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(社)石川県農業開発公社の事例(pdfファイル)

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(社)石川県農業開発公社の事例(pdfファイル)
Sort
90
関連情報
性選別精液を用いた人工授精技術③
〜(社)石川県農業開発公社の事例〜
技術・情報部 次長 濱野晴三
石川県の酪農家戸数ならびに飼養頭数は、78戸4,470頭(農林統計、H22.4)と決して多いわけではありません。
しかし、(社)石川県農業開発公社では能美市の辰口放牧場、羽咋郡の富来放牧場、鳳珠郡の内浦放牧場の3放牧
場に預託される県内の育成牛に対し、Sort90が積極的に授精されています。
各放牧場ともに周年放牧で、入牧は年2回、3放牧場で合計6回の募集を行っており、年間およそ500頭の育成牛
を預かっている牧場での事例です。Sort90を利用する目的は計画的な後継牛生産と明確で、その他の腹をF1生産
や受精卵移植に利用されています。3放牧場で授精業務を担当されている技術者の方々や、生産者の方々から伺っ
たお話の概要です。
Q 授精の概要について
A 各放牧場で家畜人工授精師2 〜 3名と獣医師1名が常勤しており(計8名と3名)、授精を担当している。年々
Sort90の依頼が増加傾向にあり、受胎率も向上している(表1)。
表1 放牧場の授精成績
平成 21 年度
3 放牧場計
平成 22 年度*
授精延頭数
受胎頭数(%)
授精延頭数
受胎頭数(%)
196
90(45.9)
81
45(55.6)
*:平成22年4月〜 6月末までの実績.
Q 授精プログラムについて
A 08:30から発情確認を行い、発情が確認できた
個 体 は16:00 〜 17:00に 授 精 を 行 っ て い る。 昼
〜夕方に発情を確認した場合には、翌日09:00 〜
10:00頃に授精を行う。
農家からのリクエストで、初回の授精はSort90を
使うケースが多くなっている。Sort90の授精は2回ま
でとし、不受胎の場合は通常乳牛もしくは黒毛和
種精液で授精を行う。但し、農家のリクエストが
あれば3回までSort90の授精をすることもある。精液
は、ほとんど農家からの持ち込み。
Q 授精の判断材料
A スタンディングと粘液を判断材料としている。卵
胞の位置を確認して、注入器を子宮体から卵胞の
ある側の子宮角に若干入れた程度で注入している。
卵胞が小さい場合には受胎しにくいと感じてお
り、そのような場合は授精を遅らせる様にしている。
23 − LIAJ News No.125 −
Q 農家ごとの差は感じますか?
A 感じる。哺育の時期が大変重要であり、後の受
胎に影響すると思われる。
生産者の方々の声
〜 Sort90の利用について〜
A牧場:Sort90は放牧場で使っており、10頭に1頭は雄
が生まれている。後継牛確保が計画的に行えるよう
になった。
B牧場:一昨年の生産子牛は7割が雄だったので、後
継牛確保のために放牧場でSort90を利用している。
最近はほとんど雌が生まれており、難産もない。生
時体重の平均は40kg以下だった。
C牧場:放牧場で授精してもらっている。これまで孕み
導入に頼った時期があったが、導入は割に合わない。
D牧場:後継牛確保が目的で、Sort90は放牧場でのみ
の利用、預託全頭に授精している。受胎しなければ、
黒毛の精液でF1生産をしている。
E牧場:放牧場では使わず、経産牛に用いた。良い発
情であれば、経産牛でも受胎する。注入部位は子宮
体で、深部注入は行っていない。授精時期は、発情
開始後20 〜 24時間頃。発情開始は、粘液を僅かで
も排出した時刻としている。後継牛の計画生産がで
きるようになったので有難い。
F牧場:Sort90は放牧場で使い始めた。下牧してきた
ばかりで、まだ子牛を産んでいないが、期待感は大
きい。
H牧場:未経産牛は放牧場で授精してもらっており、
酪農家に大きなメリットをもたらしていることを実
感している。経産牛にも使用している。
I 牧場:受胎しているが、雄も生まれた。雄が生まれ
ることは、事前の説明で理解しているが、やはり
ショックだ。
J牧場:価格が高いので、必ず雌であるなら使っても
良い。育成牛は放牧場へ預託しているが、Sort90を
使ったことは無いし、今のところ使う予定も無い。
使わない理由は、雄が生まれるから。
訂 正 と お 詫 び
LIAJ NEWS No.124、P28に掲載した内容の一部に誤りがありました。
ここに全文を訂正させていただくとともに、関係各位に多大なご迷惑をおかけしましたことをお詫びいたします。
本別町農業協同組合
Q 性判別精液をどのように利用されていますか
A 性選別精液は、同管内の酪農家の繋養牛と預託
牛でおおむね2:8の比率で利用している。管轄内
酪農家の繋養牛は、経産牛を中心に授精している。
授精業務は農協畜産部所属の家畜人工授精師4名
が中心となり行っているが、担当職員が不在時に
は同部の職員(すべて家畜人工授精師)が補完し
ている。
預託牛への授精メニューは預託元から指示が出
されており、多くは2回目までの授精は性選別精液
で行い、不受胎の場合には指定された一般精液で
の授精を行う。
平成20年(1 〜 12月)の授精では国産精液700本、
輸入精液400本を使用しており、利用本数は増加傾
向にある。
管轄内で性選別精液を利用される生産者の多くは、
これまでの後継牛生産において雌に比べ雄が多く生
まれている酪農家で、利用者は固定化されている。
Q 人工授精について
A 生産農家からは、毎朝農協へ発情の稟告が寄せ
られ、08:30から午前中に農家を巡回して適宜授
精を行っている。預託牛は早期受胎が望まれてい
ることもあり、僅かにでも受胎の可能性があれば
授精を行う。授精した翌日も発情が継続している
様子があれば、同じ種雄牛精液で再度授精を行う
場合もある。
精液の注入部位は、主に子宮体に注入している
が、子宮角に注入する授精師もいる。経験年数に
もよるが、深部注入を行えない場合には、無理し
た行為は行わない。
通常精液の場合、卵胞が多少小さくても受胎を望
めるが、性判別精液は卵胞がまだ小さく、排卵まで
に時間を要すると感じた場合は不受胎のケースが
多い。排卵直前の卵胞が確認できた場合、比較的受
胎している。発情を吟味した授精が可能であれば、
50%以上の受胎は望めると感じている。
飼養管理技術による農家の差は否定できないが、
それ以上に発情の見方が大きな要因となっている
と感じる。繋ぎ牛舎では発見し難い現状もあるが、
発情の捉え方(発情の判断が早い)に問題がある
と感じている。
Q 子牛生産の状況はいかがですか
A 妊娠確認後、預託元へ返すので子牛生産率は把
握していない。
管轄内で生産した子牛頭数は少ないが、概ね90%
が雌である。生産した雌子牛は全頭保留され、販
売対象にはしていない。
Q 今後の方向性について
A 現在、性判別精液の利用本数は増加傾向にある
が、いつまでも増加するとは考えられない。管轄
内生産者が子牛販売を行う意向がない限り、ある
時点で平衡状態になり、利用本数は横ばいになる
と考えられる。
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