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について (LIAJNews156号抜粋)(pdfファイル)
解説 BOSSシステム(交配相談)を活用しよう! - Best Operation of Super Sire - ⑧ PA(Parent Average)について BOSS システム作成プロジェクトチーム 今回は、誰もが一度は耳にしたことのあるPAについて、BOSSシステムで果たすその役割などについて紹介しま す。BOSSシステムでは、後継牛の遺伝能力をPAという方法で推定しています。国内TOP40の各種雄牛のなかか ら、交配相談としてどの種雄牛を選定するのが最も効果が高いか?などを計算するのもPAによります。さて、PA とは何者でしょうか? 1 PAとは? ん。あなたの雌牛が無登録牛であればBVを持ちませ んので、PAも計算することができません。 PAとは、Parent Average(ペアレント アベレー ジ)の略称です。読んで字のごとしで「両親の平均」 という意味です。では何を平均するかと言えば、遺伝 2 PAの意味するもの 的能力である育種価(BV)を、両親で図 1 に示した さて、このPAですが、いったい何を意味するので とおり平均します。雌牛(BV♀)はあなたの牛群の しょうか?両親の遺伝的能力である育種価を平均して もので年 4 回発行される改良情報に掲載される育種価 いるわけですから、やはりこのPAも遺伝的能力なの です。種雄牛(BV♂)は当団をはじめとする各人工 でしょうか? 授精所の種雄牛案内に掲載されている育種価です。 PAは遺伝的能力と言えば確かに遺伝的能力なので PAは一見単純なものですが、いろいろな要件がそろ すが、正確には「期待値」と呼ばれるもので、 「産子 わないと計算できません。まず父牛と母牛の両方が同 に期待される育種価」という意味になります。BVと じ国で環境が一致したものでなければなりません。あ の関係は、次の式になります。 なたの牛群は当然ですが日本の牛ですから、環境が全 BV=PA+MS く違う外国の種雄牛とのPAは計算できません。ま MSは、メンデリアンサンプリング効果と呼ばれる た、これも当然ですが、BVが無ければ計算できませ もので、遺伝的なバラツキを意味します。全姉妹であ れば、姉妹の各PAは同じです。しかし、実際の姉妹 での遺伝的能力である育種価は異なるわけで、そのバ 図1 ラツキがMSであると言えます。バラついてしまう原 因は図 2 に示したとおり、交配により対立遺伝子がど ういった型になるかは全くの偶然でしかありません。 例の場合は 1 : 2 : 1 の比率で生まれてくる子牛達の 遺伝的能力の平均がPAであり期待値であるというこ とです。なんだか雲をつかむような話ですね?例え話 をしてみましょう。 「夢を買う」とも言われる宝くじがあります。 1 枚 300円の宝くじの期待値は、140円位と言われていま す。発行される宝くじ全部を大金持ちが一人で買い占 めたとします。すると10億円当たっているクジもあれ 3 − LIAJ News No.156 − 図2 図4 ば、ハズレクジもあります。アタリによる全部の収入 を、購入した枚数で平均したものが期待値で140円と いうわけです。 1 枚300円の宝くじの期待できる価値は 載される図 4 を見れば、過去の実例で母、父、子の関 140円しかないわけです。損をしてしまいますね。し 係を確認することが出来ます。 かし、それでも年末などに競って購入するのは、中に は10億円があたるものもあるからです。では、図 3 に 示した宝くじの期待値が140円のものと250円のものが 3 BOSS選定結果一覧 あったらどちらが良い宝くじでしょうか?答えは当然 BOSSシステムでは、あなたの改良希望点を聞き取 250円のものです。これなら損をしない確率がグンと りして、改良希望点が最大のPAとなる種雄牛を 2 頭 高いことが容易に予測できます。 選定します。具体的には、図 5 のように交配種雄牛が これと同じように、図 3 の左の子牛のPAは+800kg ①と②の 2 頭が選定されます。定められた要件の中で ですが、これは期待値(平均)であって、宝くじと同 あなたの改良希望点が最大限の改良効果を発揮出来る じように中には、育種価が+2,000kgになる子牛もい 2 頭です。どちらかを選んでいきます。 れ ば、 +50kg程 度 に し か な ら な い 牛 も い る わ け で (1)空欄のある理由 す。育種価は実際に搾ってみて牛群検定を受けなけれ 図 4 の選定結果一覧は総合指数と耐久性成分に空欄 ば計算できません。ですので、交配相談としては、期待 があるようです。PAは前述のように母と父の平均で 値であるPAで子牛の遺伝的能力を判断するしかありま すから、母牛が体格審査を受けていない場合、このよ せん。そうすれば、PAが+800kgの交配と、+200kgの 交配があれば+800kgの交配を選んだ方が損をしない わけです。さて、それでは、実際にはPAとBVはどれ くらいズレ(MS)があるものでしょうか?これは現 うな歯抜けが出てきます。 (2)網掛け 図 5 には網掛けが掛かっている項目と、網掛けが掛 かっていない項目があります。 時点ではどうしても分からないわけですが、検定農家 これは、母牛の遺伝能力を超えているかどうかを判 のみなさんは、毎月送付される検定情報サマリーに掲 断しているもので、網掛けが掛かっているものが、母 牛を超えて改良が進んでいることを示します。当然、 図3 網掛けが沢山掛かっている種雄牛を選定します。 この選定結果一覧で、雌牛 1 頭ごとに種雄牛を選ぶ 訳ですが、宝くじの例のように当たる当たらないとい ったズレ(MS)が発生します。ですので、多少網掛 けが掛からなくとも、あまり神経質になる必要もあり ません。 (3)近交係数 近交係数については、特に申し出が無い限りは、 6.25以上の種雄牛は選定されません。 4 図5 図6 4 BOSS検索種雄牛リスト総括表 の改良方向」についても、いずれのグラフでも右肩上 がりの矢印が示される必要があります。 前述の選定結果一覧において、個体 1 頭ごとに種雄 牛を選ぶ際は、多少マイナスになってしまう交配であ ってもあまり気にする必要はありません。しかし、図 5 さいごに 6 に示した総括表においては、極力、BOSS①②が最 今回は育種学の基礎のような解説になってしまいま 低でも現在の牛舎で活躍している牛よりは勝る必要が した。選定結果一覧のような個体別ではMSが偶然に あります。 1 頭ごとであればMSが大きく、良くも悪 より大きくも小さくも作用してしまいますが、総括表 くもズレることが大前提になります。しかし、頭数が のような牛群での集計ではMSはゼロに近いというち ある程度加算される、総括表ではMSはゼロに近づき ょっと複雑な考察が必要になります。しかし、BOSS ます。ですので、総括表ではBOSS①②が上段の成績 システムは当団種雄牛センターのスタッフがおわかり より良好である必要があります。 頂けるまで酪農家のみなさんに説明しますので、どう また、同じく図 6 の下段に示される「あなたの牛群 5 − LIAJ News No.156 − ぞお気兼ねなくお申し付けください。