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第2章 市の特性と背景(PDFファイル)

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第2章 市の特性と背景(PDFファイル)
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第2章 市の特性と背景
第1節 市の概況と特性
(1)位置・地勢と沿革
高島市(以下「本市」という)は、滋賀県の北西部に位置し、総面積は約 511.36k㎡、
総人口は 53,950 人(平成17年10月1日現在、国勢調査)を擁しています。本市の東
部は琵琶湖に、南西部は比良山地を境に大津市および京都府に、北西部は野坂山地を境に
福井県に接しています。冬季の寒さは厳しく、積雪量の多い日本海型気候となっています。
また、晩秋には「高島しぐれ」と呼ばれる降雨がしばしばあります。
本市では、縄文時代の土器や石器が各地で出土し、特に北仰西海道遺跡では、縄文時代
の墓が見つかり、往時の縄文人の姿を想像することができます。日本列島で稲作が普及す
る弥生時代には、稲作に適した低湿地で(現在は湖底にある針江浜遺跡)いち早く集落が
営まれています。また、当時には珍しい丘陵上に熊野本高地性集落が出現し、大変貴重な
鉄器が多数出土しています。
古墳時代には、継体天皇擁立に深く関わったと言われる三尾氏との関係が推測される田
中古墳群や鴨稲荷山古墳、鉄生産集団との関係が考えられる北牧野古墳群などが築かれま
した。
本市は、古来より京・奈良の都と北陸を結ぶ交通の要衝として栄えました。市内には、南
北に縦断する北陸道(後の西近江路・北国海道)のほか、敦賀をつなぐ七里半街道、小浜
をつなぐ九里半街道、京都をつなぐ若狭街道などの主要な道が通っています。若狭街道は、
古くから一塩物の魚の輸送路として知られ、近年、「鯖街道」とも呼ばれています。
これらの陸路と湖路の拠点には、港町や宿場町が栄えてきました。古くは木津、勝野津
の名が見られ、近世には海津、今津が塩津とともに湖北三港として発展しました。
また、本市は古くから勤勉、誠実を重んじる人を育ててきた土地柄です。江戸時代には、
*
独自の心学を形成し、日本における陽明学の祖と呼ばれた近江聖人中江藤樹や高島商人等
**
多くの人材を輩出しています。藤樹先生は、「人はみな『良知』という美しい心を持って生
まれているので、それをいつも磨き、美しい心に従って行動する」ことを説き、自らも実
践されました。この地域の人々は、こうした教えを大切にし、日々周りのすべてに思いや
りの心をもって接することで高島の地を築き上げてきています。
(2)交通
本市の幹線道路は、国道161号、303号、367号が通っています。国道161号
は、京阪神地域と北陸地域を結び、国道367号は本市と大津市・京都市、国道303号
は滋賀県湖北地域と福井県若狭町を結んでいます。また、主要地方道として県道小浜朽木
高島線、太田安井川線および海津今津線などが通っているほか、琵琶湖岸を周遊する湖周
道路などの一般県道や市道があり、地域内外を結ぶ役割を担っています。
国道161号については、バイパス道路の一部共用化と平成17年8月からの湖西道路
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
*
中江藤樹
(1608−1648)日本陽明学の祖といわれ、後に近江聖人として称えられた。本市
安曇川町上小川で生まれ、人を思いやり、親を大切にすることを説き、自らも実践した。
**
良知
陽明学の実践法の 1 つ「致良知」において、自らの行動を導く心の意。
- 5 -
の無料化により、京阪神方面への利便性が大幅に向上しています。また、福井県小浜市か
ら敦賀市にかけては、近畿自動車道敦賀線の整備による北陸自動車道との連結の計画があ
り、国道161号、303号が、今後より一層、北陸地域や中京地域との連携強化に大き
な役割を果たすことが見込まれます。
鉄道は、昭和49年のJR(当時国鉄)湖西線開通以来、市内の駅で1日当たり平均
15,000 人が利用され、市民や本市を訪れる人々の交通手段として重要な役割を果たして
います。特に新快速電車の運行は、本市と京阪神地域との時間距離を大幅に短縮しました。
*
平成18年秋には北陸本線長浜駅から湖西線永原駅間の直流化が実現し、北陸地域や湖北・
中京地域との連携の基盤が整いました。
バス交通は、JRバス、江若バス、湖国バス、京都バス、近江バスが運行されています
が、市内の自動車保有台数が 41,000 台を超えるなど自家用車の利用増加に伴いバス利用
者は減少しています。そのため、多くのバス路線は、高齢社会に対応した地域内連絡機能
を図るための自主運行バスとなっています。
今後、通勤・通学の利便性向上による定住人口の確保、豊かな自然環境を活かした交流
人口の増加、市内移動手段の確保などのためにJR湖西線の増便と市内バス交通などとの
交通ネットワークの充実が求められています。
(3)本市の特性と主な地域資源
本市は前述のとおり古来から交通の要衝として栄
えてきたことから、鴨稲荷山古墳、清水山城館跡、白
鬚神社など多数の文化遺産に恵まれています。
また、中江藤樹先生など著名な学者、文人を輩出す
るとともに、その功績を今に伝え、先人の教えを実践
しようとする人材を育む風土があります。
さらに、エネルギーや食糧生産の源となる広大な山
白鬚神社
林、田畑、川、湖を有する本市には恵まれた自然環境
と暮らしを結びつけてきた人々の知恵や技術が数多
く存在し、親から子・孫へと受け継がれてきました。
こうした暮らしの中で築かれてきた自然環境や文
化的資源は、引き続き次世代につなげていく必要があ
りますが、生活様式や価値観の多様化などからこれら
を伝える人や技術、貴重な資源が、年々失われてきて
います。
新旭町針江の川端(かばた)
これらの地域資源を次世代に引き継いでいくには、
これまでこの地域が培ってきた数多くの知恵や技術に目を向け、隠れてしまっている資源
を掘り起こしていく必要があります。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
*
直流化 JR北陸本線長浜駅・JR湖西線永原駅間の交流電化区間を直流化し、琵琶湖の周囲を
環状運行する鉄道網を形成する。一般的に「琵琶湖環状線」と呼んでいる。
- 6 -
第2節
社会の潮流と市の現状
(1)人権の実現
「人権の世紀」とも言われる21世紀を迎え、国際的に人権問題への取り組みが重要な課
題となっています。国内では、平成12年に「人権教育および人権啓発の推進に関する法律」
が制定され、平成14年には、同法に基づき「人権教育・啓発に関する基本計画」が策定され
ました。
全ての人は、みなかけがえのない存在であり、誰もが個性や能力を発揮し、生き生きと
輝いて生活できる社会を築くことが必要です。
女性・子ども・高齢者・障がい者・外国籍住民・傷病者など社会的に弱い立場にある人
の人権が損なわれることのないように努めるとともに、人権を侵害された人を救済してい
くなど、一人ひとりの人権の実現を図っていく必要があります。
しかし、残念なことに本市では、平成18年7月に児童虐待によって尊い命が奪われる
事件が起こりました。家庭や地域、行政のつながりを活かすことが出来なかったことを再
検証するとともに、子どもをはじめとする社会的に弱い立場の人たちの命と権利を大切に
する気運をまちぐるみで醸成していくことが必要です。
現在、本市では全ての市民の人権を擁護し、安心して暮らせるために、「(仮称)人権条
例」の策定を進めています。
(2)新しい公共空間の創造
近年、自治会活動によるまちづくりなどに加え、行
*
政を介さない自発的な取り組みとしてNPO の立ち
上げが活発に行われています。
市民と行政との協働による地域運営は、地域の問題
(課題)解決のために市民・NPO・事業者等の英知
と実行力を行政とともに出し合うことです。そのこと
まちづくり団体などの情報交換を行う、まちづ
くり交流会の様子
は、住民の自己決定を拡充することになり、同時に、
行政のスリム化という効果も期待できます。
新しいまちづくりを進めていくためには、積極的な
情報公開のもと、市民の視点でまちづくりを考えてい
くことが必要です。また、地域の活力を取り戻すため
には、市民の創造力をどう活かすかが課題でもありま
す。このため、合併前の旧町村の区域ごとにまちづく
**
り委員会(高島版地域自治組織)を設置し、合併前の まちづくり委員会の魅力ある地域づくり事業
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
*
NPO
民間非営利組織。利潤追求や利益配分を行わず、自主的・自発的に活動する営利を目的と
しない組織・団体の総称。Non Profit Organization の略語。ボランティア団体、市民活
動団体を含む。
**
まちづくり委員会
市民と行政がともに考え、個性ある地域を創造するために、各支所と協働し
て魅力あるまちづくりを推進するための機関。住民主体の持続的なまちづくりにシフトするた
め、自立した個人・地域・行政が相互に補完し合う関係を保ちつつ、地域の身近な問題は地域で
解決するという基本原則のもとに、事業検討から執行までを行うしくみ(財源と権限の委譲)。
- 7 -
地域の特性を活かした活動やその地域独自のまちづくりを進めています。
本市には195の区や自治会が組織され、各地域において快適な生活環境を守るための
活動や地域における支え合いが展開されています。また、それ以外にもNPOやまちづく
りに関連する団体など、市内には100を超える団体がそれぞれの活動を展開しています。
これらの活動が連携し、より発展するには、各地域における自主的なまちづくり活動や各
種団体によるそれぞれの課題解決に向けた取り組みなどを応援する体制を整え、様々な分
野で市民と行政との協働を推進していく必要があります。
(3)少子・高齢化の進展と人口減少
急激な少子・高齢化にともない、地域活力の衰退や
市の財政基盤の悪化が懸念されています。特に、高齢
化の急激な進展は、保健、医療、福祉などの行政需要
の増大につながっています。
若い世代が安心して子どもを生み、育てられる環境
をめざし、子育てに対する社会的支援を充実させると
*
ともに、団塊の世代が退職期を迎える中、高齢者が明
るく、生き生きと暮らせ、まだまだ現役として社会参
市立保育園の保育サービス
加できるよう健康と生きがいづくりの施策を展開していく必要があります。
**
少子化による人口減少は、財政基盤の減退や経済活力の低下、コミュニティ維持への障
害となるほか、住民意識も含めた活力の低下を招くなど、地域経営に大きな影響を与えま
す。国内でも人口は減少に転じ、今後50年間の地域別人口減少率は、全国平均で2割、
大都市からの時間距離が1時間半以上の地域では3割以
上と予想されています(注①)。
平成12年まで緩やかな伸びを見せていた本市の人口
も平成17年の国勢調査では平成12年との対比 1,501
人(2.8%)の減少となっています。地域別では旧安曇
川町、旧高島町、旧今津町および旧朽木村の減少が大きく、
これらは、地元企業の規模縮小、救護施設の入所者減少、
陸上自衛隊員の減員など社会的要因が大きく作用してい
るものと考えられます。
年齢別人口の構成比を、平成7年と平成12年との国勢
調査の比較でみると、15歳未満の年齢層が減少し、65
歳以上の年齢層が増加しています。平均寿命の伸びや出生
率の低下を背景に少子・高齢化が急速に進展しています。
将来を担う子どもたち
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
*
団塊の世代
昭和 22∼24 年(1947∼49)ごろの第一次ベビーブーム時代に生まれた世代。
他世代に比較して人数が多いところからいう。
**
コミュニティ
共同生活体。生活の場で、住民の自主性と責任に基づいて多様化する各種の住
民要求と創意を実現する集団のこと。
注①
国土交通省の国土審議会「国土の総点検」(2004 年 5 月)による。
- 8 -
□人口の推移
項
単位:人
目
平成 2 年
平成 7 年
平成 12 年
平成 17 年
旧マキノ町
6,403
6,377
6,210
6,204(注②)
旧今津町
12,855
13,190
13,921
13,593(注②)
旧朽木村
2,616
2,603
2,625
2,310(注②)
旧安曇川町
13,836
14,624
14,489
13,782(注②)
旧高島町
6,517
7,012
7,138
6,787(注②)
旧新旭町
9,805
10,563
11,068
11,270(注②)
高島市(高島郡)
52,032
54,369
55,451
53,950(注③)
1,222,411
1,287,005
1,342,832
1,380,361
県:総人口
資料:国勢調査
□年齢別人口の構成比
平成2年
19.4
平成7年
17.9
平成12年
15.7
平成17年
14.0
0%
10%
単位:%
64.0
16.6
62.8
62.0
22.3
60.9
20%
30%
40%
0から14歳
15から64歳
65歳以上
19.3
25.1
50%
60%
70%
80%
90%
100%
資料:国勢調査(但し、平成 17 年は滋賀県人口推計 10 月 1 日のデータをもとに市が作成)
(4)環境問題
大量生産・消費・廃棄を繰り返してきたこれまでの生活様式は、地球規模での環境問題を
*
深刻化させており、近年の異常気象の要因にも挙げられています。地球温暖化の原因とさ
れる温室効果ガスの削減を目指して取り交わされた京都議定書の目標達成に向けて、国を
挙げて地球環境の保全や資源の循環利用を推進するなど、環境に配慮した暮らしへの取り
組みが、行政はもとより民間企業や団体などでも盛んに進められています。
本市においても、森林の荒廃、琵琶湖の水質の悪化や藻の繁茂、外来動植物の急増、ご
**
みの散乱等、生活環境への影響が心配されていますが、高島市環境マネジメントシステム
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
*
温暖化
二酸化炭素などの温室効果ガスの増加により、地球の気温が高まり、自然や生活環境に悪
影響が生じる現象。
**
環境マネジメントシステム(LAS-E) 環境配慮や環境政策に取り組むためのしくみを、自治体が
確立運用し、その取り組み内容が環境自治体としてふさわしいかどうかをチェックするための基
準。環境自治体スタンダードとも言う。
(LAS-E:Local Authority's Standard in Environment)
注②
国勢調査の旧町村別人口は、確定値における旧町村別人口が発表されていないため要計表(速報値)
による数字を示した。
注③
市の人口は国勢調査の確定値を表している。要計表による数字と確定値が異なったため、表中、合
計が合わない。
- 9 -
(LAS−E)の取組みや、市民から環境保全に対する
活動意欲が高まっており、ごみの減量化や環境にやさし
い暮らしへの展開が積極的に進められています。
地域の貴重な資源である美しい水と緑の環境を守り、
誰にとっても暮らしやすく誇りと愛着を感じることが
できる高島市となるよう、自然との共生社会に向けての
学習、意識啓発を進めるとともに、市民、事業者、行政
がそれぞれの役割と責任において、公害防止やごみの
LAS-E の運用開始(市役所)
資源化、省エネルギーの推進、自然エネルギーの活用など具体的な施策を検討し、環境へ
*
の負荷を低減する社会システム(循環型社会)の構築を図っていく必要があります。
(5)産業・経済基盤
本市は、一級河川安曇川などの河川により形成された
平野を中心に古くから農業が営まれてきたほか、琵琶湖
や河川での漁業、広大な森林を活用した木材生産が行わ
れてきました。これらとともに綿織物や扇骨業、食品加
工業などの地場産業も発展してきました。また、企業誘
致や大都市住民を対象とした観光交流産業の育成によ
る地域活性化にも取組んできました。しかし、経済のグ
**
***
ローバル化の進展やバブル崩壊後の厳しい経済状況等もあ
本市の代表的な地場産業・扇骨づ
くり
り、地域の経済基盤は脆弱化しています。産業人口の構成を見ると、平成12年の就業人
口は 27,486 人で、平成7年に比べると692人減少しています。この傾向は、人口が減
少に転じた現在では、より顕著に表れているものと予想されます。
就業別にみると、第1次産業就業人口は大きく減少傾向にあり、逆に第3次産業就業人
口は増加しており、全国的な傾向と同様の推移を見せています。また、市内の工業製造品
出荷額は 1,009 億円、卸売・小売業年間販売額は729億円に上りますが、就業人口とと
もに減少傾向にあります。
一方、市内の雇用の場については、県内他の地域と比べても有効求人倍率が著しく低く、
そのことが就業人口の市外流出の原因にもなっているものと予想されます。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
*
循環型社会
かつて高度経済成長を支えた大量生産・大量消費を見直し、資源を有効に使い、ごみ
をリサイクルするなどして、環境にできるだけ負荷をかけない社会を言う。
**
***
グローバル化
バブル
グローバリゼーション:世界的規模に広がること。
泡沫的な投機現象のこと。株や土地などの資産価格が、経済の基礎条件から想定される
適正価格を大幅に上回る状況をさす。日本では昭和 61(1986)年以降の土地や株が高
騰した時期の経済をバブル経済と呼ぶが、平成 2(1990)年以降、地価・株価は急落し
てバブルは崩壊した。
- 10 -
□主産業算出額等比較
主産業産出額等比較
百万円
120,000
107,562
100,860
86,515
90,825
72,893
8,087
6,667
100,020
100,000
77,920
80,000
64,459
60,000
73,435
58,682
40,000
33,055
20,000
16,404
8,455
8,474
8,218
6,022
S48
S53
農業産出額
S58
S63
卸売・小売業年間販売額
H5
H10
H15
製造業製造品出荷額
資料:調査(但し分類不能産業は含んでいない)
□産業別就業人口の推移(15 歳以上、常住地による)
単位:人・%
産業別
年次
構成比
総数
第1次
第2次
第3次
第1次
第2次
第3次
平成 2 年
27,078
2,887
11,077
13,114
10.7
40.9
48.4
平成 7 年
28,178
2,676
10,936
14,566
9.5
38.8
51.7
平成 12 年
27,486
1,871
10,470
15,145
6.8
38.1
55.1
資料:国勢調査(但し分類不能産業は含んでいない)
□産業別人口の構成比
平成2年
10.7
平成7年
9.5
平成12年
単位:%
48.4
40.9
6.8
55.1
38.1
0%
20%
第1次
第2次
第3次
51.7
38.8
40%
60%
80%
100%
□職業安定所別有効求人倍率
高島
滋賀県
大津
長浜
彦根
東近江
甲賀
草津
敦賀
0.68
1.17
0.89
1.29
1.44
1.09
1.19
1.36
1.13
資料:滋賀労働局調(平成 18 年 6 月、パート含む)、
「敦賀」は、敦賀公共職業安定所調(平成 18 年 6 月、常用のみ)
- 11 -
(6)地方分権と行財政運営健全化
平成12年4月に地方分権一括法が施行され、住民に最も身近な行政主体である市町村
には、自己決定、自己責任の原則のもと、今後、ますます透明かつ長期的視野に立った自
治体運営が求められます。また、国と地方における行財政運営の見直しを図る三位一体の
*
改革の推進により、国・県からの財源に依存する割合の高い本市では極めて厳しい状況が
予想され、一層健全で計画的な財政運営が求められています。
限られた財源を有効に活用し、行政サービスの市民満足度を向上するためには、政策形
成部門の充実や専門的人材の育成を行い、事務事業の見直しや人員の適正化など地方分権
時代にふさわしい体制づくりを進めていかなければなりません。
また、住民参画のもと、創意と工夫による地域に根ざした施策が実行できるよう、自主
性および自立(律)性を高め、地域の特色を活かしたまちづくりを進めていくことが必要
となっています。
特に本市の歳入の根幹をなす市税収入は、景気低迷の長期化や減税等の影響により、平
成11年度をピークに落ち込んでいます。普通会計の市債残高は、平成17年度末現在で
362億円と平成8年度の1.5倍以上に増加しています。(平成17年度末現在で、特別
会計や事業会計を含めると債務残高は約733億円になります。)
**
また、財政構造の弾力性を表す経常収支比率は、平成13年度以降、警戒ラインといわ
れる80%を超え、平成16年度には93.1%となり、財政構造の硬直化が進んでいま
す。平成17年度では、92.0%と対前年比1.1ポイントの改善をみていますが、行
財政の健全化のために「高島市財政再建計画」や「高島市経営改革プラン」を策定し、引き
続き改革に取り組んでいきます。
□財政状況
400
362.1
362.1
350
93.1
286.7 299.4
92.0
274.9
300
265.1
266.1
259.2
84.6
246.9
233.4
250
81.8 83.5
億
79.3
200
77.3 77.4 78.6 77.8
円
150
100 54.8 57.9 56.4 58.2 57.3 57.4 57.5 54.6 54.8 55.5
50
0
8年 9年 10年 11年 12年 13年 14年 15年 16年 17年
市税
市債残高
95
90
85
80
75
70
%
65
60
経常収支比率
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
*
三位一体の改革
国と地方の税財政に関する改革。具体的には、(1)国から地方への補助金の削
減、(2)国税から地方税への税源移譲、
(3)地方交付税制度の見直し、の 3 つ
を指す。これら 3 つの改革をまとめて実行することから、「三位一体の改革」と
呼ばれている。
**
経常収支比率
経常一般財源総額のうち、人件費などの経常経費が占める割合。財政構造の弾力
性を示す指標として用いられる。
- 12 -
(7)国際化
人・物・情報の流れは、今日の急速な技術の発展と国
家の枠を越えた経済の結びつきの強まりにより地球的
規模に拡大しています。このような中で、諸外国との交
流は、地域レベルの交流にまで広がっています。
様々な交流を通して、異文化の理解や諸外国との相互
協力を一層推進することは、豊かな国際感覚を身につ
け、新たな文化を創造する市民を育みます。このため、
市民レベルの国際交流や国際協力を支援し、国外からの
広がりを見せる国際交流
来訪者をあたたかく迎える仕組みづくりが求められています。
現在、中国(中学生交流事業、語学・文化教育)、ニュージーランド(特産品づくり)、オ
*
ーストラリア(エコツーリズム)、ドイツ(環境、エコツーリズム、平和教育)等との交流
が、様々な分野で進んでいます。
また、本市を舞台に収録された「映像詩
里山
命めぐる水辺」は、自然と共生してき
た本市の生活文化が、社会システムとしても国際的に高い評価を得、高島の暮らしが資源
の循環利用や生活の知恵など、持続可能なまちづくりのモデルとして世界に認められたと
いえます。
こうした国際的にも高い文化性と情報発信力を活かし、環境保全と観光の両立を目指す
エコツーリズムや文化交流などを展開していき、国外からの来訪者の受け入れや豊かな国
際感覚を身につける取り組みが必要となっています。そのためにも、国内外の新たな
**
パートナーシップ形成の動きを育てていく必要があります。
(8)地域情報化
情報化社会の進展により、活力ある地域社会の形成や
ゆとりと豊かさを実感できる市民生活の実現が求めら
れていますが、市内には、情報通信サービスの未整備地
区や携帯電話の不感地域があります。これらの整備を進
めるとともに、情報化社会のメリットを市民誰もが享受
できる仕組みづくりが必要です。
情報通信サービスの受け手であり情報の発信者である
市民の視点に立ち、地域の情報を迅速に伝える多様な地
市内の地域イントラネットを活用
した議会中継
域メディアの創造等、地域情報化の推進を図る必要があります。
また、その基盤を行政のみならず各機関が有効活用することで、一層きめ細やかな行政
サービスの提供や、市民の日常生活の利便性向上につなげていくよう取り組む必要があり
ます。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
*
エコツーリズム
自然環境を保護するとともに、地域住民の伝統的な生活様式を含めた地域生
態系を破壊せずに観察し、体験することを目的とする観光の考え方とその旅行のこと。
**
パートナーシップ
協力関係。ここでは、市民と行政がともに協力し、同じ目的のために協力
して働くことを指す。協働。
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