Comments
Description
Transcript
ロシア業界レポート ∼天然ガス産業∼
ロシア業界レポート ∼天然ガス産業∼ 2012 年 3 月 23 日 IFC SOLID 証券作成 ∼ロシアの天然ガス産業∼ ロシアは、天然ガス埋蔵量で世界第一位、ガス生産で米国に次ぎ第二位である。 ロシアのガス産業主要指標 (10 億立方㍍) 生産量 埋蔵量 (2011 年現在) 輸出 2010 年 2011 年 2012 年 予測 2010 年 2011 年 2012 年 予測 670.5 689.5 184.9 196.9 206.0 ロシア 44800.0 650.3 世界における シェア 23.9% 18.4% 19.0% ロシア連邦エネルギー省、ロシア連邦経済発展省、ブリティッシュ・ペトロリアム 2011 年、ロシアの天然ガス生産量は、国際的金融・経済危機に伴って 2009 年、2010 年に縮小したものの、すで に危機前の生産量まで回復し、さらに最高値を更新した。ロシア政府の予測によると、今後 3 年間にわたってロ シアにおける天然ガス生産量は 8.5%上昇し、ガス輸出比率は現時点で 29.4%であるものの、2014 年には 31.8%ま で拡大する見込みである。 ロ シ ア 国内ガス確認埋蔵量 ロ シ ア国内 ガス生産量 700 45 680 44.5 660 44 43 20 10 20 09 20 08 20 07 20 06 20 05 20 04 20 03 20 02 19 97 П 11 10 09 08 07 06 12 20 20 20 20 20 20 20 20 20 20 20 05 41 04 520 03 41.5 02 42 540 00 560 20 01 42.5 20 00 580 19 99 600 43.5 19 98 10億立方 ㍍ 620 20 10億 立 方 ㍍ 640 ブリティッシュ・ペトロリアム ロシアの石油・天然ガス企業は絶えず地質探査作業を行っているため、天然ガス確認埋蔵量は、生産量が増加 しているにもかかわらず依然として高い水準にある。1998 年は例外として、ロシア国内の経済危機の影響を受け、 地質探査規模は縮小した。この 10 年間、ガス開発の技術革新によって、確認埋蔵量は 6.4%増大した。ロシア天 然資源環境省のデータによると、ロシア天然ガス埋蔵量は 2011 年に 9000 億立方㍍まで拡大した。 埋蔵量を生産量で割った数値が可採年数であるが、ロシアの天然ガス可採年数は、追加的に地質探査を行わ ない場合にも少なくとも 76 年ある。世界のガス生産主要国(2%以上のシェアを占める国)の中で、ロシアは可採 年数でサウジ・アラビア、カタール、イラン、UAEに次いで第 5 位である。 1 ロシア業界レポート ∼天然ガス産業∼ 天然ガス消費量は安定的に増加し、ガス価格の高騰の一因となった。2000 年以降、ガス価格は 4 倍上昇した。 国 際平 均 ガス 価 格 14 3000 12 2500 10 100万石油換算トン 10億 立 方 ㍍ 世 界ガス消費量 3500 2000 1500 1000 8 6 4 2 500 Japan cif European Union cif 0 19 65 19 68 19 71 19 74 19 77 19 80 19 83 19 86 19 89 19 92 19 95 19 98 20 01 20 04 20 07 20 10 19 84 19 86 19 88 19 90 19 92 19 94 19 96 19 98 20 00 20 02 20 04 20 06 20 08 20 10 0 ブリティッシュ・ペトロリアム 天然ガス 1 千立方㍍当たりの価格は石油 1 トン当たりの価格の約 8 割程度であるが。石油換算トンで比較すると、 ヨーロッパにおける既存のガス価格は 116%前後引き上げる余地がある。つまり、国際エネルギー市場において、 ガス価格は石油価格に比べ大きく割り引かれている状況が続く。 ブリティッシュ・ペトロリアム ブリティシュ・ペトロリアム社の予測によると、全世界における天然ガス消費量は年間で 2.1%増加し、通常エネル ギー資源である石油及び石炭の需要の伸び率を上回る。特に中国では天然ガスの需要が年間 7.6%拡大すると みられる。2030 年、中国のエネルギー・ミックスにおける天然ガスの需要シェアは 4.3%から 9.5%に増加するとの 予測もある。同数値は 2010 年の欧州連合の天然ガス消費量(1 日当たり 13 億立方㍍)に当たる。また、東南ア ジア、オーストラリア、中東においても天然ガスの需要が著しく増大すると予測している。 2 ロシア業界レポート ∼天然ガス産業∼ ロシアの天然ガス産業の特徴 天然ガス輸出に関するロシア連邦法により、ガスプロムが統一ガス供給システムを独占することが容認され、ガ スプロムまたは傘下の 100%子会社のみがロシア国内で生産された天然ガス及び液化天然ガスを輸出する権限 を持っている。他の天然ガス企業は国際価格を大きく下回る国内価格で、生産された天然ガスをガスプロムに販 売している。 天然ガス平均価格(2011 年 9 カ月) ガス供給 (ドル/1千立方㍍)* 前年同期比 欧州連合 376 27.7% CIS 諸国 (ロシア以外) 276 21.1% ロシア 85 11.3% *ガスプロムの 2011 年 9 カ月の決算レポート ガスプロムの独占的地位は同社の業績にもポジティブな役割を果たしている。一方で、ロシアエネルギー市場の 構造変化があった場合、ノヴァテクを始めとする独立系ガス生産企業の株式にとって有利となる。 ロシア政府は、ロシア国内天然ガス価格を 2015 年までに国際水準へと段階的に引き上げる意向を示している。 2012 年以降、価格は年間 15%増加する見込みである。 ロシア企業によるガス生産(2011 年現在) 企業名 10 億立方㍍ 総生産量に占めるシェア ガスプロム ノヴァテク ルクオイル スルグトネフチェガス TNK−BP ホールディ ングス ロスネフチ ガスプロム・ネフチ 509.7 53.3 16.0 12.9 76.0% 8.0% 2.4% 1.9% 売上高に占めるガスのシェア (2010 年現在) 61.0% 61.0% 0.8% 15.3%* 1.8% 1.8% 1.1% 3.1% 0.7% 1.0% 12.2 11.8 7.1 燃料・エネルギーコンプレックス中央捜査事務局、各社 * スルグトネフチェガスによるコメント:炭化水素生産に占めるガスのシェア 3 ロシア業界レポート ロシア国内のガス総生産量に占める 独立企業のシェア ∼天然ガス産業∼ 独立企業はガス生産量の 25%をロシア国内に供給 30% する。ガスプロムと本格的に競争できるのはノヴァ 25% テクだけであり、その他の石油・ガス企業は、ガス 20% 以外のビジネスに集中している。 15% 10% ロシアのガス産業の重要な傾向の一つに、総生産 5% 量に占める独立系企業のシェアが拡大しつつある 予測 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 20112012 ことがある。ここ 10 年で、同シェアは 2 倍となった。 ロシア国家統計局、ガスプロム 諸外国の指数と比べ、ロシアの石油・天然ガス企業を中心とした MICEX 石油・ガス指数は 35%前後安いと考えら れる。特に、P/E 並びに P/B は世界平均水準よりも 2 倍低く、ロシア企業を特徴づけている。特に EPS (1 株当た り利益)は、高い収益性により、圧倒的に高くなっている。ロシア石油・天然ガス部門の低い P/B は間接的に P/E の特徴に起因する。企業は多額の資金を蓄積する傾向が強く、利益を配当に回さないことによって、自己資本が 増加する。特に、ガスプロムの利益剰余金は全負債の 70%に上る。弊社の意見では、上記の特徴を視野に入れ て、今後ロシアの石油・天然ガス企業は、配当金の水準を引き上げる可能性があり、また、現時点で、準備金や 収益性が十分あることによって、債務/EBITDA 指標も低いレベルに維持できると考えられる。 統計データによると、MICEX 石油・ガス指数は春季に 4 年連続で P/E=8 まで上昇している。世界平均の数値より 少し低いレベルだが、これは投資家が、配当金が決定される直前に石油・天然ガス株式の買いに動いていること に関係していると見られる。投資家が P/E を 8 まで引き上げる場合、指標の 48%のアップサイドが予想できる。 MICEX 石油・ガス指数が諸外国の石油・ガス指数と比べて割安であることには、投資家がロシアのカントリーリス クを考えている側面もある。P/E 倍数や P/S 倍数が世界平均水準に近付いている傾向もあることから、投資家は 既存レベルのリスクを受け入れる用意があり、ロシア石油・ガス分野の株式買いを検討していると考えられる。そ のため、MICEX 石油・ガス指数は Bloomberg WORLD ENERGY 指数や Bloomberg WORLD Oil&Gas 指数を始め とする世界指数よりも急速に上昇することが見込まれ、割安度が縮小する可能性があると考えられる。 4 ロシア業界レポート ∼天然ガス産業∼ ガスプロム 銘柄コード 10000% 投資判断 平均株価予測(ルーブル) 直近株価(ルーブル) S&P 1200 Global Index ガスプロム 上昇潜在力(%) 時価総額 (10 億ルーブル) 平均株式出来高(100 万枚) 売上高(100 万ルーブル) EBITDA(100 万ルーブル) 純利益(100 万ルーブル) 1000% P/E EV/EBITDA EV/売上高 EBITDA マージン(%) 市場で流通している株式数 (100 万枚) 浮動株比率(%) 2012 2011 2010 2009 2008 2007 2006 2005 2004 2003 2002 2001 2000 100% 10% GAZP 買い 292.7 190.1 54 4500 43 3597054 1399892 968557 3.53 2.73 1.14 38.9 23674 20.4 指数に占めるガスプロムのシェア MSCI ロシア 27.47% ガスプロムは時価総額で世界第 28 位、石油・天 MICEX 指数 14.84% 然ガス企業中第 6 位である。ロシアの GDP の MICEX 石油・ガス指数 15.78% 9.8%の生産を確保する企業であり、ロシアの最 大の企業として知られる。主要株主はロシア政 府(持株比率は 50.002%)である。 格付け スタンダード&プアーズ «BBB» «安定的» フィッチ・レーティングス «BBB» «安定的» ムーディーズ «Baa1» «安定的» 同社の主要事業は、炭化水素資源の生産、輸 送、貯蔵、精製、販売並びに発電・送電である。 売上高の 61%は天然ガス販売で賄われる。 同社は巨大な資源埋蔵量(世界の天然ガス埋 蔵量の 17%)や大規模パイプライン網(16 万キロ 以上)を誇り、ロシア国内及び EU における大多 数の大口契約者に対して長期的供給を行う。ヨ ーロッパへのガス供給で、同社は主要供給企業 または独占供給企業となる。 5 ロシア業界レポート ∼天然ガス産業∼ ガスプロムの戦略 同社の戦略的優位性はその膨大な資源埋蔵量や天然ガス生産・輸送に必要なインフラである。従って、同社は ヨーロッパ及びアジアのエネルギー需要の増加に応えるための多角的戦略を実施している。 ロシア ガスプロムはすでにロシア国内のガス市場を支配している。2010 年に消費された 4141 億立方㍍のガスの内、ガ スプロムが供給したガスは 2773 億立方㍍(67%のシェア)に上る。ロシア市場における主要課題は、現状を維持し、 事業の収益性を増加させることである。そのため、次の措置が実施される。 −ロシア国内のガス価格上昇のための働きかけ。ロシア政府は国内ガス価格を輸出価格レベルまで引き上げる ことを検討中である。2014 年にかけて年間 15%のガス価格の上昇が予測される。2011 年 9 カ月時点で、国内ガ ス価格は 2583 ルーブル(85 ドル)であったが、上記の措置が実施される場合、2015 年の国内ガス価格は 130 ド ル(現状より 53%高)となる。このシナリオにおいて、ガスプロムの売上高は 9.4%上昇することが見込まれる。 2008-2009 年に起きた経済危機や 2011 年の選挙キャンペーンを背景に、政府は国内ガス価格引き上げ計画の 実施を一時停止したものの、この計画が排除される見込みはない。 −エネルギー部門における垂直統合の推進。ガスプロムはガス生産から輸送、電力発電までの事業を統合させ る計画がある。この戦略の一環として、同社はロシアの総発電能力の 17%(36 ギガワット)に及ぶエネルギー施設 を取得した。 −マネージメントの効率化。 ヨーロッパ 同社はヨーロッパのガス市場の 24%のシェアを占め、2030 年までに 30%のシェアに引き上げるとともにヨーロッパ 諸国の電力発電や熱エネルギー生産における地位を強化することを目標としている。2011 年の 9 カ月間で、ガス プロム子会社のガスプロムマーケティング&トレーディング社はヨーロッパ電力市場総売買高の 1.3% に及ぶ電 力取引を行った。 ドイツによる原子力発電の廃止決定を受け、同社はヨーロッパでのガス需要の増加に備えている。大規模プロジ ェクトであるノルド・ストリームパイプラインの建設が完了したことにより、2011 年以降ヨーロッパの契約者に向け 追加的に年間 275 億立方㍍の天然ガスを供給することが出来る。第二の大規模プロジェクトは、ロシアから黒海 およびブルガリアを経由してヨーロッパへ向け天然ガスを輸送するサウス・ストリームパイプラインである。2014 年までに供給を開始し、ヨーロッパに向け追加的に年間 630 億立方㍍の天然ガスを輸送する予定である。 同社がヨーロッパ地域における存在感を強化することによって、ヨーロッパ諸国はロシアの政治的影響力が大き くなることを警戒しており、それが同社のヨーロッパ進出戦略の実施の妨げとなっている。一方で、ガスプロムは 民間ベースでの協力を進めている。2011 年、同社は Wintershall AG と連携し、オーストリアにおいて容量 28 億立 方㍍に及ぶ天然ガス地下貯蔵を建設した。 6 ロシア業界レポート ∼天然ガス産業∼ アジア 同社はアジアにおいてガス生産・輸送のための広域インフラ整備を必要としている。現時点で、「サハリン 2」プロ ジェクトにより、LNG プラントが稼動し LNG が輸出されているが、同プロジェクトの規模は大きくない。 20−30 年後、アジアが最も急速に成長するガス市場になることが予想され、同社は同地域における存在感を強 化するために様々な措置を取っている。韓国とは 2017 年以降、年間 120 億立方㍍の天然ガスを新しいパイプラ インにより供給することで合意し、中国とはロシア産天然ガスを「西方ルート」パイプライン経由で年間 300 億立方 ㍍、「東方ルート」経由で年間 380 億立方㍍供給することを巡る交渉が続いている。上記プロジェクトが実現した 場合、同社による東南アジアに向けガス輸出量(800 億立方㍍)はヨーロッパ向けのガス輸出量(1140 億立方㍍) とほぼ同じになる。 ガスプロムの 2011 年 9 カ月(1 月−9 月期)決算 2012 年 2 月 1 日、同社は 2011 年 9 カ月の中間連結決算を発表した。主要指標は下記の通りである。(前年同期 比) · 売上高は 32%上昇 · 営業費用は 23%上昇 · 純利益は 41%上昇 · 売上高利益率は 31%から 36%に増加 売上高が増加した主な理由は、ガス価格の上昇(+21%)と販売の拡大(+8%)である。 ガスプロム主要財務指標 (10 億ルーブル) 2010 年 9 ヶ月 2495.6 948.3 2011 年 9 ヶ月 3296.7 1241.7 CIS諸国 323.3 496.1 53% ロシア国内 437.4 502.3 15% 営業費用 -1726.6 -2119.3 23% 営業利益 774.7 1176.5 52% EBITDA 956.3 1377.0 44% 純利益 653.7 923.6 41% 設備投資 620.6 872.6 41% 利益剰余金 5710.7 6863.7 20% 債務合計 1288.2 1430.0 売上高 EU 変化 32% 31% 11% ガスプロム 7 ロシア業界レポート ∼天然ガス産業∼ ノヴァテク 銘柄コード 投資判断 平均株価予測(ルーブル) 直近株価(ルーブル) 10000% ノヴァテク S&P 1200 Global Index 1000% 100% 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 上昇潜在力(%) 時価総額(10 億ルーブル) 平均株式出来高(100 万 枚) 売上高(100 万ルーブル) EBITDA(100 万ルーブル) 純利益(100 万ルーブル) P/E EV/EBITDA EV/売上高 EBITDA マージン(%) 市場で流通している株式 数(100 万枚) 浮動株比率(%) 10% NVTK 中立 410 390.4 5 1185 1.22 117024 56200 40533 22.0 14.9 7.4 48.0 3036.3 30.2 ガス埋蔵量 ガス生産 同社は、ガス生産量でガスプロムに次ぎロ 10 億立方㍍ 2108 53.54 シア国内第 2 位であり、天然ガス確認埋蔵 ロシア国内シェア 4.7% 8% 量は世界最大企業 5 社の中に入ってい 世界シェア 1.1% 1.7% る。 ノヴァテク、ブリティッシュ・ペトロレアム 指数に占めるノヴァテクのシェア 同社の主な収入源は、ロシア国内の最終 消費者(発電企業、地域ガス企業、ガス業 MSCI ロシア 5.1% 者、ガスプロム等)へのガス供給である。 MICEX 指数 6.37% 同社はガスコンデンセートのほぼ全量を MICEX 石油・ガス指数 13.47% 輸出している。その他の液化炭化水素に ついては、国内外で販売されている。 格付け 2010 年、同社はロシア国内のガス生産量 スタンダード&プアーズ «BBB-» «ネガティブ» で 6%のシェアを占め、2011 年には 8%まで フィッチ・レーティングス «BBB-» «ネガティブ» 拡大した。2020 年までには 14%までシェア ムーディーズ «Baa3» «安定的» 8 を拡大させる計画である。 ロシア業界レポート ∼天然ガス産業∼ ヤマロ・ネネツ地方はロシアの主要なガス生産地域である。ロシアの天然ガスの 83%及び同社が開発中のガスの 100%がここで生産される。 ノヴァテクの戦略 同社はガス埋蔵量で世界第 5 位であり、開発中のガス田が幹線パイプライン付近にあることが大きなプラスとな って、世界的に見て最も低い生産原価を誇る。また、潜在的増産余力も持っている。同社の最優先目標は生産さ れたガスとその他製品を有望市場へと供給することである。現時点で、ガスプロムがロシア国内の幹線パイプラ インを運営し、ガスパイプラインによる輸出事業を独占している。従って、ノヴァテクは、自社の戦略を次のように 見ている。 · 国内市場では、最終消費者との長期契約の締結によって市場におけるシェアを 2011 年の 8%から 2020 年 までに 14%に拡大することを目指す。ロシア政府が国内ガス価格を外国市場におけるガス価格に近付ける方針 を円滑に実施できるか否かによって同社のパフォーマンスの良し悪しが左右される。 · 同社は外国市場への進出も計画し、ガスコンデンセート(高品質のガソリンや石油化学製品の生産におい て幅広く利用される)、石油、石油製品、LNG を中心に輸出事業を展開する予定である。 · 現時点で、ガスコンデンセート、石油、石油製品は、コリスキー半島に位置するヴィティノ港経由で輸出され ている。2020 年までに上記製品の生産量を 3 倍増加させることを目指している。そのためにも精製工場の生産 能力を増強し、バルト海にあるウスチ・ルーガ港に輸出施設を建設中である。2012 年末に第一段階、2013 年に 第二段階の完成が予定されている。 · LNG 輸出のために、同社はヤマル半島に LNG プラントを建設し、砕氷タンカーによって LNG を年間を通じ て東南アジア、ヨーロッパ、南アメリカに供給することを計画している。上記プロジェクトは、現時点で初期設計 が行われており、戦略的投資家を募集している。ガスプロムとの提携も一つの選択肢としている。 2011 年 9 カ月(1 月−9 月)の決算 2011 年末、同社は 2011 年 9 カ月の IFRS 基準の中間連結決算を発表した。主要指標は下記の通りである。(前 年同期比)。 9 ロシア業界レポート ∼天然ガス産業∼ · 売上高は 51.3%上昇 · 営業費用は 39.6%上昇 · 純利益は 46.6%上昇 · 売上高利益率は 31%から 36%に増加 売上高が上昇した主な理由は、ガス価格の上昇(+14.2%)と販売の拡大(+45.7%)である。 ノヴァテクの主要財務指標 (10 億ルーブル) 天然ガス 2010 年 9 ヶ月 82.9 50.7 2011 年 9 ヶ月 125.4 78.4 ガスコンデンセート 20.2 33.8 67% 液化炭化ガス 9.1 11.1 22% 石油 1.0 1.7 67% 石油関連製品 0.1 0.1 29% 営業費用 -49.3 -68.7 40% 営業利益 35.4 56.7 60% EBITDA 40.1 63.1 57% 純利益 28.4 41.7 47% 設備投資 19.5 28.4 46% 株主資本 147.1 170.0 16% 21.5 78.9 266% 0.5 1.2 売上高 純債務 純債務/EBITDA 変化 51% 55% ノヴァテク 要約 弊社の分析によると、ガスプロムの株式は主要財務データを基に割安な水準にある。同社は大きなキャッシュ フローを生み、P/S、P/E、EV/EBITDA、P/CF を始め主要財務指標も平均水準より健全である。利益が大きい ため、ガスプロムの株式は P/B でも割安である。このため、ROA や ROE も低い。一方で、ノヴァテクの株式は 適切な評価を受けている。倍数はガスプロムの数値と比較して高い。投資家はロシア国内のガス価格がいず れ国際価格に近付くと見て、ノヴァテクの売上高もキャッシュフローも共に増加するだろうと期待する。従って、 市場参加者はロシア国内のガス市場の自由化を待ちながら、同社株式が割高であっても買う用意がある。一 方、年明け以降、ノヴァテクの株式は 1%しか上昇しなかったのに対し、ガスプロムの株式は 11%上昇した。現時 点で、ガスプロムの株式もノヴァテクの株式も配当利回りの点で魅力が少ないものの、両社とも業績及び財務 体質が良好であるため、配当金の支払いの決定によって状況が変わりうると考えられる。ガスプロムはすでに 1 株当たり純利益の 10%相当を配当に回すことを決定しており、ノヴァテクは 2010 年、純利益の 3 割を配当に 回る決定をした。 10 ロシア業界レポート ∼天然ガス産業∼ 当資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としております。当レポートが紹介している情報並びに意見 は IFC SOLID 証券により作成されています。IFC SOLID 証券は当資料の情報の正確性・的確性を保証するも のではありません。IFC SOLID 証券は当資料に記載されている情報に基づく投資に関する決定および投資成 果に対する責任を一切負いかねます。IFC SOLID 証券は、本情報、またはその一部を有価証券取引の際利 用した結果、直接または 間接的損害が発生した場合も一切責任を負いかねます。当資料に記載されている 意見は IFC SOLID 証券の意見であり、有価証券の売買の勧誘を目的としたものではありません。IFC SOLID 証券による許可なしに、当レポートを再生、編集、転送、放送、公表、公開、翻訳、電子媒体に変換、データベ ースにアップロードすることは禁止されています。 © 2012 IFC SOLID 証券 11