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Harーem Ren轟iSSanCe 短縮小説 (3) Cーaude McKayニ永住の地を

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Harーem Ren轟iSSanCe 短縮小説 (3) Cーaude McKayニ永住の地を
HarlemRenaissance短
編 小 説(3)
ClaudeMcKay:永
住 の 地 を求 め て ②
岸本 寿雄
4
"Th
eAgriculturalshow"で
は、BennieはGingerTownで
る こ とを誇 りに思 って い る。 彼 の 兄MathewBrightは
、農 業展 示 会 が行 わ れ
、 小 さな黒 人 の村 の 薬 剤 師 で、
ドラ ッグ ・ス トアー を経 営 、 そ の村 の名 十 とな り、 今 で は重 要 な この農 業展 示 会 の 運
営 を任 され てい る。 マ シュ ー は、 この 展 示 会 を成 功 させ るた め に、 公 式 で は な い が 、
ア フ ロ・メ ソ ジス ト教 会 の黒 人 牧 師 の妻MadamDanielを
役 員 に任 命 す る。彼 女 は積
極 的 に働 き、近 隣 の村 の 女 性 の協 力 を取 り付 け る。 家 畜 の シ ョー が 中 心 で、 竹 細 工 、
バ ナ ナ の マ ッ ト作 り、ロー プ作 り、キ ャ ビネ ッ ト作 り、車 輪 大 工 、ブ リキ屋 、鍛 冶 屋 、
靴 屋 、 鍋 屋 等 が こ の展 示 会 に 参 加 、 ジ ン ジャ ー ・タ ウ ンのNaseberry公
園で開催 さ
れ る こ と とな る。 ベ ニ ー は、 この 展 示 会 の 中 心 的 存 在 の 兄 の活 躍 を 誇 りと し、 兄 に
同 行 す る事 が 楽 しみ で あ る。 兄 の 努 力 で 知 事 も参 加 、 独 身 で あ る が 、 黒 人 にた くさ
ん の子 ど もを生 ませ て い るバ ナ ナ の 大 プ ラ ン ターGlengley家
も展 示 会 に参 加 す る こ
と とな る。 展 示 会 当 日は、 教 区牧 師 、 裁 判 官 、 議 員 、 ジ ンジ ャー ・タウ ンの大 商 人 等
を来 賓 として 迎 え盛 大 に行 わ れ た 。 ベ ニ ー の 家 族 は今 で はそ の 当 時 の 写 真 を見 な が
ら、微 笑 ま し く語 り合 う。
この小 説 で のマ シュ ー はマ ッケ イの 兄 の 姿 を髪 髭 させ る。WayneECooperに
よ
れ ば 、 マ ッケ イの 兄 は学 校 の教 師 を して お り、 年 齢 差 もあ っ た よ うで、 マ ッケ イの
最 初 の 師 と して、 また 兄 と して 大 きな影 響 力 が あ った と推 測 され る。 西 イ ン ドが 背
一13一
景 と な る こ の 小 説 に は 、 こ の 短 編 集 の タ イ ト ル 、 ジ ン ジ ャ ー ・タ ウ ン の 名 が 初 め て 登 場
す る 。 プ ロ ッ トは 良 く な い が 、 後 の 長 編 小 説
『バ ナ ナ ・ボ ト ム 』 の 前 身 と な る 物 語 で あ
る 。RobertA.Boneも"Toamodernsensibility,unacquaintedwiththepastoral
tradition`TheAgriculturalShow'willseemsentimentalfantasジ1)と
指 摘 し て い る。
ロ
℃razyMary"で
は、 か つ て 長 い 間村 の 変 わ り者 と して 受 け 止 め られ て い た メ ア
リー の物 語 で あ る。 メア リー は、 若 い 頃 黄 色 い肌 を した 可 愛 い子 で 、 ジ ン ジ ャー ・タ
ウ ンの 洋 裁 学 校 に3年 間通 い 、 洋 裁 の 資 格 取 得 後 村 に帰 り、 数 少 な い村 の 上 流 階 級
の 人 々 の仲 間入 りを果 たす 。彼 女 は以 前 結 婚 して い た が 今 は独 身 の洋 裁 学 校 の校 長
の下 で 働 くこ と とな った 。 校 長 とメ ア リー は仲 良 くな り、 村 人 か らも公 認 の 関係 と
な る。
あ る 日校 長 は生 徒 のFreshyか
ら、 処 女 を奪 わ れ た と村 で 公 表 され る。 校 長 は身 の
潔 白 を証 明 し よう と した が 、村 は二 分 され 、 高 齢 者 は校 長 を 支 持 、 若 い 層 の村 人 は
フ レ シー に味 方 す る。 メ ア リー は校 長 を救 お うと、 フ レシー に会 い、 「校 長 は彼 女 と
そ の よ うな問 題 を起 こ して い ない 」こ とを告 白 させ るの に成 功 す る。 メ ア リー は、 教
会 の 会 合 で そ の 事 を発 表 す るが 、 逆 に フ レ シー の 母 親 か ら 「メ ア リー は、 校 長 の 情
婦 で あ る」と逆 に告 発 され る。
そ の 後 、 校 長 は村 を去 り、 メ ア リー も一・
時 村 を追 わ れ た が 、 村 の 家 に帰 り其 処 に
閉 じこ もっ て しま う。そ の 後 メ ア リー は、精 神 的 に少 し異 常 が 見 られ 、花 を摘 ん で は、
学 校 の 校 長 の 机 に花 を飾 り、 時 に は 素 足 で村 を歩 き、 赤 い花 を集 め る姿 が 目撃 され
る。実 害 が な か っ た の で村 人 の 中 に、メ ア リー を病 院へ 送 ろ う と言 い 出 す 者 は無 か っ
た。
あ る 日、 パ ナ マ の コロ ンに逃 げ てい た あ の校 長 が 、新 しい妻 を連 れ て村 の教 会 に
や って きた。 メ ァ リー は、 教 会 に 行 き花 束 を校 長 に投 げ つ け、 好 色 な 笑 い を浮 か べ
な が ら、 教 会 の 階 段 を登 り外 に 出 た 。村 人 が 彼 女 を捕 まえ よう と した が、 彼 女 は巧
み に逃 げ 、終 に 滝 の あ る崖 に まで登 り、其 処 で止 ま り、高 笑 い を して滝 に飛 び 込 ん だ。
扱 い方 に よ り、 この 西 イ ン ドの ジ ャマ イ カの背 景 は 、 ハ ー ス トン流 の 民 話 的 物 語
に展 開 で きた の だ が 、 マ ッケ イ は、 単 調 にメ ア リー の 物 語 を描 い て い る。RobertA.
Boneに
従 え ば 、"apoeticvision,anexpressionofaninnerneed"2)で
一14一
あ る の だが 、
背 景 の み が 浮 か び 上 が る"sentimentalfantasy"と
言 え まいか 。
"Wh
enIPoundedthePavement"で
は、主 人 公 は警 察官 で 、内 勤 の た め事 件 を扱 っ
た 事 が な い こ とが 自分 の 誇 りで あ っ た。 あ る 日、 彼 は 、 警 部 の レクチ ャー に 参 加 せ
ざ る を得 な くな る。 ア イル ラ ン ド警 察 か ら出世 し、 この ジ ャマ イ カに送 り込 まれ た そ
の警 部 は、植 民 地 人 の 間 で は、そ の貴 族 的 態 度 で好 感 が もた れ たが 、警 察 内 部 で は、
嫌 わ れ て い た。 そ の警 部 は、 話 の 中 で 、 現 場 で事 件 を扱 っ た こ との 無 い警 官 の挙 手
を求 め 、 主 人 公 もそ の 中 の0人
で あ る。 有 る意 味 で は 「現 場 の担 当 が無 い」こ とは、
署 内 で は 、 笑 い の 種 に な っ て い た が 、 現 実 の 問 題 と して、 事 務 職 、 上 官 付 き警 官 、
音 楽 隊 員 は 、 ほ とん ど現 場 の事 件 に 関 わ っ た事 が 無 か った 。 警 部 は、 この様 な現 場
の 経 験 の 無 い警 察 官 が 好 きで な い ら し く、 全 て の警 官 に、 現 場 の 事 件 を扱 うこ とを
指 示 す る。
主 人公 の 「私 」もパ トロー ル を担 当 した が 、幸 か 不 幸 か 事 件 に め ぐ り合 わ なか っ た。
あ る午 後 、福 祉 局 の役 人 宅 の 警 護 の任 務 に着 く。夜 中 に役 人 宅 に侵 入 す る者 を逮 捕
す る事 が そ の任 務 で あ った 。 当 時 の風 習 と して 、 ア ウ ト・
ハ ウス に は黒 人 の召 使 た ち
が 寝 起 き して お り、 召 使 の 恋 人 が 夜 中 に や っ て 来 る こ とは 良 くあ る こ とで あ っ た。
私 と役 人 と、 そ の妻 は夜 を徹 して 見 張 った が 、 侵 入 す る もの は無 か った 。 だ が 男 は
夕 方 の よ り早 い 時 刻 に侵 入 して い た 事 が 推 測 され 、 私 と役 人 は ア ウ ト・ハ ウス に 踏 み
込 み 、 検 査 す る と、 裸 の 男 女 が 確 認 され 、 そ の 男 を逮 捕 す る こ とに な る。 そ の 男 の
父 親 は不 動 産 で 財 産 を作 り、 息 子 の そ の 男 は、 議 員 に 立 候 補 す る予 定 で あ っ たが 、
そ の 事 件 の た め に立 候 補 を取 りや め る こ と となる。 この物 語 は"Itwasmyfirstand
lastcase.BeforeIcouldmakeanotherImanagedtoobtainmydischargefromthe
constabularジ3)で
終 わ っ て い る。
マ ッ ケ イ に は 、 ジ ャ マ イ カ 時 代 にWalterJeky11(??一??〉
たConstabBallads(1912、23歳)と
の 指 導 と援 助 の 下 出 版 し
い う方 言 詩 が あ る 。 当 時 短 い 期 間 で は あ っ た が 、
首 都 で 警 察 官 を 勤 め た こ と が あ り、 こ の 物 語 は マ ッ ケ イ 自 信 の 体 験 で も あ る 。 マ ッ
ケ イ はそ の 方 言 詩 の序 で 、 次 の よ うに語 っ て い る。
...itismisfortunetohaveamostimpropersympathywithwrongdoers.1
一15一
ccn
thereforenever"madecases,"butturning,likeNelson,ablindeyetodo
whatitwasmymanifestdutytosee,triedtomakepeace,whichseemedto
mebetter."4)
"Th
eStrangeBurialofSue"に
お い て 、TumerSueは
、 所 謂"marketwoman"の
娘 で、例 に よって彼 女 の 父 親 は不 明 で あ った が 、母 親 と同 じ道 を辿 りマ ー ケ ッ ト・ウー
マ ンとな り、 自由 な生 活 を して い るが 、村 人 の 考 え で は 、 良 い 女 性 で 、 ジ ンジ ャー ・
タ ウ ンの 良 家 の 農 民 の た め に、 週2回 買 い 物 に出 か け て い る。Burskinは
、狂 った獣
の よ うな男 で、 か つ て 銅 を商 う店 の丁 稚 だ っ たが 続 か ず 、 現 在 父 親 の 農 業 を手 伝 っ
て い る。 栗 色 を した この 男 は、 遊 び 人 で は な いが 、 口 が 重 く、 真 面 目が 過 ぎる。 何
時 もス ー と言 い 争 ろて は 、完 全 に打 ち の め され て い る。
ター ナ ー家 の 隣 にあ るバ ー ス キ ンの 畑 に は、 シ ュガ ー ・ミル が 無 い た め、 ター ナ._
家 の ミル を借 りて い る。 其 れ が 縁 で バ ー ス キ ンは、 ス ー と知 り合 い、 ター ナ ー 家 の
畑 仕 事 を手 伝 うこ とか ら信 頼 され 、今 で はス ー と一 緒 に砂 糖 キ ビ運 搬 まで して い る。
ス ー は ター ナ ー 氏 と結 婚 、 生 活 も安 定 し、 村 の病 人 の 世 話 をす るた め に、村 人 か ら
好 か れ て い る。 真 面 目人 間 の バ ー ス キ ンに は 、 ス ー との 出 会 い に よ り、 人 生 が 楽 し
い もの とな る。
あ る日、 パ ナマ か らアメ リカ ン ・ス タイル の 金 時 計 、 金 の指 輪 を したJohnnyCross
が 村 に現 れ 、 バ ー ス キ ン とス ー の仲 を引 き裂 く。 ス ー は ク ロ ス に心 を引 か れ 、 バ ー
ス キ ンを相 手 に しな くな る。 一・
方 ス ー の 夫 ター ナ ー 氏 は、 ス..__.の
言 葉 を信 じ、 バ ー
ス キ ンの 話 も聞 か ず 、バ ー ス キ ンと絶 交 す る。更 にス ー は あ らゆ る手 段 を講 じ、バ ー
ス キ ンを排 除 し、 終 に彼 に傷 を負 わ せ る。 ス ー の 言 葉 を信 じる ター ナ ー氏 は 、 逆 に
バ ー ス キ ンを裁 判 に か け よう とす るが 、 先 手 を打 ちバ ー ス キ ンが ス ー を襲 撃 と傷 害
で告 訴 す る。厳 格 で何 時 も 自己 を正 当化 す る村 の 若 い 牧 師 は、 スー の 行 為 を認 めず 、
教 会 か ら追放 す る。
ス ー は あ る 日、 仕 事 の最 中 に動 け な くな る。 村 人 は ス ー の 家 に 集 ま り、 助 言 を し
た り、 援 助 を 申 し出 た が 、 そ の 甲 斐 も無 くス ー は、 苦 しみ な が らこの 世 を去 る。 だ
が 彼 女 の 死 は、 彼 女 の村 で の 人 気 を 高 め る結 果 とな る。 だ が 村 の 牧 師 は、 彼 女 の た
一一16一
め の 教 会 で の 礼 拝 を 拒 否 、 墓 地 で の 説 教 で は 、"OGod!She'sgonetohell.Deadin
sinandgonetohelLSueTumerisgonetohe1L"5)と
大声 で叫 ぶ。 それ に反 抗 す る
タ ー ナ ー 氏 は 、 牧 師 に 近 づ き 、"Suenogoneanohell."6)と
、 こ ぶ し を 振 りか ざ し 、
両 者 の 激 し い 対 立 が 次 の よ う に 続 く。"Thepreachercried,`Sinners,repent!'But
Tunercried:`Younogwinaholdnorevivalmeetingovahmahwifegrave.Gwan
away.Iwi'burymahwifemahself'"7)牧
師 が 去 る と、 ス ー に 味 方 す る村 人 が 、ス ー
に 対 して 感 謝 の 言 葉 を述 べ る 。 棺 が 土 の 中 に 埋 め ら れ る と 、 バ ー ス キ ンが そ の 側 で 、
赤 子 の よ う に 泣 き じ ゃ く る 。 土 が か け ら れ 、"Lord,lettethnowthyservantdepart
inpeace."8)と
ター ナ ー 氏 が 、 手 を 広 げ て 祈 る 。
こ の 短 編 は 、Gingertownの
中 で は 、 筋 立 て 、 内 容 、 形 式 が 見 事 に 一・
致 した 作 品
と な っ て い る 。 ス ー と バ ー ス キ ン の 楽 し い 田 園 で の 日 々 。 金 ぴ か の ア メ リ カ ン ・ス タ
・fル の 男 の 登 場 、 最 後 の 牧 師 と タ ー ナ ー 氏 の 争 い と 村 人 の 援 助 。 テ ン シ ョ ン と コ ン
フ リ ク トが そ の フ ォ ー ク 的 題 材 と う ま くか み 合 っ て 感 動 を 高 め て い る 。
5
最 後 の2編 は、 これ まで の10編
物 語4編
、即 ち最 初 の ハ ー レム の物 語6編 、 ジ ャマ イ カ の
と は異 な って い る。 最 初 の6編 は 既 に 書 か れ て い た もの か 、 或 い は既 に 出
版 され た もの で あ り、 次 の4編 は ア フ リカの タ ンザ ニ アで 、 故 郷 ジ ャマ イ カを思 い 出
しなが ら書 か れ た物 で あ る こ とが 推 測 で きる。最 後 の2編 の内1編 は、舞 台 を ヨー ロ ッ
パ 、 多 分 フ ラ ンス の マ ル セ イユ に 置 き、 最 後 の1編 は 当 時 マ ッケ イが 滞 在 して い た
タ ンザ ニ ア を題 材 に して い る。
"Ni
ggerLover"の
主 人 公 は、 黒 人 で は な く、 港 町 の 河 岸 の 酒 場 で、 黒 い 色 を し
た ピァ ノ を演 奏 す る年 老 い た 白人 女 性 のNiggerLoverの
物 語 で あ る。彼 女 の顔 はV
字 の よ うに鋭 く、 額 は張 り出 て 美 人 で は な いが 、 際 立 っ た 人 で あ る。 彼 女 は黒 人 か
ら崇 拝 され て い た た め に"NiggerLover"と
呼 ば れ 、 黒 人 に 対 して は母 親 の よ うに
振 舞 った 。
彼 女 は まだ 若 い 頃 この 港 町 に や って 来 て、 当 時 は農 村 の よ うに寂 れ て い る この 酒
場 で仕 事 を続 け、 村 が 開 け る と酒 場 の エ ン ター テ イナ ー とな っ た。 彼 女 の 給 料 は、
一17一
一 杯 の ワイ ン とサ ン ドイ ッチ だ け だ った が 、 客 か らの チ ップ を胸 に 、何 時 の 日か 金
持 ち の人 に 出 会 え る夢 で 生 活 を続 け た。
これ まで 彼 女 は黒 人 と寝 た 経 験 は無 か った が 、 生 活 の た め に3人 の黒 人 客 の 内 背
の高 い 黒 人 と一 夜 を共 に した。 彼 女 は 他 の 女 性 の よ うに金 を要 求 す る 事 が 出 来 ず 、
半 ば 金 を諦 め て い た 。 彼 女 は疲 労 の ため に熟 睡 して しまい 、 黒 人 の 客 が 起 きて帰 っ
て しま った こ とに気 付 か なか っ た。 あ た りに金 は見 つ か らず 、 彼 女 は 「や られ た!」
と思 った 。 彼 女 を守 っ て くれ る男 に報 告 す れ ば、 彼 女 が そ の 責 め を 受 け る事 は は っ
き りして い た 。 彼 女 は家 賃 の こ とを考 え 途 方 に くれ る。 彼 女 が 帽 子 を か ぶ ろ う と帽
子 を掴 ん だ 時 、 帽 子 の下 か ら黒 人 が 支 払 っ た金 が 現 れ 、 彼 女 の 守 り手 へ の謝 礼 、 家
賃 を も支 払 う ことが 出 来 た 。 そ れ 以 来彼 女 は"NiggerLover"と
マ ッケ イの 第 二 作 目の 長 編 小 説Banjo(1929)を
成 った 。
書 い た 時 期 の 副 産 物 か、 或 い は
この 短 編 は タ ン ジー ル で 書 いた こ とか ら、 気 に掛 か っ て い た マ ル セ イユ で の 題 材 の
一 つ で あ った の か も しれ な い 。 当 時 あ ま り歓 迎 され なか っ た 黒 人 の船 員、 これ も ま
た 珍 しい黒 人 贔屓 の 白人 女 性 の想 い が 、 河 岸 を背 景 に深 く悲 し く滲 ん で くる。
"Littl
eShexk"は"MoorishLimerick"と
い う次 の 詩 で始 まる。
FortherewasanAmericanmiss
WhodreamedofanAfricankiss,
Butherlittlebrown㎞ight
Didnotknowhowhemight
Sounrealizedwasherbliss.9}
ア メ リ カの 娘 ミス は 、 金 持 ち とか 上 流 社 会 の 人 間 で は な い が 、 現 在 タ ンザ ニ ア に 来
て い る。 早 朝 ホ テ ル を抜 け 出 し、 ス ー プや 小 麦 の ケ ー キが 売 られ て い る 人 の 集 ま る
場 所 に 出 か け る。 彼 女 は、 そ の街 を夢 の よ うに楽 しむ気 分 で 、 流 れ る よ うに歩 い て
い る。 不 思 議 に も同 じ場 所 を 回 っ て い る ら し く、何 時 も同 じ泉 に た ど り着 く。 其 処
に泉 の魅 力 に取 り付 か れ て い る ほっ そ りと した 現 地 の 青 年 を見 つ け る。
彼 女 は心 の 中 で 彼 を"prettyshiek"と
呼 び 、 彼 に接 触 し、首 尾 よ く褐 色 で 褐 色 の
一1$一
光 る ロ ー ブ を着 た 若 いlittleshiekと 仲 良 くな る。 彼 は彼 女 に町 を ガ イ ドす る こ とを
申 し出 る。 二 人 が 宮 殿 、 寺 院、 美 しい モ ザ イ クで 飾 られ た泉 を まわ るに つ れ て、 彼
女 は彼 の こ とを"perfectbarbaricflower"と
感 じる ように な り、 わ くわ くしなが ら回
りくね っ た 道 を歩 き続 け る。 ベ ー ル を した女 性 や 壁 眼 を 見 なが ら、 終 に は女 性 禁 制
の 大 学 構 内 を 見 学 した 。彼 と別 れ た 後 ム ー ア 人 の 案 内 人 の ガ イ ドで ホ テ ル に た ど り
着 く。
彼 の 事 が 忘 れ られ な い彼 女 は、 彼 と別 れ、 ム ー ア人 の 案 内人 に 出会 った場 所 に行
く。 彼 女 が 彼 の 所 在 を尋 ね る とそ の ムー ア 人 は 「彼 は免 許 が 無 い の に ガ イ ドを した
こ と、 女 人 禁 制 の 大 学 構 内 に入 った 罪 に よ り刑 務 所 に い る。」と言 う。彼 女 は悲 し く
な り、 そ の 日の 内 に、 こ の魅 力 あ る町 を去 るが 、 このlittlesheikの 物 語 は、 数 々 に
詩 の 中で 語 られ て い る と言 う。
この 物 語 に採 用 され て い る詩 が 、 元 々 タ ンジー ル に有 っ た か ど うか は定 か で は な
い 。 だ が この 頃 ア メ リカ黒 人 女 性 で、 マ ッケ イが パ リで 親 しか ったAnitaThompson
が マ ッケ イ を頼 って タ ンジー ル に来 て い た こ とは確 か で あ る。 トラブ ル が 生 じ、マ ッ
ケ イが 山 の 中 に こ もる以 前 の短 期 間.___..人
は楽 しい 生 活 を送 っ た。 そ の 楽 しか っ た 頃
の 印 象 が この 短 編 に加 味 され て い る の で は なか ろ うか 。 ア メ リカ黒 人 女 性 と現 地 の
若 者 の 淡 い恋 が、 タン ジー ル の 町 とムー ア人 を背 景 に見 事 に描 か れ て い る。
s
マ ッ ケ イ の"HighBall"を
史 は 、StephenH.Bxonz氏
高 く評 価 し 、 そ の 論 評 に 力 を 入 れ たMargaretPerry女
の マ ッケ イ に 関 す る論 評 を 批 判 し な が ら次 の よ う に 論 じ
て い る。
QnecriticcharacterizedtheHarlemstoriesInClaudeMcKay'sshortstory
り
collection,Gingertown,asbeing"onaverylowlevel"whereastheJamaican
cc
talesweredescribedas"moreexoticandmoreplausible."TheHarlem
stories,however,havevigorderiving,perhaps,fromthesordidnessoftheir
settingandtheirplots.10}
一19-一
ヲ
ジ
前 述 の よ う に 、 ペ リ ー 女 史 は ハ,_.._.レ
ム の 物 語 を 擁 護 し て い る が 、 一・
方Harlemistの
一 人RudolpfFisherは
、 マ ッ ケ イ の 物 語 に は 、 ハ ー レ ム で の 言 葉 使 に 誤 りが あ る こ
と を 指 摘 し て い る 。 更 にRobertA.Boneは
、 次 の よ うに 評 し て い る 。
ThefixsthalfofGingertown,inshort,ispartofanowfamiliarliteratureof
extrication,whoseaimistoliberatetheblacksfrompsychological
enslavementtoafalseculturalideal.Unfortunatelytheliteraryqualityof
McKay'sHarlemstoriesisnohigh.Theirawkwardnessofstyle,whichis
especiallypronouncedinthedialogue,suggeststhattheformerpoet,in
shiftinghismajoremphasistoprose,hasnotyetmasteredhisnew
medium."
RobertA.Boneの
マ ッ ケ イ に 対 す る"Theirawkwardnessofstyle"、"hasnot
yetmasteredhisnewmedium"と
で 、1926年
Gingertownの
或 い は27年
の 批 評 は 、 厳 しす ぎ る 観 が あ る 。 だ が 、 あ る 意 味
の ル ネ サ ンス 最 盛 期 に は 喜 ば れ た 題 材 で あ っ た が 、
出 版 さ れ た1932年
と言 う 時 代 を 考 え る と、 時 代 錯 誤 の 観 は 免 れ な い 。
確 か に ア メ リ カ 黒 人 の ア メ リ カ 社 会 に お け るdoubleconsciousnessは
、DuBoisの
指
摘 以 来 、 古 い 問 題 で あ り、 ま た 当 時 の 共 通 テ ー マ で あ っ た が 、 大 不 況 後 の ア メ リ カ
に お い て は 、 興 味 を そ そ る 問 題 で は な か っ た 。更 に 、 当 時 金 銭 に 事 欠 い て い た マ ッ
ケ イ に とっ て は 、昔 の ネ タ は 、 出 版 へ の 安 易 な 解 決 法 で あ っ た の か も し れ な い 。 マ ッ
ケ イ は ア メ リ カ か ら 年 月 も 距 離 も 遠 ざ か り、 彼 の 出 版 の 意 味 を 理 解 し が た い 状 況 に
あ っ た の で あ ろ う。
カ リ ブ の 物 語 は エ キ ゾ チ ッ ク で 新 鮮 さ が あ っ た 。EricWalround(1898-1966)が
TropicDeathに
期 の1926年
お い て 魅 力 あ る カ リブ の 島 々 の 物 語 を書 い た の は、 ル ネサ ンス全 盛
で あ った 。 だが マ ッケ イが この 短 編 集 を出 版 した の は、 ア メ リカ の経 済
に と っ て 最 悪 の 時 で あ り、 読 者 に と っ て は そ の よ う な 物 を 読 む ゆ と り さ え な か っ た 。
そ の 中 で も 時 代 背 景 は さ て 置 き 、 カ リ ブ の 物 語 は 文 学 的 に も優 れ て い る と 思 わ れ る 。
特 に"TheStrangeBurialofSue"に
お い て は 、marketwomanと
一20一
い うフ ォー ク 的 な
人 物 の 生 き方 、 彼 女 の死 を通 して の カ トリ ック牧 師 との対 立 は 生 き生 きと描 か れ て
い る。 これ に対 して前 述 のRobertA.Boneは
厳 しい批 評 を下 して い る。
TodescribetheRattierhalfofGingertownasMcKay's"JamaicanTales"is
onlyanapproximation.Twooftheweakerstories,ulViggerLover"and
"Littl
eSheik,"haveMediterraneanratherthanCaribbeansettings.12}
そ の他 の 研 究 家 、 批 評 家 も カ リブ の物 語 を評 価 す る ど ころ か 、 取 り上 げ る こ とさ え
して い な い。 だ が この 短 編 集 の 前 半 の 初 期 習 作 の 物 語 よ り、 題 材 と して も、 テ ー マ
と して も、 更 に技 術 面 に お い て も向上 して い る とい え まい か 。
梅 毒 で の 発 作 、 ス ピロへ 一 タの感 染 の恐 怖 、 さ らに金 銭 的不 安 が 付 きま とって い た
マ ッケ イは、1933年12月
タン ジー ル を発 ち、 最終 の 地 ニ ュー ヨー クに 向か った。 彼 が
長 い放 浪 の 果 て に 再 び ア メ リカの地 を踏 ん だ の は1934年2月
の こ とで あ る。 彼 が 目に
した もの は大 恐 慌 後 の 変 わ り果 て た ア メ リカと、 ハ ー レム ・ル ネサ ンス の 終 焉 で あ っ
た。彼 を待 ち受 けて い た物 は、更 な る困苦 、 病 苦 と人 間関係 の 苦 しみ であ った 。
最 初 は ア ル コー ル 中 毒 患 者 再 生 施 設 、 次 に 生 活 苦 、 恋 、 彼 の 自伝ALongway
fromHomeに
よれ ば,人 間 関係 の 問 題 、 ア メ リカ ・コ ミュ ニ ス トとの 論 争 、 カ トリ ッ
クへ の改 宗 等 様 々 な問 題 が 重 な った 。1948年5月22日
永 住 の地 を求 め 続 け た クロ ー
ド ・マ ッケ イ は、 心 臓 疾 患 に よ り59歳 で 、 シ カゴ で この 世 を去 った 。
マ ッケ イがCarlVanVechtenに
出 会 った の は、 彼 の 自伝 に よれ ば1929年
於 いてであった。
Whenwemetatthatlatehouratthecelebratedrendezvousoftheworld's
cosmopolites,Mr.VanVechtenwasfullandfunny.Hesaid"Whatwillyou
take?"ItookasoftdrinkandIcouldfeesthatMr.VanVechtenwasshocked.
IamafraidthatasasoftdrinkerIboredhim.Thewhiteauthorandthe
blackauthorofbooksaboutHaremcouldnotfindmuchofanythingto
makeconversation.Themarkettruckswererollingbyloadedwith
一21-一
、 パ リに
vegetablesforLesHalles,andsuddenlyMr.VanVechten,pointingtoa
truck-loadofhugecarrots,exclaimed,"HowIcouldliketohaveallof
them!"Perhapscarrotsweremoreinterestingthanconversation.ButIdid
notfeelinanywaycarroty...Butheexcusedhimselftogothemen'sroom
andnevercameback.13)
そ の 後 ヴ ァ ン ・ヴ ェ ク テ ン は"hewassorryfornotreturning,buthewass6highthat,
afterleavingus,hediscoveredhimselfrunningalongtheavenueafteratruckload
ofcarrots."14)と
の メ セ ー ジ を マ ッ ケ イ に 送 っ て き た と の 事 。 ユ ニ,___.ク な 出 会 い を し
た マ ッ ケ イ と ヴ ァ ン ・ヴ ェ ク テ ン 、 そ し て"Mr.VanVechtennotabitpatronizing,and
quiteallright"15)と
、 ヴ ァ ン ・ヴ ェ ク テ ン へ の
「黒 人 の パ ト ロ ン 」 の 批 判 が 収 ま っ た
頃 で は あ る が ヴ ァ ン ・ヴ ェ ク テ ン を 擁 護 し て い る こ と は 二 人 の 関 係 を 十 二 分 に 証 明 し
て い る 。 ヴ ァ ン ・ヴ ェ ク テ ン は マ ッ ケ イ の 葬 儀 に お い て 棺 を 担 い だ 内 の 一 人 で あ る 。
NOTES
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1
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3 )
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6 )
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9
theEndoftheHarlemRenaissance,G.P.Putman'sSon,NewYork,1975,p.169.
Ibid.,p.168.
ClaudeMcKay,Gingertown,AyerCompanyPublisher,-NC.NewHampshire,1991,ript.,p.220.
ClaudeMcKay,TheDialectpoetfッofClaudeル
π 漁y,AyerCompanyPublisher,1987,ript,p.7.
ClaudeMcKay,Gingertown,ibid,p.244-.
Ibid.,
Ibid.,pp.244-245.
Ibid.,p.246.
Ibid.,260.
10)MargaretPerry,SilencetotheDrums:ASurveyoftheLiteratureoftheHarlemRenaissance,
GreenwoodPress,WestportConn.,1976p.12$
T1)RobertA.Bone,ibid.,p.165.
12)Ibid.,167.
13)ClaudeMcKay,ALongWayfromHome,HarcourtBrace&World,rnnc.NY.,1970p.320.
14)Ibid.,320.
15)Ibid.;319.
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