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肉用肥育素牛の生産管理(2) (LIAJNews160号抜粋)(pdfファイル)

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肉用肥育素牛の生産管理(2) (LIAJNews160号抜粋)(pdfファイル)
解説
BOSSシステム(交配相談)を活用しよう!
- Best Operation of Super Sire -
⑫新しい BOSS!肉用肥育素牛の生産管理(2)
BOSS システム作成プロジェクトチ-ム
BOSSシステムは、元々が優秀な乳用後継牛を生産するためのシステムです。優秀な雌牛から後継牛を生産するの
が基本となります。これまでは、雌が生まれる確率が50%だったので、例えば100頭の牛群全部に乳用種を交配して
も50頭しか雌牛を生産できませんでした。ところが、性選別精液の登場により雌牛生産は当団Sort 90 であれば90%以
上の確率で雌牛を生産できるようになりました。そこで、成績が下位の牛には、あえて乳用種を交配しなくとも良く
なりました。成績が上位の牛からのみ後継牛を生産することは、改良効果を一段と高めるものでもあります。
成績下位の牛からは、和牛受精卵の移植や肉用牛交配(F 1 )により需要の逼迫している肉用肥育素牛を生産すれ
ば、農家の収入にも大きく貢献できます。まさに一石二鳥というわけです。しかし、注意点がひとつだけあります。
肉用肥育素牛の生産を過剰に行えば、乳用後継牛が不足してしまい、逆に高価な初妊牛を導入することにつながりか
ねないのです。こういった事態を招かないように、肉用肥育素牛の生産管理も、BOSSシステムにお任せください。
1 必要とする乳用後継牛頭数
仮に、肉用肥育素牛を最大限に行うとしたときに、
害といった周産期病等の病気によるものが大多数で
す。周産期病によるものだけで半分以上、突然死など
による死亡も加算すると70 ~ 80%にも及びます。
考慮しなければならない数字は、 1 年間に必要とする
そこで、BOSSシステムでは、牛群検定にかかる同
最低限の乳用後継牛の頭数です。これは年間に何頭を
意書を頂いていることから、図 2 に示した各農家の牛
世代交代させるかという問題と同義です。遺伝的改良
群検定成績による経産牛の年間除籍頭数を最低限必要
を最大限に発揮させるためには積極的に低能力牛を淘
とする乳用後継牛の頭数とします。導入は行わないこ
汰し世代交代を早めることが必要です。しかし、実際
とを前提としていますが、言わば農家の現実に即した
の農家において淘汰(除籍)される理由を牛群検定成
考え方であり、育種的に最大の遺伝改良の効果をもた
績でみてみると、図 1 に示したように乳房炎や繁殖障
らすものではありません。BOSSシステムによる改良を
図1
行いながら、飼養管理改善に努め周産期病を減らし
ていくことが大切です。もちろん、ここで示した最
低限の世代交代にこだわることもなく、もっと多く
の乳用後継牛を生産して、積極的に世代交代を進め
ることもBOSSシステムでは可能です。
さて、肉用肥育素牛の生産に視点を変えます。乳
用後継牛を確保できれば、残りは肉用肥育素牛を生
産するための交配等を行っても、次世代で乳用初妊
牛を導入する事態は発生しません。逆に言えば、前
述のような周産期病が多発しているような飼養管理
に課題がある農家では、肉用肥育素牛の生産を多数
行うことは出来ないことになります。このように、
BOSSシステムは牛群検定データにより各農家の実
情を考慮した交配相談を可能としています。
21 − LIAJ News No.160 −
図2
分です。なぜなら、自然分娩させてしまうと、産まれ
てから死亡したのか、死産だったのかを把握すること
が極めて困難だからです。BOSSシステムでは、牛群
検定とは別個に一律で 2 %程度としています。もし、
日常経営として、 2 %以上または以下であれば、当団
スタッフに申し出てください。
(4)性 比
牛群検定における集計では、通常精液が多かった平
2 子牛生産頭数を左右する要因
成22年の産子では雌の性比48%となっています。ま
た、当団生産の性選別精液はご存知のとおり、Sort 90
BOSSシステムでは以下にあげる要因から子牛生産
という名前で販売され雌の性比が90%以上となってい
を予測します。牛群検定データを用いますので、各農
ます。性選別精液は種雄牛を供給する各AI団体により
家の実情に応じた交配相談が可能です。
雌の生産比率は異なりますが、BOSSシステムでは、ど
この団体のものでも一律90%で計算しています。妊娠
(1)受胎率
飼養管理が良く繁殖も良好な農家であれば、受胎率
牛において輸入精液の性選別精液を利用されていると
きはご注意ください。
も当然良く、どんどん受胎します。乳用でも肉用でも子
牛をたくさん生産できます。当然ですが、繁殖成績の良
(5)妊娠牛
い農家ほど、後継牛の改良も進むし、肉用肥育素牛も
当然ですが、農家の皆さんの牛群には絶えず妊娠牛
たくさん生産できます。BOSSシステムでは、牛群検定
が存在します。乳用後継牛と肉用肥育素牛の生産管理
成績による受胎率を利用します。このため、交配相談さ
を行うには、この現在妊娠している牛を無視することは
れる各農家それぞれでの受胎率となります。ただし、年
できません。なぜなら、BOSSシステムで交配相談を行
間で生産する子牛頭数を求めるためのものですから、初
い、これから人工授精を行うのは、現在妊娠していない
回受胎率を 3 回授精受胎率に換算して用います。
牛になるからです。現在、妊娠している牛の腹の中が肉
用肥育素牛なのか、乳用後継牛なのかを把握した上で
(2)死 産
の交配相談でなければ、子牛の生産管理を行うことは
多頭化により分娩管理が疎かになる傾向がありま
できません。BOSSシステムでは最新の牛群検定成績を
す。繋留したまま分娩させ難産となってしまったり、分
活用して、妊娠牛の子牛生産状況を反映させています。
娩の牽引が不適切であったり、そもそも繁殖管理が出
来ておらず分娩予定日を勘違いしていたり、事例の枚
(6)未経産牛(育成牛を含む)
挙に暇はありません。最近の牛群検定成績では、平成
未経産牛は遺伝的に最も改良が進んでいる集団で
26年度には都府県5.67%、北海道6.16%の死産率となっ
す。育種的には優秀な未経産牛からは積極的に乳用後
ています。BOSSシステムでは牛群検定成績による死産
継牛を生産するのが望ましいとされています。
率を用いますので、分娩事故の多い農家では乳用でも
しかし、実際の多くの農家では、難産回避を重視し、
肉用でも子牛の生産予測頭数は少ないものとなります。
交雑種(F 1 )が生産されています。BOSSシステムで
なお、BOSSシステムでは遺伝的に死産しやすい交
は、遺伝的に難産しやすい交配をさけることができま
配を避けるような種雄牛選択をおこなうことが出来る
す。性選別精液を利用すれば、難産回避にも効果があ
ようになっています。
ります。とは言っても、肉用肥育素牛の生産は、未経産
牛が主役です。なぜなら、肉用肥育素牛生産を行う理
(3)1カ月齢死亡率
由には、難産回避という意味合いも大きいからです。
北海道のように冬の寒さが厳しい地区では、分娩房
さて、このように未経産牛は乳用後継牛と肉用肥育
などできちんとケアしないまま分娩させると、子牛が
素牛のふたつの生産の要です。ところが、残念なこと
そのまま凍死してしまう事故が多く発生してしまいま
に都府県の検定農家は未経産牛を牛群検定に加入させ
す。残念ながら、この実態は牛群検定でも把握が不十
ていない例が多く見受けられます。未経産牛が未加入
22
ではBOSSシステムの魅力が半減してしまいます。未
図3
経産加入は検定費用は無料となっていますので、これ
を機会に検定加入を行うようにしましょう。未経産加
入することで、BOSSシステムの精度も高まります。
3 乳用後継牛の生産予測
BOSSシステムでは、前述の内容により乳用後継牛の
生産頭数を予測しています。具体的には以下の通りです。
①妊娠牛(牛群検定報告)
現在から280日目までに産まれる子牛
(通常精液
[卵]
による受胎頭数×48%)
+
(性選別精液
[卵]
による受胎頭数×90%)
②BOSSシステムによりこれから交配する牛
図4
乾乳牛と12カ月齢未満の未経産牛を除きます。
現在からみて280日以降でおおよそ380日目程度まで
に産まれる子牛
(通常精液
[卵]
による交配頭数×受胎率
[卵]
×48%)
+
(性選別精液
[卵]
による交配頭数×受胎率
[卵]
×90%)
③乳用後継牛の生産予測頭数
(①+②)
×
( 1 -死産率)
×
( 1 - 1 カ月死亡率)
4 子牛生産予測シート
(1)乳用後継牛の生産バランス
(2)肉用肥育素牛
図 3 は、BOSSシ ス テ ム に よ り 提 供 さ れ る 帳 票 で
BOSSシステムでは、これから 1 年間に出荷できる
す。現 在 妊 娠 し て い る 牛 か ら 生 産 さ れ る 子 牛 頭 数
肉用肥育素牛の頭数を、乳オス、ETによる黒毛和種、
(A)
、BOSSシステムにより 1 年以内に生産される子
交雑種(F 1 )の 3 区分で生産予測を行います。繰り
牛頭数(B)により、年間の子牛生産予測頭数をA+
返しになりますが、乳用後継牛の生産に影響を及ぼさ
Bで計算しています。●★印がつけてありますが、経
ずに生産できる肉用肥育素牛の予測生産頭数となりま
産牛の年間除籍頭数と乳用後継牛の生産予測頭数を図
す。年間の出荷計画に利用できます。
4 のように比較して生産バランスを検討します。
生産バランスを検討するのに注意点があります。現
在の牛群検定では、哺育・育成中の事故を把握するこ
5 さいごに
とは出来ませんから、牛群検定データを活用している
今回は、乳用後継牛の頭数確保に焦点を絞ってBOSS
BOSSシステムでも、哺育・育成の事故を考慮されて
システムを紹介しました。実際には、乳用後継牛につ
いません。哺育・育成の事故率は農家のみなさんに判
いては頭数確保を行いながら遺伝的に優良な雌牛を選
断して頂かなければなりません。例えば、年間除籍頭
定する必要があり、かなり複雑なものです。また、そ
数が20頭で、乳用後継牛の生産予測頭数が23頭で最小
の頭数確保にあたっても、前述したとおり、受胎率等
限の後継牛を確保出来たとします。しかし、哺育・育
により計算していますが、これも実際には夏の暑熱や
成において 4 頭を事故により失えば、23- 4 =19頭し
繁殖障害などでいつでもベストな状態で人工授精等を
か乳用後継牛とならず、結果として不足してしまいま
行えるとは限りません。BOSSシステムは、こういっ
す。このように哺乳・育成が何頭事故となるか、差し
たことに対応するために遺伝情報や繁殖情報を加味し
引いて生産バランスを検討してください。
ながら検討することが可能になっています。その内容
等は次号以降で順次解説していきたいと思います。
23 − LIAJ News No.160 −
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