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(ジカ熱)・デング熱・ チクングニア熱とはどんな感染症か?

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(ジカ熱)・デング熱・ チクングニア熱とはどんな感染症か?
特集 蚊媒介性感染症をめぐって
ジカウイルス感染症
(ジカ熱)
・デング熱・
チクングニア熱とはどんな感染症か?
国立感染症研究所昆虫医科学部部長 はじめに
沢辺 京子
1.ジカウイルス感染症(ジカ熱)とは
ジカ熱は、その症状のほとんどが比較的軽
ジカウイルスは、1947年にウガンダのジカ
症の発熱性疾患と思われていたが、2013年の
の森で黄熱の囮として使用されたアカゲザル
仏領ポリネシアでの流行に際してギラン・バ
から初めて分離されたが、デングウイルス、
レー症候群の症例が増加し、2015年以降はブ
日本脳炎ウイルス、黄熱ウイルスと同じフラ
ラジルと仏領ポリネシアで小頭症等の先天異
ビウイルス属に属すウイルスである。2000年
常を有する症例の増加が報告されたことから、
後半のアフリカ、アジア諸国における流行ま
世界保健機関(WHO)は2016年2月1日に小頭症
での報告例は10数人に過ぎなかったが、2007
およびその他の神経障害の集団発生に関して
年のミクロネシア連邦ヤップ島では数百人規
「国際的に懸念される公衆の保健上の緊急事態
模に、2013年の仏領ポリネシアでは3万人に
(PHEIC)」を宣言した。日本では、2016年2月
も及ぶ大流行となった。2015年以降のブラジ
15日にジカウイルス感染症
(病態によりジカウ
ル の 流 行 は、 推 定 患 者 数 が 約20万 人(4月7日
イルス病、先天性ジカウイルス感染症に分類)
現在)とも報道され、その後、カリブ海諸国、
を感染症法において4類の全数報告疾患と定め
メキシコまで流行域を拡大している。日本人
た。その直後に、我々のブラジルへの派遣が
の感染者は2013年に仏領ポリネシアからの帰
決定した。本年8 ~ 9月に開催されるリオデジャ
国者が第1例となったが、2016年7月までに合
ネイロオリンピック・パラリンピックの開催
計10例の患者が報告されている。それらの多
に伴う邦人観光客が1万人を超えるであろうと
くは南米、オセアニアからの帰国者であった
予想され、輸入症例の増加から国内感染例が
発生する可能性が危惧されたからである。
(IASR,2016)
(表1)
。
ジカウイルス病の主な症状はデング熱に類
本稿では、ジカウイルス感染症の現状把握
似 し、 頭 痛、 関 節 痛、 皮 疹 が よ く 見 ら れ る
の目的で、本年3月7日~ 16日の期間ブラジル
が、多くが38.5ºC以下の微熱
(デング熱は多く
北東部の都市(レシフェ市、ジョアンペソア市)
が38.5ºC以上)であること、眼球結膜充血など
とオリンピック・パラリンピック開催都市で
がデング熱と異なる特徴である。また、不顕
あるリオデジャネイロ市を訪問したので、現
性感染率はデング熱(50 ~ 60%)よりも高く、
地の媒介蚊情報を中心に紹介する。国内での
80%以上であるとも言われている。診断は主に
媒介蚊対策の参考になれば幸いである。
血液や尿からのウイルス遺伝子の検出や、血
液を用いた抗体検査が行われるが、確立した
実験室診断がないことから、臨床的な特徴に
36
◆◆◆
特集
蚊媒介性感染症をめぐって
表1 2016年以降のジカウイルス感染症報告例
(2016年6月22日現在)
よって行われることが多いという。そのため、
ネッタイシマカやヒトスジシマカ等ヤブカの
デング熱やチクングニア熱との鑑別診断が必
吸血によって媒介されるため、デング熱はヤ
要となってくる。
ブカが多く生息する熱帯・亜熱帯地域に広く
認められる。推定では年間約4億人がデング熱
2.デング熱とは
を、約25万人がデング出血熱を発症している
WHOでは、デング熱の流行地域と患者数は
(そのうちの約10%が死亡)。現在、デングワク
この10年間で拡大と増加の傾向にあることを
チンは一部の国で使用されているが、4型すべ
確認し、再興感染症の中でもマラリアと共に
てに効果的なワクチンはなく、対症療法がそ
世界的にもっとも重要な疾患の一つとして監
の治療の中心となる。
視している感染症である。フラビウイルス属
わが国では1942年から3年間で20万人以上と
に属すデングウイルスは血清型に4型があり、
もいわれる大流行が記録されたが、それ以降
初感染ではデング熱(軽症)を発症するが、2度
はすべて輸入症例であった。2010年以降は輸
目に異なる血清型のウイルスに感染するとデ
入症例数が増加し、2013年はこれまでの最高
ング出血熱
(重症)となることが多い。基本的
の249例が報告された。2013年には、8月中旬
には、自然に回復する軽症の感染症であるが、
から下旬にかけて日本国内を旅行したドイツ
主な症状は高熱・発疹・全身のだるさと骨や
人女性の国内感染が強く疑われ、翌2014年に
筋肉、関節の痛みである。デングウイルスは
は東京都内を中心に162名の国内感染例が発生
◆◆◆
37
ジカ熱・デング熱・チクングニア熱とは?
したことは記憶に新しい。詳しくは他者の項
4.ブラジル視察報告
に譲る。
1)
ブラジルの概況
では、話をブラジルに戻すことにする。ブ
3.チクングニア熱とは
ラジルではここ数年、ジカウイルス感染症だ
チクングニア熱は、トガウイルス科アルファ
けでなく、推定患者数が年間150万人を超すと
ウイルス属のチクングニアウイルスによって
もいわれるデング熱の流行が依然として続い
起こる感染症であり、1953年にタンザニアで
ており、地域によっては数万人規模のチクン
初めてウイルスが分離されて以来、アフリカ
グニア熱も流行している。近年、黄熱ワクチ
やアジアでその流行が報告されている。発熱・
ンの接種が免除されていたサンパウロ市内で
関節炎・発疹が3主徴である。時に出血傾向
久しぶりに黄熱の患者が発生した。このよう
を呈するため、デング熱と鑑別することが求
に、ブラジルは種々蚊媒介感染症が同時に流
められる。デング熱と同様に、主にネッタイ
行している世界でも稀有な地域である。
シマカやヒトスジシマカ等のヤブカの吸血に
2014年のブラジルの人口は約2億40万人で
よって媒介される。わが国では2006年にスリ
世界第5位の大国である。公用語はポルトガル
ランカ在住の日本人女性が帰国後にチクング
語、通貨はレアル。国民1人当たりのGNP(国
ニアウイルス感染が確認され、1例目の輸入症
民総生産)は11,613米ドル
(世界銀行2014年資
例となった。それ以降も毎年10名を超す輸入
料)で、中所得国に分類される。しかし、人口
症例が発生しており、2015年9月までに合計67
の1%にも満たない約200万人の富裕層の世帯
名の患者数が報告されている。2011年に4類感
収入の合計と、人口の約半数(約1億人以上)と
染症に指定された。
いわれる貧困層の世帯収入の合計がほぼ一致
2005 ~ 2006年に仏領レユニオン島で27万
するという、世界一貧富の差がある国とも言
人が感染し、そのうち約250人が死亡した流行
われている。事実、都市部には先進国と同様
は、ヒトスジシマカ体内でネッタイシマカよ
に高層ビルが連なり、病院では高度医療、心
りも約100倍も増殖するウイルスの突然変異株
臓移植等が行われるのに対し、幹線道路から
(A226V)が出現し、より強毒化したことで大
丘に向かってファヴェーラと呼ばれるスラム
規模になったと考えられた。ヒトスジシマカ
街が広がり、未だに下痢・肺炎・栄養失調で
によるチクングニア熱の流行は2007年にイタ
多くの子どもが命を落としているという。
リアで、2005 ~ 2006年にはインド洋島嶼国で
2)
北東部のレシフェとジョアンペソアの状況
大きな流行が起きている。また、2011年には
我々がまず向かったのは、ブラジル北東部
フランス地中海沿岸部で2例の国内感染症
(デ
の大都市レシフェ市である。レシフェ市はペ
ング熱2名)も報告された。アジア諸国、特に
ルナンブコ州の州都であり、熱帯地域に分類
ヒトスジシマカしか生息しない日本へのこの
される。人口は約250万人、北東部ではサル
変異株のウイルスの侵入は脅威となるに違い
ヴァドールに次ぐ第二の都市である。2016年
ない。詳しくは他者の項に譲る。
3月7日から約1週間、ペルナンブコ連邦大学に
附属するLIKA(ケイゾー・アサミ免疫病理学)
38
◆◆◆
特集
蚊媒介性感染症をめぐって
図1 東京とブラジル2都市の月平均気温と降水量の比較
研究所を訪問した。ジカウイルス感染症の現
産科病院
(Candida Vargas Institute)と障害者
状は深刻であり、疑い例は約20万人を超えた
トレーニングセンターを訪問し、小頭症診断
という(うち確定症例は約6千人)
。特に2月第
の説明と早期リハビリプログラムの現場を見
1週は1万6千人を超す疑い例が記録された。
せてもらった。その後、パライバ連邦大学に
レシフェ市滞在中に隣のパライバ州の州都で
移動し構内の藪で蚊の調査を行った。ちょう
あるジョアンペソア市を訪問した。人口は約
ど乾季が終わり雨季に入る頃であった
(図1)
。
67万人。ブラジル北東部のこの両都市で小頭
ヒトスジシマカの成虫、幼虫ともに採集され
症の発生が2015年に入り急増した。2010年~
たが、ネッタイシマカは捕集できなかった。
2014年の小頭症の発生は年間139名~ 175名で
3)
リオデジャネイロの状況
あったが、2015年は推定3,580名と20倍以上に
3月12日 午 後、 レ シ フ ェ か ら 空 路 で3時 間、
増加し、2016年4月には、小頭症疑い例が7千
リオデジャネイロに移動した。リオデジャネ
人を超えた(死亡例は57)。
イロ市の人口は600万人以上で、サンパウロ市
レシフェ市内から車で1時間も走ると赤い色
(1,100万人以上)に次いで大きいが、言うまで
合いの風景になり、道路から丘の上までファ
もなくブラジルで最も有名な都市である。今
ヴェーラと呼ばれるスラム街が広がる。ほと
夏にオリンピック・パラリンピックが開催さ
んどすべての家には雨水を溜める青色のタン
れる。到着した翌日はちょうど日曜日であっ
クが見えるのは、停電や停水が頻繁に起きる
たため、ブラジルに来て少しだけ観光気分に
からである。ジョアンペソア市では、州立の
浸ることができた。リオデジャネイロで観光
◆◆◆
39
ジカ熱・デング熱・チクングニア熱とは?
者が必ず行く場所はコルコバードの丘である。
殺虫効果が望めない状況であるという。化学
市内の気温は30度近く、途中は雨模様で非常
的な成虫対策では効果があまり得られないこ
に蒸し暑かった。男性も女性もノースリーブ
とから、新しい試みとして、人為的に作り出
にショートパンツの観光客ばかりであったが、
したGM蚊
(OX513A致死性遺伝子を保有する
中には虫よけ剤を片手に見物している人もい
雄蚊)を野外に放し、野外の雌蚊と交配させる
た。次に、市内にあるオリンピック施設をい
ことで野外集団を縮小させる試みが行われて
くつか回った。コパカバーナにあるボート競
いる。また、共生細菌の一種であるWolbachia
技場ではネッタイシマカの成虫が捕集された。
を保有する種類の蚊はウイルスの伝搬を阻止
Barraにある選手村はまだ建築の最中で、工事
することが知られているため、Wolbachia保有
用具が散乱していた。事務所のフロントが一
の雄蚊を人為的に作出して野外の雌蚊と交配
か所だけ開いていたが、デスクの下に蚊がた
させ、野外のヤブカの集団をWolbachia保有蚊
くさん飛んでいると困っていた。そこではネッ
集団に置き換える試みも行われている。しか
タイシマカが多数捕集された。観光の最後に
しながら、実施から2年ほどが経過した現在で
行ったマラカナンスタジアムは、有名サッカー
も、大きな成果は得られていないようである。
クラブがホームグラウンドとしている古いが
ブラジルのジルマ・ルセフ大統領は、幼虫
整然とした競技場であり、オリンピックの開
発生源の大掃除を国を挙げて実施すると宣言
会式が行われることになっている。金網のフェ
し、幼虫対策に最も力を入れているという。
ンスの支柱が抜いてある穴には水が溜まって
IGR剤
(昆虫成長制御剤)や、生物農薬として
おり、多数の幼虫が生息していた。そこから
Bti剤も使用されている。しかし、小頭症の流
ヒトスジシマカとネッタイシマカが採取され
行地で飲料水にもIGR剤が投与された事例も多
たが、残念なことに同じ穴に生息していたの
かったようで、小頭症の発生が急増したこと
かは確認しなかった。オリンピック会場の多
とIGR使用との因果関係が強く疑われたため、
くは新たに開発された場所であるため、敷地
ブラジルではIGR剤の使用はあまり好まれてい
内の整備はまだ途中であったが、オリンピッ
ないようだ。一方、Bti剤は、日本ではユスリ
ク開催時には概ねきれいになるはずであり、
カや農業害虫へは使用されているものの、医
幼虫発生源の心配はそれほどなさそうである。
薬品として認可されていないため蚊の幼虫駆
しかし、競技場との境のフェンスの外にはファ
除剤としては使われていない。しかし、ブラ
ヴェーラが迫っていた。
ジルをはじめ、諸外国では生物農薬として一
4)媒介蚊対策の現状
般的に使用されている。
媒介蚊対策において、成虫駆除には主に有
このように、ブラジル政府は、様々な試み
機リン系のマラチオンの煙霧が行われていた。
や対策を行っているものの、ジカウイルス感
日本を含めて世界で最も多く使用されている
染症は期待通りに減少してはいない。蚊媒介
殺虫剤はピレスロイド剤であるが、ブラジル
感染症のみならず、その他多くの感染症対策、
ではピレスロイド剤に対してすでに抵抗性を
公衆衛生上の問題を考える上で、ファヴェー
発達させた蚊が多数を占めており、ほとんど
ラの存在が大きいと感じた。
40
◆◆◆
特集
蚊媒介性感染症をめぐって
5.こ れまでの流行におけるジカウイル
ス感染症の媒介蚊
たヒトスジシマカから初めてジカウイルスが
分離された
(Grand et al., 2014)
。アジア地域
1947年 に ジ カ の 森 で ジ カ ウ イ ル ス が 発 見
においては、マレーシアのネッタイシマカか
された際、媒介蚊調査も同時に行われ、囮ザ
らジカウイルスが分離され
(Marchette et al.,
ルの檻が設置された森の樹冠部で採集された
1969)
、1977 ~ 78年のパキスタン、インドネ
Aedes africanusからジカウイルスが分離され
シア、マレーシアでの小規模な流行にネッタ
た(Dick et al., 1952, Haddow, 1964)。1980年
イシマカとヒトスジシマカが関与したと考え
代までのアフリカでは、1969年にナイジェリ
られた。
アの森林部で捕集されたAe. luteocephalusか
2007年 の ヤ ッ プ 島 で は、 媒 介 蚊 調 査 で 捕
ら ジ カ ウ イ ル ス が 分 離 さ れ(Lee and Moore,
集された蚊からウイルスは分離されなかった
1972)
、さらに、流行地で優占種であったこ
が、Ae. hensilliの個体数が多いこと、デング
とから、本種に加えAe. vittatusも媒介蚊であ
熱を媒介した可能性が高いと推察されたこと
ると考えられた。一方、都市部では、ジカウ
から、ジカウイルスの媒介も本種によるもの
イルスは分離されなかったものの、同様の疫
と推察された
(Duffy et al., 2009)
。後年、Ae.
学調査から、ネッタイシマカとヒトスジシマ
hensilliへのジカウイルス、チクングニア、デ
カが主に関わったと推察されている。2007 ~
ングウイルスの実験室感染実験が行われ、す
2010年のガボンでのデング熱、チクングニア
べてのウイルスに感受性があることが確認さ
熱の流行に際し、その間に捕集された蚊を後
れている
(Ledermann et al., 2014)
。2013年の
方視野的に調査した結果、2007年に捕集され
仏領ポリネシアの大流行でも捕集蚊からウイ
図2 ジカウイルス感染症流行地における媒介蚊
◆◆◆
41
ジカ熱・デング熱・チクングニア熱とは?
ルスは分離されなかったが、ヒトの吸血嗜好
く増殖させることができるが、それ以外の実
性が高く、生息数が多いネッタイシマカとAe.
験では、両種ともに増殖性が低いか、あるい
polynesiensisが媒介蚊であったと考えられた
はネッタイシマカの方が少し高いという結果
(Faye et al., 2013)。2015年のブラジルから始
まった、カリブ海諸国、メキシコでの流行にも、
であった。
ヒトスジシマカは、米国には1985年に日本
ネッタイシマカとヒトスジシマカの両種が関
から東南アジア経由で輸出された古タイヤに
与していると推察された(Haddow et al., 2012,
付着した卵が持ち込まれて定着したと考えら
Gatherer & Kohl, 2015)。図2にジカウイルス
れており、その後、イタリアには1992年に米
感染症の流行が報告された地域と推定された
国経由で侵入したと推察されている。また、
媒介蚊をまとめた。
ブラジルでは1986年にリオデジャネイロとサ
ンパウロで発見されており、これらも米国と
6.ヒトスジシマカのジカウイルス感受性
同様に日本から輸出された可能性の高いアジ
これまでにウイルスの媒介を確認、あるい
ア産といえる。ヒトスジシマカのウイルス増
は媒介蚊であると推定された蚊種はすべてヤ
殖性については、さらなる情報の蓄積が望ま
ブカ属であり、特に都市部においては、ネッ
れるが、現時点で分かっていることは、シン
タイシマカとヒトスジシマカがジカウイルス
ガポールに代表されるアジアのヒトスジシマ
感染症の主要な媒介蚊と認識されている。し
カ
(北南米大陸、欧州を含む)は、おそらくジ
かし、最近実施された蚊へのウイルス感染実
カウイルスを増殖させることができるという
験では、シンガポールのヒトスジシマカとネッ
ことである。このことから、国内の輸入症例
タイシマカはともにジカウイルスを非常によ
が増加すれば、2014年のデング熱国内感染例
表2 忌避剤の種類と特徴
42
◆◆◆
特集
蚊媒介性感染症をめぐって
の発生と同様に、ジカウイルス感染症の国内
A.J. 1952. Zika virus. I. Isolations and
感染が発生する可能性は否定できない。今後
serological specificity. Trans. R. Soc.
も継続した媒介蚊対策が望まれる。
Trop. Med. Hyg., 46: 509-520.
3)Haddow, A. J., William, M.C., Woodall,
さいごに
ジカウイルス感染症に関する情報には未だ
J.P., Simpson, D.I., Goma, L.K. 1964.
Twelve
isolations of Zika virus from
不明な点が多く、科学的な知見も十分ではな
Aedes (Stegomya) africanus (Theobald)
い。国立感染症研究所が2016年6月16日付けで
taken in and above a Uganda forest. Bull.
更新した
「ジカウイルス感染症のリスクアセス
World Health Org., 31: 57-69.
メント第7版」では、①妊婦及び妊娠の可能性
4)Lee, V.H., Moore, D.L. 1972. Vectors of
がある人の流行地への渡航は控えるとともに、
the 1969 yellow fever epidemic on the Jos
流行地への渡航者に対して、ジカウイルス感
Plateau, Nigeria. Bull. World Health Org.
染症の情報提供と防蚊対策の徹底を周知する
46: 669-673.
こと。②性行為感染及び母子感染のリスクを
5)Marchette, N.J., Garcia, R. Rudnick, A.
考慮し、流行地に滞在中の男女は、症状の有
1969. Isolation of Zika virus from Aedes
無に関わらず、性行為の際にコンドームを使
aegypti mosquitoes in Malaysia. Am. J.
用するか、性行為を控えること。③流行地か
Trop. Med. Hyg., 18: 411-415.
ら入国(帰国を含む)した男女は、ジカウイル
6)G rand, G., Varon, M., Mombo, I.M.,
ス病の発症の有無に関わらず、最低8週間
(パー
Nkonghe, D., Mboui Ondo, S., Jiolle,
トナーが妊婦の場合は妊娠期間中)は性行為の
D., Fontenille, D., Paupy, C., Leroy,
際にコンドームを使用するか、性行為を控え
E.M. 2014. Zika virus in Gabon (Central
ること。以上を推奨するとしている。今後、
Africa)--2007: a new threat from Aedes
追加される情報を注視するとともに、長袖・
albopictus? PLoS Negl. Trop. Dis., 6;8:
長ズボンに忌避剤を使用するなど、個人的防
e2681,
御を習慣づけることも重要である。本年9月に
7)Duffy, M.R., Chen, T.H., Hancock, W.T.,
は、高濃度含有率の忌避剤(ディート剤30%ま
Powers, A.M., Kool, J.L., Lanciotti, R.S.,
で、イカリジン剤15%まで)が、承認される予
Pretrick, M., Marfel, M., Holzbauer,
定であることを追加する(表2)。
S., Dubray, C., Guillaumot, L., Griggs,
A., Bel, M., Lambert, A.J.,
Laven, J.,
参考文献
Kosoy, O., Panella, A., Biggerstaff, B.J.,
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Fischer, M., Hayes, E.B. 2009. Zika virus
イルス感染症:ジカウイルス感染症・チク
outbreak on Yap Island, Federated States
ングニア熱・デング熱,2011年~ 2016年6月,
of Micronesia. N. Engl. J. Med., 360:
病原微生物検出情報(IASR),37: 119-120.
2536-2543.
2)D ick,G.W., Kitchen, S.F., Haddow,
8)Ledermann, L. P., Guillaumoto, L., Yug,
◆◆◆
43
ジカ熱・デング熱・チクングニア熱とは?
L., Saweyog, S.C., Tided, M., Machieng,
P.,
Pretrick, M., Mariel, M., Griggs,
C.Y., Kasper, M.R., Heang, V., Huy, R.,
A., Bel, M., Duffy, M.R., Hancock,
Guzman, H., Tesh, R.B., Weaver, S.C.
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Aedes hensilli as a potential vector of
virus strains: Geographic
chikungunya and zika virus. PLoS Negl.
the Asian Lineage.
Trop. Dis., 8: e3188.
Dis., 6: 10.1371/journal.pntd.0001477.
9)Faye, O., Diallo, D., Diallo, M., Weidmann,
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44
10)Haddow, A.J., Schuh, A.J., Yasuda,
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Epub 2012 Feb 28.
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PCR detection of Zika virus and
preciously slow pandemic spreads rapidly
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through the Americas. J. Gen. Viol., doi:
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10.1099/jgv.0.000381.
◆◆◆
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