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「ビジネス日本語」授業報告 - 東京外国語大学学術成果コレクション

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「ビジネス日本語」授業報告 - 東京外国語大学学術成果コレクション
東京外国語大学
留学生日本語教育センター論集 33:169~177,2007
「ビジネス日本語」授業報告
-全学日本語プログラム 800(超級)レベルにおいて-
大木 理恵
(2006.10.31 受)
【キーワード】
ビジネス日本語、敬語、ビジネスマナー、就職活動
1.はじめに
2005 年秋学期から全学日本語プログラムの 800 レベル(超級)のクラスとして「ビ
ジネス日本語」が始まった。2005 年度秋学期は 5 名、2006 年度春学期は 11 名の受
講者が集まった。筆者はこのクラスの担当者として 2005 年春頃から準備を始めたが、
企業に勤めた経験があるとはいえ、どのような授業構成が大学の授業で行なう「ビ
ジネス日本語」として適切か見当がつかなかった。そこで、2005 年春から夏にかけ
てビジネスマンに教える日本語教師対象のセミナーに参加したり、日本人学生向け
に書かれた就職活動支援本などの参考文献を収集したりした。また、企業に勤めて
いる友人に新人研修の内容を教えてもらった。そして、それらの資料をもとに、①
留学生が日本企業に就職するために知っておいたほうがいい情報、及び②就職後に
遭遇する場面を想定したケーススタディの二つを授業の中心に据えてコース設計を
することにした。本報告では、2006年度春学期に行った授業を例に「ビジネス
日本語」のクラスの実際を報告する。
2.コース概要
「ビジネス日本語」クラスは 800 レベル(超級)の学生を対象に、ビジネス場面
で使われる日本語について学習するクラスとして開講されている。600 レベル以上
の学生に受講を許可しているため日本語の語彙力や運用力に多少の差はあるものの、
日本の企業で働くことに強い関心のある学生達が集まった。2006 年度春学期の受講
生は男性 5 名、女性 6 名、国籍は、アメリカ、ウズベキスタン、韓国、チェコ、フ
ランス、ベトナム、モンゴル、ロシアであった。
初回のクラスではコースの予定を説明し、学生から「ビジネス日本語クラスでど
のようなことを学習したいか」についてアンケートを取った。それ以降は表1に示
-169-
すように、就職活動や仕事上で遭遇するさまざまな場面をトピックとしてとりあげ、
授業を行なった。既成のテキストは使わず、参考文献や、友人からもらいうけた新
入社員教育用の資料をもとに自作のプリントを用意し、解説→質疑応答→ロールプ
レイの順で授業をすすめた。また、毎回の授業の最初に前の週に学習した内容の簡
単なクイズを行った。コースの最後に期末テストを実施した。
授業の初回に学生達に書いても
表1
らったアンケートにはほぼ全員か
ら「会社で使う敬語が学びたい」と
いう要望が書かれていたが、「どの
授業で扱ったトピック
回
1
ような場面で」とか「誰に対して」
トピック
オリエンテーション、アンケート、日
本人の就職活動、エントリーシート
などの具体的なことは書かれてい
2
就職活動時の服装、挨拶の仕方など
なかった。学生達によく聞くと、
「会
3
就職戦線のビデオとディスカッション
社で働く人は特殊な敬語を使って
4
面接試験
いるらしい。自分は会社で使う適切
5
推薦状
な敬語が使えない。敬語を勉強しな
6
会社訪問、他社訪問、名刺交換
ければならない。」という敬語に対
7
電話の応対(1)
する漠然とした不安感や危機感を
8
電話の応対(2)
持っているようだった。
9
ビジネス文書(1)
10
ビジネス文書(2)
11
アポイントの取り方、変更の依頼の仕方
表1は授業全 15 回のシラバスで
12
クレーム処理
ある。以下に、授業で扱った主なト
13
期末試験
ピックの内容を学生の様子ととも
14
3.トピックの内容と学生達の反応
に、報告する。
15
試験のフィードバック、ビジネス日
本語能力テストサンプル
ゲストスピーカーの話
3-1.日本人学生の就職活動
日本では学部大学生が就職しようとする場合、3年次の秋から活動が始まる。最
近は、会社説明会や面接の前に、エントリーシートというものが使われて、ふるい
にかけられる。授業では、エントリーシートのサンプルを紹介した後、本大学の学
部を卒業した日本人学生の実例をとりあげて、その学生の就職活動と内定をもらう
までの経緯を解説した。また、大学生の男女3人が就職活動を通してどんな努力を
したか、どのように仕事観が変わっていったかを描いたドキュメンタリー番組のビ
-170-
デオ録画を見せ、日本の大学生の就職活動の実際を紹介した。
学生達は、日本人学生の就職活動の進め方に非常に興味を持っている。履歴書や
エントリーシートのサンプルを見て、押し付けがましくなく自己をアピールする書
き方に感心していた。大学生の一律な「リクルートスーツ」、髪型、靴などにも驚い
ていた。また、ビデオに登場した「笑顔の練習をする大学生」には強烈な印象を受
けたようだった。
3-2.面接試験
面接試験では、質問に対する受け答えはもちろん入室から退室までの動作や服装
を細かく審査される。ここでは大学生向けの就職支援の本を参考に、面接試験会場
での入室・着席・退室の仕方、一問一答の時の言葉遣い・話の組み立て方について
学習した。
最近では、グループ面接を取り入れる企業も多くなっている。留学生達にとって
グループ面接はあまり馴染みがないため、グループ面接会場でディスカッションの
題材としてどのようなテーマが与えられるのか提示し、議論はどのように進めれば
よいか話し合った。
面接での一問一答の練習も行なった。その際、学生達に三つの条件を課した。そ
れは①結論から先に言うこと、②一回の発言は20秒を目安とすること、③謙譲表
現を使うこと、である。上・超級の学生達にとって普通の時であれば難なく使うこ
とができる謙譲表現だが、短い時間に質問の答えと文章構成を同時に考え、さらに
謙譲表現を使用するのはかなり難しいらしく、皆一様に四苦八苦していた。
3-3.他社訪問
会社を訪問するケースは、入社前(まだその会社の一員ではない場合)と入社後
(その会社の一員として他社を訪問する場合)に分けられる。授業では、面接試験
を受けに行った場合と、新入社員として取引先に挨拶に出向く場合とを例にあげて
説明した。また、訪問を受ける側(例えば受付)の対応も重要である。授業では受
付としての対応や言葉遣いも紹介し、双方の役割ができるようにペアワークを行
なった。
学生達が苦労していたことは、受付できちんと自己紹介することと、受付の立場
にたった場合の案内の仕方だった。特に、方向を表すことば(正面右手、エレベー
タを降りて左手奥など)に馴染みがないために苦心していた。また、冬に他社を訪
-171-
問する際には、受付に着く前にコートを脱いで腕に掛けることが一般的なマナーだ
ということに驚いた様子だった。
3-4.名刺交換
日本人が普段何気なく行っている名刺交換は、目下の者から、そして訪問した側
から差し出す、印刷された名前に指を掛けないなど、日本らしい文化観や謙遜の意
識に基づいて行なわれている。授業では、基本的なルールを紹介した後、名刺交換
を行なっているところを含むドキュメンタリー番組を視聴し、規範と実際とを比べ
ながら解説した。また、名刺のサンプルを見せながら、名刺交換した後の名刺の取
り扱いについても説明を加えた。
見る/聞くのと実際にやってみるのは大きな違いがある。授業では、本物の名刺
を使って初対面の会社員が名刺交換をするという設定でロールプレイをしてみた。
すると、どのタイミングで誰から名刺を差し出すのか、いつ座るのか、もらった名
刺の置き場はどこかなど、実際にやってみることによって新たな疑問がどんどんわ
いて来るようで、この回は特に質問が絶えなかった。また、名刺交換後どのような
話をするのかにも意識が向き、自国のビジネスマンが世間話としてどのような話題
を適切と考えるかについて話が発展した。
3-5.電話の応対
電話の応対が上手にできるかどうかで、新入社員の評価が変わることもある。ま
た、電話口での対応はその会社の「顔」でもあるので、十分な教育が必要である。
ここでは、電話の取り次ぎの時の対応の仕方を、目的の相手が在席の場合と不在の
場合、社外向けの場合と社内向けの場合に分けて提示した。また、メッセージを伝
える時のメモの書き方なども説明した後で、ロールプレイで実践練習を行った。
電話口での言葉遣いは、定型になっているものが多いため、学生達にとってそれ
らを習得するのは難しいことではなかった。しかし、不在の人への伝言メモを書く
タスクについては、伝言内容をわかりやすく箇条書きにすることが難しいようだっ
た。また、電話を受けた日時を書くこと(特に、時間まで記入すること)の重要性
を知らない学生が多かった。
3-6.ビジネス文書(社外向け)
社外向けビジネス文書は儀礼的なものが多い。しかし、見慣れていないと、どの
-172-
部分が重要でどの部分を読み飛ばしても良いかわからない。授業では、正式な日本
語の手紙のルール(頭語と結語、季節の挨拶など)や「御社」
「弊社」などの仕事を
する上でよく使われる単語の尊敬/謙譲表現などを学習し、どこに何を書くか(日
付け、宛先、件名などの位置)を説明した。その後、
「展示会案内」や「依頼状」な
どの社外向けビジネス文書のサンプルを読み、内容把握を行った。
学生達はビジネス文書に理由のない恐怖観を抱いていたらしい。しかし、いくつ
かのビジネス文書のサンプルを見ることによって、また、ビジネス文書で使われる
単語を勉強することによって、その文書中でどこが一番重要な部分かを判断するの
はそれほど難しいことではないと理解したようだ。
3-7.ビジネス文書(社内向け)
社内向けビジネス文書には、
「報告書」
「稟議書」
「通知」などがある。社外向けビ
ジネス文書と比べると、堅苦しい挨拶や文章がないかわりに、自分で文章構成を考
えて書かなければならない部分が多い。また、その会社独自のフォーマットを使用
している場合もある。授業では、社内向けビジネス文書で一般的に用いられている
ルールを解説した後で、実際にある会社の社内文書のサンプルとフォーマットを見
せながら内容把握を行なった。また宿題として、
「販売促進のために支店へ出張した」
「社内で行なわれた会議に出席した」という2種類の状況設定をし、「出張報告書」
または「議事録」(どちらかを選択)を書く課題を与えた。
社外向けビジネス文書は、書くことよりも読めることのほうが大切だが、社内向
けビジネス文書は、書けるようになる必要がある。そのため宿題を課したのだが、
やはり、状況を把握して要領よく箇条書きにすることは難しいようだった。
3-8.アポイントの取り方、変更の依頼の仕方
一般企業では、社内の他部署の人あるいは他社の人と共同で仕事を進める場合も
多い。複数の人が関わる仕事では、議論や検討、擦り合わせなどの打ち合わせをす
ることが多い。そのため、アポイントをとるための電話の掛け方やメールの書き方
を学習する必要がある。授業では、相手の予定に配慮し、また自分の都合を押し付
けず、適切な言葉遣いでスケジュール調整をする練習を行った。また約束した日時
に急用が入り変更せざるを得ない場合もあるので、失礼にならないようにアポイン
トの変更を願い出る練習も行った。
学生達が苦心していたのは、スケジュール調整をする時のやりとりだった。自分
-173-
からは「○月○日○時にしてください」とは言わず、必ず相手の意向を問う表現を
使用しなければならないからだ。また、アポイントの変更をお願いする際には理由
を添えなければならないが、社内の内部情報は他社の人に漏らしてはいけない。し
たがって、詳細を言わずに先方に納得してもらえる理由を探すという細やかな気遣
いが要求される。普段は使わない神経を使うことになり、学生達には難しく感じら
れたようだ。
3-9.クレーム処理
顧客を相手にする仕事の場合、クレームに対応しなければならない場面に遭遇す
ることがある。クレームを受けるのはつらいものだが、それにうまく対処できてこ
そ一人前とみなされる。授業では、いくつかの場面を提示しながら、どのような対
応であれば顧客が納得するか皆で考えたり、日本での一般的な対応を提示したりし
た。クレームを言ってくる顧客は、実はその企業にとって大切な指南役であること
を説明し、クレーム対処の重要性を強調した。
学生の中に、名古屋万博で通訳ガイドのアルバイトをした時日本人客から「案内
役としての言葉遣いがなっていない」と、クレームを受けた経験がある人がおり、
その時の状況や自分の心境を説明し、クラスのメンバーから同情されていた。
3-10.ゲストスピーカーの話
留学生にとって、日本で働いている先輩の話を聞くチャンスはめったにないだろ
う。授業では、2年前に日本語・日本文化研修留学生として本学に在籍した学生で
あり、今は日本の企業で働いている先輩を呼んで、話をしてもらった。具体的には、
どのような就職活動をしたのか、試験はどのようなものだったか、仕事の内容は何
か、日本人と一緒の環境で働くにあたり、仕事上あるいはプライベートで困ったこ
とはどのようなことか、などを話してもらった。その後で質疑応答の時間をとった。
学生達は、年齢の近い先輩が直に体験したことを聞くことをとても楽しみにして
いた。実際に話を聞くと、次から次に新しい疑問や質問がわいてくるらしく、授業
時間をすぎても質問が絶えることなく続いた。
4.コース全体を通しての学生達の様子と感想
学生達は仕事上で必要な敬語や単語、表現はもちろん、会社での一般的なルール
にも非常に興味があり、毎回質問を山のようにしてきた。時には予定していた内容
-174-
を終えることが難しいほど質疑応答が活発に行なわれることもあった。以下は質問
の例である。
「最近は、会食をしながらの他社との打ち合わせはあるか。」
「同僚宛の電話を受けたけれども同僚の帰社時間が分からない時、相手になんと
言えばいいか。」
「初めて会った人との打ち合わせ中に、名前を忘れたらどうするか。」
「打ち合わせ中ノートを取りたいが、机が応接テーブルのように小さい又は低い
場合、どうするか。」
「訪問客を見送る時、エレベータがない会社の場合はどこまで見送りに出るのか。」
コースの最後に学生達の意見/感想を書いてもらう無記名アンケートを実施した。
質問事項は5つである。回収できたのが 8 名と少なかったため、統計的に傾向を出
すことはせず、以下にそれぞれの事項について紹介する。1)は筆者がまとめたが、
2)以降は学生が記述したものを誤りも含めてそのまま転載する。
1)各トピックについての評価(「役に立った」
「どちらでもない」
「役に立たなかっ
た」の3段階評価)
こちらが提出した全 21 項目(表1に掲載したトピック以外にも「慣用表現」
「クッ
ションことば」注1)などをとりあげたため数が多くなっている)において、
「役に立っ
た」という評価が大変多く、「役に立たなかった」という評価は全く無かった。
2)今後取り入れてほしいトピック
・実際の入社試験の練習
・授業のテーマはそれでいいと思いますが、ただ一つ最初に見たビデオのように
実際の例を沢山見たかったです。最初のビデオはまだまだ印象に残っています。
・日本の企業文化についての資料がほしい。
3)今までに学習した日本語の運用との違い
・目上の人と目下の人の関係、社内の人と社外の人の関係など。
・敬語のレベルが高すぎる。
・授業での丁寧なことばとビジネスの丁寧なことばは違うと思う。ビジネスで社
内と社内(社外の間違いと思われる)のことばがあって、教科書であまり区別
されないと思う。
4)自国のビジネスマナーと違うので驚いた点
・言葉づかい、めいしのマナー、ふくそう、あいさつの仕方
・沢山あります。日本人はマナーしすぎだと思った。コミュニケーション、それ
-175-
に気をつけて、ビジネスの方はどうかな、と思う。人間はもっと自由であるべ
きだと思う。
・ことば使いですかね。こっちもずいぶん格式化されてると思ってましたけど日
本はこれもか!って思いました。
・おどろいたのはクッション言葉の授業でした。ビジネスの場面でもっとていね
いで、もっと気を付けた言い方をしなければならないということがわかった。
モンゴル語にもこのような表現があると思いますが、あまり使っていないこと
に気付きました。
・就職活動の流れ。
・お客さんに対して日本の方が丁寧すぎると思う。面接のために笑顔の練習をす
るのは本当にビックリだった。
5)日本で就職したい留学生にとって必要な学習/情報
・インタビューでのマナー、言葉、挨拶、おじぎの仕事、日本社会で失礼だと思
われること。
・先生の「ビジネス・ニホンゴ」授業を受けたら、全情報が間違いなくあります
ので、おすすめします。
・やっぱり就職成功した先輩を見て元気づけられることとか、体けん記などが多
くあってもいいかと、
・Riku-nabi にどういう風に登録して、手続きを踏むか。つまり、就職活動に参
加するための具体的な情報が必要だと思います。
・まず日本語能力をかんぺきにすること。次に英語。色々な資格も必要だと思う。
5.反省と今後の課題
手探りで始めた「ビジネス日本語」クラスだが、2期を終えて大体の枠組みがで
きてきたという手応えを感じている。しかし、シラバスとしては不十分な点もまだ
多い。
例えば、学生からの要望で「推薦状をお願いする」場合の会話およびメールの練
習を行なった。しかしこれは彼らにとって簡単すぎるタスクであるということがわ
かった。また、普通の生活ではあまり使わないけれども会社での会話でよく使われ
るので紹介したい慣用表現(はしごを外される、風呂敷を広げるなど)を何回かに
分けて取り上げた。これらは、会話の背景がよくわからないと適切な文章を作れな
いこともあり、運用できるまでには至らなかった。取り上げる表現を厳選し,例文
-176-
をたくさん用意する必要がある。
今回、大学生の就職戦線を扱ったドキュメンタリー番組があったので、授業に利
用することができたが、ビデオを使った授業はその1回にとどまった(その他には
名刺交換でもサンプルビデオを見せたがわずか5分程のものであった)。学生からは、
ビデオで実際のビジネス場面を見たいという要望が多い。ドラマ、ドキュメンタリー
あるいは報道番組などから、素材を収集する必要があると感じている。
先輩留学生の話を聞くことは、学生達にとって大変有意義である。幸運にも 2005
年度秋学期、2006 年度春学期とも協力者を招くことができた。今後も先輩の話を聞
く時間を設けたいと思っている。また、企業側から留学生への要望などを聞く機会
があると学生の意欲も高まると思うので、そちらの方のチャンネルも探っていきた
いと考えている。
学生からのアンケートに、日本で就職したい留学生にとって「日本社会で失礼だ
と思われること」についての情報が必要だ、というものがあったが、これは、
「自国
では失礼にならないことでも、日本では失礼になることがある」と感じた経験から
出てきた要望であると思われる。この要望に応えるためには、講師自身が日本と学
習者の国のマナーについて比較できる程度の知識を持っている必要があると思われ
る。筆者の現在の知識ではまだまだ不足しているという認識があるため、ビジネス
に携わっている知人、日本で就職した学生等とコンタクトを取り続け、また受講者
とも情報を交換するなどして、これからの授業をより良いものにしていきたいと考
えている。
注1)クッション言葉とは、本当に伝えたい言葉の前に言って、相手に心構えを与
えたり、ソフトに伝えたりする効用がある言葉のこと。(「ビジネスマナー基
本テキスト」キャリア総研著、日本能率協会マネジメントセンター出版、2003、
pp20-21 による)
例えば、
「恐れ入りますが」
「あいにくですが」
「よろしければ」
「勝手を言っ
て申し訳ないのですが」などがある。
-177-
A Report on Business Japanese Class for the 800 Level
(Highly Advanced Level)
in the Japanese Language Program (JLPTUFS)
OKI, Rie
The Japanese Language Center for International Students, Tokyo
University of Foreign Studies has provided the class named "Business Japanese"
since the autumn semester of 2005. This paper will report on the course based on
the syllabus of spring semester 2006, which includes the following topics: a) job
hunting by Japanese university students; b) attending a job interview; c) visiting
a company; d) exchanging business cards; e) handling telephone calls; f) business
letters; g) making an appointment; and h) settling complaints. The students'
responses toward each topic and a round-table discussion with a guest speaker
are also mentioned. The result of the questionnaire, conducted at the end of this
course, shows that most students regarded the topics as being useful to them.
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