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第7回プログラム [PDFファイル/1.15MB]

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第7回プログラム [PDFファイル/1.15MB]
平成22年度夢アスリート発掘事業「第7回プログラム」
平成22年7月10日( 土 )、岡山県立大学体育館において 、平成22年度夢アスリート発掘事業「 第
7回プログラム」を実施しました。
【身体能力開発プログラム(コオーディネーショントレーニング )】
前 半 は、 荒 木 秀夫 氏 ( 徳島 大 学 )、乍 智 之 氏・ 石 田 裕子 氏 ( 日本 体育 協会 公認 アス レテ ィ ッ
クトレーナー )、日伝宗平氏(岡山県アスレティックトレーナー協議会会員)に指導いただき、
コオーディネーショントレーニングを行いました。
○ウォーミングアップ
・ジョギングや様々なステップをした後、各種のストレッチや運動を行いました。
○パイプトレーニング
・今 回は金 具を使いません。まず何回か足を揃えて乗り、パイプに慣
れます。
・パ イプに 慣れてきたところで、パイプから少し離れ、乗る側の足か
ら 静かに 歩き、3歩目でパイプに乗ります。歩く前に、拍手を2拍
し て タ イ ミ ン グ を 整 え て か ら 始 め ま す 。 リ ズ ム で 表 現 す る と 、「 パ
ン・パン・トン・トン・パ・パ」で乗ることになります。
・慣 れてく ると、できるだけパイプを見ないで、前を向いたまま歩い
て 乗りま す。5~10秒程度乗るとまた降りてやり直します。パイ
プ がある ことをできるだけ意識しないように、リズムにのって乗る
事 が重要 です。そのうち、目をつむってもできるようになります。
・最 後は、 元気よくリズミカルに歩いて乗ります。みんなで声を合わ
せて行いました。
「パン・パン(と2拍して)1・2(と歩き)3・4(で乗ります )」
○ハンドリングを使ったステップ
・ジ グザグ に並べられたハンドリングを、スキップで着地するときに
方 向を変 えて進みます。慣れてくると、逆の足で方向を変えます。
最後はできるだけ速く、リズミカルに行います。
● 反転
○
●
● 反転
● 反転
● 反転
○
●
○
●
○
●
○ 反転
○ 反転
○ 反転
・幼児期の子供がスキップを覚えるのは 、子供の脳の発達にスキップの動作が必要だからです 。
そのスキップの着地位置を左右にジグザグに踏み換え、少し複雑にすると今回の動きになり
ます。
・次 は、駆 け抜けるコースの途中にコーンで四角く囲まれたエリアを
作 り、そ の中にランダムに3個のハンドリングを置きます。コーン
の エリア 内はハンドリング以外のところでステップしてはいけませ
ん 。リズ ミカルにハンドリングの中をステップして駆け抜けます。
また、挑戦するたびにハンドリングの位置を変えて行います。
・慣 れてく ると、ハンドリングの数を4個に増やし、コーンのエリア
も少し長くします。
・エ リアに さしかかってもスピードを変えないように駆け抜けること
がポイントです。
○スラローム走
・コ ーンを 、等間隔に並べますが、途中で左右にずらし、ジグザグに
なるように設置します 。このコースをスラロームで駆け抜けますが 、
音楽のリズムに合わせて 、常にコーンの横でリズムが取れるように 、
スピードを調整して走ります。
・走 る途中 でリズムを取るような動作をしないように、たまたまコー
ン の横に 来た時にリズムがあっているというようにして走ります。
・ジグザグが大きくなると、自 分の身 体はスピードアップしなければ
なりませんが、コースの横か ら見た 場合は、リズムに合わせて等速
運動をしている事になります。
・球技などのスポーツでは、一 定の方 向へ走る距離は違っても同じス
ピードで移動するということ は基本 的な能力です。日本ではこうい
ったトレーニングをやりませ んが、 スポーツが強い国の子ども達は
必ずやっています。
・最初はゆっくりのリズムで行 い、そ の後は少し早いリズムに挑戦し
ます。
・次は、今のイメージを思い出し、コーン無しで走ります。
・スケートや陸上競技の選手が 、試合 前にイヤホンで音楽をよく聞い
ているが、あれは普通の音楽や曲ではなく、今回使用したようなリズム音を聞いている人が
多い。世界のトップアスリートは、リラックスするためではなく、集中力を高めるためにこ
のような音を聞いている。
○身体を使ったタイミングの取り方
・競技の中でタイミングを取る 場合、 身体の動きで時間を計れるとタ
イミングが取りやすい。その ことを 、ボールを使って体験します。
右の写真のように2人で向き 合い、 両手下投げでキャッチボールを
します。音楽のリズムに合わ せて行 いますが、徐々にリズムが変化
します。2人の距離は変えな いで、 投げるボールの高さでタイミン
グを取ります。
・タイミングがずれた場合は、キャッチする高さを調節して合わせるようにします。
○終了
【身体能力開発プログラム(競技体験 )】
後半は、岡井克明氏・金本誠氏・三宅裕二氏・岡田都氏(岡山県体操協会)に指導いただき、
体操競技を行いました。
○はじめに
最初に「バク転をしてみよう」と聞いた時に
は「無理だろう…」と思った人もいたでしょう
が、先ほどの自由練習を見ていると、バク転が
できている人が何人かいました。ちょっとした
勇気を持つことで可能になるのです。これは、
皆さんが普段している競技にも共通しているこ
とだと思います。
今日は、後藤先生(県体操協会理事長)が考案されたバク転の補助器具を準備しました。これ
も利用しながらバク転ができるように練習しましょう。
○準備体操
「前半のコオーディネーショントレーニングで体はできていると思いますので、柔軟運動をし
てから、どんどんバク転に挑戦してみましょう 。」
前回までと同様に各種のストレッチとバク転をするための準備運動をしました。
○バク転の練習
これからバク転の練習をしますが、いくつか注意をします。
・集中力を持ってすること。
・全体で一斉に休憩を取らないので、各自のペースで水分補給をすること。
これまで練習してきたことを確認しながら、どんどん練習してみましょう。
①補助器具を使っての練習
前述の補助器具を使用して練習しました。
②セフティマットでの練習
先生方の補助を受けて練習しました。
③習熟度別の練習
各自の習熟度に合わせて、いくつかの班に分かれて練習しました。ロイター板を使用した練
習も入ってきました。
また、補助なしでできる人も増えてきました。
○発表会
一人ずつ成果を発表しました。多くののア
スリートたちが補助がなくてもバク転ができ
るようになりました。
○まとめ
ここまで上手にできるようになるとは思っていませんでした。皆さんが勇気を持って取り組
んだ成果であり、良い経験になったと思います。これからも勇気を持って、自分が専門として
いる競技を頑張ってください。
【保護者・指導者プログラム】
後半のプログラムと同時進行で、荒木秀夫氏(徳島大学)に「スポーツと子供の脳の発達-家
庭でもできる脳の育て-」というテーマで講義をしていただきました。
・ 学力テス トと体力 テストの結果には相関があります。では、学 力テス
トが高い と将来も 勉強ができるかというとそうでもありません 。都道
府県別で 見てみる と、受験の技術指導が盛んな東京都が高くな ってき
ます。
しかし 、大学で 伸びてくる生徒はトップ予備校卒ではなくな ってき
ています 。これは 受験トレーニングの成果であって、本来の知 的能力
を伸ばすものではないからです。
・オリンピックや世界選手権に出場している日本人選手の小学校時代の体力テストについて調査
したところ、成績は中の下あたり、アメリカやヨーロッパでも同じ傾向であり、晩熟型の子供
です。今優れている子の能力を落とさないようにするためには、脳を鍛えることが重要となっ
てきます。
・小学校期から中学校期にかけて身長が2~3㎝伸びると、脳のプログラムが狂い、体の感覚が
ずれてきます。女子は15歳、男子は18歳ぐらいでおおかた体格が決まってきて、筋肉や自
分の一番優れた動きを獲得していきます。小学生の時から大人と同じトレーニングを行ってい
ると、中学生になったら普通程度の能力になってきます。
スキャモンの発育発達曲線がありますが、子供の個人差はとても大きいです。子供の今の見
た目に欺されてはいけません。現時点での見た感じで将来性は即断できません。無限の可能性
があります。
・能力の獲得は遺伝か学習か、というテーマがあり、60年代は遺伝要素が強いと言われ、70
~80年代は学習の要素が強いと言われました 。次の年代は遺伝要素が強いと言われましたが 、
どういうトレーニング学習をすると伸びるかという研究が非常に進んだので、現在は学習の要
素が強いと言われています。
・単純に勉強やスポーツをすれば伸びるかというと、そういうものではありません。能力を発揮
するためには、ものを考える力、生み出す力が必要です。
そこで、どうやったら良いかというと、体を動かすことが一番良いということが分かりまし
た。遊びを通して社会的、人間的な関係を上手く作っていくために、ルールを取り入れスポー
ツとなりました。スポーツは知的能力、人格を高めるためにも良いものです。本来、スポーツ
には人間の脳の発達、体、心の発達を促す力があります。
具体的にどう展開していったら良いかというと、子供に大人と同じメニューを与えてはいけ
ません。また、特化したトレーニングは子供の能力を伸ばしません。がちがちに脳のプログラ
ムを固めないことが大切です。
・運動に関係している脳の細胞と見る細胞は関係があることは昔から分かっていましたが、聞く
細胞も関係がありました。リズム音を聞きながら動くトレーニングをすると驚異的に能力が伸
びます。今日やったトレーニングはそういう目的で行いました。動く感覚は、生まれた時から
基本にあり、それが視覚や聴覚の発達の基礎となります。あまり運動しない子は、形の認知が
苦手です。例えば算数の勉強をしていて、特に苦手なのが展開図です。苦手な子供がよくやる
勉強法は、この展開図なら組み立てたらこうなる、という答えをそのまま覚える勉強をしてい
ます。
体をよく動かす子供は、色つや、人の話や言葉のイントネーションの僅かな違いが分かりま
す。そして言葉の違いが分かります。体を動かすことが土台となって、目や耳が発達して、抽
象的な映像化が進みます。このことをアイトニックと言います。その次に言葉が理解できるよ
うになってくるので、ものを考える思考力が発達してきます。発達には順序性があり、小さい
時には遊ぶことが大切で、遊びの中からどんどん刺激が入ってきて脳が発達していきます。こ
れは小学校期や中学校期でも決して手遅れではありません。
・身振り手振りを入れたコミュニケーションをとることでも知的な刺激が入ります 。例えば 、
「お
茶を飲みたいんだけど、どこにあるか知らない?」(ペットボトルのキャップを指で回して開
けて飲む格好をしながら)と言う場合と、言葉だけで「ペットボトルのお茶を飲みたいんだけ
ど、どこにあるか知らない?」では、聞いている側の脳の活動はまったく違ってきます。子供
との会話の時には、できるだけ多くの複合的な感覚刺激を与え、想像力が膨らむようにしまし
ょう。
・スポーツの事に伸びる能力と知的な事を考える能力の根は一つと考えてください。
初めて見るものは、触ったり、いじったり、持ち上げたりしながら、これは何だろうかとい
う答えを、今までの経験から頭の中で探していきます。これが知的能力です。本来、ものを考
える力、理解する力が高い人は、運動能力も高いということが知られています。
・条件反射でドリルのような形で覚えた能力は 、そのことはできるが他のことは全くできません 。
柔らかくいろいろな事に適応できる能力を身につけることが大事です。人間の成長は、まず体
の動きの感覚、次に見たり聞いたりする感覚、そして言葉の理解。だから言葉によって何か理
解する、論理的に理解するための最も基礎となるものは、動きの感覚です。ですから、そうい
った感覚を発達させていくことによって、脳を発達させていく。スポーツだけでなく、ものを
考える力に繋げていくことが、私が考えるコオーディネーショントレーニングです。
・最後にポイントをまとめます。
①コミュニケーションをとる時は面倒がらず、主語、述語をはっきりさせ、ボディーアクショ
ンを大げさに入れましょう。
②ささやかながら環境を変えましょう。
部屋の僅かな模様替えや普段はないものを置くなど、僅かに環境を変えることで脳に刺激を
与えることができます。
③体のいろいろな部分の名称を会話の中に入れ、体を意識させましょう。
自分のアイデンティティ、身体像を理解し、そして相手の気持ちを理解することに非常に効
果があります。
・コオーディネーショントレーニングでやっていることは、今お話ししたようなことが理屈とし
てベースにあり、プログラムを組み立てています。スポーツに限らず総合的、複合的に物事を
考えていくことが大切です。
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