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赤潮・底泥対策事業 二枚貝の短期垂下による植物プランクトンの除去
赤潮・底泥対策事業 二枚貝の短期垂下による植物プランクトンの除去作用及び 二枚貝肥育効果の検討 程川和宏・水野知巳・横田圭五(津農林水産商工環境事務所) 目的 下による二枚貝の肥育効果の確認を行った。 伊勢湾周辺での発生負荷量(COD,窒素,リン)は減少 しているにもかかわらず,冬季の赤潮の発生は増加傾向 結果及び考察 にあり,赤潮に伴う栄養塩不足から黒ノリの色落ちが頻 1. ノリ漁場の環境モニタリング 発している。しかしながら,現在のところ赤潮に対する ノリ漁場の各測点におけるクロロフィル濃度は,プラ 有効な対策が見出せていない。本事業では冬季に発生す ンクトン量が多かった 12 月初旬を除き,調査を行った期 る赤潮プランクトンを二枚貝の摂餌作用により除去させ 間中,特定の水深でクロロフィル濃度が高くなっている ることによる色落ち対策の可能性を探るとともに,プラ ようなことはなかった。また,プランクトン数も 0m と ンクトンを摂餌させた二枚貝類の肥育効果についても検 2m では大きな差はなく,プランクトンの組成は珪藻類 討を行う。 が大半を占めていた。栄養塩は,窒素,リンと比べ,ケ イ素の濃度が高い状態にあった。今回調査を行った漁場 方法 1. ノリ漁場の環境モニタリング 11 月から 1 月にかけて月 1 回程度鈴鹿地区のノリ漁場 では,プランクトンが過密に分布しているような場所は なかったものの,ケイ素が豊富にあり,条件が整えば珪 藻が増殖しやすい環境であったと考えられた。 において,水温,塩分,クロロフィルの測定を行った。 また,各測点の 0m,2.0m で採水を行い,光学顕微鏡下 二枚貝によるプランクトン除去速度の把握 2. で プ ラ ン ク ト ン の 計 数 と 海 水 を GF/F フ ィ ル タ ー 濾水速度の結果を表 1 に示した。実験に用いた 3 種の (Whatman)にてろ過した後,窒素,リン等の栄養塩の測 二枚貝のなかでは濾水速度はカキが最も高く,次いでホ 定を行った。 タテ,アサリの順となった。いずれの二枚貝も水温 10℃ でもプランクトンを濾過し摂餌していることから,ノリ 2. 二枚貝によるプランクトン除去速度の把握 漁期である冬季でも赤潮の原因となるプランクトンの除 殻長 41.0mm のアサリ,78.2mm のホタテ,123.8mm の 去に利用可能である。実験に用いた二枚貝は,いずれも カキの 3 種の二枚貝を用い,餌料藻類として珪藻のキー キートセロスよりもパブロバを与えた場合に濾水速度が トセロス,ハプト藻のパブロバを与え,ノリ漁期中の水 高くなった。このことより,餌となるプランクトンによ 温に近い 10℃でプランクトン除去速度の測定実験を行 って濾水速度が異なることが考えられた。よって現場で った。実験は 1000ml の海水にそれぞれの二枚貝 1 個体 の濾水速度を把握するためには,様々なプランクトンを を収容し,1, 2, 3 時間ごとにサンプルを採取し,光学顕 用いた濾水速度の測定や生海水を用いた濾水速度の測定 微鏡下でプランクトン数の計数を行い,プランクトンの 等の実験を行う必要がある。 減少量より濾水速度を求めた。 表1 3. 各二枚貝の濾水速度 二枚貝類の短期垂下試験 濾水速度(L/h/ind) アサリ,ホタテ,カキの 3 種類の二枚貝を鈴鹿地区の ノリ漁場に垂下した。アサリ,ホタテは 11 月 29 日から 2 月 24 日の 87 日間,カキは 1 月 21 日から 2 月 24 日ま での 34 日間垂下試験を行った。サンプリングは週 1 回程 キートセロス給餌 パブロバ給餌 アサリ 0.80 0.96 ホタテ 1.36 4.80 カキ 3.49 4.30 度行い,採取したサンプルは殻長,重量,軟体部湿重量, 軟体部乾燥重量の測定を行い,フェノール硫酸法により グリコーゲンの定量を行った。これらの結果より短期垂 3. 二枚貝類の短期垂下試験 垂下試験の結果を図 1 に示した。ホタテでは殻長が 78.2mm から 90.3mm と貝殻の成長が見られたが,アサリ, 160 140 140 120 カキでは殻長の変化はほとんど見られなかった。全体重 120 60 40 あり,初期と比較しアサリ,ホタテ,カキでそれぞれ 3.3 20 0 11/29 が短かったため,乾燥重量の増加は他の 2 種と比較する 死が見られたが,アサリ,カキでは斃死は見られなかっ た。冬季ノリ漁場での二枚貝垂下は,水温が低い為に貝 の成長はあまり見られないものの,1 ヶ月程度の短期間 でも軟体部重量,グリコーゲン含量は増加がみられたこ 軟体部湿重量(アサリ) g と低かった。また,垂下期間中にホタテは 2 割程度の斃 とから,垂下飼育は二枚貝の肥育には十分な効果があり, 100 80 60 40 20 12/13 12/27 1/10 1/24 2/7 10.0 50 9.0 45 8.0 40 7.0 35 6.0 30 5.0 25 4.0 20 3.0 15 2.0 10 1.0 5 0.0 11/29 12/13 12/27 1/10 0 1/24 2/7 0 11/29 2/21 12/13 12/27 1/10 1/24 2/7 2/21 12/13 12/27 1/10 1/24 2/7 2/21 10.0 9.0 2/21 8.0 軟体部乾燥重量 g 認された。そのなかでも軟体部乾燥重量の増加が顕著で 倍,4.55 倍,1.68 倍の増加が見られた。カキは垂下期間 全体重量 g 80 軟体部湿重量(ホタテ、カキ) g は垂下試験に用いた 3 種の二枚貝のいずれでも増加が確 殻長 mm 100 量,軟体部湿重量,軟体部乾燥重量,グリコーゲン含量 7.0 6.0 5.0 4.0 3.0 2.0 1.0 0.0 11/29 二枚貝の摂餌による赤潮の原因となるプランクトンの除 700 去も可能であると推察された。 グリコーゲン g-dry 600 30 0.0 500 アサリ 25 0.0 400 20 0.0 ホタテ 15 0.0 300 10 0.0 200 5 0.0 0 11/ 29 カキ 0.0 100 1 12/13 12/27 1/10 1/24 2/7 2 3 4 5 2/21 図 1. 垂下試験結果