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ハイビジョン映像を超低遅延リアルタイム伝送
Monthly Focus 映像伝 映像伝送 ハイビジョン映像を超低遅延リアルタイム伝送 映像に関しては、2つのことが進行している。1つは、映像配信のデジタル化だ。 これがブロードバンドの爆発的普及と相俟って地上デジタル放送を容易にしている。 もう1つは、ハイビジョン(HD)映像の一般化だ。大画面のディスプレイが大量に 生産され、普及しつつある。これら2つのトレンドの交点に、ブロードバンドでHD 映像の配信を受けて大型ディスプレイで楽しむというライフスタイルが生まれる。 これを映像サービスプロバイダ側から見ると、配信するためのHD映像(ソース) のやりとりが必要となる。ハイビジョンのソース映像を非圧縮で送るにはギガビット 以上の帯域が必要だが、これは運用コストの増大を招く。映像サービスプロバイダは、 圧縮技術を使いながら低遅延でハイビジョン映像を伝送できるシステムを必要として いる。それに応えたのが、今夏に発売が予定されている創業(Frontiers)のHD x1000シリーズの新製品だ。 回線が切り替わったときには、特に耐 に導入しており、最近ではフランス、 力がよい」と話している。ただし、最 フィンランドで地上デジタル放送用に 大の4000パケットロスに対応する設定 採用が決まって、出荷量が増えている。 超低遅延のエンコーダと通常のデコー が必要なほど回線品質が悪いと、FEC HD x1000シリーズ新製品も放送局の要 ダとの組み合わせでも、MPEG2の最高 処理時間が遅延の増大となって現れる。 求に応えて製品化していることで、 「地 パフォーマンスを上回る性能が発揮で これらの基本性能を継承して製品化 上デジタルのIP再送信にはこの装置は きるということだ。 したのがHD x1000シリーズだ。これま 非常に評判がよい。すでにトライアル FEC機能はシリーズ共通の高性能 でに、 「2005年 愛・地球博」 「2006年ト も始まっており、地上デジタルのデー ソース映像伝送にIPを用いることに リノオリンピック」映像伝送などで採 タをDVB-ASIで送るには最適な装置であ 疑問を持つ人もいるが、HD x1000は 用されている。最近では、横浜のみな ると評価されている」 (井手氏)とのこ Path1独自仕様のクロック、FEC とみらい駅ホームで、リアルタイム交 とだ。しかし、井手氏は「アプリケー 通広告伝送用に採用された(写真2) 。 ションは放送だけではない」と捉えて (Forward Error Correction)を搭載して いるため、基本性能は実証済みだ。ベ このシリーズに超低遅延コーデック ースになっているのは、Path1のDVB- を搭載したのが、今回の新製品。 「新しいHD x1000は、MPEG-2であり ASI映像をIPで伝送するAx120、DVB-ASI アプリケーションは放送だけではない ながら、遅延を一桁落とした。逆に言 とSDI/SDTI対応のIPゲートウェイ ョンを低遅延で伝送する装置を開発し えば、パフォーマンスを一桁上げた。 Cx1020。これらには、ClearPath Pro た。同社がすでに製品化している映像 これができるようになったのは、エン FEC機能、高速適応型クロックリカバ をIP伝送するゲートウェイ、HD x1000 コーダのデータ処理をプログレッシブ リ機能、IPデジッタバッファ機能が実 シリーズの新製品だ。コーデック部分 にしたからだ。MPEGでは、1フレーム 装されている。 を新開発の超低遅延バージョンとして、 取り込んでから圧縮するので、どうし Path1独自のクロック生成機能につい 放送局の要望に応えた。 ても遅延が出る。一枚の画面として一 て井手氏は「IP伝送上でクロックリカ 同製品が採用した、エンコード/デコ 旦取り込むのではなく、新しい方式で バリを備えているのは、世界唯一、こ ードする圧縮技術は、最近話題になる はデータを取り込みながら同時にエン の装置だけだ。競合ベンダの装置と違 ことが多いH.264ではなく、MPEG-2の コードしてストリームとして流してい い、Path1の装置は独自にクロックを生 コーデック。専用の超低遅延のエンコ る。これがプログレッシブという処理 成し、映像信号をエンカプセルしたIP ーダとデコーダを組み合わせて使えば、 方式だ。 」 パケットにタイムスタンプして送出し 超低遅延のコーデック開発 創業は、放送局の要望で、ハイビジ ていく。受け取ったMPEGデータは、 JPEG2000に匹敵するか、それ以上のパ 井手氏によると、この超低遅延IPゲ フォーマンスを持つという。通常の ートウェイに能力通りの仕事をさせる 処理しないでクロックをつけて送り出 MPEG-2のエンコーダは、最高パフォー には、十分な帯域を持つ、ジッタの少 していくだけだ。非同期であるIP伝送 マンスでも150msの遅延、通常で200ms ない回線が必要になる。SLAを保証した で、トランスペアレントに、同期網で 遅延が出る。JPEG2000では、エンコー 回線で、わずか100Mbps程度の帯域を あるかのように伝送できるのは、世界 ドとデコードを合わせて50∼60msの遅 確保できれば、この装置の能力を十分 にこの装置しか存在しない」と説明し 延と言われている。HD x1000新製品で に引き出すことができる。 ている。 「テレビ会議、遠隔教育、医療の現場な ど、幅広い市場が期待できる」という のが井手氏の見方だ。 新開発のエンコーダ/デコーダをペア また、FECの性能についても井手氏 内。このテクノロジーのキーポイント で用いれば、最高のパフォーマンスが は「バーストパケットロスへの対応で について、創業のHD映像トランスポー 得られるが、創業では汎用性を持たせ は、ProMPEGフォーラムの仕様では テーションサービスグループ、井手久 るために「通常のデコーダ」との組み 250パケットだが、Path1は最大4000パケ 之氏は次のように話している。 合わせも可能なデザインとしている。 ットまで連続して落ちても回復できる。 OPTCOM April 2007 写真2 HD x1000を採用して運用が始まっている (株)NKBのMetro Mega Wide Vision。ディスプ レイには松下電器産業の103v型高精細フルハイビ ジョンプラズマディスプレイ、音声装置には三菱 電機エンジニアリングの指向性音響システム、一 般公衆網を利用したハイビジョン映像リアルタイ ム伝送には創業のHD x1000が採用されている。 HD映像をWi-Fiでリアルタイム伝送 ハイビジョンHDVカメラの低価格化が進んで普及が始ま ビリティがあるProMPEGフォーラムのFECを採用した。送 っている。このHDVカメラを取材記者に持たせてライブ中 信側のHD x1394 IPゲートウェイは、受信側の機器と連動し 継に使いたいという考えをテレビ局各社は持っているとい た誤り訂正機能により、DVCProHD、HDV MPEG2伝送スト う。カメラにケーブルをつないで使うこともできるが、ワ リーム映像の喪失パケットを復元する。 イヤレスにして記者の行動に柔軟性を与えたいという要求 HD x1394Wi-Fiゲートウェイは、ソニー、JVC、キヤノン、 がある。これに応えたのが創業のHD x1394Wi-Fiゲートウェ 松下製のDVCPro、HDVビデオカメラとインターオペラビリ イだ。MPEG2に圧縮した映像データをIEEE1394(FireWire) ティがとれている。 にエンカプセルしてワイヤレスで送り出す装置。 重量はわずか1.8kg。サイズは45×218×203mm。12V対 応。記者が容易に持ち運べる設計にした。この装置とカメ また、RS232CのIP伝送も可能であるため、HDVカメラを ロボットカメラのようにPTZ(pan, tilt and zoom)リモート 制御ができる。 ラを接続し、IEEE.802. 11gまたはIEEE.802.11nのカードを 監視カメラとして用いる場合は、ハイビジョンで大きく 装着してアクセスポイントとの間でワイヤレスLANを構築 捉えて、一部をズームして見ることも可能だ。従来、カメ することができる。 ラを何台も並べていたが、離れた位置で大きく捉えて一部 カメラ側のHDVフォーマットは25Mbps程度、それにオー バーヘッドがつくと30∼35Mbps程度のスループットがあれ ばよいことになる。IEEE.802.11nの帯域は100Mbpsクラス。 は、エンコード/デコード直結で10ms以 36 Path1の製品は国内外の放送局が大量 いる。映像品質が放送品質であるため、 写真1 HD x1000シリーズ新製品。超低遅延コー デックを搭載したIPゲートウェイ。性能は JPEG2000を超える。 ライブ中継でハイビジョン映像を送るに十分な帯域だ。 を拡大して見ることで監視のオペレーションをシンプルに することができる。 井手氏は「ハイビジョン映像のアプリケーションを放送 局の外にも広げていきたい」と話している。 HD x1394Wi-Fiゲートウェイの映像品質に関しては、通常 のIPゲートウェイと同様、エラー訂正機能を搭載して一定 の品質維持に配慮されている。ここでは、インターオペラ 写真 HD x1394 Wi-Fiゲート ウェイ 37