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Page 1 京都大学 京都大学学術情報リポジトリ 紅
Title Author(s) Citation Issue Date URL 4-2 テナガザル類の音認知と発声制御についての実験的 研究(X.共用利用研究 2.研究成果) 小田, 亮; 松本, 晶子 霊長類研究所年報 (2006), 36: 101-102 2006-07-15 http://hdl.handle.net/2433/166279 Right Type Textversion Departmental Bulletin Paper publisher Kyoto University ンジーでは,モデルの上や一部に往復線を重ねて覆 う ようとす る子 どもとの間に著 しい葛藤関係をも生み出 4-1 9ケ月齢のヒ トに多 く現 よ うに塗 りつぶす とい う1 している.本研究では,生後 1歳か ら 4歳まで蓄積 し れた行動 と似た反応が見 られたほか,モデルの線 をな たビデオ記録について授乳場面を抽出し,①授乳開始 ぞ るとい う,手首の動きの調整をともな う行動がみ ら の合図,②母子接触の開始 と終了時間,①授乳回数,◎ れた. しか し模倣 して,同 じ形を空 白部分に描 くこと 授乳開始 と終了時間,◎授乳終了の合図,◎授乳状況, はなかった.これ らの成果について,第 8回 S AGA シ ⑦アイコンタク トの有無について分析 した.その結果, ンポジウム( 大阪,1 1月) ,および 日本発達心理学会第 発達に伴 う授乳頻度および授乳時間の減少がみ られ, 1 7回大会 ( 福岡,3月)でポスター発表 した. また,生後 2年頃か らは授乳頻度 と母親の生理周期 と の関係性が示唆 された. 39 物体ベースの注意の側面からみた視覚認知の霊長 類的起源 4 1テナガザル類の Y 染色体解析用分子マーカーの作 牛谷智- ( 千葉大 ・文) 輿 対応者 :友永雅己 田口尚弘 ( 高知大 ・院 ・黒潮圏海洋科学) 対応者 :平井啓久 ヒ トでは,純粋に距離の関数で記述 され るような 空間的注意のほかに,オブジェク トを賦活の単位 とす 昨年に引き続き,染色体顕微切断法を使 って,チ るよ うな物体ベースの注意過程があることが知 られて ナガザルの微小 Y 染色体を標的 としたプ ローブの作製, いる.Eg l ye ta l . ( 1 9 9 4)に類似 したパラダイム下で,チ ンパ ンジーにおいても物体ベースの注意がみ られ るか およびクローニングを施行 した.テナガザル Y 染色体 調べた.予備実験では,探索することが求められたタ S H 経で確認する さらにプローブ化 した PCR産物を FI ーゲ ッ トに先行 して呈示 された手がか りが,ターゲ ッ と,テナガザルの微小 Y 染色体全体に分子雑種形成 し か ら顕微切断で得 られた DNA 断片を P CRで増幅 し, トの出現位置を高 く予測す る場合,ターゲッ ト-の反 たので,プローブ作製の成功を確認できた.このプロ 応時間が短 くなることを確認 した.実験 1では,2つの ーブを使って,T Aクローニングを行い,現在 ,5 0以上 長方形をオブジェク トとし,平行に並べて,ターゲッ のクローンを得ている.さらに,これらクローンのシ トが先行手がか りと同 じオブジェク ト内に出現す る場 ークエ ンスは現在進行中であるが,今の ところ解析 し 令,追 うオブジェク トに出現する場合に比べて反応時 たクローンは繰 り返 し配列がほとん どであった.そこ 間が短 くなるか どうか調べた. しか し,スター トキー で,ユニークな配列を持つクローンを得 るために,サ か らの距離の効果が大きいのか,全ての被験体か らは ブ トラクシ ョン法を行なっている. この方法は市販 さ 明確な結果が得 られなかった.実験 2では,できるだ t 1 DNA を利 用す る.まず , ヒ ト れ てい る と、 ト Co けターゲッ トの出現位置がスター トキーか ら等距離に Co t ・ l DNA を化学的にビオチンラベルする ( Ch e ml i n k). なるようにす るため,長方形を水平に配置 した.チン 次に,これを疏微切断で得 られた PCR産物 とハイブ リ パ ンジーの反応時間は,チンパンジーでもオブジェク ダイズ した後,アビジンを付加 したビーズを利用 して, トベースの注意過程が存在することを示唆 していた. 繰 り返 し配列を除 く方法である.この方綾で,ユニー クなシークエンスを分離 し,データベースを構築 して 3・ 1 0チンパ ンジー母子間における「 葛藤」にかんす る 行 く.現在,この方法を使って解析を進めている. 縦断的研究 水野友有 ( 中部学院大 ・人間福祉) 42 テナガザル類の音認知 と発声制御についての実験 対応者 :松沢哲郎 的研究 本研究 は,チ ンパ ンジーにおいて母子間の身体 小田亮 ( 名古屋工業大 ・工学),松本晶子 ( 沖 的 ・心理的距離が多様に変化 してい く過程を行動学的 縄大 ・人文) 観察によって明 らかにす ることを目的 とし,特に,授 対応者 :正高信男 乳場面でみ られ る母子間のコミュニケーシ ョン行動に テナガザルのソングはノー トと呼ばれ る個々の発 着 目した.チンパ ンジーの母子間の相互作用は,必ず 声が組み合わ されて構成 されている.本研究では,3 しも緊密な愛着を示す ものだけではない.逆に,4・5 種類の異なるノー ト間隔をもった ソングを作成 し,こ 歳頃の離乳期を迎えるチンパンジーは,子 どもを自立 れ らをテナガザルに対 して再生 した.再生中と再生後 させ ようとす る母親 と,母親の庇護 をあくまでも求め の行動をFデオに記録 し比較す ることで,テンポの認 -1 01 - され る運びである. ′ 知がどのようになされているのか調べた. 刺激音は伊豆シャポテン公図において飼育されて いるシロテテナガザルのオスが 自然に鳴いた ソングを 録音 し,音声分析 ソフ トウエアを用いて,ノー ト間の 44 霊長類染色体の 3 次元核内配位解析 と分子系統進 化に関する研究 時間間隔をすべて倍に したもの と,半分に したものを 田辺秀之,松井軌 天野美保 ( 総研大 ・先導 作成 した.このようにして作成 した通常のソング ( S), 研 ・生命体) ノー トは同 じだが間隔が倍のもの ( D),そ して間隔が 対応者 :平井啓久 半分のもの ( H)のそれぞれ を,旭山動物園の野外ケー 本研究の目的は,盤長矧 こおける汲色体 レベルで ジにおいて飼育されているシロテテナガザル 4頭 ( オ の転座,逆位な どの進化的な敗色体再配列に関 して, トナメス とその子供 3頭)に対 して再生 した.再生は 間期核の汲色体テ リ トリーの 3次元核内配位か らみた 馴化を避けるために午前中に 1回,午後に 1回の 1日2 生成機構を明らかにす ることを 目指 している.昨年度 回のみ とした.分析対象 としたのは,子供の うち最年 に引き続 き,今年度はマカク系統に若 目し,各種末梢 長のオス ( 5歳)の行動である. 血 リンパ球を材料 としてメタフェイズ典色体のチェッ ソングを再生中と再生後の,同 じ時間のあいだの クを行 うとともに,3D細胞核標本を作製 し,一部の和 移動時間割合を分析 した ところ,S と D に対 しては有 において ミ トコン ドリア DNA の全塩基配列を決定 し 意な差がなかったが,H の場合のみ,再生後に移動時 問が有意に多 くなることが分かった.このことか ら, た.ヒ ト2番染色体短腕 2pおよび長腕 2q特異的 DNA プローブを用いた 3D・ FI SH 法により,作成 した 3D 細 テナガザルは早いテンポの ソングを聞き分けて異なる 胞核標本の うち,まず ヒ ト,チンパ ンジー,ニホンザ 反応をしているとい うことがいえる. ルの 3種での放射状核内配位の比較解析を行った.そ の結果,ニホンザルでは両ホモ ログが互いに近接 して 43霊長類培養細胞株の樹立 いる頻度は低いが,チンパ ンジーでは少な くとも一組 明里宏文 ( 医薬基盤研究所・ 霊長類セ ンタ ー ) のヒ ト2p,2qの両ホモ ログ同士が互いに祐頗皮に近接 する結果 となった.このことよ り,近縁種間での敗色 対応者 :平井啓久 本研究では,He r p e s v i nl SS a i mi r iを用いた独 自の霊 長類機能細胞の不死化技術を応用 して,医科学研究に 体再編成が生 じている領域は,互いに相対核内配位が 汎用されている多様な霊長類由来不死化細胞株ライブ 較種類数を増や し,さらに検討を進める予定である. 近接 している可能性を持つ もの と考えられた.今後比 ラ リーの構築を試みた.その結果,今年度は新たにシ ロクチタマ リン,ヨザル,フサオマキザル由来細胞株 樹立に成功 した.まT =昨年度に樹立 した細胞株につい ては,一定期間 ( ト2ケ月程度)経代 した後細胞変性等 45 アジアに生息す るマカタ叛の免疫応答関連迫伝子 の多型の研究 安波道郎 ( 東京医科歯科大 ・院 ・疾患生命) 異常が認められない事を確認 した上で液体窒素-の複 対応者 :平井啓久 数バイアル保存を実施 した.本研究にて最終的に樹立 マカク属は霊長類の進化学的に興味深い研究対象 された霊長類由来細胞株は 8種であ り,本研究開始以 であるだけでなく,医学生物学の諸領域において ヒ ト 前に樹立済のものと合わせて,l o種 ,31細胞株の樹立 の生理 ・病態をよ り忠実に反映するモデル として有用 に成功 したことか ら,医科学研究に汎用 されている霊 な実験動物である.アカゲザルのサル免疫不全 ウイル 長類由来細胞株 ライブラリーの構築 とい う当初の目的 は達成出来たものと判断 した. ス( SI V) 感汲実験系は HI V の憤性感決か ら A l Dsの発症 に至る過程のモデルであるが,この系において ウイル 本研究成果は,特にここ数年で急激に実験動物 と ス抗原特異的なCD8+T細胞が効率よく誘導 され るか ど してのニーズの高まっている新世界ザル について,そ うかが感決抵抗性の鍵 を握 ってお り,それ には主要組 の付加価値を高める! 糾こ繋がるもの と期待 される.さ 織適合性複合体( MHC) クラス Ⅰ分子の多型が深 く関わ らに,可能な限 り動物実験を減少 させ よ うとする社会 っている.ヒ トでは HLAA, Bおよび C が古典的 MHC 的要約にも合致 していることか ら,非常に貴重な研究 クラス Ⅰ遺伝子であるが,アカゲザルではそれぞれ 用 リソースであると考えられ る. HLAA, Bの相同遺伝子である Ma muA, Bが進化の過程 なお本研究により樹立 された各種霊長類細胞株は 国内の細胞バンクに一括 して寄託 される予定 となって での遺伝子重複により多コピー化 してお り,従来その 多型解析は困難であった.我々は DNA へテ ロ二盃鎖 コ お り,本邦の研究者が利用可能な リソースとして公開 -1 0 2-