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自己紹介
農テラス 山下です。
本日は九州丸徳会の総会にお招きいただきありがとうございました。
私が平成10年頃益城町で生産者としてナスを栽培していた頃に丸徳さんには大変お世話になっていました。
今日は肥料販売店の方々にお集まりいただいているということで少しばかりお時間を頂戴し、いくつかのお話を
させていただきたいと思います。
さて、私も農業界に携わり20年以上が経過し、現在は農業参入コンサルタントなる怪しい商売をしております。
農業参入コンサルタントとは
一度も農業にかかわった事のない農業ゼロの方に農業を分かりやすくお伝えするのが私の仕事です。
農業界の?をわかりやすく紹介しています。
目指すは農業界の池上彰です。
農業参入が増えている!
現在、平成21年の農地法の改正により、一般企業も農業に参入しやすくなりました。
これまで企業の農業参入事例は改正前7年間で436社だったのが、改正後のたった3年間で1071社が農業
事業に参入しています。なんと伸び率5倍です。
この数値の背景には経済情勢、価値観の変化、市場の多様化など様々ですが、農業を新たなチャンスとみている
経営者が多いという事だと思います。
しかしながら、農業界はどうでしょう?
皆さんの周りの農家さんは・・・
「農家は大変だー。儲からない。後を継ぐ者はいない。
」って方ばかりではない
でしょうか?
「企業は農業にチャンスを見出し、農家は農業に見切りをつけている」
問題定義
いったい農業界に何が起きているのでしょうか?
農家に言わせれば「企業参入なんて農業の事何も知らないからチャンスなんて言っているんだ!」
企業から言わせれば「農家ももうちょっとこんな風に工夫すればもっとよくなるのに!」
農家と企業の両方を経験した私に言わせればどっちもどっちなんですね。
安易に農業に参入するって言ってもそんな簡単なものではない。
農地法が変わったって言っても簡単に農地を貸してくれるところもないし、技術を教えてくれるところもない。
日本の農業はこれまで農家の農あによる農家のための農業であって、新規に参入するにはまだまだ大きな壁があ
ります。
それを平成17年に農業参入した前職の株式会社果実堂で経験しました。
果実堂という会社は2006年(平成18年)にベビーリーフという野菜を生産販売するということで
農業参入しました。それまでは機能性食品の企画、製造、販売を手掛けていたのですが、自社研究所にてベビー
リーフの機能性を調べていたらとんでもなく栄養価高いことが分かったんです。
そこでこれを売ったら儲かるかもしれないと思い全く農業の「の」の字も知らない研究者たちが始めた農業の会
社です。
このように一般企業の農業参入は少しピントがずれています。「栄養価の高い野菜だから売れる」って発想。
間違っていますね。そんなんで売れるはずがありません。
しかし、現在はベビーリーフだけで年商8億です。すごいですね。
私はそこで農業本部長兼、農業生産法人「果実堂ファーム」の代表をさせていただいていたのですが果実堂が
何故飛躍的に業績を伸ばすことに成功したのかを踏まえて、「これから農業で稼ぐためには」というテーマに沿
ってお話をさせていただきます。
熊本には県立農大(私の母校ですが)に研修部がありそこでは毎年70~80名近くの研修生を排出しておりま
すが、私の役割はどちらかと言えば塾の講師です。
「1年間でどれだけ稼ぐ」といった目標に向けて何をすべきかを教えています
先にお断りしておきますが、私は成功者でも何でもありません。「稼ぐ話をしておいてお前稼いでないじゃない
か」といった類のクレームはお受けいたしませんのであらかじめ了承のほどお願い申し上げます。
私はどちらかというとゴルフの坂田信弘プロみたいにプレーヤーとしては華々しくはなかったのですが、指導者
として花開くタイプだと思っております。
もしよければ今日の話を皆様方の農家さんや、農業やってみたいと思われている方に教えていただければ幸いで
ございます。
それでは早速本題に入りたいと思います。
まずはじめに「農業で1億貯めた男の話」
農業で稼ぐためには稼ぐための考え方が必要です。
これまでの農業では親から子に稼ぎ方を継承してきました。
親は必死に子に教えます。
なぜなら農業は家業でするパターンが大半ですから、息子(娘)が農業できなければ家業が潰れてしまいます。
家業がつぶれるということは家がつぶれるという事ですから、親は必死に子に稼ぎ方を教えなければならなかっ
たのです。
しかし、これを怠ったために今の日本の農業が衰退したと私は思います。もっと言えば実は農家は稼ぎ方を知ら
なかったのではないかとさえ思っています。
さて、農業で1億稼貯めた男はどのようにしたかと言えば
1年間に 2000 万づつ 稼いでいったのです。
内容は
年間収入2000万、経費700万、生活費300万です。残りの1000万を貯蓄していきました。
どうやってこれを成し遂げたかというと3つの事をやりました。
1つ目は「稼ぐ(1000万貯める)と決めていた」
2つ目は「稼ぐポイントを知っていた」
3つ目は「浪費をとことん削った」
です。
では一つづつ見ていきましょう
1つ目は稼ぐと決めていた
その男はスイカ農家でした。
当時スイカ1玉1000円で取引されており、目標の2000万売上るた目には2万玉出荷すればいい。
と考えました。
当時のパイプハウス5m間口×100mに315株植えることができ、約300玉採れるので、ビニールハウス
が67棟必要だと考えたのです。
しかし、67棟ものビニールハウスを建てるにはお金がかかるので半分の35棟ビニールハウスを建て、スイカ
を年に2回植えることにしました。
つまり年間延べ 70 棟分スイカを植え付けしたことになります。
これで2000万の収入は確保。
次に稼ぐポイントだ。
稼ぐポイントも3つあってひとつは市場を見極めること。
市場が何を求めているのか常に探求していました。市況を見れば需要がいつあるのかが分かりますが、当時はそ
れが分らないまま、誰もが JA の指導員に言われた通りいいスイカをつくることに専念していました。
しかし、その男は JA の指導は無視して先に作付けズラして栽培していました。
その男曰く、
「人は新しいものが好き、誰よりも早く先に手に入れたいものだ」
つまり誰よりも新しいものは先に手に入れたい心理を知って、先に先にと作型を伸ばしていったのです。
当然全国的に早出しスイカとしてその産地は有名になりました。
次のポイントはお金を稼ぐためには時間を稼ぐという事。
よく、新規農業者の方で
農業でのんびりとした中でスローライフを楽しみたいなんて方がいますが、よほどお金に余裕がある方以外
それは無理です。なぜなら農業はタイムイズマネーだからです。
農業は
限られた時間の中でいかに効率よく生産し、効率よくキャッシュに変えることができるかゲームなのです。
農業は年中忙しそうって思われています。確か年中忙しいのは間違いありませんが、忙しく働いている方は
それなりに稼いでいます。サラリーマンでは到底無理な金額を稼いでいます。一方忙しくしていない農家はそれ
なりに稼いでいません。何かしら違う所得があるのかもしれませんが、働かなければ稼げないのが自営業です。
ただし、サラリーマンより稼いでいます。サラリーマンより仕事しているのにサラリーマンの給料より少ない所
得の方はやり方が間違っているのでしょう。
その男は単棟ハウス35棟約 2ha を奥さんと 2 人で管理していました。めちゃくちゃ忙しかったはずです。
その男は圃場に客が来るのを嫌がりました。なぜなら時間を取られるからです。
最近でも良く平気で農場を訪ねてくる資材屋さんがいますが、その方々は農家の時間を奪っていることを知るべ
きです。
また、それを平気だと思われている農家とは付き合ってはいけません。その方は稼ぐのが下手なはずです。
次に稼ぐポイントは入口より出口を絞ること。
まず 1000 万貯めると決める。次に資材、経費を払う、残りが生活費とする。これを徹底していました。
1000 万ははなっからないものとして決めているのであとは経費をいくら安くするかが勝負です。
やたらと経費がかさめば生活費がその分少なくなります。経費削減も必死になるのです。
しかし、やたらと貯蓄の鬼になっていたわけではありません。
経営の神様 松下幸之助のダム式経営をおなじ考えを持っていいたのです。
松下幸之助のダム式経営とは。経営はいい時もあれば悪い時もある。悪い時に備えてよい時に蓄えとくべきだ。
(ダムが水を貯え必要に応じてその水を出していくのに例えて、経営のあらゆる面、資金、人、設備などについてダムを造りなさ
いというものです)
同様に農業こそ一寸先は闇。内部留保がいかに大事かを知っていたんですね。
すごいですよね。結果時代も良くスイカが売れに売れた時代が 10 年続いたので結果 1 億近く稼ぐことができた
訳ですが、
この男こそが私の父であり、私の師匠なんです。
親が 1 億持っていてすごいね!って思われるかもしれませんが、
3 番目は浪費をとことん削ったんです。
家族にしてみればたまったもんではありません。我が家では贅沢は敵。買い物行かない、行けない、あるものを
利用する。もったいないの徹底ぶりでした。貯蓄は 1000 万あるのに生活は家族 7 人で 300 万以下での暮らしで
す。時代はバブルに向かう景気が絶頂期の頃でした。みんながお金が空から降ってくるかのように財布のひもが
緩いころ我が家だけは頑なに財布を開こうとはしなかったのです。
私は幼少のころからそんな生活を強いられてきましたので農業が嫌いでした。
しかし、今ではこの話をクライアントに教えています。
今思えば父に感謝です。優秀なライオンの親は子供にエサを与えるのではなく、エサの捕り方を教えると言いま
す。
まさに、これがエサの捕り方なんだなーと実感しています。
しかしこれは父の時代の話です。現在稼いでいる農家はどういう農家かというと
そのころとは全く違います。
稼いでいる農業法人の話
農家は家族経営が基本でしたが、最近では従業員やパートを雇用して農業事業をされている方がたくさんいらっ
しゃいます。
特に私の出身地益城町では大規模農家が多いところです。
有名どころでは松本農園、吉水農園、コウヤマ、長尾農産等です。
松本農園は古くから有機栽培相対取引をされていた老舗の農家です。現在 IT を駆使し海外へ農産物を売り込む
先陣を切っている会社です。
吉水農園は後発ながらも企業並みの福利厚生を充実させ、今一番充実している企業です。
コウヤマはイモの生産販売にとどまらず、いきなり団子を商品化するなど農業を 2 次産業化まで押し上げた
会社です。
長尾農産はバイヤーの目線を持つ生産者で、生産者にもバイヤーにもなれる生産バイヤーの先がけの会社です。
これらは全て 2 億以上の売り上げを持ち、多くの雇用を作り出しています。
他にも青果業界から農業に転身した高田農園や、女性 3 姉妹で農業をしている光永農園など
堅実経営をしています。
企業の農業参入で顕著なのが、青果卸業の農業参入です。野田青果は元ダイエーの指定青果ですし、
今大分誕生している安心院オーガニックファームは全国の小売、百貨店に青果を卸す福岡の青果業が始める
農業事業部です。
他にも円パーツ、熊本部品など自動車部品製造業が農業事業に進出している例もあります。
これらに共通しているのはどれも農家目線ではないという事。
そして全国的にも 1,2 を争う大規模生産法人 北部農園は熊本県植木にあり玉名郡横島町に 30ha のビニールハ
ウスを所有し、加工用レタスの生産で年商 8 億を売り上げています。
実はこの北部農園の創業者である上田会長は元肥料販売員だったのですが、農家に肥料を売ってもらちが明かな
いということで自分で生産を始めました。
全くゼロベースから初めて 20 年で年商 8 億はさすがです。
同じように、肥料屋から農業に転身した長洲町の八百味屋も今勢いに乗っています。
これらの農業法人には共通することがたくさんありますが、
特に重要なのは農業ビジネスが何かを知っていることです。
では彼らが実践している農業ビジネスとはいったいどういうものなのでしょうか?
農業ビジネスの話
1、 ビジネスとはトレード【商売】である
ビジネスの基本はモノやサービスを提供し、その対価をもらう事。
欲しいってお客様にモノやサービスを仕入れてきて売るか、自分で作って売るしかない。
もう一つはモノやサービスを持っている人が欲しい人を探してくるか、新しいマーケットを作るしかない。
今の農業は農産物というモノを作ってほしい人をさがしている状態なんです。だから苦労しているんです。
稼いでいる農家は違います。お客さんが欲しいものを欲しい時に納品します。
2、 農業ビジネスはサービス業である
サービス業とは飲食店や販売業のことです。
笑顔で「いらっしゃいませ」
。
「ありがとうございました」。ってやる接客業を思いつかれる方が多いと思いま
すが、実は農業もサービス業なのです。
どういう事かと言えば、お客さんに合わせなければならないからです。
たいがいお客さんはわがままです。自分の都合を次々に言います。
でも、そのお客さんのわがままに対応しなければ商売は成り立ちません。
例えば居酒屋さんでビールを頼んだのになかなか出てこない。
こっちはのどがカラカラなのにいつまでたっても出てこない。当然お客さんは怒り出すし、2 度とその店に
は行きませんよね。そしてあの店最悪だよって言いふらし、その店は客数が減り商売が成り立たなくなるの
です。
お客さんが欲しい時に欲しいものを提供できたらお客さんは喜びます。ヘタすると物凄く感謝されます。
今の農業はどうでしょうか?
もしお客さんがこの時期にこの商品をこれくらい欲しいんだけどって注文を出されたら・・・
農家のおじさんは「そんな都合よく出荷できるワケねえ」って突っぱねてはいませんか?
稼いでいる農家は違います。
お客さんがこの時期にこの商品をこれくらい欲しいんだけどって注文を出されたら・・・
「ありがとうございます。喜んで!」って言っているのです。
私も農家ですのでそのおじさんの気持ちがわかります。そんな客の都合に合わせて出荷できたら
何の苦労もいらねーよって思います。
でも、稼ぐ農業をするためには客の都合に合わせなければならないのです。
つまりこれが「これからの農業技術なのです」。
これまでの農業技術は反収を上げる事、品質を上げる事に趣を置いてきました。これからは
反収を上げる技術ではなく、ジャストインタイムで納品することが大切なのです。
3、 農産物流通が多様化してきている
これまでの流通は卸売市場が中心となって個人農家や農協、出荷組合から農産物を流通させていました。
ところが、最近では卸売市場を介せずに直接生産者から仕入れる仲卸業者が出てきたり、小売り業者が仲卸
業者すら飛び越えて生産者から買い付けたりしてきています。更には道の駅の出現により末端消費者は小売
業者すら介せずに農家から農産物を買うことができるようになりました。
そして、ついには家から一歩も出ずにネットを利用して農家から野菜を直接買うことも可能になったのです。
今までの農業は農協の中で共販システムにより個人では難しかった都市圏の市場に農産物を売り込むことで
成り立っていました。
そして都市圏の卸売市場では各地から集まる農産物に優劣をつけてどこどこ産のトマトがおいしいだの、ど
こどこ産のスイカはダメだの言って市場の中心にいたのです。
それにより産地と言われる農協共販部会は他の産地に負けないように品質をもっとあげよう、選別を厳しく
しようと言ってどんどん追い込まれていったのです。
一方稼ぐ農家はどうかというと、そんな産地間競争は無視してお客様の要望に的確に答えて自分のビジネス
を構築しています。
正直言って、農業で稼いでいる農家(農業法人は)農協の商品よりずば抜けて素晴らしいものを出荷してい
るわけではないのです。
農産物を取り巻く流通業界の現状について
(仕入側と納品側とのギャップを知る)
誰が言い始めたか知りませんが、いいものを作れば売れるだの、品質を高めれば高く売れるだの、そんなこ
とはありません。
いくら最高においしいトマトを作ったって市場にトマトがあふれかえり野菜の相場が低迷している時は
どんなにおいしいトマトも売れないんです。
これは語弊があるのであまり言いたくないんですが、誰かが教えてやらないと、まじめにおいしいトマトを
経費かけて作っている農家が浮かばれません。
バイヤーが求める農産物の特徴とは (青果業の仕組みと現状を学ぶ)
市場が求めているのはおいしいトマトであることは違いないのですが、一番求められているのは安定供給な
のです。
美味しいトマトができたからっていつもの 3 倍売れるわけではありません。それよりもそこそこのトマトで
いいからトマトが少ない時に欲しいのです。
末端の消費者とダイレクトに取引しない限り、農家のお客様にはその次のお客様が必ずいます。
その方々は農家から材料仕入れて転売することで経営を成り立たせていることを知るべきです。
多様化してきている農産物流通業界の中でその取引業者も生き残りをかけて必死になっています。
取引先が一番困ることは材料を仕入れ出来ない事。嬉しいことは安定した品質のものが安定供給されること
です。
稼ぐ農家はこのことを熟知しています
4、 誰からお金を頂くか明確である
そもそも農家のお客さんって誰でしょうか?
私が前職で役員をしていた時もこの話をよくしていました。
皆さんにとってお客さんってだれですか?
肥料屋さんで働いている人は肥料を買ってくれる農家さんがお客さんです。
勿論、間違いではないのですが、それは肥料屋さんを経営している人のお客さんであって、そこで雇用され
ている人は違うんじゃないでしょうか?
お客さんとはお金を下さる方です。
肥料屋さんは農家さんや、農協さんからお金を頂いていますが、そこで働く社員さんは自分の会社からお金
を頂いているのでお客さんは自分の会社ということになります。
つまり自分の会社がお客さんである以上、その会社がどうすれば喜んでくれるかを一生懸命に考えるべきで
す。会社はどういう理念でどういうことをやろうとしているんだろう。とか会社が喜ぶためには売り上げを
会えなければとか、会社が恥をかかないように自分も身なり、言葉遣いをちゃんとしなければとか考えなけ
ればなりません。
社長さんはお客さんである農家や JA が喜ぶ商品やサービスは何だろうと。と考えます。
農家が喜ぶために肥料を売るだけでなく、新しい技術を提供してやろうとか、農産物販売を斡旋してやろう
とかセミナーを開いて山下の話を聞かせてやろうとか(笑い)
つまり、商売で稼いでいる企業はお客様を喜ばせた数と比例する。って言われています。
ではこれまでの農家はどうでしょう?
近所の農家さんにあなたのお客さんは誰ですか?って聞いてみてください。
「俺は商売してるんじゃないから客なんかおらん!って一蹴されるはずです」。
それでもお客さんが居なければ生計が立ちませんよ。お金を誰から頂いてるかを教えてください。
って質問すると
今度は「農協からお金はもらっている」って怒った感じで言われるはずです。
すいません。農協は貴方にお金をくれるところではなくあなたからお金を取っているところですよ。
農協は農業協同組合と言って農家の団体です。相互扶助の精神の基互いを助け合いながら共同で事業をしま
しょうって組織なんです。
その農協は農家さんの貯蓄や、農産物の販売代金、軽トラックの燃料代、トラクターなど農機具、肥料の売
り上げ代金で生計を立ているのです。
農協のお客さんが農家であって、農家のお客さんは農協ではありませんよ。
じゃー俺は農協には出荷せずに、市場に直接出荷している。俺の客は市場だ。!
あのー市場は卸売市場って言って生産者【持込業者】と買い出し人を仲介してる団体でありこれもまた、あ
なたが持ち込んだ農産物の売り上げで生計を成り立たせているんですよ。
だったら俺の客は誰なんだ????
自分の客が誰だか知らないままにこれまで生きてきた農業。
ある意味うらやましい限りです。
ビジネスプランを立てる際には必ずターゲット(誰に売るのか)が明確でなければなりません。
ターゲットを絞り込んで、その客がどうすれば喜ぶかを徹底的に考えるのです。
バイヤーが求める農産物の特徴とは (青果業の仕組みと現状を学ぶ)
私もほうれん草を作っていた時はターゲットを絞り込んでいました。
そしてその青果業者がどうすれば喜ぶかも知っていました。
通常 1 パック 70 円から 80 円で取引されていたものを 65 円一律で卸します。その時点でその業者ほかの業者
より 5 円安く仕入れることができるので喜びます。
更には需要期に大量のほうれん草が必要になるときや、寒波の影響で品薄になりほうれん草が欲しくてたま
らない時があります。
当然その時の市場は 1 パック 150 円~200 円に跳ねあがります。
そんな時に涼しい顔していつも通り 65 円で納品します。更には通常の 3 倍の量を納品します。
お客さんは嬉しくてたまらないでしょう。
やがて、取引先の業者はさらに販路を拡大します。仕入れが安定すれば販路拡張が可能なのです。
青果業者は売るのが大変なんじゃありません。仕入れるのが大変なんです。
しかし、そんなことしてたら儲からないじゃないの?相場高い時は市場に出した方が儲かるでしょ?
違います。後で詳しく説明しますが、相場が高いのは一瞬です。最終的に安定的に供給した方が結果稼げる
のです。
では、農業ビジネスで成功するためにはどうすればいいのでしょうか?
1、 農業から青果業へ立ち位置の変換
農産物の新しい流通とその仕組みについて (生産者が青果業者へ意識の転換を図る)
つまり、農業というジャンルから抜け出し、自分は青果業界にいるんだという発想を持つ事が
これから大事になってきます。
ここにコーヒの木があります。この木にコーヒーのみが成らずに
このように缶コーヒーが直接なったらどんだけ楽でしょうか?
しかし神様はそんなことはしませんでした。コーヒーの実がなってそれを産業とし、仕事を与えたのです。
これをイギリスの経済学者コーリンクラクが一次産業は生産業、二次産業は製造、加工業、3 次産業は財サ
ービス業と区分けをしたのです。
しかしながら、そんな区切りはどうでもいいのです。農業を営んでいる生産業者が加工をしたり、販売した
りサービスしたりしてよいのです。
むしろ自分は農業だからって決めつけてしまうと、お客さんすら見えてきません。
自分は農業界ではなく青果業界一員なんだという発想の転換ができた方が現在成功しているのです。
ではどうすれば青果業に転換できるのでしょうか?
誰にでもできる農産物営業の仕方とは (いつから、何を、どれくらい、いくらでを即答する)
それは、いつから、何を、どれくらい、いくらでを即答できるようになることです。
世の中のすべてのモノには値段があります。
このペットボトルも、マイクも、服も・・・
しかし、農家の方に直接野菜をゆずってくれって言っても値段を即応できる方はいません。
世の中に値段の決まっていない物があるなんて・・・
たまに、高級なお寿司屋さんのお品書きに時価って表示されていますが、結局はその大将が値段を決めて
お会計の時にびっくりする値段を要求されます。
私たちが青果業に立ち位置を変える事とはいつから、いつまで何をどれくらいいくらでを即答できるようになる
ことから始めましょう。
2、 プロダクトアウトからマーケットインへ発想の転換
売れるモノ作りではなく売れる仕組みを作るには (プロダクトアウトからマーケットインの発想へ)
今日の農産物は市場流通が基本ですので欲しいと思う人が多くて品物が少ない時には価格が高くなります。
一方欲しい人が少ないのにモノが多い時は価格は安くなります。市場の需給バランスです。
同じような動きをするのに中古車があります。高級車が中古車になると桁違いに安く販売されています。
これは買う人が少ないからです。一方軽自動車は中古になってもなかなかの値段で取引されます。
これも買う人が多いからだけのことです。
株もそうです。人気の株は値上がりし、人気のない株は値下がりします。ここにも需給バランスが発生して
います。
株の場合は証券会社を通さなければ売買できませんが、中古車の場合は中古車市場を通さずとも売買が可能
です。
農産物も同様で、市場をとさなければならないルールはありません。
皆、自由に流通させ始まました。
冒頭でもお話ししましたが、最近は農業を始める方が多いのですが、それ以上に青果業を始める方も増えて
います。
青果業を始めるには特別な免許や、スキルはいりません。農産物を買ってくれる人を見つけて、それを仕入
れる農家を探して来ればその差額で利益を得ることができます。
私の周りにはそういった方がとても多いのですが、その方々は何が売れるかをよく知っています。
どの時期に何が足らなくなるかも、どの時期に何が良く売れるのかも知っています。
当然そのお客さんに対応しさいすれば青果業として成功することが容易にできるのです。
ただし、そんなに簡単なものではありません。なぜならば仕入れる相手が農家だからです。
何度も出てきますがこれまでの農家はかたくなに農産物を青果業者に委ねません。
売ろうとするどころか、農産物を農協や市場以外のルートに流そうとはしないのです。
仮に、横流ししてもいいよってときにはここ最近の相場で一番高かった時の値段を持ち出して
高く売りつけようとします。
そんな農家ばかりではないと思いますが、安易に青果業を始めた方は売る苦しみより、仕入れる苦しみを
味わうのです。
ところが稼いでいる農家(農業法人)は青果業でありながら、自分で生産しているのでその苦しみを味わう
ことがありません。
お客さんの要望に答えれるように作型を工夫し、品種を選定し、タイムリーに納品しているのです。
これらの事から現在農業事業に参入している企業の 25%は食品関連産業なのです。
皆さん、農産物の安定仕入れに困っているんですね。
3、 10-9=1 の法則の実践
値段の決め方と値ごろ感の重要性について (原価計算と市場価格から値ごろ価格を導く)
さて、さんざんこれからの農業のカタチを語ってきましたが、具体的にはどうすればいいの?ってことですが、
やらなければならない大事なことがもう一つあります。
それが 10-9=1 の法則です。
10 取引先への卸値 9 は生産コスト 1 は利益です。
誰しもが取引先への卸単価を上げる事ばかりに意識が向きがちですが、稼いでいる農家はそれ以上に生産コス
トに敏感です。
お客さんと継続的に取引を続けなければ農業ビジネスは成り立ちません。そのためには winwin の関係をつく
ことが大事なのです。闇雲に高く単価を設定しても継続できなければ意味がないことを知っています。
それと、お客さんもさらにその先のお客さんがいることを分かった上で価格を設定しなければなりません。
いくらなんでもきゅうり一本100円では末端のお客さんが喜びません。
だって、農家が100円で卸ちゃうと末端の消費者は200円で買わなければなりません。
お客さんが喜ばないビジネスは崩壊します。
ここまで話をお聞きいただいて、山下はお客さんに合わせろだの、高く売るなだの
農家の端くれにも置けない、農家の敵だとお思いの方が大半かもしれません。
違うのです。
材料供給できるサプラーヤーの時代
(これからの農業の展望と可能性について)
現に、このように発想の転換をした農業法人や企業が今数多く登場しているということは、時代はそっちに流れ
ていきます。
かつて、コンビニエンスストができた当初、何だか機械的でシステム的な冷たい感じのするお店にはなれません
でしたが、24時間空いている便利なコンビニは人々に受け入れられ世の中を席巻し、それまでの小さな商店を
飲み込んでいきました。
同じように今は、まだ一般的な農家が多く、これらの青果業農家は少数です。でもお客さんを喜ばせている方が
時代を変えていくのは間違いないでしょう。
企業にとってお客さんを喜ばせることは当たり前の事。そんな企業が農業にどんどん進出してきます。
お客さんを喜ばせることができない企業はどの業界でも淘汰されています。
農業ばかり特別な業種とは思えません。
私は農業ビジネスができる企業にお客さんを喜ばせる生産システムを教えています。
生産技術に長けている既存の農家がちょっとだけ視点を変えてお客さんに合わせる生産にスライドさせれば
農業の未来は明るいと考えています。
これからの農業は
素振りばっかりやってチャンスに打てなきゃ意味がない
ピアノの基礎練習ばかりして一曲も弾けないじゃ意味がない。
いいものができてもお客さんが喜ばなければ意味がないのです。
まとめ
TPP 交渉参加により自由貿易が拡大するのは否めません
例え外国産が多く出回っていてもそれを歓迎する業者が居れば太刀打ちできません。
しかし、あなたの農産物が欲しいってお客さんは必ずいます。
むしろそっちの方が多いはずです。どの業者も
好き好んで外国産を使いたがってる青果業者はいません。なぜなら日本国民は国産が大好きなのですから。
問題は我々です。もっと農業界を開放して歩み寄りましょう
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