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オマーンミッションに参加して

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オマーンミッションに参加して
情報報告 ウイーン
●オマーンミッションに参加して
2008年11月初旬に、
在オマーン日本国大使館とジェトロ主催のオマーンミッションが開催され、
それに合わせてオマーン投資促進・輸出振興センター(OCIPED)
、オマーン商工会議所(OCCI)の
共催で日本・オマーンビジネスフォーラムも開催された。今回、フォーラムに参加して得た知見
を中心に報告を行う。なお、特に記載のない限りフォーラム時に配布された資料を元に作成して
いる。
1
オマーンについて
1
1.1 概要
面積:約31万平方キロメートル(日本の約4分の3)
人口:約248万人
首都:マスカット
民族:アラブ人
言語:アラビア語
宗教:イスラム教(イバード派が主流)
一人あたりGDP:15,412ドル(2007年、IMF推定値)
実質GDP成長率:3.1%(2004年)
オマーン地図
1.2 経済概況
他のGCC諸国と比較して油田規模の小さいオマーンは、現在の石油依存経済から2020年まで
に脱却する長期目標を掲げている。そんな中、現在は2006~2010年までの第7次5ヵ年計画を策
定して、名目GDPの年間3%増、非石油部門について同7.5%増、天然ガス部門で同14.5%増、
観光部門で同7%増を目指している。民営化を促している政府は、民間部門へ総額46%にあたる
131億オマーンリアル(約340.6億ドル)を投資する予定である。主なプロジェクトとしては、Sohar
にある産業センターのアルミニウム精錬施設(生産能力:50万トン/年)やメタノール製造施設
1
編者注:本章は、外務省ホームページを参照している。
-48-
情報報告 ウイーン
(生産能力:5,000トン/日)
、尿素製造施設(生産能力:3,500トン/日)、石油精製施設(精製
能力:7万5,000バレル/日)が挙げられる。それ以外のプロジェクトとして、
「e-Government イ
ニシアチブ」という同国すべての政府機関をリンクさせるポータルサイトの開発・管理、道路や
教育機関、電力、水に関するインフラ整備が挙げられている。同国における主要経済指標を表1
に示す。
2005
2006
2007
名目GDP(百万ドル)
30,896
36,793
41,627
一人あたりGNI(ドル)
11,928
13,922
14,826
101.7
105.2
111.4
政府収入(100万ドル)
11,727
12,948
15,394
財政支出(100万ドル)
10,940
12,834
15,289
輸出総額(100万ドル)
18,686
21,579
24,684
1,444
2,113
3,356
内非石油分(%)
5.85
9.79
18.0
輸入総額(100万ドル)
8,824
10,894
15,975
一般物価指数(%)
内非石油分(100万ドル)
出典:オマーン国家経済省
備考1:2006年、2007年は暫定値
備考2:1オマーンリアル=2.60ドルとして計算
表1 オマーンの主要経済指標
1.3 日本とオマーンの貿易関係
日本と中東・北アフリカ地域全体における貿易関係について言えば、一般的に同地域からエ
ネルギー資源を輸入し、日本からは機械を輸出している構図である。2007年の、対中東・北アフ
リカ地域における日本からの輸出総額は319億6,000万ドル、輸入総額は1,196億9,000万ドルであ
る。同地域の国別に見ていくと、表2のようになり輸出相手国としてオマーンは第4位である。輸
入に関しては同第6位である。品目別に見ると表3のようになり、自動車、一般機器、電気機器が
主要輸出品目であり、一方主要輸入製品は化石燃料である。
輸 出
輸 入
UAE
25.2% サウジアラビア
30%
サウジアラビア
21.0% UAE
27%
トルコ
8.6% カタール
14%
オマーン
7.9% イラン
5.9% クウェート
11%
イスラエル
カタール
9%
3%
クウェート
5.8% オマーン
5.2% スーダン
イラン
4.2% その他
4%
エジプト
4.0%
アルジェリア
2.7%
その他
9.4%
表2
2%
日本の対中東・北アフリカ地域貿易における国別輸出入割合(2007,単位:%)
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情報報告 ウイーン
輸 出
乗用車
37.6% 原油
78.0%
一般機械
20.1% 天然ガス
13.0%
電気機器
7.8% その他
商用車
7.4%
鉄・鋼鉄
6.9%
ゴム製品
3.7%
化学製品
2.5%
その他
表3
輸 入
9%
14.0%
日本の対中東・北アフリカ地域貿易における品目別輸出入割合(2007,単位:%)
日本の対オマーン貿易については、2007年における輸出額は25億3,000万ドル、同輸入額は35
億8,300万ドルとなっており、その額は近年増加している(図1参照)。輸出品目については自動
車関連製品が大部分を占め、輸入品目では石油関連が大部分を占めている(表4参照)
。なお、冬
場の日本市場におけるインゲンマメの9割がオマーンから輸入されている。
図1
日本の対オマーン貿易額推移(上:輸入、下:輸出)
(単位:100万ドル、2003-2007)
輸 出
輸 入
乗用車
52.7%
原油
57.0%
商用車
11.8%
石油ガス、その他関連製品
42.0%
バス
5.6%
0.4%
乗用車用各部品類
4.9%
油(原油以外)、その他
精錬銅および各種合金
0.2%
チューブ、管等
4.8%
マメ科の野菜
0.1%
その他
20.1%
その他
0.3%
表4
日本の対オマーン貿易における品目別輸出入割合(2007,単位:%)
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情報報告 ウイーン
1.4 オマーンの投資環境
オマーンの投資環境について、オマーン投資促進・輸出開発センター(OCIPED)よりプレゼン
テーションがあったため、そちらで得た知見を中心に以下に報告する。
中東諸国の中でも、目覚しい経済成長を遂げているオマーンは、さらなる持続可能性のある成
長に向けて、現在非石油部門が拡大、開発途中にあり、そのためオマーン政府は各部門における
民営化を促している。
投資優遇政策としては、特定部門(製造業、鉱山業、教育、健康、観光業、農業、漁業)にお
ける関税、法人税が最大10年まで控除され、それ以外にも所得税免除やユーティリティ使用料の
減額、政府が許可すれば外国資本が100%の所有権を持つ事が可能、等が挙げられる(ただし、多
2
くの場合は70%までのようだ )
。
2006年における外国直接投資額は、22億6,020万オマーンリアル(約58億7,700万ドル)となっ
ており、2002年比で214%増となっている。国ごとに見ると英国が最も多く、それにUAE等のG
CC諸国や米国、インドが続いている(図2参照)。英国は、石油、金融、建設部門に投資を実施
している。そして、2005、2006年においてGCC諸国からの投資額が急速に伸びてきている。産
業別に見ると、石油・ガス部門、製造業、金融サービス部門が3大部門となっている(図3参照)
。
35%
Percen tag e
30%
25%
20%
15%
10%
5%
0%
UK
UAE
USA
India
Kuwait
Qatar
Others
Country
図2
2
オマーンにおける国別の外国直接投資状況(単位:%、2006)
出典:OCIPED ホームページ
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情報報告 ウイーン
45%
40%
Percentage
35%
30%
25%
20%
15%
10%
5%
図3
Others
Real Estate
Trade
Utility &
Construction
Financial
Intermediation
Manufacturing
Oil & Gas
0%
オマーンにおける産業別の外国直接投資状況(単位:%、2006)
1.5 オマーンの環境に対する取り組みについて
今回のミッションにおいて、同国の環境問題担当者とディスカッションをする機会を得た。そ
ちらに参加して得た知見について以下に箇条書きで報告する。なお、同国の環境問題担当省につ
いては、2007年9月より、地方自治・水資源省(MRMEWR)から新たに設立された環境・気候問題
省(MECA)へ変更となっている。
¾ 日本との関係の一例として、JICAと協力してマングローブの植林や、ナイロンを利用し
た霧より水分を吸収・貯留して灌漑利用する技術のテスト(現在は三菱商事と共同で実施し
ている)等が挙げられる。
¾ 化学物質担当局では、管理、海洋汚染、アセスメント、持続的開発に関する業務を取り扱っ
ている。
¾ 同国の規制される化学物質は、WHOやその他国際会議での取り決めを参考にリスト化されてい
る。
¾ 欧州のREACH、WEEE、RoHSといった化学物質規制については、そのまま規制化されるのではな
く、あくまでも参考として取り扱う予定。
¾ 排水処理、廃棄物処理は地方自治体が管理している。排水処理は3次処理まで実施する必要が
あり、処理水は主に灌漑に利用される。廃棄物処理については、おもに埋立処理で、プラス
チックや鉄はリサイクル処理も実施されている。焼却処理についてはまだ経験がないものの、
廃棄物量が多く経済面で釣り合えば都市部では今後計画されるかもしれない。
¾ エネルギー安全保障問題として、石油・ガスが燃料としてあるが、同省内では石炭利用につ
いても議論されていたようだ。クリーンコール技術であれば今後採用されるかもしれない。
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