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頭部画像異常所見および心臓腫瘍 を認めた小児の2例

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頭部画像異常所見および心臓腫瘍 を認めた小児の2例
頭部画像異常所見および心臓腫瘍
を認めた小児の2例
研修医2年 M.A
指導医
H.A
症例1:幼児
胎児診断にて心臓腫瘍を指摘されていた. 37週X日に帝王切開にて出生(Apgar score 8/9)した. 出生時収縮期雑音(3LSB,LevineⅡ度)を聴取し,左肘部 内側に白斑(3箇所) を認めた. 成長発達に異常はなかったが,7か月頃よりてんかん発作 を認め,1歳時に頭部画像検査を施行した. 心臓超音波検査
右室,左室内に心臓腫瘍多発. いずれも辺縁平滑. 右室内三尖弁直下 径最大の腫瘍(13×15mm) 頭部CT
頭部MRI
上段:T1WI axial像 下段:T2WI axial像
頭部MRI
上段:T1WI axial像 下段:T2WI axial像
画像所見のまとめ
•  両側脳室周囲に複数の結節 ⇒MRI T1WIにて高信号、T2WIにて低信号 一部はCTで高吸収 ⇒上衣下結節の所見 CTでの高吸収域は石灰化か •  皮質および皮質下白質に高信号域 ⇒T1WIにて高信号、T2WIにて低信号 ⇒皮質下結節の所見+白質病変
症例2:新生児
胎児期に不整脈・心臓腫瘍・脳腫瘍を指摘されていた. 37週X日に,胎児HR 70-­‐80 /分と徐脈を認め誘発分娩 にて出生(Apgar score 8/9)した. 胎児期画像
MRI T1W1
胎児心臓超音波
MRI T2W1
出生時心臓超音波検査
画像
頭部CT
頭部MRI T1WI blade axial像
頭部MRI axial像
T1WI
T2WI
FLAIR 画像所見のまとめ
•  両側側脳室前角(Monro孔近位)に
境界明瞭な腫瘤性病変
→上衣下巨細胞性星細胞腫
•  両側側脳室周囲に結節状異常信号
→上衣下結節
•  頭頂葉および前頭葉皮質・皮質下白質に異常信号
前頭葉病変は実質の萎縮を伴う
→皮質結節+白質病変
•  いずれもMRI T1WI高信号,T2WI/FLAIR像低信号
•  CTでは等濃度∼高吸収
診断
結節性硬化症 (Tuberous sclerosis complex)
症例1 経過
痙攣出現
CBZ 15mg/day 20mg30mg 120mg
VPA 75mg/day150mg240mg 225mg
2歳
1歳
7ヶ月
脳波検査 頭部MRI てんかん発作波あり 前述の通り 症例2 経過
PAC散見,徐脈傾向
200mg
発達検査 腎臓超音波 異常なし しかし今後言語面で問題
が出てくる可能性あり 腎血管筋脂肪腫(-­‐)
PSVT出現
Propranolol 0.5 mg/kg 1.0 mg/kg
1週
2.0 mg/kg
2週
結節性硬化症とは
疫学: 6000人に1人,性差なし 遺伝: 常染色体優性遺伝,しかし約2/3は突然変異により発症 原因: 癌抑制遺伝子TSC1,TSC2 症状: 全身の過誤腫を特徴とするため,その症状も脳神経系・ 皮膚・腎・心・肺など全身にわたる 治療: 対症療法,外科的切除 2012年より腎血管筋脂肪腫及び上衣下巨細胞性星細胞腫 に対してはmTOR阻害薬が使用可能となった Northrup H, et al. Pediatr Neurol 49: 243-­‐254, 2013 青木 茂樹, 井田 正博, 大場 洋・他: よくわかる脳MRI. 370-­‐371, 2012 診断基準
A 遺伝子検査での診断基準
TSC1,TSC2遺伝子のいずれかに機能喪失変異があれば TSCの確定診断に充分である. ただし,明らかに機能喪失が確定できる変異でなければ この限りではない. また,遺伝子で原因遺伝子が見つからなくとも,結節性 硬化症でないとは診断できない.
Northrup H, et al. Pediatr Neurol 49: 243-254, 2013
B 臨床的診断基準
確定診断= 大症状2項目以上または大症状1項目と小症状2項目以上
推定診断= 大症状1項目または小症状2項目以上
大症状 1, 低色素性白斑(3個以上,直径5mm以上) 2, 顔面血管線維腫(3個以上)あるいは 前額線維隆起斑 3, 爪囲線維腫(2個以上) 4, ジャグリンパッチ(隆起革様皮) 5, 多発性網膜過誤腫 6, 皮質異形成 7, 上衣下結節 8, 上衣下巨細胞性星細胞腫 9, 心横紋筋種 10, リンパ脈管筋腫症(LAM) 11, 血管筋脂肪腫(2個以上) 小症状 1, 散在性皮膚病変 2, 歯エナメル陥凹(3か所以上) 3, 口腔内線維腫(2個以上) 4, 網膜無色斑 5, 多発性腎嚢胞 6, 非腎臓性過誤腫 Northrup H, et al. Pediatr Neurol 49: 243-254, 2013
症状の発現時期
胎児期/乳児期 24ヶ月未満
幼児期 5歳未満
少年期 5−18歳
青年 成人期 18歳 壮年期 40歳 心横紋筋種
脳腫瘍(SEGA)
てんかん発作/精神遅滞 皮膚症状
網膜過誤腫
腎血管筋脂肪腫
肺リンパ脈管筋腫症
Umeoka S, et al. Radiographics 28: e32, 2008 NOVARTIS, 「結節性硬化症」 www.afinitor.jp/tsc/parRculars/index.html(2015/02/14) 頭部MRI画像所見
上衣下巨細胞性星細胞腫 (subependymal giant cell astrocytoma:SEGA)
皮質結節 (corCcal tuber)
白質病変
上衣下結節 (subependymal nodule)
T1WI(新生児期)
T1WI blade(新生児期)
T2 true FISP(新生児期) 鑑別疾患①上衣下異所性灰白質
T1WI
T2WI
FLAIR
鑑別疾患②上衣下出血
T2WI
SWI
原因遺伝子と発現機序
RSK1
ERK2
CDK1
GSK3β
抑制
抑制
TSC1
TSC2
活性化
活性化
MK2
AKT
AMPKC
Rheb活性型
脱リン酸化
Rheb不活性型
促進
mTOR
抑制
活性化
4E-­‐BP1
S6K1
細胞増殖・血管新生
Jozwiak J, et al. Lancet Oncology 9: 73-­‐79, 2008 Crino PB, et al. New England J of Medicine 355: 1345-­‐1356, 2006 mTOR阻害薬:エベロリムス
RSK1
ERK2
CDK1
GSK3β
抑制
抑制
TSC1
TSC2
活性化
活性化
MK2
AKT
AMPKC
Rheb活性型
脱リン酸化
Rheb不活性型
促進
mTOR活性を選択的に阻害
mTOR
抑制
活性化
4E-­‐BP1
S6K1
細胞増殖・血管新生
エベロリムス
Jozwiak J, et al. Lancet Oncology 9: 73-­‐79, 2008 Crino PB, et al. New England J of Medicine 355: 1345-­‐1356, 2006 SEGAに対するエベロリムスの臨床成績
•  SEGA病変の50%以上体積縮小は,エベロリムス投与群34.5%に 対してプラセボ群では0%と,有意な縮小効果を認めた. •  エベロリムス群では,12週時点で73.0%,24週時点で78.4%と7割 以上の患者でSEGA病変の体積が30%以上縮小した. •  主な有害事象は口内炎,口腔内潰瘍,上気道感染症で,ほとんど が軽度のものであり,長期投与が可能な薬剤である. Franz DN, et al.: Efficacy and safety of everolimus for subependymal giant cell astrocytomas associated with tuberous sclerosis complex (EXIST-­‐1): a mulRcentre, randomised, placebo-­‐controlled phase 3 trial. Lancet Oncology 381: 125-­‐132, 2013 結語
•  小児では,鎮静や被ばくといった点から,画像検索を積極的に 行いにくいのが特徴とされるが,特に全身性疾患では,画像 によりはじめて考慮されるものもあることを改めて認識した. •  結節性硬化症は多臓器に病変をきたす疾患であるため,年齢を 加味しながら適切な時期に適切な画像検査を施行することで 早期診断でき,スムーズに治療計画へ移行することが可能となる. また,複数の科で同時にフォローを行っていくことが必要である. 
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