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Title 〔最高裁民訴事例研究三〇〇〕 裁判所の支部を廃止する旨を定めた

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Title 〔最高裁民訴事例研究三〇〇〕 裁判所の支部を廃止する旨を定めた
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〔最高裁民訴事例研究三〇〇〕 裁判所の支部を廃止する旨を定めた最高裁判所規則の取消しを求
める訴訟と裁判所法三条一項にいう法律上の争訟 (最高裁平成三年四月一九日第二小法廷判決)
三上, 威彦(Mikami, Takehiko)
民事訴訟法研究会(Minji soshoho kenkyukai)
慶應義塾大学法学研究会
法學研究 : 法律・政治・社会 (Journal of law, politics, and sociology). Vol.65, No.8 (1992. 8) ,p.139145
Journal Article
http://koara.lib.keio.ac.jp/xoonips/modules/xoonips/detail.php?koara_id=AN00224504-19920828
-0139
判例研究
平三2 ︵畷騙珊喋姻賊巻︶
裁判所内部の事務分配の定あであるにすぎず、この定めによって国
って限度とされるのであり、支部設置規則による管轄区域の定めは
︹最高裁民訴事例研究三〇〇︺
裁判所の支部を廃止する旨を定めた最高裁判所規則の取消し
まり、法的利益にまで高められたものとはいえないとし、このよう
民が何らかの利益を受けるとしてもそれは単に事実上の利益にとど
の存否に関する紛争ということはできず、行政事件訴訟における抗
な事実上の利益に関する紛争は、当事者の権利関係または法律関係
を求める訴訟と裁判所法三条一項にいう法律上の争訟
廷判決︶
最高裁判所規則取消請求事件︵平成三年四月一九日最高裁第二小法
て訴えを却下した。Xらはこの判決に対して控訴したが、第二審た
る福岡高等裁判所も、最高裁判所規則によって定められる右管轄区
告訴訟にあたらないのみならず、法律上の争訟にも当たらないとし
域内における支部の設置は、裁判所内部の事務分配の定めにほかな
福岡地方裁判所および福岡家庭裁判所の各甘木支部は、地方裁判所
ていたが、﹁地方裁判所及び家庭裁判所支部設置規則及び家庭裁判所
及び家庭裁判所支部設置規則により権限乙号の支部として設置され
出張所設置規則の一部を改正する規則︵平成元年最高裁判所規則第
し反射的利益にすぎないのであって、これを国民の権利ないし法律
らず、国民の当該支部利用に関する利益・便益は事実上の利益ない
Xらは、原審判決は憲法三二条の解釈を誤りかつ同一五条二項の精
上の利益ということはできないとして控訴を棄却した。これに対し、
五号︶﹂によって、平成二年四月一日から廃止された。そこで、右甘
る同支部の廃止決定は、同支部の管轄区域内に居住する国民一人一
木支部の管轄区域に居住する住民Xらは、本件改正規則の制定によ
人に対し、各人の有する﹁裁判を受ける権利﹂に対し直接かつ具体
下したことは、憲法三二条に違背するものであるとして上告した。
神にも違背するものであり.さらに民訴法二〇二条により訴えを却
それに対し、最高裁判所は次の理由で、Xらの上告を棄却した。す
的な効果を及ぽすものであるから、行政事件訴訟法三条にいう﹁公
Xらの﹁裁判を受ける権利﹂の行使は、他の通常の立場にある一般
権力の行使にあたる行為﹂に該当するところ、右廃止処分によって、
なわち、
所を被告としてその取消を求める抗告訴訟を提起した。
のような具体的な紛争を離れて、裁判所に対して抽象的に法令が憲
権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争に限られるところ、こ
争訟﹄として裁判所の審判の対象となるのは、当事者間の具体的な
﹁︹上告理由第一点について︺裁判所法三条一項にいう﹃法律上の
国民に比べて、著しく阻害されることになり、右廃止処分は、憲法
これに対し第一審の福岡地方裁判所は、管轄によって保護される国
三二条、一四条一項に違反する違法なものであるとして、最高裁判
民の法的利益は、下級裁判所の設置及び管轄区域に関する法律をも
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法学研究65巻8号(’92:8)
べきである。
ことにより私的な紛争を解決する制度であることから、民事訴
一 民事訴訟が.当事者の主張につき法律に基づいて判断する
当事者間の具体的な権利義務または法律関係の存否に関する紛
必要となる︵裁判所法三条︶。ところで﹁法律上の争訟﹂とは、
の対象となるためには、それが﹁法律上の争訟﹂であることが
解決できるものでなければならない。換言すれぽ、司法裁判権
訟制度によって解決を図るためには、当該紛争は法を適用して
法に適合するかしないかの判断を求めることはできないものという
これを本件についてみるに、本件各訴えは、地方裁判所及び家庭裁
判所支部設置規則及び家庭裁判所出張所設置規則の一部を改正する
規則のうち、福岡地方裁判所及び福岡家庭裁判所の各甘木支部を廃
するとし、また.本件改正規則の制定には同法七七条一項所定の規
止する部分について、これが憲法三二条、一四条一項、前文に違反
則制定権の濫用の違法がある等として、Xらが廃止に係る福岡地方
争であって、法律の適用により終局的に解決しうべぎものをい
従来学説判例上認められていたことを再確認するにすぎず、別
﹁法律上の争訟﹂たり得ない旨を判示するものであり、この点.
象的に法令が憲法に適合するかしないかの判断を求めることは
具体的な事案につき、具体的な紛争を離れて裁判所に対して抽
うと解されており判例・学説上異論を見ない。そして本判決は、
︵1︶
裁判所及び福岡家庭裁判所の各甘木支部の管轄区域内に居住する国
民としての立場でその取消しを求めるというものであり、Xらが・
本件各訴えにおいて、裁判所に対し、右の立場以上に進んでXらに
かかわる具体的な紛争についてその審判を求めるものでないことは.
その主張自体から明らかである。そうすると、本件各訴えは.結局、
かの判断を求めるものに帰し、裁判所法三条一項にいう﹃法律上の
裁判所に対して抽象的に最高裁判所規則が憲法に適合するかしない
段目新しいものではない。ただ、本件では、最高裁判所の制定
︹上告理由第二点について︺不適法な訴えでその欠訣を補正するこ
る場合を除いて一切の法律上の争訟を裁判し﹂と規定している.
二 裁判所法三条一項は﹁裁判所は日本国憲法に特別の定めあ
いては、晴山教授の本判旨に反対する旨の評釈がある。
︵2︶
ばら上告理由第一点に関する判旨について行う。なお本件につ
の先例としての価値は認められよう。なお以下の評釈は、もっ
した規則が抗告訴訟の対象となっている珍しい事案であり.そ
争訟﹄に当たらないというほかはない。︿中略﹀
て右訴えを却下することができる︵民訴法三七八条、二〇二条参照︶
とができないものである場合には、口頭弁論を経ないで判決をもっ
ところ、本件各訴えは、前記のとおり裁判所法三条一項にいう﹃法
敏を補正することができないものに当たるというべきである。した
律上の争訟﹄に当たらないものであるから、不適法な訴えでその欠
がって、原審が本件各訴えにつき口頭弁論を開く措置を採らなかっ
ここに﹁一切﹂とは、民事および刑事に関する争訟のみならず、
律関係を目的とする訴訟等をも含む趣旨である。よってこの限
︵3︶
行政事件すなわち行政処分の取消等を求める訴えや公法上の法
たことに所論の違法があるということはできない。︿以下略﹀﹂
判旨に賛成する。
140
判例研究
に当たらないものを拾い出すという形で、判例・学説を通じて、
点については、従来、消極的に、すなわち、﹁法律上の争訟﹂
ある。そして、法律上の争訟が具体的に何を意味するかという
三 つぎに、司法裁判権の対象となるのは﹁法律上﹂の争訟で
りでは、本件は、いうまでもなく﹁一切﹂の争訟に含まれる.
の物資の配給を請求する権利の確認、能力に応ずる教育を受け
を被告として健康で文化的な最低限度の生活を営むに足るだけ
九・二九刑集二巻一〇号=一三五頁︶とされており、国民が国
一・一〇・一三民集一〇巻一〇号=二五九頁、最判昭二三・
の国に対する請求権を国民に与えたものではない︵最判昭三
いくつかの基準が定立されてきた。すなわち、①民訴法二二五
の基本に関係する高度に政治性のある国家行為のようなものは、
三権分立の原理の見地から、たとえそれが法律上の争訟となり、
るために学校に入学することを要求する訴え、就職の権利を主
︵4︶
張する訴えなどいずれも許されないとされている。⑥国家統治
これに対する有効無効の判断が法律上可能である場合であって
条の証書真否の確認の訴えを例外として、原則として単なる事
裁判の対象とはならない︵最判昭二八・二・一七行集四巻一
見または感情に基づく精神的不満、学問上、技術上の論争等も、
︹最判昭三五・六・八民集一四巻七号一二〇六頁︺、砂川事件
も、裁判所の審査権の外にあるものとされている︵苫米地事件
実の存否は裁判の対象とはならない。②個人の単なる主観的意
一号二七六〇頁、最判昭四一・二・八民集二〇巻二号一九六
︹最判昭三四二二二六刑集一三巻一三号三二二五頁︺︶。⑦
頁︶。③具体的な事件を離れて、抽象的な法令の解釈または効
力に関する争いも、裁判の対象とはならない︵警察予備隊違憲
問題で、裁判所が法律の適用によって終局的に解決しうべきも
関係機関がもっばら道義的または政治的見地から自ら決すべき
のでないような事項︵国会を被告として、教育勅語が憲法に違
訴訟︹最判昭二七・一〇・八民集六巻九号七八三頁︺、最判昭二
背するものでないことの確認および衆参両院の右勅語失効決議
七・一〇二一二民集六巻九号九二六頁︶。④地方自治団体の議
関係のないものの適否を争う訴えも法律上の争訟とはいえない
会の議決のように、それだけでは住民の具体的権利義務に直接
一・一七行集四巻一一号二七六〇頁︶ないし、自立的な法規範
の取消決議をなすべきこと等を要求したもの、最判昭二八・一
をもつ団体内部規律の問題として自治的措置に任せるべき事項
︵最判昭二九・二・二民集八巻二号四一九頁︶。⑤政治上の一
否定される。たとえば、国民の生存権を定めた憲法二五条、教
るもの︹最判昭三五・一〇・一九民集一四巻一二号二六三三
︵地方議員に対してなされた出席停止の懲罰議決の適否に関す
般方針を定める憲法等の規定に基づく訴訟は法律上の争訟性を
育を受ける権利を定めた同二六条、勤労の権利を定めた同二七
頁︺.政党が党員に対してなした処分の適否に関するもの︹最
条等は、いずれも政治の一般方針を掲げて、これらの権利を実
現すべき政府の政治的責任を示しただけで、具体的権利として
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法学研究65巻8号(’92=8)
判昭六三・一二・二〇判時一三〇七号一二二頁︺.大学の単位
高裁判所規則が、原告らの具体的権利義務に法律上の効果を及
地方裁判所および同家庭裁判所の各甘木支部を廃止する旨の最
四 従来存在していた裁判所の支部が廃止されることになれば、
ぼすか否かが検討されなければならない。
認定に関するもの︹最判昭五二・三二五民集三一巻二号二三
の権力が最終的決定をすべき権能を有している場合も、司法審
四頁︺等︶などにも裁判所の審査権は及ばない。⑧司法権以外
ついては、それまでよりも不便を強いられることはいうまでも
ない。しかし問題は、その不便が、支部の廃止という処分の法
そこに居住している国民は、裁判所において権利を追及するに
律上の効果として、当該住民の具体的な権利を侵害したか否か
処分、検察官の不起訴処分、検察官の不起訴処分に対する検
察審査会の議決等︶。⑨宗教上の地位の確認を求め.あるいは
ということである。したがってそれを考察するに当たって、ま
査の対象とはならない︵裁判官訴追委員会のした裁判官不訴追
宗教上の価値または教養についての判断を不可欠の前提とする
ず本件との関連で地方裁判所の支部の法律上の地位を明らかに
しておきたい。
はいえない︵最判昭五五・一・一一民集三四巻一号一頁、最判
昭五六・四・七民集三五巻三号四四三頁、最判平一・九・八民
れている関係上、一般公衆の利便を図るため、最高裁判所は.
地方裁判所は第一審事件その他について広範な権限が与えら
など宗教問題に関する主張を中核とする訴えも法律上の争訟と
わる事項︵いわゆる議員定数不均衡是正訴訟︹最判昭五一・
その地方裁判所の管轄区域内に、地方裁判所の支部のほか出張
集四三巻八号八八九頁︶。⑩行政上および立法上の裁量にかか
四・一四民集三〇巻三号二二三頁︺︶などである。
これは、簡易裁判所を第一審とする事件のうち軽微なものの控
訴、抗告等比較的軽微なものも少なくなく、かような事件をも
所をも設けることができるものとされている︵裁三一条一項︶。
すべて地方裁判所の本庁で処理するものとするときは、比較的
そこで以上のような分類を前提として考えると.本件は、地
いるものであり、前記③の場合に属する事案である。その意味
方裁判所の支部を廃止する旨の最高裁判所規則の取消を求めて
では外形的に観察すれば、それだけで、もはや法律上の争訟性
なるので、このような不便をできる限り少なくするという意図
遠隔の地にある当事者その他の関係人の不便を増大することに
いではあっても,その法令自体により国民に対して直接に特定
はないようにも思える。しかし、たとえ法令の効力に関する争
判所の事務の一部を取り扱わせるため﹂に設けられたものであ
に出たものである。このように、地方裁判所の支部は﹁地方裁
︵6︶
行政処分の性質を有するものであり、行政訴訟の対象となり得
り︵裁一三条一項︶、支部も、設置された以上、官署としては
の具体的権利義務に法律上の効果を及ぼすときは、実質的には
る場合もあるというべきである。したがって、本件では、福岡
︵5︶
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判例研究
本庁に対立する独立性をもったものであるが、原則として独立
の行政権を与えられていないから、それ自体行政官庁ではなく、
行政官庁たる地方裁判所に包摂される。また、支部は、手続上
る.
った国民の権利は、単なる事務取扱い上の措置を理由に剥奪さ
たしかに.確立された管轄区域によって一旦保護されるに至
︵9︶
たとえ従前、本件住民が福岡地方裁判所甘木支部において訴訟
裁判所の一部であり、独立した管轄権を有するものではなく、
かし、既に述べたように.地方裁判所の支部はあくまで、地方
関する定めは、本庁との間における内部的な事務分配の基準に
を追行する便宜を享受していたとしても、それは地方裁判所の
れ得るがごときものと謂うを得ないといえるかも知れない。し
すぎないから、支部において取り扱うべきものとされていない
管轄事件を内部的事務分担によって甘木支部が担当していたこ
は.地方裁判所の一部にすぎず、独立の裁判所としての独自の
事項に関する事件が支部に提起された場合でも、支部は、法律
の、甘木支部において裁判を受ける権利は法的な権利というこ
裁判権を有するものではない。また、その事務取扱いの範囲に
上これを却下することはできず,受理した上、事件を事実上本
︵7︶
庁に廻付し、本庁において処理すべきであると解される。
とはできない。
との反射的利益にすぎないというべきである。よって、原告ら
利を保障される。これは国民が法の定める正規の組織・権限を
たしかに憲法三二条によれば、国民は等しく裁判を受ける権
有する公正な裁判所の裁判を請求する権利を有することを意味
あることはもっともであるが、事情によっては、関係人の利害
さらにいえば、支部の設置が一応関係人の利便を増すもので
を前提として考えるならば、支部の設置によってかえって勢力
そのものが対立することもある︵大都市の弁護士が事件を受任
︵8︶
するものであるが、これは法律によって正規の管轄権を有する
の分散を来たし、全体としての裁判事務の能率の低下を招く恐
裁判所で正規の手続による裁判が保障されれぽ、その権利は満
たものではない。よってこのことを本件に則していえば、﹁下
れもある。その意味からいえば、支部の適正配置は裁判事務の
る︶。また、裁判官その他の裁判所職員の数に制限があること
級裁判所の設立および管轄区域に関する法律︵昭二二年法律第
合理的運用の観点から、最高裁判所が司法行政上の責任官庁と
した場合、支部での訴訟追行はかえって不便になることがあ
六三号ごによって福岡地方裁判所および同家庭裁判所が設立
して独自の責任において行うぺき事項であり︵この点で本件は、
は特定の場所の裁判所︵支部︶で裁判を受ける権利まで保障し
され、かつそれらは福岡県を管轄区域とすることが定められて
上述⑩の類型に属するともいえる。︶、そもそも司法審査の対象
足されるものであり、それ以上に特定の裁判官による裁判また
おり、結局、管轄によって保護される国民の権利は、管轄権を
︵10︶
有する福岡地方裁判所によって裁判されれば満足されるのであ
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法学研究65巻8号(’92:8)
にはならないものと考える。よって、いずれの観点からしても、
ことも可能である。よって本件では、Xらは原告適格を欠いて
事案であるといえよう。
いることを理由として訴え却下の判決をすることも十分できた
ものであったといえよう。
︵1︶ 兼子”松浦”新堂”竹下・条解民事訴訟法七七六頁、中野脈松
本件は法律上の争訟たり得ないものであり.却下は免れ得ない
浦”鈴木編・民事訴訟法講義︹補訂第二版︺一六七頁.新堂幸司・
晴山一穂・民商一〇五巻四号五五一頁。
判法︹新版︺七〇頁以下、佐藤幸治・憲法︹新版︺二七〇頁以下等。
民事訴訟法︹第二版補正版︺一七四頁以下・兼子扁岡竹下守夫・裁
五ただ、判決理由は.第一審・第二審が、支部利用に関する
して.本件訴訟の争訟性を否定しているのに対し、上告審は、
利益・便益は事実上の利益ないし反射的利益であることを強調
て避けたためか、単に・本件を具体的な事件を離れて、抽象的
国民の裁判所の支部利用についての権利性を論じることをあえ
な法令の解釈または効力に関する争いであると捉えて、争訟性
を否定している。しかし前述したように,たとえ法令の効力に
関する争いではあっても、その法令自体により国民に対して直
接に特定の具体的権利義務に法律上の効果を及ぼすときは、実
質的には行政処分の性質を有すると解する余地がある限り、本
件規則による裁判所の支部の廃止が、原告の具体的な権利義務
に法律上の効果を及ぽすものではないという旨を一言述べてお
765432
︵9︶
て、
東京高決昭四二・七・一四判時四九〇号五五頁。ただ、この判
佐藤功・日本国憲法概説︹全訂第四版︺二六八頁。
裁判︵決定︶をもってなすべきであるとする。
証拠調べも相当の程度まで進んだ後、裁判所が本庁に事件を
重ね、
レベルのものとして論じることはできない。なおこの決定の趣
八二頁。
︵10︶ このことを指摘するのは、 前掲・裁判所法逐条解説︵上巻︶
がある。
対
す
る
評 旨に反
釈 と し て 、伊東乾・判例評論一〇八号一一八頁以下
同一
も
の
で 付 した
あ り 、まったく訴えを提起していなかった本件とは
案
は
、 ある支部に訴えを起こし二三回ないし二四回の期日を
例の事
︵11︶
は当たらないということであり、原告適格の問題として捉える
又は裁決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者﹂に
は、結局、本件Xらは、行政事件訴訟法九条にいう﹁当該処分
支部を利用するという利益が法律上のものではないという事情
る。しかし、見方を変えれば、本件Xらの福岡地方裁判所甘木
六なお、第一審・第二審のほか、最高裁判所の判旨も、本件
︵8︶
を含む
︶ に係属した事件を廻付することは、受訴裁判所の変更とし
東京高決昭四二・七・一四判時四九〇号五五頁は、各部︵支部
前掲・裁判所法逐条解説︵上巻︶一七九頁・一八○頁参照。な
前掲・裁判所法逐条解説︵上巻︶二三七頁・一七八頁参照。
最判昭三四・六二一民集一三巻六号六三九頁参照。
前掲・裁判所法逐条解説︵上巻︶二三頁。
最高裁判所事務総局・裁判所法逐条解説︵上巻︶二二頁参照。
:お))))))
をもっばら﹁法律上の争訟性﹂の問題と捉えているように思え
く必要があったのではないかと思われる。
パパハパパパ
回
144
判例研究
︵11︶ たしかに,第一審判決は﹁行政事件訴訟における抗告訴訟に当
たらないのみならず﹂と述べているが、これは当事者適格の問題と
題と捉えているように思える。
して捉えているというよりも、行政事件訴訟法三条の要件存否の問
一八
︵平成四年五月二一日脱稿︶
頁︺に接したが、参照できなかったことをお断わりしておく。
校正段階で井上治典教授の本件評釈︹平成三年度重要判例解説一
三上 威彦
145
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