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ウィーンは、11月に入り初雪が降りました。
ウィーンは、11月に入り初雪が降りました。久しぶりの白い雪景色を見ると、昨年の記録的暖 冬とは異なり今年は例年通りの冬となりそうです。これを書いている今も雪が降り続いており、 積雪が数十センチにもなっています。レストランでは、秋の季節物であるガチョウ料理や2007年 度のワインも出回り、また街中ではクリスマスマルクト(クリスマス市)の準備が進んでいるの を見ると、改めて季節の移り変わりを実感することが出来ます。 今月は、報告書にも載せている廃棄物に関する会議でのエピソードを2つ書きたいと思います。 本会議は、欧州だけでなく世界、そして日本からも多くの廃棄物関係の専門家が参加し、テーマ も埋立処理から廃棄物規制等、非常に多岐に渡りました。今回、廃棄物焼却に関するセッション とそれとは別のワーキンググループに参加している時に印象的な出来事が起こりました。 焼却に関するセッションでは、最初に1人の発表者が廃棄物焼却に関する発表を行いました。 その内容は「欧州の廃棄物処理について、埋立指令を遵守するためには廃棄物焼却処理も選択肢 に入れるべきである。マスコミで言われているような、 『廃棄物焼却施設=有害物質発生施設』と いう事実は、発電所や自動車といった他の排出源と比較すると現在の廃棄物焼却施設においては 該当しない。」と言うものでした。その内容については、私としても特に異論を唱えるわけでもな く、欧州ではこういう発表が行われていること自体に焼却設備がまだまだ普及していない証拠な のかな、と漠然と考えていました。そして、その発表が終わり質疑応答の時間になると一番前の 席にいた1人の方が率先して手を挙げてマイクを握ってからが事の始まりです。 「質問」というよ りかは「演説」を始めたのです。知らない間に、質問者ではなくホールにいる人々に向かって大 きな声で熱弁をふるっています。詳細な内容は忘れましたが、とにかく『焼却=悪』 、を強烈にア ピールしています。途中、 「焼却設備の多い日本やデンマークといった国は愚かだ。そして、焼却 設備を持っていない国も(無くてもいい設備であることをアピールしないから)愚かだ。 」などと いう乱暴な言葉も聞こえます。15分程たったでしょうか。セッションの終了予定時間はとうに過 ぎていますが、お構いなしです。セッションを取り仕切るチェアマンもすっかり諦め顔で話を聞 いていました。 その演説に対して、私はその内容を裏付ける研究をしているわけではないので異論を唱えるつ もりはないですが、ただ一方的にかつ周囲の予定を無視して自分の意見を押し付ける、という行 為について非常に疑問を持ちました(日本を否定されたのも相当気分を悪くさせました)。この自 分の気持ちを納得させるために、その場におられた日本の廃棄物関係の方に欧州の廃棄物焼却に 対する印象がそれほど悪いのかを確かめてみました。すると、 「日本でも焼却設備を建設計画が持 ち上がると『24時間絶え間なく汚染され続ける』という極端な認識があるため感情的には同じで あると思う。」と回答を得ました。そして「ただ、今のような自分の言いたいことを言い続けるの はナンセンスではないか。」と続けられました。私のもやもやした気持ちはその言葉によって解消 されるとともに、欧州での廃棄物焼却に対する考え方の1つを理解する上で強烈な印象を残すこ とになりました。 2つ目は、別の日にワークショップに参加していたときです。ワークショップは、セッション よりも少人数で行われ、専門性が高くなります。その時のテーマについて発表が2つありそれに ついて議論を行う、という形式で進められました。発表が終わり、さてこれから議論開始です。 そのテーマに対して知識も乏しい私にとって、最初議事進行役の方が自分に発言を求めないかド キドキしていたのですが、そんな心配は杞憂に終わりました。というのは、自分が話さずとも参 加者から手が挙がり、意見が終わる前に自分の意見を言いはじめる等とにかく誰かが話していま -145- 駐在員だより ウイーン す。最初は、一生懸命聞いていましたが、話していない人が私を含めて数人しかいないこと、ネ イティブではなくそれほど英語が流暢ではないながらも一生懸命意見を述べている様子を見てい ると、だんだんどうして自分が手を挙げられないのか考えをめぐらせてみました。以前「会議を 進めていく上で、いかにインド人を黙らせるか、日本人に話をさせるかとても大変である」とい う意味合いのジョークを聞いたことがありますが、私はそのジョークにすっかり当てはまってい るようです。結局そのワークショップは、最後に進行役の方が総括をしたにもかかわらず、その 後さらに意見を言う人がいるほど盛況の内に終了しました。結局全く話せなかった自分に対して 情けない気持ちもあったので、欧米人はこのように自分から積極的に意見を言うのが普通なのか、 また欧米人からみて何も話さない人間はどのように思うのかという質問と合わせてウィーンセン ターのナショナルスタッフに質問してみました。 すると、スタッフ曰く「会議では専門性が高く、聴衆が多い場合が多いので非常に興味があれ ば質問をするが、つまらない質問もするわけにはいかないので後ほどコーヒーブレイク等に質問 するだろう。ただ、少人数であれば通常意見を述べることでお互い理解を深められる(という認 識がある)ため質問するだろう。 」とのこと。自分には、専門知識不足とコミュニケーションに対 する積極性が足りないのでしょう。親切なスタッフは、 「恐らく、今回のワークショップは専門家 が多かったから、皆意見を言いたかっただけだろう からそれほど気にしなくてもいいと思う。 」 と最後に フォローをしてくれましたが。 今回のエピソードは、改めて欧州人の考え方やコ ミュニケーションの重要性を理解する上で非常にい い経験となりました。 写真は、クリスマスマルクトの準備が行われてい るウィーン市庁舎です。よく見ると、建物自体がア ドベントカレンダー(クリスマスまで1枚ずつめく って楽しむカレンダー)になっています。 ジェトロ・ウィーン・センター 産業機械部 玉井 伸哉 -146-