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福島県における災害復旧支援を振り返って
● ストックマネジメント 地方の動き 福島県における災害復旧支援を振り返って 沖縄県農林水産部農地水利課 主任技師 野原 孝則 沖縄県から福島県小名浜港湾建設事務所への派 1.はじめに 遣は,平成 23 年 5 月∼ 7 月(2 名,1 ヶ月交代) 平成 23 年 3 月 11 日に発生した東日本大震災 までの短期と平成 23 年 8 月∼平成 24 年 3 月(2 名) は,東北地方の太平洋側を中心とした広範囲に甚 までの長期で行い,延べ 8 名の農業土木職員(漁 大な被害をもたらしました。今回の派遣先となっ 港担当)が災害復旧業務に携わりました。 た福島県いわき市においても,港湾・漁港・海岸 保全施設等が津波などにより大きな被害を受けま した。 (注)沖縄県では「漁港建設」は農林水産部での担当と なりますが,福島県では土木建築部が港湾・漁港 と併せて担当しております。 福島県震度分布図 JAGREE 84. 2012・11 25 � � ● � � � 東北地方太平洋沖地震による 地盤沈下の状況 � � 地盤沈下量 � 相馬市新田:− 29cm 〔四等三角点「南城」〕 相馬市原釜:− 23cm 〔一等水準点〕 いわき市平:− 41cm 〔交点:交 4201〕 ――― � � � ――― � � 津波浸水面積 112.0km2(福島県) 〔山手線内(69km2)の 2 倍〕 15.0km2(いわき市) 〔県内で 3 番目〕 � � � � � � � � � � � 地震に伴う地盤沈下及び津波による浸水の状況 (国土地理院発表平成 23 年 4 月 18 日) � � また,福島県での宿泊場所(ホテル・レオパレス) � は福島県が借り上げており,職員住宅という扱い 2.派遣にあたり 1)周知のことだと思いますが,災害派遣の根拠 でした。 や派遣形態について簡単に紹介します。 【災害対策基本法】 3)他県の派遣状況 (都道府県知事等に対する応援の要求) 小名浜港湾建設事務所建設課では,本来の事 第 74 条 都道府県知事等は,当該都道府県の 務所職員と 1 ヶ月交代で派遣される福島県本庁職 地域に係る災害が発生した場合において,応急措 員,これに神奈川県を始めとする 5 県からの派遣 置を実施するため必要があると認めるときは,他 職員により災害復旧業務にあたっていました。 の都道府県の都道府県知事等に対し,応援を求め ることができる。この場合において,応援を求め 《H23年度 小名浜建設港湾事務所の他県派遣状況》 ・山 口 県 30 名 (短期 4 ∼ 7 月 1 ヶ月交 られた都道府県知事等は, 正当な理由がない限り, 代 延べ 22 名) (長期 8 ∼ 3 月 応援を拒んではならない。 2 ヶ月交代 延べ 8 名) ・神奈川県 22 名 (短期 4 ∼ 7 月 1 ヶ月交 2)長期派遣職員の身分 代 延べ 20 名) (長期 8 ∼ 3 月 長期派遣となった我々は, 「沖縄県」と「福島 8 ヶ月 2 名) 県」の併任辞令を受け両県の身分を持つこととな り,給与及び残業代,沖縄県への業務報告等に係 る沖縄県出張は「沖縄県」から,災害派遣手当や 福島県内の出張は「福島県」から支給されました。 26 ・広 島 県 6名 (長期 8 ∼ 3 月 4 ヶ月交 代 延べ 6 名) ・香 川 県 4 名 (長期 8 ∼ 3 月 3・4 ヶ月 交代 延べ 4 名) JAGREE 84. 2012・11 ● ストックマネジメント ● コミュニケーションをとって業務を行いました。 3.業務内容 私は漁港・海岸を担当しており,8 月∼ 12 月 までは災害査定を行い,1 月∼ 3 月までは実施・ 4 査定直前の「ひとりごと」 【木曜日】 発注に向けた準備を行っておりました。 何度目の災害査定だろうか,もう回数を数える 特に気をつけたことは,福島県のルールにもと 気力もない。ただわかっている事は,来週の月曜 づいて業務をおこなうことでした。多県連合で業 日は災害査定ということだ。コンサルの図面・数 務を進める場合,どうしても自分の県のやり方で 量は仕上がっているだろうか?まっ,無理だ。特 進めがちになるのですが,それでは福島県として に C 社は「今週は下水道の査定」と言っていた。 の統一が図れなくなります。そこで設計・積算の 査定の掛け持ちは厳しい。先週,東京のコンサル 考え方は福島県のキャップに必ず相談し,綿密な に電話をしたら,午後から担当者は病院に行って 仲通り 相馬港湾建設事務所 浜通り 会津地方 小名浜港湾建設事務所 福島県の漁港の位置 8 月査定 JAGREE 84. 2012・11 12 月査定 27 ● いると言われた。なんだか,ブルーだ。 現場は厳しい。この人たちも被災を受けているに, 査定の為に震災以降,休みが全然ない。仕事も大 【金曜日】 A コンサルの防波堤は図面チェック OK ! B 変だがお家も大変なのに。 お∼い。私。何か間違ってませんか? コンサルの物揚場は数量もやっと OK !早速,積 算の修正作業に取り掛かろう。C コンサルの道路 【日曜日】 &護岸は図面すら提出されていない。どうすべ あとは,私ががんばるだけです。わかってます。 き!(方言) はい。みなさんのがんばりを無駄にはしません。 積算は結構得意な方だと思っておりました。ずば 【金曜日 深夜】 ふらふらになりながら,C コンサルの設計部長 り,過信でした。でも大丈夫。どうにかなります! んっ?訂正です。「どうにか」します。 が図面の説明に来た。目のクマがすごい。ひどく 疲れているようだ。案の定,まる二日寝ていない 【月曜日 朝】 そうだ。私は少々寝てしまった。なんだか気まず 「どうにか」なりました。どうしたかは聞かな い。(寝てもいいんですけどね。 ) いでください。どうであれ午後の査定ではっきり とりあえず,平面図を見てみよう。 大丈夫かな? しますから。 んっ?んっ?起点・終点の位置が間違っている! これはマズい。非常に嫌な予感がする。 単純な 「起・ 【解説】 終点」の間違いぐらいは直せばいい。ただ,これ 上記の「独り言」は,極端なときのことです。 から本格的にチェックをしたら,どれくらい間違 毎回ではありません。私の勝手な思い込みも含ま いがあるのだろう。ゾッとする。月曜日まで査定 れております。今回の災害復旧支援で公務員ばか レベルにもっていけるだろうか。 心が折れそうだ。 りではなくコンサルタントの支援体制ができたら けど,応援にきて災害予算がカットされるような スムーズな査定が行うことができたのでないかと ことは避けたい。しか∼し。1 時間後に 「心」 が「ほ 感じております。確かに,お金を払って請け負っ ぼ」折れた。 ているのでコンサルタントの問題といえばそうで すが,実際には期限が短いなかで図面・数量を作 【土曜日】 成するのは相当厳しいものです。このことは,実 朝からみなさん,すいません。急遽,測量班に 施・発注に跳ね返ってくることなので大きな課題 出てきてもらいましたよ。別現場から回してもら だと思います。 いましたよ。ごめんなさい。人件費もかかるのに。 けど,知っていると思いますが,月曜日から査定 4 おわりに なんです。一緒に測量がんばりましょう。査定で 今回の災害復旧支援を無事に行えたのは,ひと 何億の予算を決定してもらうので,中途半端には えに小名浜港湾事務所のメンバー(コンサルタン できないのです。開き直れればいいのですが・・・。 トの方々も)のおかげです。災害復旧という目 はい。私は小心者なのです。立会官もいろいろで 標に向って,メンバー全員が同じ方向で,仕事を すから。何回か査定を受けると,厳しい査定に合 することの素晴らしさを経験できたことは今後の わせて資料を作成してしまいます。 (テレビでは 私の人生に大きな糧となりました。遠く沖縄にお 航空写真で災害査定をできると言ってた気がする りますが,気持ちはいつでも「東北人」です。東 けど・・・。) 北が普通の生活に戻る日を心から祈願しておりま そういって,心の中でどんなに正論を並べても, す。 28 JAGREE 84. 2012・11