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NOVEL ch33「ハナ・ギテルマンの死 Part 1」

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NOVEL ch33「ハナ・ギテルマンの死 Part 1」
ハナ・ギテルマンの死
Part 1
ハナ・ギテルマンの人生は戦いの連続だった。それでもハナは迷うことな
く戦ってきた。敵も味方も、戦うべき相手は明白だったからだ。
だが、眼鏡の男は例外だった。一度は信頼を寄せる良き師でもあった
その男は、彼女を裏切り、だまし、汚い仕事をさせた…。
復讐を誓ったはずの男の主張を、心ならずも聞き入れることにしたハナ。
だが、与えられた任務に深く入り込んでいけばいくほど、彼女はこの協定
を疑問視せざるをえなくなる…。
小さい頃。
天国はふかふかの雲と
きれいな翼の天使でいっぱいだと
想像していた。
でも、実際の天国は
何千もの衛星で埋め尽くされている。
…“機械仕掛けの天使”ね。
衛星は
私たちの行動をすべて見ている。
私たちがかける電話。
私たちが書くEメール。
”
天使 ”は私たちの生き方を
全て知っている。
そして、
私たちの死に方も。
こんな死に方、
考えてなかった。
何もかも予想外だった。
3日前
ハナ。
テキサス州とニューヨークの間
メッセージが届いたか、
心配したよ。
話がある。
私たちをいいように
使ってるだけじゃない!
こいつの代わりに汚い仕事を
やらされるのよ。
君に、普通の人生を
返したいんだ。
おかげさまで、
今まで一度だって普通
だったことなんてないわ。
ありえないわよ。
嫌だったの。
あんたに命令されるのも、うんざり。
だいたい、あんたが考えている
計画を信じろっていうの?
銃を下ろして、
話を聞くんだ。
じゃなきゃ、その引き金を引く前に
弾も拳銃も、お前も溶かす。
やって
みなさいよ。
そうか、
じゃあそうするか。
計画は?
組織が追跡装置を持っている限り、
私たちは平穏には過ごせない。
装置は2つある。
マットとテッドと私は
ニューヨークの
ウォーカー・システムを破壊する。
君にはアイソトープのシステムを
任せたいんだ。
どこにあるの?
上だ。
…衛星を壊せと、
私にいってるの?
君は自分の能力が
どれほど強いか、
気付いていないんだ。
だが私にはわかる。
昨年
世界で一番高いところ…
…死ぬわ。
イスラエル人は
タフなはずだ。
重い荷物を背負って
わずかな水だけで
砂漠を横断しろと
いわれても平気よ。
でも、これは…
…ここでは
生きられない。
気持ち悪い…
体の問題じゃない。
身体的には問題はないはずだ。
君の能力なんだ。
ここでは、
あらゆる衛星通信やEメールが
ハエのように飛び交っている…
君はハエ取り紙のようなものだ。
もうダメ、
止めて
無理だ。
君がコントロール
するんだ。
できない…
その日、携帯やメールのプロバイダーが
磁気の動きが原因で一時通信サービスが
中断されたと発表、ニュースになった。
…私のせいだった。
なんで
連れてきたの?
苦しませるため?
自分の能力が
どれほどのものか、
わかってほしいんだ。
ハナ、君はずっと
“特別”になりたがっていた。
君は地球上で最も重要な
人間かもしれないんだ。
君が必要なんだ。
本気なのか?
彼女が衛星を壊せると?
彼女でなければ
無理だ。
2 日前
ニューヨーク・シティ
テルアビブの町では
“世界の終わり”パーティと
よく言ってた。
爆弾が降ってきて、
この世はもうすぐ終わる。
明日はないから、今を生きる。
だから、私は
踊った。
飲んだ。
生きている気分を
味わった。
ベネットが送ってきた衛星の
スペックを見ると、
かすかに聞こえた…
かすかな囁きが。
セキュリティ、パスワード、
ファイアーウォール。
どれもたちが悪い。
…衛星は暗号化されている。
“話し”ができるところ
に行かなくては。
セキュリティを
迂回できるところで。
北極のツンドラのように、
楽に話せる場所がある。
衛星に、私の命令を
ちゃんと聞かせなくてはならない。
そのためには、それがどんなに
遠い場所でも行く。
私の“足”が、
まだ出発してなくてよかった。
…こんなこと、
自分でも信じられない。
…問題発生。
しかも、5つ。
…こんな死に方だけは
イヤだわ。
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