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ロシアの株式市場: ウィークリーレポート
ロシアの株式市場: ウィークリーレポート 作成日:2012 年 9 月 7 日 直近の株価推移 110 105 100 95 90 6月18日 6月25日 7月2日 7月9日 7月16日 7月23日 7月30日 8月6日 8月13日 8月20日 8月27日 9月3日 RTS指数 S&P500株式指数 先週の MICEX 指数は 3.6%上昇し、これまでの 1350-1450 ポイントのボックス圏を越え、約 4 か月ぶりの高値に達し た。週間株式売買高は 49 億 2 千万ドルまで回復したものの、年初来平均水準より 11%減となっている。欧州中央銀 行のマリオ・ドラギ総裁が欧州債務危機に対処するためユーロ圏諸国の国債を無制限に買い入れる新しい計画を 明らかにしたことを好感し MICEX 指数は木曜日と金曜日に大幅上昇した。また、米雇用統計や米 ISM 非製造業総 合指数の改善も好感された。ロシア株式市場は世界の株式市場の動向に左右されると弊社は考える。しかしなが ら、弊社の分析によると、ロシア株式市場は先進国市場に比べ大幅に出遅れている。先週のレポートで指摘したよ うに、MICEX 指数に悪影響を与えているのはネガティブな政治的要因である。MICEX 指数は年初来で 4.7%上昇し、 ブラジルの Bovespa 指数(+2.8%)と比べ良いパフォーマンスを見せた。米国の S&P500 指数は年初来で 14.3%増、ド イツの DAX 指数は 22.3%増、インドの BSE 指数は 14.4%増となった。 欧州中央銀行による今回の決定は将来的にインフレの加速化を招く可能性があり、欧州連合の債務問題は、欧州 諸国の歳出の根本的な見直しがなければ解決できないと弊社は考える。株価は高騰したものの、欧州の実体経済 の成長は衰えている。OECD が発表した欧州連合の GDP 成長率の最新予測は 1.4%であり、2011 年秋季時点に予 測されていた 3.4%の成長率を下回った。 ドラギ総裁の発言を受け、米連邦準備制度理事会は今週にも量的緩和第 3 弾(QE3)を実施する可能性が高いと思 われる。米連邦準備制度理事会の主な課題はドル安及び国債の下落を防止することであり、株式市場への影響は さほど重視されていないと弊社は考える。 ロシア株式市場が今後順調に上昇する潜在力は十分あると弊社は考える。欧州におけるユーロ供給量の増加に より、原油価格は上昇傾向を辿るであろう。欧州中央銀行は冬季に、ギリシャやその他諸国に対する支援を実施し、 約 1 兆ユーロの紙幣増刷の結果、ブレント原油価格が 20%上昇した経緯がある。MICEX 指数においては石油天然 ガス企業が 56%を占めている。 1 © 2012 IFC SOLID 証券 ロシアの株式市場: ウィークリーレポート 個別銘柄ベスト・ワーストランキング 2012 年 9 月 3 日 ∼ 2012 年 9 月 7 日 メチェル 12.86% -1.20% UTair航空 レッド・オクトーバー 12.24% -1.30% 第13地域電力 -1.38% バルチカ・ビール MRSK持株会社 マグニトゴルスク製鉄 ノヴォリペツク製鉄 連邦送電会社 11.11% 8.85% -1.79% パヴァ -1.89% 極東電力 8.25% 8.09% セヴェルスタリ 7.07% システマ 7.04% Vozrozhdenie銀行(復興銀行) 6.86% -2.53% 統一モスクワ電力 網 -2.72% 第5卸売電力 -3.45% -4.69% -5.73% OMZ (UralmashIzhora Group) モスクワ熱ネット ワーク会社 グム百貨店 株価上昇銘柄 先週下落した製鉄会社の株価は今週に入り、目覚ましい上昇を見せた。鉄鋼価格が約 3 年ぶりの落ち込みから上 昇に転じた事が主な要因となった。市場参加者は中国における景気支援策により、鉄鋼製品の需要が伸びると期 待している。中国政府は 6 日、総延長 2018 キロメートルの道路整備計画を承認した。 ■メチェル(銘柄コード:MTLR) 同社株価は、同社のオーナーであるI.ジュージン氏が保有する同社株式を売却し続けているというニュースを受け 値上がりした。これにより、市場参加者は外国の大口投資家が同社に対する関心を示した可能性があると考えて いる。 ■MRSK 持株会社(銘柄コード:MRKH)、連邦送電会社(銘柄コード:FEES) 両社は配電・送電セクター改革の流れを背景に上昇した。ロシア経済発展省は両社をロスネフチガスに統合させる 必要性がないという見方を明らかにした。現在ロシア政府は他のシナリオを検討している。両社の統合の件で、 VTB 銀行、Morgan Stanley、Renaissance Capital が幹事に指名された。MRSK 持株会社は以前、8250 億ルーブル に及ぶ 2012-2017 年の投資計画を策定し、連邦送電会社は 5048 億ルーブルに及ぶ 2012-2014 年の投資計画を 策定した。投資家は両社が順調に近代化を進めていく場合、両社に対する投資魅力が増大すると考えている。 ■システマ(銘柄コード:AFKS) 同社株価は引き続き値上がりした。以前のレポートでも述べた通り、同社株価は非常に割安に評価されている。同 社は現時点で株式の買い戻しを実施している。また、同社とインター統一電力がバシキルエネルゴにおけるそれぞ れの保有資産を交換したことが追加的な好材料となった。 ■ VTB(復興銀行)(銘柄コード:VTBR) 銀行セクターの株価は、ノモス銀行とオトクリティエ銀行が統合したことを背景に上昇した。ノルウェーの中央銀行と フィンランドの OP-Pohjola グループは、サンクトペテルブルグ銀行の投資家になった。以前のレポートで述べた通り、 Vozrozhdenie 銀行のオーナーは保有する株式を売却することを検討している。ズベルバンクの株価は若干減少し たのに対し、VTB の株価は金曜日に上昇した。VTB の A.コスティン取締役は APEC サミットにおいて、「ロシア政府 2 © 2012 IFC SOLID 証券 ロシアの株式市場: ウィークリーレポート が保有するズベルバンクがまず最初に売却され、第 1−2 四半期が過ぎた頃に VTB が売却される」と述べた。これ により市場参加者は、政府保有のズベルバンクが近いうちに証券取引市場で売り出されると考えている。 ■ガスプロム(銘柄コード:GAZP) 欧州委員会は欧州ガス市場を不当に囲い込んでいるとの疑いで同社の正式調査を開始した。しかしながら、このニ ュースを受けて投資家が失望することはなかった。その理由は第一に、欧州委員会の調査は長時間がかかること が多いためである。第二に、ロシアは APEC サミットでアジア太平洋地域向けのロシアの天然ガス輸出を拡大する ことに合意したためである。同社は欧州委員会に対し、「同社はロシアの戦略的企業であり、ロシアの法律に基づき 業務を展開している」と正式にコメントした。 株価下落銘柄 ■PIK グループ(銘柄コード:PIKK)、オープン・インベストメンツ(銘柄コード:OPIN)、ハルス・デベロップメント(銘柄 コード:HALS) 年初来で不動産価格や住宅ローン規模が増加傾向にあるものの、不動産関連株式への需要は限定的であった。 ING Bank は PIK グループの発行したグローバル預託証券(GDR)の格付けを「買い」に引き上げ、目標価格を 1 株 につき 3.1 ドルとした。 ■統一モスクワ電力網(銘柄コード:MSRS) 同社株価は同社内の対立を背景に値下がりした。株主は、2012 年 6 月 25 日に就任したばかりの取締役会メンバ ーを入れ替えた。レンエネルゴにおいても同じようなことが起きた。両社の株主総会は近いうち開催される。 ■ディクシーグループ(銘柄コード:DIXY) 同社が発表した 2012 年上半期の IFRS(国際会計基準)による純利益は前年同期比 8.9%減の 5 億 100 万ルーブル となった。一方、売上高は 80.9%増の 708 億 3 千万ルーブルとなった。同社の経営責任者の説明によると、収益が減 少した主な原因は、新規店舗の開店に必要な支出が拡大したためである。同社は 2012 年の 6 カ月間で 184 カ所に 新規店舗を開店した。さらに今年ヴィクトリア・チェーンストアを買収したため、資産の減価償却費や所得税に関連 する支出が拡大した。 ■パヴァ(銘柄コード:AKHA) 同社株価は続落。2012 年上半期のロシア会計基準による純利益は、前年同期と比べ大幅に減少し 230 万ルーブ ルとなった。売上高も縮小し、8 億 3540 万ルーブルとなった。同社の経営責任者の説明によると、脆弱な業績は会 社再編による影響を受けたためである。同社は IFRS(国際会計基準)の決算を年に 1 度発表している。小麦粉価格 の上昇を受け、同社株価は上昇に転じる可能性があると弊社は考える。 マクロ経済ニュース ロシアはアジア太平洋諸国との経済関係の拡大を重視していると弊社は考える。ロシアは 20 年間欧米との協力関 係に力を入れていたものの、いまだ大きな進展はない。ロシアの GDP は 2012 年上半期に 4.5%上昇したものの、世 界経済フォーラムで先週発表された国際競争力ランキングにおいて、ロシアは経済危機に陥っているポルトガル、 スペイン、イタリアよりも低い第 67 位となった。欧米はロシアのプーチン大統領の行動を批判し、野党勢力を支持し ている。こうした背景により、他の国々との協力関係を拡大したいというロシアの希望は理解しやすいだろう。ロシア は他国との貿易量を増加させることを目指しており、通貨連盟を設立する可能性がある。2012 年 7 ヶ月で、ロシア の貿易高は 5%増の 4755 億ドルとなり、貿易黒字は 7.6%増の 1288 億ドルに達した。ロシアの主要な貿易相手国は 中国であり、貿易高は 2012 年 1-7 月期に 10.9%増の 498 億ドルとなった。 3 © 2012 IFC SOLID 証券 ロシアの株式市場: ウィークリーレポート IFC SOLID 投資金融会社の専門家チーム コロリュック・ミハイル 投資運用・分析課長 グリシン・アレクセイ テク二カルアナリスト ドゴドゥイ・オレグ イベントアナリスト ユシコワ・エレナ 株式市場アナリスト スビナレンコ・ウラジミル 海外投資課長 ボタシェフ・イブラギ ム ビクチュリナ・エリザ チーフアナリスト シニアーアナリスト マクロエコノミーアナリスト アフメトブ・アルトゥル 7 495 228 70 10 (内線 1247) レポートの内容に関するご提案、ご意見、ご質問は下記までお問い合わせください。 IFC SOLID 証券 123007 ロシア、モスクワ、ホロシェフスコエ通り、32A 電話: (495) 228-70-10 ファックス: (495) 228-70-11 E-mail: [email protected] 免許: ブローカー事業 ‒ #077-06790-100000, ロシア連邦証券市場委員会(FCSM)により 2003 年 6 月 24 日 供与、無期限; ディーラー事業 ‒ #077-06793-010000, ロシア FCSM により 2003 年 6 月 24 日供与、無期限; 有価証券運用事業 ‒ #077-06795-001000, ロシア FCSM により 2003 年 6 月 24 日供与、無期限; 預金事業 ‒ #077-06807-000100, ロシア FCSM により 2003 年 6 月 27 日供与、無期限. 当資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としております。当レポートが紹介している情報並びに 意見は IFC SOLID 証券により作成されており、ロシア語原文の翻訳です。翻訳が原文と相違する場合 は全て原文が優先します。IFC SOLID 証券が作成の当資料の情報は正確性・的確性を保証するもので はありません。IFC SOLID 証券は当資料に記載されている情報に基づく投資に関する決定および投資 成果に対する責任を一切負いかねます。IFC SOLID 証券は、本情報、またはその一部を有価証券取引 の際利用した結果、直接または 間接的損害が発生した場合も一切責任を負いかねます。当資料に記 載されている意見は IFC SOLID 証券の意見であり、有価証券の売買の勧誘を目的としたものではあり ません。IFC SOLID 証券による許可なしに、当レポートを再生、編集、転送、放送、公表、公開、翻訳、電 子媒体に変換、データベースにアップロードすることは禁止されています。 4 © 2012 IFC SOLID 証券