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2-⑥ 人材育成を目的とした評価の実施

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2-⑥ 人材育成を目的とした評価の実施
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⑥ 人材育成を目的とした評価の実施
※常用労働者5人以下の小規模事業所を除く。
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〈認証基準〉
・人材育成を目的とした評価の実施(年1回以上)
〈確認方法〉
【現地確認】評価実施手順書(評価シート等)
【現地確認】評価理由報告書
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認証取得にあたってのプロセス
1.評価シートまたは評価の手順書の作成《解説 評価制度構築の手順》以下参照
2.評価の手順について職員に公表
3.評価の実施
4.評価結果の記録と上司への報告
《解説 評価制度構築の手順》
評価を行う目的
認証基準にははっきり「人材育成を目的とした」とありますが、一般的に、組織で評価を行
う目的は人材育成だけではありません。これ以外の代表的な目的として、人事処遇上の根拠と
するため、というものがあります。
「1年間の能力の伸長度合いによって昇給額を決める給与
制度」「成果への貢献度合いによって支給額を決める賞与の制度」
「等級に求める職務の遂行度
合いによって昇格を決める等級制度」などをとっている場合は、評価が不可欠です。
もちろんこのような評価制度の場合でも結果として育成にも相応の影響を及ぼすでしょう
し、育成目的の評価の結果を、処遇に反映させることも可能です。ただ注意すべきは、何に主
眼を置くかによって、最も適した評価の方法が異なる点です。したがって、評価を行う際は、
まず何に主眼を置くかをはっきりとしておかなければなりません。
この解説では、人材育成を主眼に置いたとき有効な4つの手法について考えてゆきます。
評価の方法(1)目標管理
目標管理制度は、業績を目標に掲げれば成果主義的になりますが、
「○○の資格取得」
「○○
ができるようになる」等の、能力開発目標を掲げることによって、人材育成という点でも十分
に効果を発揮します。
育成目的の目標管理は、まず目標を掲げて、一定期間の後、達成できたかできなかったかを
確認すれば良い訳で、制度構築上は、「期間を1年にするか半年にするか」「目標を何項目掲げ
るか」を決めておく程度のもので、「道具立て」の作成は他の方法に比較して極めてシンプル
と言えます。その分、毎回の目標設定が、非常に重要になってきます。
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〈目標管理シートの例〉
目標管理の場合、その成否は「いかに良い目標を設定するか」に尽きます。良い目標の条件
とは、まず達成したとき、本人の育成上有意義であること。次に、本人が達成に向けて取り組
む意欲が持てること。そのためには、本人が達成することに意義を感じていること、楽に達成
ができないが、相応にがんばれば十分の達成の可能性があること、達成までのプロセスがイメ
ージできること。そして、誰かに押し付けられたのではなく、自ら設定したものであること。
こう考えると難しい「良い目標設定」のサポート役が上司に求められています。
そのために上司は、まず部下について
・能力の現状(強み・弱み)
・キャリアの志向性
・いままでどんな目標を立ててきたか
・価値観や興味、関心の方向性
など、しっかり把握しておかなければなりません。
さらに上司自身として、部下を適切に動機づけ、良い目標に導くスキルを身に付けておくこ
とが求められます。
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評価の方法(2)業務チェックリストによる評価
業務の洗い出しを行い、
「できている/いない」で評価するというものです。
評価を受ける側からは、何ができなければならないかが明確になり、評価する側も、業務ご
とにできているか否かを見れば良い訳ですから、比較的評価しやすいという利点があります。
業務チェックリストによる評価の留意点は次の3つです。
①業務の細分化
右表を使用している事業所の場合、
「分類」のレベルは
「身体介護」のほか
「行事・レクリエーシ
ョン」
「ケアプランに関する業務」
「環境整備」
「備品管理」
「記録」
「会議」
等があり、これらを含めた
「業務細目」は300項目ほどになります。これだけの数があると、
きめ細かい評価や指導が可能と
なりますが、その分作成に時間と労力を要し、
毎回の使用も相応の時間がかかっています。大雑
把なリストアップでは評価はできませんが、評価の対象業務を絞り込むのもひとつの方法です。
②評価基準の設定
チェックリストの評価方法にもいくつかありますが、最もシンプルな「できる:○、できな
い:×」であったとしても、「何をもって“できる”と判定するか」の基準がずれていると、
効果的な指導・育成の妨げになります。リストアップした業務ごとに文書化できればそれに越
したことはないですが、そこまではできなくても、評価をする側・受ける側の間で、あるいは
評価者間で、折に触れ共有化を図っておく必要があります。
③対象者と評価基準のレベル分け
同じ業務でも、新人はできなくてもしょうがないが、ベテランはできて当然、と言うことが
あります。到達点の基準が同じだと育成の効果が薄くなってしまうため、
「レベル分け」の必
要が生じます。対応策としては、業務ごとに「できている」と認められる段階を分けるという
方法と、業務の難易度によって、評価対象業務を分けるという方法があります。同時に、評価
対象者ごとに、どのレベルを求めるかを適切に設定しなければ、育成上の効率が悪くなるとい
うだけでなく、評価を受ける側のモチベーションの低下を招きかねません。
チェックリストによる評価の運用にあたっては、以上3つの留意点に配慮しつつ、対象とす
る業務の性質、評価をする側、受ける側双方の成熟度、組織風土などによって、実行可能なあ
り方を見極めることが重要です。
このチェックリスト方式の最大の弱点は、作成や評価、そしてフィードバックに時間と労力
の負荷がかかるという点です。それ以外にも、介護職員については「キャリア段位制度」や中
央職業能力開発協会の「職業能力評価」など、
チェックリストの参考になる資料がありますが、
参考になる資料の乏しい職種、事業所内で1人しかいない職種などについても、作成しなけれ
ばならない難しさがあります。さらに、ある程度「できること」ばかりになった熟練者にはマ
ンネリになり易いというのも弱点のひとつです。チェックリスト方式による評価の実施にあた
っては、これらの弱点対策も考慮に入れておかなければなりません。
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〈チェックリストの例(一部)
〉
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評価の方法(3)実績評価・情意評価・能力評価モデル
①実績評価・情意評価・能力評価とは
この方法は、評価結果を昇給や昇格に結びつける人事考課の手法として、民間企業では広く
普及しています。この3つの視点から職員を評価することで、公正・公平で、指導や育成にも
有効な評価を実現しようというものです。
②評価要素を設定する
3つの視点の意味と、一般的な評価要素は以下の表のとおりです。
評価の対象
仕事の量
具体的な評価要素
★
実績評価
理念の理解と実践
(業務の成果そのものの
利用者本位の視点
評価、つまり結果を評価 仕事の質
仕事の正確性
するもの)
仕事の迅速性 など
積極性
情意評価
責任性
(結果ではなくプロセス、つまり業務への取り組み
規律性
の意欲や態度を評価するもの)
協調性 など
業務に必要な知識
能力評価
習得能力
業務に必要な技術・技能
(職務遂行能力、つまり与
えられた職務をやりきるた
コミュニケーション力
めに必要な能力の保有状 習熟能力
観察力
況を評価するもの)
自己表現力 など
実際にこの方式で評価を行う場合は、上記の枠組みに基づき、組織でどのようなものが求め
られるかを検討して、評価要素を設定します。特に福祉職場においては、何をもって「仕事の
量」とするか(上表における★の部分)がポイントになります。これは物品販売業であれば「売
上実績」に他なりませんが、福祉職場においては、定量的な実績で仕事を評価するのはなかな
か難しいという考え方が一般的です。そこでこの部分に
(1)
の目標管理の結果を充てたり、
(2)
の「業務チェックリスト」の結果を充てたりという工夫が必要となります。
また評価要素を設定のプロセスでは、つい「求めるもの」が多くなってしまいがちです。評価
表は、法人・事業所として職員に求めるもののリストであるとも言えます。過剰な列記は、
指導・
育成面にも、また実際評価を行ううえでも逆効果であり、
非効率的と言わざるを得ません。ここ
は10個前後から、多くても20個以内にしておくべきです。同様に、
階層別・職種別などあまり多
くのパターンを作成しようとせず、
階層別では
「
(役職のない)
一般職向け」
「指導・監督職層向け」
「管理職層向け」の3種類、職種別では
「直接サービス職員用」
「間接サービス職員用」の2種類を
ベースに検討すべきでしょう。
③評価の段階を設定する
多いのは「◎・〇・△」の3段階や、「5・4・3・2・1」「S・A・B・C・D」の5段
階などで評価を行う方法です。このように記号や数字、文字に置き換えれば、「要はどうだっ
たか」ということが端的に表現できて好都合ですが、逆に「とりあえず評価できてしまう」と
いう、大きな欠点があります。敢えて段階を設けず、評価は文章で行うという方法もあります。
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〈実績評価・情意評価・能力評価モデルの評価表の例〉
評価の方法(4)職務行動を評価するモデル(コンピテンシー)
①コンピテンシーによる評価とは
近年日本に持ち込まれ、「実績・情意・能力モデル」による評価に課題を感じていた企業な
どを中心に普及したのが、
「コンピテンシーによる評価」です。
この評価の特徴は、成果をあげるために有効な「職務行動」をあげ、その行動がとれている
かいないかを評価する点です。
②構築の手順
「成果をあげるために有効な職務行動」を考える第一歩は、
「この職場(法人・事業所)の成
果は何か」を明確にすることです。これをリストアップし、次にその成果を出すために取って
いる行動を抽出します。ここまでのプロセスでは、できる限り数多く出すことを意識します。
そして次のプロセスで、抽出した行動を分類します。分類にあたっては、コンピテンシー概
念の提唱者と言われるマクレランド博士の研究成果である
「コンピテンシーディクショナリー」
を活用します。
グループ
①達成とアクション
②支援と人的サービス
③インパクトと影響力
④マネジメント・コンピテンシー
⑤認知コンピテンシー
⑥個人の効果性
コンピテンシー
①達成重視
②秩序、クオリティ、正確性への関心
③イニシャティブ
④情報探求
⑤対人関係理解
⑥顧客サービス重視
⑦インパクトと影響力
⑧組織の理解
⑨関係の構築
⑩ほかの人たちの開発
⑪指揮命令−自己表現力と地位に伴うパワーの活用
⑫チームワークと強調
⑬チーム・リーダーシップ
⑭分析的思考
⑮概念化思考
⑯技術的/専門的/マネジメント専門能力
⑰セルフコントロール
⑱自己確信
⑲柔軟性
⑳組織へのコミットメント
(注:
「コンピテンシー・マネジメントの展開」
ライル・M・スペンサー、
シグネ・M・スペンサー著、
生産性出版刊をもとに作成)
抽出された行動を、この20のコンピテンシーのどれにあたるかで分類します。行動が多く集
まったコンピテンシーというのは、それだけ成果に結びつきやすいと考えることができますの
で、これらを中心に10程度のコンピテンシーに絞り込みます。
絞り込まれたコンピテンシーについて、その中身(集められた行動)を再度よく読んで、コ
ンピテンシーの名称を、より内容を端的に表現するものにつけ直します。続いて行動の方を階
層別に分類。行動が多すぎるところはより具体的にイメージできる文章にまとめ直し、逆にあ
る階層だけ行動がないといった場合は考えて書き足します。これで階層別のコンピテンシー表
が完成します。
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〈コンピテンシーによる評価表の例〉
評価者の設定
成長のためには、自ら自分の仕事を振りかえることが不可欠です。したがって、評価制度の
中でも、自己評価とも本人評価とも言われる、自分自身による評価を求めることはたいへん有
効です。そのうえで、他者の視点で評価を行うのは、
「対象者の日々の仕事が見えている人」
が大前提ですので、同じ職場の同僚や先輩、上司ということになります。評価項目によっては
同僚間で評価をしあうのも効果的な場合があります。ただ、単に評価だけをすれば良いという
訳ではなく、その先の育成も視野に入れなければならないことを考えると、やはり直属の上司
が担うのが最適だと考えるべきでしょう。
さらに、その評価者の評価が適正かどうか見極め、より評価を公平・公正なものとするため、
もう1段上の上司が再度評価を行うという手法も、一般的によく行われています。この場合、
直属の上司による評価を1次評価、その上の上司による評価を2次評価と呼んでいます。
評価の手順の設定
評価シートと評価者が決まれば、とりあえずの評価は実施できますが、このほか、
・評価の対象者(正規職員のみか、非正規職員も対象とするか。全職種か?役職者は?等)
・評価にあたり面談を行うか、どのタイミングで、誰が行うか
・評価の結果の報告、保管はどのように行うか
・評価の結果はどのように活用するか(次年度の育成計画、研修受講、職務割当など)
・年間の実施回数(1回か2回=半年に1回)
・実施の時期
などを設定、
「評価手順書」としてひとつの文書にまとめておきます。ここに評価者としての
心構え、評価の留意点等が盛り込まれていれば申し分ありません。
なお、ここまでは評価のためのシートを作成して用いることを前提にしていますが、もし用
いない場合は、その手順書に評価要素など、
「何を評価するか」を記載しておく必要があります。
評価結果(理由)報告書
評価の結果とその理由についても、評価シートを用いる場合は、そのシート上に評価結果と
その理由の記入欄を設けておけば、別に作成する必要はありません。シートを用いない、また
はシートには自己評価だけで、上司評価は記入しないという場合は、右のような報告書を別途
作成して用いることになります。
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〈評価理由報告書〉
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