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労働政策・労働法制全般における問題点について(PDF : 58KB)

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労働政策・労働法制全般における問題点について(PDF : 58KB)
労働政策・労働法制全般
における問題点について
日本労働組合総連合会(連合)
2007年5月18日
1
1.労働基準法について
労働基準法の基本的な考え方
○憲法第27条第2項「賃金、就業時間、休息その他の
勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める」と
規定(生存権の一つ)
○これを受けて、1947年(昭和22年)に労基
法を施行
○制定当時と現在では、雇用管理の多様化・複雑
化・個別化、雇用就労形態の多様化など、様々な状
況が変化
○「労基法は工場労働が主だった時代の遺物」か?
ー 労働者をとりまく状況が変化しても、国家によ
り保護されるべき労働者の基本的な権利は存在し、
労基法が不要になることはない
2
労働時間の規制と管理
○労働時間規制の必要性
*労働者の身体・精神の保護、自由時間・生活時間の保障
○労働時間規制の手法
*労働時間の長さ、配分、時間帯(週40時間、1日8時間、割増賃
金)
*休憩、休日
○メンタルヘルスや健康、過労死、過労自殺と労働時間
*医師の面接指導義務:時間外労働が月100時間超(80時間超は努力
義務)
*過労死、過労自殺における「過重業務」の判定:労働時間の長さ
が主要な指標
※現在でも、労働時間規制はすべての労働者に必要!
3
長時間労働で発生している問題
1.メンタルヘルス・健康
不安の増加
3.少子化への影響
少子化
4.地域社会への影響
長時間労働
2.過労死・過労自殺
5.人材育成への影響
4
諸外国と比較した日本の労働時間
年間総実労働時間の国際比較(製造業・生産労働者)
[2003年]
1週間当たり労働時間が50時間以上の労働者割合
日本
ニュージーランド
オーストラリア
アメリカ
イギリス
ギリシア
アイルランド
スペイン
フランス
ドイツ
ポルトガル
デンマーク
フィンランド
イタリア
ベルギー
オーストリア
スウェーデン
オランダ
28.1
21.3
20
20
日本
1,975
15.5
6.2
6.2
5.8
5.7
5.3
5.3
5.1
4.5
4.2
3.8
2.7
1.9
1.4
0
5
アメリカ
1,929
イギリス
10
15
20
25
30
(%)
(注)1. ILO作成、2000年時点
2. 各国のデータは2000年のものを使用しているが、アメリカは1998年のもの。
3. 雇用者のうち1週間当たり50時間以上働いている者の割合。
ただし、アメリカと日本は49時間以上働いた割合。
1,888
ドイツ
1,525
フランス
1,538
1,000
1,200
1,400
1,600
1,800
2,000
2,200
(時間)
出所:厚生労働省「就労条件総合調査」、EU及び各国資料より厚生労
働省労働基準局賃金時間課推計
5
労働時間の推移
一般労働者・パートタイム労働者別
一人平均年間総実労働時間
(時間)
2,100
(時間)
1,900
1,859
1,850
1,842
2,000
1,848
1,837
1,846 1,840
1,829
1,842
1,900
1,800
1,984
2,004
1,992
1,996
2,004
2,021
2,009
2,023
1,829
1,841
1,836
1,835
1,834
1,842
1,830
1,838
1,145
1,170
1,172
1,172
1,180
1,176
1,170
1,178
1,117
1,140
1,141
1,135
1,140
1,138
1,128
1,134
1999年
2000年
2001年
2002年
2003年
2004年
2005年
2006年
1,700
1,800
1,600
1,500
1,750
1,300
2006年
2005年
2004年
2003年
2002年
2001年
2000年
1999年
1,700
1,400
1,200
1,100
1,000
一般労働者の総実労働時間
パートタイム労働者の総実労働時間
一般労働者の所定内労働時間
パートタイム労働者の所定内労働時間
(資料出所)厚生労働省「毎月勤労統計調査」 (暦年、確報)
注1) 事業所規模30人以上。数値は年平均月間値を12倍し、小数点以下第1位を四捨五入。
6
過労死・過労自殺の増加
精神障害等の労災補償状況
「過労死」等事案の労災補償状況
︵
1000
938
︶
869
816
800
件
900
819
800
742
700
︵
600
656
600
件
524
500
︶
400
200
314 319
294
335
158
330
355
336
400
315
300
157
150
447
147
265
200
100
0
341
70 92
100
112
122
108
31
43
40
2001年度
2002年度
2003年度
205176
127147
130
121
45
42
66
0
2003年度
2004年度
2005年度
2006年度
脳・心臓疾患(請求件数)
同(認定件数)
脳・心臓疾患のうち死亡(請求件数) 同(認定件数)
2004年度
2005年度
2006年度
精神障害等(請求件数)
同(認定件数)
精神障害のうち自殺[未遂も含む](請求件数)
同(認定件数)
出所:厚生労働省「脳・心臓疾患及び精神障害等に係る労災補償状
況(平成18年度)について」
出所:厚生労働省「脳・心臓疾患及び精神障害等に係る労災補償状
況(平成18年度)について」
注1)本表は、労働基準法施行規則別表第1の2第9号の「業務に起因すること
の明らかな疾病」に係る脳血管疾患及び虚血性心疾患等(「過労死」等事案)
について集計したもの。
注1)本表は、労働基準法施行規則別表第1の2第9号の「業務に起因すること
の明らかな疾病」に係る精神障害等について集計したもの。
7
注2)認定件数は当該年度に請求されたものに限るものではない。
注2)認定件数は当該年度に請求されたものに限るものではない。
ホワイトカラーイグゼンプション
○アメリカの労働時間規制とイグゼンプション
*「週40時間を超過した労働時間に対して1.5倍以上の時間外手当の
支払義務」がある(=労働時間の上限や休日の規制は存在しない)
*一部のホワイトカラー労働者については、「ホワイトカラーイグゼ
ンプション」として上記の時間外手当に関する規定の適用が除外さ
れる
○日本の労働時間制度の「どこに」「どのような」問題があるのか?
* 労働時間規制の適用除外制度の必要性はない
* 規制がなくなれば自由に働けるようになる、というのは「机上の空論」
○労働時間規制の適用除外制度についての連合の考え方(2006.6 第9回中執
確認)
現行の労働時間法制には、変形労働時間制、フレックスタイム制など弾力的な制度
が設けられている。また、ホワイトカラーの働き方に対応する制度として専門業務
型裁量労働制、企画業務型裁量労働制が存在しており、労働時間規制を適用除外す
る新たな制度を創設する必要性はない。適用除外を拡大する新制度は、長時間労働
を助長することになりかねず、認めることはできない。
8
企画業務型裁量労働制
○「みなし労働時間」のメリット
*労働時間規制(深夜労働含む)、使用者の労働時間管理義務があ
ること
*実労働時間とみなし労働時間がズレれば、みなし労働時間数を実
際の労働時間数に合致させる
○導入手続
*労使委員会の設置
○適用範囲
*「企画、立案、調査、分析」がすべて揃っていること
現行の企画業務型裁量労働制を維持するべき
中小企業への特例は「ダブルスタンダード」であり認められない
9
長時間労働是正とワーク・ライフバランス確保
1.
2.
3.
4.
法定労働時間の遵守(週40時間)と労働時間管理の徹
底
年休取得の促進
最長労働時間の設定(1日、1週間、1ヶ月、1年)
時間外割増率の引き上げ
労働時間規制の緩和(裁量労働制の拡大、ホワイトカラー・イグゼン
プション導入)は、長時間労働を助長するだけ!
10
時間外割増率の引き上げ
•
均衡割増賃金率とは?
•
諸外国の割増賃金率
60%
50%
50%
50%
50%
40%
︵
︶
協
約
日本
ドイ ツ
※現行の法定時間外割増賃金率
の25%を大きく上回る
韓国
残業
シ ンガ ポ ー ル
新規採用
0%
アメリカ
約52%の割増賃
金率で均衡(厚生
労働省試算)
法
定
︶
10%
25%
︵
法
定
︶
法
定
︶
︶
20%
法
定
︵
30%
︵
40%
︵
新たに労働者を雇い入れる場合と、
今いる労働者の残業で対応する場
合のコストを比較し、 両者がつり合
う割増賃金率を均衡割増賃金率と
いう
時間外50%、休日労働100%、
深夜労働50%への割増率引き上げが
必要!
11
2.労働契約法について
労働契約法制の基本的な考え方
○民法の特別法(≠労基法)
○労基法:使用者に様々な義務を課す、強行法規+国家による監
督や罰則
○民法の考え方:契約当事者は「対等な力関係」
労働法の考え方:契約当事者(=労使)は「非対等な力関係」
∴労働組合法(集団的労働関係)、労働基準法(個別的労働関
係)に加えて、個別労働者と使用者との権利義務関係を明確に
する新たな「労働契約法」が必要
○労働契約法がないデメリット
*労基法のみ→労働契約に関するルールがほとんどない
理由:契約に関するルールは労基法になじまない (例)18条の2
*判例は?→普通の労働者は知らない、理解が難しい
12
労働契約法における書面明示や確認義務
○労基法における労働条件の明示義務(15条①)
使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他
の労働条件を明示しなければならない
※明示すべき事項:労働契約の期間、就業場所・従事すべき業務、労働時間、賃金、退職、退職手当、
臨時に支払われる賃金、労働者負担の食費など、安全衛生、職業訓練、災害補償、表彰・制裁、休職
(労規則5条1項)
○使用者が同条に違反し、労働条件を明示しなかった場合には罰則あり
○労働契約法においても書面明示や確認義務は必要
*労使の情報の非対等性を是正する。労働契約の締結や変更に際して、労働
者が適切な交渉や意思決定を行えるようにする。
*書面明示や確認義務を怠った場合の法的効果は一律ではなく様々
*契約法では、書面明示や確認義務を果たした場合の法的効果も議論する必
要あり
【参考】消費者契約法3条1項 「事業者は、消費者契約の条項を定めるに当たっては、消費者の権利義務そ
の他の消費者契約の内容が消費者にとって明確かつ平易なものになるよう配慮するとともに、消費者契
約の締結について勧誘をするに際しては、消費者の理解を深めるために、消費者の権利義務その他の
消費者契約の内容についての必要な情報を提供するよう努めなければならない」
13
解雇法制と雇い止めについて
○日本における解雇規制の現状
ー 諸外国と比較した場合、日本の解雇規制は本当に厳格なのか?・・・厳
格ではない!
○「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」(労
基法18条の2)とは?
ー その時々の社会・経済情勢に応じた柔軟な判断が可能
○日本では解雇以前に生産・雇用調整できる手段が多く存在する!
ー 企業毎に労働時間や賃金を柔軟に決定できる、希望退職・早期退職優遇
制度、配転、出向、転籍・・・・
○「強い解雇規制のデメリット」は実証されているか?
○安定した雇用と生活を支えるのに十分な収入は、社会の安定に不可欠
ー 簡単に解雇できるシステムには慎重であるべき
○有期労働契約と「雇い止め」
*解雇ルールを整備しても、「雇い止め」を使えば解雇ルールから免れら
れる
*「雇い止めが無効」と裁判所が判断しても、その後、必ず期間の定めの
ない契約になるのではない
*有期労働契約を締結できる理由、更新回数を制限し、有期労働契約が本
来の趣旨に沿って利用されるようにするべき
(その他、「均等待遇」の確保の必要性)
14
3.雇用関係法制について
労働者派遣・請負について
◆労働者派遣の現状◆
●派遣労働者数
(厚労省・事業報告)
1986年度
1999年度
2005年度
9万人
107万人
255万人
●派遣労働者の年収
平均292万円
(厚労省調査)
26業務
一般業務
登録型 247万円 234万円
常用型 361万円 277万円
15
労働者派遣法の制定・改正 経緯
1985年 労働者派遣法制定・・・対象業務13業務
1999年 法改正
ポジティブリスト方式(対象業務26業務)
からネガティブリスト方式へ
2003年 法改正
●対象業務の拡大:物の製造業務
●派遣期間の上限の延長:
一般業務1年→3年
26業務 3年ルールの廃止
●雇用申し込み義務の新設
16
派遣労働者/請負労働者の
職場生活に対する不安・不満
派遣労働者
請負労働者
能力の向上が
賃金増に結びつ
かない, 24.8
解雇や雇止め,
30.0
能力の向上が
賃金増に結びつ
かない, 32.5
解雇や雇止め,
26.8
教育訓練の機
会が乏しい,
35.8
正社員になれな
い, 28.5
賃金・一時金が
安い, 38.8
0
10
20
30
40
賃金・一時金が
安い, 62.5
50
0
10
20
30
40
50
60
70
「連合2006年パート・派遣等非典型労働者生活アンケート報告」より
17
労働者派遣等の問題と課題1
①雇用の不安定 ⇒ 常用型派遣が基本
「細切れ契約」「日雇い派遣」
②正社員との処遇格差 ⇒ 派遣先の社員との
均等待遇
③社会・労働保険の未加入 ⇒ 加入徹底
④スキルアップ ⇒ 能力開発の促進
⑤偽装請負・違法派遣 ⇒ コンプライアンス
の徹底
18
労働者派遣等の問題と課題2
労働者派遣法の見直し
○労働者派遣は臨時的・一時的な労働力の需給調整と
の位置づけを堅持。
○常用型派遣を基本とし、登録型派遣は見直し。
○事前面接の解禁には反対。
○雇用申し込み義務は堅持。
○派遣期間制限の延長には反対。
○物の製造業務/医療業務への労働者派遣の見直し。
○派遣先責任の強化・・・派遣元・派遣先の共同雇用責任。
○労働者派遣における労使関係のルール確立。
19
パートタイム労働法改正法案に対する
連合の考え方
• 通常の労働者と同視すべき短時間労働者に対する差別的取扱い禁止
【政府案】差別禁止が法的に明記されたものの、対象は極めて狭い範囲に限定。
すべてのパートタイム労働者を対象とした均等待遇を法的に義務化すべき。
• 均衡のとれた待遇の確保のための賃金に係る措置
【政府案】通常の労働者との均衡を考慮した賃金決定が努力義務に。
賃金の範囲:通勤手当、退職手当を除く(省令で規定)
努力義務では実効性に乏しい。法的義務にすべき。通勤手当も追加すべき。
• 均衡のとれた待遇の確保のための福利厚生に係る措置
【政府案】食堂、休憩室、更衣室(省令で規定)を、短時間労働者にも利用の
機会を与えることが事業主の配慮義務に。
慶弔見舞金・慶弔休暇を追加すべき。
• 通常の労働者への転換の推進
【政府案】事業主の措置義務になるが、対象範囲は例示的。
通常の労働者と実質的に異ならないパートタイム労働者は、優先的に
通常の労働者として雇用すべき。
20
ハローワークについて
• ハローワークは雇用のセーフティネットであり、民間
開放を行うことには反対。
○すでに職業紹介業には民間が参入し、幅広く事業展開。
○民間開放では、障がい者・母子家庭の母・生活保護受
給者などが置き去りにされかねない。
○民間開放では、全国どこでも誰でも無料の職業紹介が
されるセーフティネットが崩れかねない。
ビジネスチャンス拡大を狙う事業者の立場ではなく、
利用者の立場に立って検討すべき。
21
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