スウェーデン・ハードロック地下研究施設における高レ ベル放射性廃棄物

原 子 力 発 電
電力中央研究所報告
報告書番号： Ｎ ０ ９ ０ ２ ０
スウェーデン・ハードロック地下研究施設における高レ
ベル放射性廃棄物処分のための国際共同研究（その10）
−ベントナイトの膨潤挙動に伴う密度変化の数値解析による予測−
背
景
高レベル放射性廃棄物処分では岩盤内に廃棄体を定置する際に，その周辺にベン
トナイトを主材料とする緩衝材などの人工バリアを配置する．人工バリアを含むニ
アフィールドでは，廃棄体の発熱，周辺岩盤から緩衝材への地下水の浸入，緩衝材
の膨潤圧の発生などの現象が相互に影響する．これらの連成現象を的確に予測し，
緩衝材の温度履歴や飽和・膨潤後の緩衝材の密度分布・透水係数分布を評価するこ
とは合理的な設計，安全評価のために重要である．上記の予測評価では，熱・水・
応力を連成して解析する必要があり，世界で解析コードの開発が進められ，当所に
おいても解析コード
LOSTUF
1)
を開発した．これらの解析コードには，温度勾配
下での水の浸潤挙動，熱・水に対するベントナイトの力学的応答のモデル化が行わ
れているが，その妥当性は十分に検証されていない．そこで，当所はスウェーデン
の SKB 注)が主催する「人工バリアタスクフォース」2)のベンチマークテストに参加し，
LOSTUF の性能の検証・高度化に取り組むこととした．
目
的
実スケールでのベントナイトへの加熱浸透試験の解析を通して，飽和・膨潤過程
におけるベントナイトの密度変化の予測精度の向上を図る．
主な成果
SKB がエスポ地下実験場で実施した Canister Retrieval Test を対象とした解析
を実施した．この試験では実スケールの縦置き処分孔におけるベントナイトの飽和
過程を模擬し，ベントナイトへの加熱，人工的な浸潤が行われ，試験中は温度，相
対湿度，応力等の 6 年間の経時変化が計測された．初期の乾燥密度が異なる 4 タイ
プの圧縮ベントナイトが配置され，隙間も存在したが，試験終了時には膨潤挙動に
より隙間の充填，乾燥密度の均質化が確認された．解析は，処分孔の中間高さを抽
出した水平断面モデルと 2 次元軸対称による全体モデルの 2 種類のモデルで実施し
た．
１．中間高さ断面モデルにおけるベントナイト膨潤挙動の再現性の検討
拡散二重層理論に基づく膨潤評価式から与えられた圧力・飽和度での膨潤ひずみ
を評価し，それに相当する節点力を各要素に与えることで膨潤を表現した．また，
不飽和条件においてはベントナイトに対して全応力解析を適用した．
①
ベントナイトの体積弾性係数を膨潤評価式から導くことで，ベントナイトの膨
潤による密度変化が再現できた．これにより膨潤後の密度分布を精度良く予
測・評価できるようになった．
②
ポアソン比を 0.5 に近い値とし，等方的な膨潤圧を発生させることで，応力の
変化に関しても予測精度を向上させることができた．
③
間隙率と固有透過度の関係の設定により，水の浸透挙動を概ね再現できた．こ
れにより膨潤に伴う透水特性の変化についても予測・評価できるようになった．
２．全体モデルにおける実スケールでの熱・水・応力連成挙動予測性能の確認
試験孔全体および周辺岩盤をモデル化した実スケールの解析においても，上記の
膨潤モデルにより試験孔内の複数の深度でベントナイトの密度変化を再現できた．
さらに，温度，水の浸透についても概ね再現できることを確認した．
以上により，熱・水・応力連成下におけるベントナイトの膨潤に伴う密度変化を
LOSTUF により予測・評価することが可能となった．
今後の展開
ベントナイトの力学応答モデルの高度化をさらに進めるとともに，埋戻し材，周
辺岩盤を含めたニアフィールド全体での熱・水・応力連成問題へ LOSTUF を適用し，
その検証を行う．
注）スウェーデン核燃料廃棄物管理会社（Swedish Nuclear fuel and waste management company）
研究報告
Ｎ０９０２０
キーワード：人工バリア，ベントナイト，連成解析，原位置試験，
高レベル放射性廃棄物処分
関連研究報告書
1) 「高レベル放射性廃棄物処分地下施設の長期挙動予測評価プログラムの開発−
緩衝材膨潤評価式の数値モデル化と熱・水・応力連成解析スキームの構築−」
N05028(2006.6)
2) 「スウェーデン・ハードロック地下研究施設における高レベル放射性廃棄物処
分のための国際共同研究（その9）−人工バリアタスクフォースにおけるベ
ントナイトの室内加熱浸透試験の解析−」N07002(2007.7)
担 当 者
連 絡 先
［非売品・不許複製］
澤田
昌孝（地球工学研究所
地圏科学領域）
（財）電力中央研究所 地球工学研究所
Tel. 04-7182-1181(代)
E-mail : [email protected]
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平成２２年４月
０９−０１１