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ステートキャピタリズム - JOGMEC 石油・天然ガス資源情報
ロシア:プーチン政権が進める石油・ ガス分野の「ステートキャピタリズム」 2006年8月23日 調査部 本村眞澄 1 ロスネフチはIPOで106億ドル調達 z 2006年7月14日:IPO実施 – 売却株式:13億株(全体の14.5%) – 株 価:$7.55 (予想レンジ$5.58~$7.85) – 売却額:104億ドル(後2億ドル追加販売) – 会社時価総額:798億ドル – 上場地(モスクワ、ロンドン) z z z z RTS (Russia Trade System) MICEX (Moscow Interbank Currency Exchange) LSE (London Stock Exchange ロスネフチはIPOの成功を宣言(7/14) 2 3 z 大口投資家 IPOの評価 – ペトロナス(11億ドル):ロシアでこれまで実績なし – BP(10億ドル):サハリン-5でロスネフチと提携関係 – CNPC(5億ドル):当初、20億~30億ドル規模の出資を行 いたいとしていたが、遥かに少ない割り当て量。憶測呼ぶ。 z その後の株価は弱含み(8月17日時点) – RTS:$7.50 – LSE:$7.30 (ロンドンでは当初から弱含みの傾向) z ロスネフチ時価総額はルクオイル(717億ドル,@7 月)を上回っているが、埋蔵量、生産量、純利益とも ルクオイルが上。 – よって、ロスネフチの株価は高過ぎるとの評価も 4 5 GazpromとRosneftの動き 2004年 9月14日 50%弱 一般株 Yukos Rosneft Gazprom Yuganskneftegaz 39% 10.7% 100%政府株 政府株 株式交換 政府株50%超 による合併 12月19日93.5億ドルで落札 バイカルファイナンスグループ 12月23日買収 12月 1月 CNPCから60億ドル先払い CNPCへ2010年までに原油 3.55億バレルを提供 9月 ABN Amro, DrKW, JP Morgan, Morgan Stanley からの75億ドル融資でガ スプロム株10.7%買付け Rosneftegaz 2005年 5月17日 Sibneft 9月 50%弱 一般株 39% 10.7%合併断念 政府株 政府75億ドルで買付け 130.91億ドルで75%超の株式取得 Slavneftの50% 2006年 1月 7月 株式自由化 IPO 6 ロスネフチIPOの調達資金の用途 z 借入金返済(殆どがこれに充当) – ガスプロム株買収時の75億ドル – ONGCからのサハリン-1での融資13.4億ドル z z z 国内事業(通常の投資、今回特段の充当はない) – – – – – z z IPO費用に10億ドル(以上合計$98.4億で残り殆どなし) 他に短期借入金39億ドルあり、一部返済か? Udmurtneft(Sinopecが$30億で落札)の51%を引き取り CNPCとは国内共同入札につき協議中 Vankor油田等8つの戦略プロジェクトに着手 下流部門:ユコス、Bashneft等の製油所取得検討 輸出ターミナル:Tuapse(黒海)、Arkhangelsk(白海) 海外展開:カザフスタンKurmangazy探鉱のみ 今次のIPOはロスネフチの財務健全化に充当 – 活発な事業展開への充当は今後なされる見込み 7 ガスプロムの最近の動き(1) -自由化推進の側面- z z 2005年9月:政府が50%超を確保した上で、残りの株 式を市場にて自由に取り引き。 2006年1月:株式売買自由化、高騰 – ロシア:ルーブル建て、ドル建て(外国人用) – ロンドン:ADR(American Depositary Receipt) z ガスプロムの時価総額 – 2006年1月:2,000億ドル。メジャー第4位、世界第7位 – 2006年5月:3,000億ドル。メジャー第2位、世界第3位 z z 天然ガス生産量(2005):5,401億m3(1.2%増)、ロシア全体の 91%、世界全体の20% 全世界のガス埋蔵量の24%を占め、将来性に期待 8 ガスプロムの株主構成 他外国企業 5% Ruhrgas 7% ロシア政府 50% ロシア国内企業・ 個人 39% 9 ガスプロムの最近の動き(2) -より強い国家管理の側面- z z ガスプロムには高い独占性が与えられている ミレルが社長就任(2001年5月) – ガスマフィア追放、「国家の中の国家」から政府支配へ z 天然ガス輸出独占権(2006年7月)。 – ガス、液化ガスに適用、現状追認、PS鉱区は除外 z z z 「エネルギー憲章条約」第三者アクセスに対する拒否姿勢 東シベリア・ガス化のコーディネーター的役割 石油ガス産業の再編での主導的役割 – シブネフチ買収:2005年9月、76%を$137億で(この原資の一部は、 ロスネフチガスからの75億ドル) – 今後の買収候補:スラブネフチのTNK側50% 10 ガスプロム、ロスネフチとメジャーズの 時価総額での比較 (単位10億ドル) 注)メジャーズは2006年1月時点、ガスプロムは1月2,000億ドル、 5月に3,000億ドル。ロスネフチは7月時点。 400 350 300 250 200 150 100 50 0エクソンモービル BP シェル ガスプロム トタル ロスネフチ 11 ガスプロム今後の事業展開(1) z LNG事業 – – – – z サハリン-2:Shellと。2008年夏生産開始。 シュトックマン:パートナー選定に遅れ。 バルトLNG:Petro-Canadaとの共同事業 ヤマル半島:ユジノタンベイ・ガス田LNG開発を視野 JV設立による対外展開 – 北ヨーロッパガスパイプライン: z Wintershall(20%), E.On-Ruhrgas(20%), Gasunie(9%) – – – – – アルジェリア:Sonatrachと広範なJV事業 ベネズエラ:ガス分野での協力 ブラジル:「南米大陸横断ガスパイプライン」 セルビア:SrbijagasとJVでBlue Stream接続ライン建設 キルギスタン:ガス供給でのJV設立 12 13 ガスプロム今後の事業展開(2) z 企業買収 – 英国:小規模ガス配給会社Pennineを買収 – キルギスタン:製品物流企業を買収 – スロバキア:パイプライン会社Transpetrolの49%を Yukos Finance(蘭)から買収 z インフラ建設・供給契約 – 中国CNPC:Altaiパイプライン計画。2011年目標。 z 鉱区取得 – ウズベキスタン:PSA2件 14 プーチン政権の進める「ステートキャピタリズム」 z z 世界のエネルギー市場は強大な多国籍企業により動かされて おり、ロシアもこのような趨勢を見習うべき(プーチン発言,1/31) ロシアにおける「ステート・キャピタリズム」 – 長期的:政府の主導のもとに機能→「公共的土台」の提示 – 短期的:市場への放任 z 国レベルでの石油ガス部門への関与:長期的エネルギー政策 – 株式50%を国が保有 – 取締役会会長を国(大統領府、政府)から派遣、国のコントロール z ガスプロム:メドヴェージェフ第一副首相 z ロスネフチ:セーチン大統領府副長官 z 企業レベルでの対応:個別経済主体として具体的案件に対応 – 「国有化」されてはいるが行動様式は国営企業と異なり市場志向 z ガスプロム:株式自由化、世界展開 z ロスネフチ:IPOを実施 z 今後、財務の改善により積極的な展開が期待される。 15 日欧の「ステートキャピタリズム」 z z 戦略分野で国が株式保有する国有・国策株式会社 EU市場統合(‘94)以前の国営企業に類似 – – – – 英:BP 伊:ENI* 仏:Total, Elf, GdF* 欧州:エアバス社*(仏政府が株式の24%保有) z z *注)現在も国が株式保有 日本にも同様の例あり – かつて:日本製鉄(戦前)、興銀、JAL、KDD – 現在:JAPEX、INPEX z z ロシアは1992年、ガイダル、チュバイスらが米国流経済改 革を導入し「民営化」を目指したが破綻。 プーチン政権下では、揺り戻しではなく、欧州型への移行 16