携に結実した晋州市との交流風景 102 見工大と晋州にある慶尚大工科大学との学術交流など、相互 これらを研修のハード面としたら、同推進会議がJICAの の絆のありようは多彩だ。 協力で2003年からスタートさせた「オホーツク国際フェス 北見市は2 003年(平成1 5年)、晋州ロータリークラブ会長 タ」はソフト面での国際交流事業といえる。これは網走管内 として当初から両市の交流に尽力してきた金一さんに「特別 に住む外国人と地域住民が一堂に会して交流、相互理解を深 名誉市民」の称号を贈った。その金さんは04年10月、北見日 めようという狙いだ。 韓親善協会主催の第6回コリアンフェアへの出席を兼ねて再 03年の参加者は60人だったが、04年には200人と急増。ち 度来北、民間主導らしいなごやかな交流が続いている。 なみに04年の場合は、JICA海外ボランティアの説明会、少 人数による国際交流ウォークラリー、エジプト・ジンバブ エ・日本の楽器演奏、スポーツ交流などの内容で「交流の広 広がる多様な国際交流の根 がりだけでなく各自、団体のネットワークの強化にも役だっ ピアソン会、日ロ、日韓親善協会などでもうかがえるよう た」(同推進会議)という。 に北見市には40近い国際交流に関係する団体があり、それぞ これとは別に純粋にボランティアとして行われている「北 れが独自の活動を繰り広げている。また、同市でも年間2 0人、 見国際交流の集い」もユニークだ。これは東京で日本語を勉 1人当たり20万円の外国人留学生修学支援金制度などの支援 強している留学生を北見に招こうというもので、1989年(平 事業に取り組んでいるが、北見の場合、民間の幅広い活動と 成元年)に受け入れ家族らが実行委員会を作り、自発的に活 ともに、北見工大、北海学園北見大学などとの連携による国 動を始めた。 際交流が大きな特徴になっている。 毎年、夏と冬の2回、東京で学ぶ留学生数人が2週間程度 そのひとつが1997年(同9年)に設立された「北見国際技 北見とその周辺町村でホームステイを楽しみ、餅つきや着付 術協力推進会議」だろう。 けなどの日本文化を体験しており、同会も「ほかでも余り例 同市が国の「国際協力推進モデル地域」に指定されたのを のない試みでは…」という。ホームステイ先を探す苦労もあ 受けて、産官学の連携による国際協力を推進する組織として るようだが、ボランティアによる心温まる国際交流として他 発足したもので、市、商工会議所、北見工大、日本赤十字北 地域でも大いに参考になりそうだ。 海道看護大学、農協など22団体が加盟している。 この同推進会議と国際協力機構(JICA)がタイアップし て取り組んできた「草の根技術協力事業」は、寒冷地の地域 特性を生かした北見ならではの国際協力事業として、全国的 にも注目されている。 具体的には、北見工大が積雪寒冷地の土木工学研究をして いる関係で、99年に気候条件の似ている中央アジアのカザフ スタン、キルギスから研修員を受け入れ、寒冷地での地盤工 学、道路整備の研修を実施したほか、同大の教授もキルギス を訪れ、研修のフォローアップにも当たった。 このほか、2004年(同16年)まで「寒冷地における地域医 療と保健衛生」、「産業の変遷と地域振興」の研修事業も行い、 網走管内の外国人、地域住民が思い思いに歓談する「オホーツク国 際フェスタ2004」=2004年10月 独自の国際協力を展開している。 北見市 ! http : //www.city.kitami.lg.jp/ 人口:約1 1万人 明治時代後半からハッカ栽培が始まり、世界有数の 生産地としてハッカ景気に沸いた。1942年(昭和17 年) に市制を施行し、第2次世界大戦後も精糖工場、 国立大学を誘致し、経済、教育、芸術、文化などオ ホーツク圏の中核都市の役割を果たしている。坂本 龍馬の姉千鶴の次男である坂本直寛氏を指導者とす 103 面積:4 2 1 る高知の民間移民団「北光社」が開拓に当たったこ とも知られている。2006年3月に網走管内端野町、 常呂町、留辺蘂町と合併し、面積千428 、人口約 13万人になる予定。 国際交流の問い合わせ先 北見市企画部 ℡(0157) 23―7111 !