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どうなる極東のLNGプロジェクト
ロシア極東羅針盤 どうなる極東のLNGプロジェクト 1年前まで、 「極東のLNGプロジェクト」と いえば、ガスプロムが沿海地方南部で計画す るプロジェクトのことだった。それが今、 「ガ スプロムが計画しているウラジオストク郊外 の…」とか「ロスネフチが計画しているサハ リンの…」と分けて言わなければならなくな った。そこで、混同することもあるロシア極 東のLNGプロジェクトについてまとめた。 まずは建設場所。ガスプロムがペレヴォズ ナヤ湾につくるのに対して、ロスネフチはサ ハリン州トマリ地区のイリンスコエが有力だ が最終的には決まっていない。ガスプロムの 方も不安がないわけではない。本欄で再三指 摘してきた環境問題がある。ペレヴォズナヤ 湾の近くには人の立ち入りが禁止されている 厳正自然保護区があり、そこには50頭余りに 減ったアムールヒョウが生息する。 「プラント ができれば、アムールヒョウを絶滅させる恐 れがあり、もし事故が起きた場合、生態系に 甚大な影響を及ぼす」と環境保護グループは 警告する。彼らは代替候補地として、フォー キナ近くのドゥナイを提案する。ただ単に反 対するだけでなく、科学的根拠にもとづいて 反対し代替地を提案するところが環境保護グ ループの強みだ。たかが反対運動と甘く見て かかると痛い目にあうかもしれない。 106 原料調達は両プロジェクトとも頭の痛い問 題である。ロスネフチはサハリン1のガスの 利用を前提としているが、正式には決まって いない。サハリン1のガスよりも、北チャイ ボ、レベジンスキー、サハリン3のヴェニン スキーなど小規模鉱区からのガスをかき集め、 第1トレインに充てることを想定していると の報道もある。サハリン2、サハリン3のキ リンスキー鉱区、チャヤンダ鉱床を想定する ガスプロムの方も、サハリン2のガスを回せ るのか、チャヤンダからはいつガスが出てく るのか、パイプラインは、ヘリウムの除去は、 と多く課題がある。 現在は設計の段階にある。詳細な設計を通 じて、総コストも算出されるため、バイヤー との価格交渉は未だ開始されていない。具体 的な交渉が開始されるのは早くても2014年夏 以降の見込みだ。 ロスネフチはプレFEEDをCB&I(米)とFoster Wheel Energy(スイス)に発注。2014年第1四 半期に終了する予定で、その頃までにFEED実 施者を決定する見込みだ。ガスプロムの方は 子会社の有限会社「VNIPIガスダブィチャ」が 設計を担当する。 事業形態は、ガスプロムの方は伊藤忠商事 など日本の企業連合との共同事業。企業連合 には国際石油開発帝石(INPEX)、石油資源開 発(JAPEX)ほかが参加する。一方、ロスネ フチの方は、エクソンモービルとの共同事業 だが、参加企業や出資比率は決まっていない。 ロスネフチは50%以上のシェアを獲得したい 意向をもつ。SODECOが参画するか否かは検 討中だ。 カギは、サハリン2のガスパイプラインを ロスネフチが活用できるかどうか。昨年末、 ロスネフチはパイプラインの利用を提案。パ イプラインに接続できれば、巨額な建設費の 削減が可能になるが、ガスプロムはこの提案 を拒否。駆け引きが激しくなっている。 (齋藤 大輔) ロシアNIS調査月報2014年3月号 ロシア極東羅針盤 ■ 極東のLNGプロジェクトを比べると ガスプロム 場所 ロスネフチ 沿海地方ペレヴォズナヤ湾 サハリン州イリンスコエ? ハサン地区ペレヴォズナヤ村 トマリ地区イリンスコエ村が有力。イ リンスコエ村とタラナイ村(アニワ地 位置 区)の2ヵ所が候補にあがっている が、イリンスコエ村が有力 ガスプロム 事業主体 ロスネフチ (子会社「ガスプロムLNGウラジオスト ク」(イーゴリ・クルチコフ社長)) 生産能力 生産段階 1,000万t/年 500万t/年 (1,000万tに拡張の可能性も) 第1段階:500万t/年 第1段階:500万t/年 第2段階:500万t/年 (第2段階:500万t/年) (2020年までに1,000万t/年に) 原料調達 サハリン2、サハリン3キリンスキー サハリン1およびその他鉱床 鉱区、チャヤンダ鉱床、コビクタ鉱床 サハリン1のガスを利用することが前 提となっているが、正式には決まって いない。 有限会社「VNIPIガスダブィチャ」(ガ CB&I(米)とFoster Wheel Energy スプロムの子会社) (スイス)によるプレFEEDが2014 設計 年第1四半期までの予定で実施中、そ の頃までにFEED実施者を決定する見 込み 2018年の生産開始を目指す スケジュール 2018年の生産開始を目指す 2018年に第1段階、2020年に第2 段階の生産開始目指す 総事業費 事業形態 販売先 これまでの経緯 100億ドル 150億ドル ガスプロムと伊藤忠商事など日本の企 ロスネフチとエクソンモービルの共同 業連合との共同事業 事業 日本などアジア太平洋諸国 日本などアジア太平洋諸国 2011年4月 2013年2月 伊藤忠や国際石油開発 プーチン大統領、ガス などが出資する「極東ロシアガス事業 輸出の段階的自由化の是非について検 調査」(JFG)と共同事業化調査を実 討するよう指示 施で合意 2013年2月 2012年10月 投資決定 ロスネフチ、エクソン モービルと共同で、サハリン州にLNG 2013年2月 投資根拠文書作成終了 プラントを建設する計画を発表。共同 2013年3月 ガスプロム、建設計画 スタディ実施で合意 を承認 ロシアNIS調査月報2014年3月号 2013年2月 ロスネフチとエクソン 107 ロシア極東羅針盤 2013年4月 設計開始 モービルが共同スタディを開始 2013年5月 ガスプロム、年間600 2013年4月 丸紅とLNG事業など 万t以上のLNGを購入するという条 で協力覚書を締結 件で、権益の最大49%を外資に売却す 2013年 6月 る用意があると表明 125 万 t 、 SODECO に 100 万 t 、 2013年6月 オランダVitolに275万tを供給する ガスプロム、2020年 までに世界のLNG市場で約15%のシ 契約を締結 ェアをとることを目指すと宣言 2013年7月 2013年6月 を締結 JFGとガスプロムが、 2019年か ら丸紅に サハリン州と協力協定 共同マーケティング等に関する覚書に 2013年9月 署名 リング大手CB&I(米)とFoster Wheel 2013年8月 プラントの建設を担う 設計業者にエンジニア Energy(スイス)を選定 子会社・有限会社「ガスプロムLNGウ 2013年9月 ラジオストク」を設立 長がロスネフチLNGプラント計画を 2013年10月 批判。「原料のガスが不足する可能性 サハリン3キリンス ガスプロムのミレル社 キー鉱区でガス生産開始 が高く、サハリン2のLNGがすでに 2013年10月 稼働している状況で、さらにもう1つ ガスプロム、日本の電 力・ガス各社に対する説明会を実施 LNGプラントを建設するのは合理的 2013年11月 でない」 ガスプロムと沿海地 方政府がLNGプラント計画実現でメ 2013年9月 モランダムを締結 し、セーチン・ロスネフチ社長がライ 2013年11月 バルの評価は必要ないと反論 LNGプラント計画の ミレル社長に批判に対 文書化作業を開始(2014年第3四半 2013年9月 期完了予定) ストが安定しないシェールガスは脅威 2013年11月 子会社「ガスプロム セーチン社長、採掘コ ではないとして、自社のガス事業戦略 LNGウラジオストク」の社長にイーゴリ に変更はないと発言 ・クルチコフ氏 2013年12月 改正ガス輸出法が発効 2013年11月 港湾部分の設計に着手 (ロスネフチやノヴァテクなどもLNG 2013年12月 改正ガス輸出法が発効 輸出が可能性に) (ガスプロム以外の会社もLNG輸出が 2013年12月 ロスネフチが、サハリ 可能に) ン2プロジェクトのガスパイプライン 2013年12月 ガスプロムがサハリン を、チャイボ鉱床からロスネフチのLNG 2のパイプラインの使用を求めるロス プラントまでのガス供給に利用するこ ネフチの要請を拒否 とを提案。パイプラインに接続できれば 2013年12月 ガスプロムがサハリン 巨額な建設費の削減が可能。ガスプロム 2のLNGプラントの拡張(第3トレイ はこの提案を拒否 ン)を承認。ロイヤルダッチシェルが求 めていた。ガスプロムは第3トレインの 建設に反対していた。 108 ロシアNIS調査月報2014年3月号