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中国の軽油の需要動向 - 石油エネルギー技術センター

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中国の軽油の需要動向 - 石油エネルギー技術センター
JPEC レポート
2015 年度
第13 回
平成 27 年 8 月 27 日
中国の軽油の需要動向
2015 年 3 月に開催された全国人民代表大会に
おいて
「中国の経済状況が新常態
(New Normal)
に入った」と発表された。これは、同国の経済成
長が高成長期から、穏やかな減速期に移行するこ
とを宣言したと考えられる。今回は、このような
経済移行期を迎え、同国における最近の軽油の需
要動向に焦点を当てて報告する。
1.
2.
3.
4.
5.
6.
過渡期にある軽油需要
部門別軽油消費動向
代替燃料
地域別特性
軽油の需要動向と政策
まとめ
1.
過渡期にある軽油需要
軽油は、中国において最も広く利用されている石油製品である。2014 年 同国の軽油の
消費量は、1 億 7,350 万トン/年となり全石油消費量の 32.2 wt%を占めている。同国では、
ここ数年にわたる経済成長が緩やかになるに伴い、エネルギーおよび他原料の需要の伸び
は明らかに鈍化してきている。軽油は、その需要量、消費構造および地域別特性の変動影
響を反映する代表的な石油製品と見られている。
1-1 減速する需要
1990~2000 年代初頭までの中国の急速な工業化の中で、軽油は同国において石油全体
の消費量を押し上げる上で主要な役割を担っていた。
しかしながら、
軽油需要量の伸率は、
近年大幅に低下し始めている。2014 年 同油の伸率は、初めてマイナスに転じた(図 1 参
照)
。
Chart 1 Diesel Consumption in China
(単位:100
million
tons万トン)
(伸率)
200
20%
volume
数量
grow th
伸率
150
15%
100
10%
50
5%
0
1994
1999
2004
図 1 中国の軽油消費量推移
1
2009
0%
2014 年
1
2
3
6
8
11
JPEC レポート
1-2 部門別需要構成
中国での軽油の消費量は、運
輸部門(自動車、鉄道および船
舶)
の割合が大きくなっており、
同油全体の約 70%を占めてい
る(図 2 参照)
。その反面 農
業、漁業、工業などにおいては
鈍化または減少傾向を示してい
る(詳細は 2 項に記載)
。
2.9%
4.1%
自動車
8.5%
工業
3.6%
5.1%
8.0%
2014年
軽油消費量
1億7,350万トン
農業
船舶
漁業
59.4%
鉄道
建設業
8.4%
その他
図 2 2014 年 中国の部門別 軽油需要構成
1-3 地域間での需要格差
変化しつつある軽油の需要動向は、地域間でも違いが出てきている。この相違構造は、
主に経済発展段階の違いによる格差によって形成されている。具体的には、中国沿岸部地
域にあたる先進地域は中期~後期の工業化発展段階を迎えている。一方、それ以外の地域
は、未だに初期~中期工業化段階にあるためである(詳細は 4 項に記載)
。
2. 部門別軽油消費動向
軽油は、主に輸送用燃料として利用される他に、農業、漁業、工業および建設業など多
くの分野でも利用されている。また、その他分野として量的には少ないが民間企業、発電
用および民生用需要などにも利用されている。下記に部門別に紹介する。
2-1 運輸部門
2014 年 中国の軽油総消費量の約 6 割は、運輸部門で消費されている。なお、自動車に
は、トラック、バスおよび農業用運搬車両が含まれる。
中国では、経済発展にともなう貨物輸送の需要が増加してきている。さらに、個人所得
の向上にともない、旅行需要も近年大幅に増加してきており、日本でも中国旅行者の「爆
買い」が話題になっている。また、郷鎮企業(各地方農村の経済組織などが投資した中小
企業)などによる農産品加工業の発展により、農業用運搬車の運用台数も増加してきてい
る。この影響により、自動車用燃料として軽油の需要拡大になっている。
中国では、鉄道や船舶(内航船、内陸大河川運航船等)にも軽油が広く利用されていた。
しかしながら、鉄道部門では同国鉄道電化率の進展にともない、ディーゼル機関車から電
車へのシフトが進み、同油消費量は減少してきている。また、内航船(ディーゼル機関利
用)用燃料も、より低価格が見込まれる「重油に燃料転換」する船舶が増えているため、
船舶部門も同油消費量は減少してきている。
2
JPEC レポート
2-2 農業・漁業部門
中国では、農業部門でトラクター利用などの機械化が向上し、同部門での軽油の使用量
が増加してきている。一方、農地への灌漑(かんがい)作業では、エンジンポンプから電
動ポンプへのシフトが増えてきている。2014 年 同部門での同油使用量は増加したが、全
体の消費量と比べて少なかったため構成比としては 8.0%と減少した。
中国では、かつて漁船が大量の軽油を消費していた。しかし、乱獲などにより沖合での
水産資源が大幅に減少したため、同国での漁業は沿岸養殖業へと移行している。これにと
もない漁船数および運航距離の大幅な低下となり、漁業部門での同油の使用量は減少して
きている。2014 年 同油総使用量に対する使用量割合は、4.1%と減少した。
2-3 工業部門
軽油は、ディーゼルエンジンの駆動用燃料、暖房用燃料等向けに工業部門でも利用され
ている。2014 年後半からの原油価格急落前において、同油の高価格および供給量逼迫に対
し、各企業はより低価格の代替燃料(石炭、天然ガスおよび LPG 等)に燃料転換する事
業所が増えてきた。その結果、同部門での主要顧客は、一般製造業から鉱業、窯業および
非鉄金属業などに主要需要家の業種が移っていった。2014 年 同油総消費量に対する使用
量割合は 8.4%と減少した。
2-4 その他部門
建設部門では、
軽油の使用量
(建設機械および各種建設関連機器類への動力供給用燃料)
がインフラ投資と共に堅調な伸びを示してきた。しかしながら、同油の総量としては少な
く、2014 年 同部門での使用量割合は 2.9%にとどまっている。
発電部門では、主に過疎地域(電力供給網が未整備)でのエンジン発電用燃料として使
用されている。また、企業などでピークカット用エンジン発電用(電力の需要集中時にお
けるデマンド対策)燃料としても供給されている。2000 年代初期 中国では電力供給が逼
迫していたため、工場などでの自家発電設備としてディーゼルエンジンを利用した自家発
電の利用が盛んであった。当時同国では、発電のために燃焼される軽油は、同油総使用量
の 5%を超えていた。しかしながら、近年は発電事業者による大型発電所の設置が急速に
拡大したこと、総電力需要の伸びの鈍化を受け、同油の需要は減少しつつある。
また、民間会社、民生用など多くの小規模部門でも、軽油は利用されている。しかしな
がら、同油の使用量は限定的である。
3. 代替燃料
このように、中国における軽油需要の伸びの鈍化は、同国の経済成長の弱体化、軽油の
コスト高および急速に悪化している環境問題が影響を与えているためと推測される。その
対策として同国では、代替燃料の拡大が推進されている。
3
JPEC レポート
軽油の代替燃料として近年台頭してきているのは、天然ガスおよびバイオディーゼル等
である。下記に燃料別に紹介する。
3-1 天然ガス
天然ガスの利用拡大は、中国中央政府が立上げ地方政府が支援している「天然ガスの資
源開発および同ガス活用全国キャンペーン」が促進している。また、国産天然ガスが比較
的安価であることが功を奏し、同国では天然ガスが代替自動車燃料となり、その活用が拡
大している。2014 年末時点で同国は、天然ガス自動車(NGV、Natural Gas Vehicle)保
有台数が 400 万台を超え、天然ガス充填ステーションも 6,000 カ所以上建設された。
このように中国では、NGV の利用は全土に拡大されてきており、特に、インフラが整
備されている北京市、湾岸部先進省(山東省、江蘇省等)および天然ガス資源に恵まれた
西域地区(陝西省、四川省、重慶市、新疆自治区等)において多く使用されている。なお、
同国での NGV の過半数は、ガソリン車を改造して天然ガスを利用できるようにしたもの
である。
また、新たに製造された CNG(圧縮天然ガス、Compressed Natural Gas)ならびに
LNG(液化天然ガス、Liquefied Natural Gas)利用のバスやトラックの増加により、デ
ィーゼル車からの切り替えが進んでいる。同国では増加する天然ガス利用自動車の普及に
おいて、製造、貯蔵、輸送および給油所に至るまでのサプライチェーンの整備が課題にな
る。今後、中国では天然ガス利用自動車の増加により、軽油の需要量が抑えられると推測
される。
3-2 バイオディーゼル
中国政府による再生可能エネルギー利用戦略には、将来持続可能な燃料の安定供給を確
保するという目的のため、バイオ燃料の新規開発が含まれている。同国では、バイオディ
ーゼルの開発に重点的な投資が行われてきた。同油の原料として、廃食用油および植物由
来の取組について紹介する。
中国では、同油開発プロジェクトには、主に廃食用油および廃獣脂を原料とする加工が
含まれていた。このプロジェクトは、同国全土で数十カ所のバイオ燃料製造プラントの計
画推進に貢献し、全体で生産能力約 300 万トン/年のプラントを建設した。しかしながら、
実際の同油の生産量および輸送燃料への利用量は限定的であった。その原因は、都市部に
おいて効率的な原料回収ルートが未整備なままプラントを建設しため、プラント安定稼動
に要する十分な量の廃食用油の確保ができなかったためである。これは、プラント各社の
回収価格より、民間業者の方が高かったのが一因である。民間業者により回収・精製され
た油は、再生食用油として家庭などに再販売(還流)されている。
現在 中国での同油の生産量は 100 万トン/年以下で推移している。後記石油各社は、積
極的な販売に踏み切れず、生産された同油一部が給油所に回され、残りは工場向けに販売
4
JPEC レポート
されている状況である。公式発表では、軽油にバイオディーゼルを混合している地域は海
南島だけである。
同国の三大国有石油会社である CNPC(中国石油天然気集団公司)
、Sinopec(中国石油
化工集団公司)および CNOOC(中国海洋石油総公司)は、バイオディーゼルを製造する
ための原料として、Jatropha(南洋油桐)
、Triadica(南京ハゼ)
、Pistacia(楷樹)など
油分を多く含む樹木の植林実験を行った(写真 1~3 参照)
。しかしながら、この実験は
成功には至らなかった。
(出所:Wikipedia)
写真 1 Jatropha
写真 2 Triadica
写真 3 Pistacia
3-3 石炭
中国で安価に入手可能な石炭は、石炭から石油製品を製造するプラントの開発促進効果
に影響を及ぼした。2010 年 中国石炭最大手の神華集団は、CTL(Coal To Liquids)プラ
ント(108 万トン/年、内モンゴル自治区オルドス市)を稼働し、同年には石油製品小売販
売権も取得し、同集団は石油製品小売事業に参入した。前記を含め内モンゴル自治区、陝
西省および雲南省では、150 万トン/年を超える生産能力を備えた 5 ケ所の同プラントが稼
働した。2014 年 80 万トン強の CTL 由来ディーゼル油が自動車燃料市場へと投入されて
いる。
3-4 電気
過去 2 年間にわたり、中国中央政府は電気自動車(EV)産業を強化するため、多額の資
金を伴う取組みが行われた。同自動車の生産台数(2014 年 4.8 万台)および販売台数(2014
年 4.5 万台)は、最近 2~3 倍以上に増えたものの事業継続可能性については依然として
疑問が残る。なお、EV は、ガソリンを燃料とする車両の市場を分け合っているため、EV
の開発は軽油消費量に対して大きな影響を与えることはないとされている。
3-5 その他代替燃料
その他代替燃料として、LPG、ジメチルエーテル(DME、Dimethyl Ether)および燃
料メタノール(メタノール 100%)などの軽油に代わる燃料も開発されている。
5
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4. 地域別特性
1978 年からの中国政府の改革開放政策により、
同国では経済の驚異的発展に拍車が掛り、
沿岸部から中部、
北部および西部地域へと段階的に拡大発展を遂げてきている。
その結果、
同国の各地域は、それぞれ異なる発展段階に入った。
主な代表的経済・社会指標に基づき、中国の 31 行政区(4 直轄市、22 省、5 自治区)
は、5 つの経済発展段階に区分される(図 3 参照)
。
Map 1, Development Stages
in China
先進地域
(Developed)
工業化急進地域
(Rapid Industrialization)
工業化停滞地域
(Halting Industrialization)
工業化中進地域
(Middle Class)
発展途上地域
(Developing)
Heilongjiang
Halting
Industrialization
Jilin
Inner Mongolia
Xinjiang
Liaoning
Beijing
Rapid
IndustrializationGansu
Tianjin
Hebei
Shanxi
Ningxia
Shandong
Qinghai
Henan
Shaanxi
Tibet
Sichuan
Jiangsu
Middle
Class
Hubei
Anhui
Chongqing
Shanghai
Zhejiang
Developing
Developed
Jiangxi
Guizhou
Hunan
Fujian
Yunnan
Taiwan
Guangxi
Guangdong
Hainan
図 3 中国の地域別発展段階
4-1 先進地域
中国の GDP の約半分を生産する先進地域(北京、天津、上海市および 5 省)は、軽油
消費比率が最も高い。しかしながら、同地域の二次産業は軽工業化が進行してきている。
この結果 同地域経済は、さらなるサービス志向へと変化しているため、同油使用比率は大
幅に減少してきている(表 1 参照)
。
表 1 中国の地域別軽油消費量
(出所:国家エネルギー統計および 3E データベース)
2014 年消費量
(100 万トン)
64.1
2014 年
国内シェア
36.9%
2004 年
国内シェア
47.4%
工業化急進地域
33.2
19.1%
14.3%
工業化停滞地域
20.8
12.0%
10.9%
工業化中進地域
34.2
19.7%
17.1%
発展途上地域
21.2
12.2%
10.2%
先進地域
合計
173.5
6
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代替自動車燃料(CNG、LNG、バイオディーゼル)は、先進地域では活用が進んでお
り、過去数年間の軽油消費量の伸びに大きな影響を与えている。
先進地域は、中国の輸出品の約 8 割を製造しているため、その経済および地域の軽油需
要も世界金融危機(2007~2008 年にかけての国際的な金融危機、リーマン・ショック)
によって大きな影響を受けた。一方、発展済の地域経済は、他の地域よりも早くかつ力強
い回復をみせた(図 4 参照)
。同地域における軽油需要の伸びは、2015 年に向けて地域経
済成長に比例する状態に戻りつつある。
(伸率)
20%
先進地域
工業化急進地域
15%
工業化停滞地域
中進地域
10%
発展途上地域
5%
0%
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
2015 年
-5%
図 4 中国の地域別 軽油需要の伸率
(出所:国家エネルギー統計および 3E データベース)
4-2 工業化急進地域
中国の北部~北西部に位置する工業化急進地域は、大半が資源開発と原材料加工業を基
盤としている。同地域におけるエネルギーならびに他原材料の供給能力の拡大、生産能力
の拡大および各種インフラ整備への多大な投資策が、結果的に同地域における急速な工業
化の発展につながった。
これに加えて広大な同地域での物流をカバーする運送部門の発展により、軽油の使用量
が増大してきている。同油需要の伸びは、世界金融危機が起きるまでは高レベルを維持し
ていたが、
同危機の発生後 原材料需要の大幅な落込みによる生産工場の操業停止という形
で影響を及ぼした。
同地域では、自力回復を行うだけの地域経済力が力不足であったため、中国中央政府の
経済支援を受けた。徐々に支援金額を削減するという同救済プログラムの影響により、地
域経済が大きく変動した。現在も軽油の需要回復は回復途上にある。
なお、豊富な天然ガス資源に支えられ、LNG または CNG に燃料転換されたバスおよび
トラック台数増加は、軽油需要量減少の上で重要な要素となっている。
7
JPEC レポート
4-3 工業化停滞地域
中国の北部地域は、かつて同国の主要な工業集積地の役割を果たしていた。工業化急進
地域と同様に、同地域も他地域の高度成長や旺盛な需要増の恩恵を受け、短期間で工業化
段階へと発展した。
しかしながら、老朽化を迎えた大慶油田の生産減、国営企業主体の産業構造による改革
の遅れおよび市場原理の欠如などが影響し、
同地域の工業化発展の動きの多くを停滞させ、
地域経済を最も困難な状況に陥れた。現在、同地域の経済成長は国内最低となっており、
これにともない軽油の消費量も 2010 年以降低下傾向が回復していない。
4-4 工業化中進地域
同地域は世界金融危機の影響を受けつつも、同地域の各企業は先進地域にある製造業を
買収した利点を活かす対策を取った。具体策の 1 つとして各企業は、買収した系列工場向
けに原材料の納入、製品を中国各地へトラック輸送するという物流サービス機能を担うこ
とにより収益を上げた。前記トラック物流の活用により、同地域では全体として軽油需要
が回復方向に向かっている。
4-5 発展途上地域
中国の南西地域は、現在も経済発展途上状態にある。しかしながら、地域経済成長の勢
いは、比較的力強い動きを有している。同地域の経済は小さいがゆえ、他の地域ほど世界
金融危機の影響を受けなかったためであり、軽油需要の伸びも比較的健全である。
5. 軽油の需要動向と政策
現在 中国経済は、
「新常態」と称する歴史的変遷期の途上にある。2006 年からの同国経
済成長率の低下を受けて、同国中央政府は抜本的改革の実施を発表した。また、国内外を
問わず環境とエネルギーの状況が大きな変革期にもある。
このような状況下で、中国における今後の軽油需要動向には、各種要因が影響してくる
ことになる。地域データの分析から報告する。
過去数年間 軽油消費量の伸率低下および同油需要量の後退原因は、下記 2 点があげら
れる。
① 先進地域における産業構造調整
② 工業化急進地域での余剰生産設備の一時停止
中国は、
引き続き工業化および都市化への取組みを続けていることから、
軽油消費量は、
同国で一番需要量の多い油種として、経済成長と比例して増加すると予測される。今後の
同油の需要動向としては、引続き自動車用燃料をメインとしての利用が進むこと予測され
る。また、農業、漁業および鉄道部門等でも重要な燃料としても存続していくことになる。
大きな変動要因としては、同国政府の政策変更、エネルギー消費構造の変化、環境規制の
8
JPEC レポート
変更、代替燃料開発および一次エネルギーの価格動向などが、同油消費量に影響を与える
可能性がある。
中国における軽油の需要の伸びは、2015~2016 年に+3%程度まで回復し、その後の経
済成長の変化に比例して徐々に低下していくと予想されている
(図 5 参照)
。
2020 年には、
同油の年間消費量は 2 億 400 万トン(2014 年比 +3,050 万トン)になるとされている。
Chart 4, China Diesel Demand Forecasts
million
tons
(百万トン)
数量
volume
200
伸率 th
grow
(伸率)
4%
150
3%
100
2%
50
1%
0
0%
2012
2013
2014
2015
2016
2017
2018
2019
2020 年
図 5 中国の軽油需要予測
5-1 中国政府の政策
中国では、2007 年から経済成長率の低下が継続している(図 6 参照)
。同国では、今後
数年 経済ならびに政治分野での破滅的崩壊が起きる可能性はないとの想定の下に、
同国経
済は緩やかに成長を続けると予想されている。
同国中央政府は、今後も経済成長の最大化と
安定化のために、経済成長を全面的に支える刺激策を打つ姿勢を崩すことはないようであ
る。
年
図 6 中国の経済成長率の推移と予測
9
JPEC レポート
2016 年 中国では、数兆元規模の巨大投資プロジェクトが複数立ち上げられる予定であ
る。その経済効果の程は疑わしいものの、これらのプロジェクトは、北部および西部地域
の各省に対して集中的に実施される予定である。
中国中央政府は、多くの課題と困難にもかかわらず改革開放政策を堅持する可能性が高
いと予測される。同国経済を活性化し、かつ市場競争力を向上させるために、抜本的改革
対策の導入は慎重に行われることになる。
また、環境保護と地球温暖化ガス排出規制への圧力が増す中、中国政府は引き続きエネ
ルギー構造の最適化、石炭燃焼量の削減、天然ガスの活用、電力の活用および再生可能エ
ネルギーの推進への取組みを継続していくと予測される。関連して同国では、省エネおよ
びエネルギー利用効率の向上も、引き続き最重要政策となっていくと予測される。その中
で自動車燃費基準値の改善は、乗用車から大型トラックまで幅広い車種に拡大されていく
ことになる。
5-2 中国の運輸政策
中国では、
(2-1 で前述したとおり)貨物輸送量および個人旅行需要が増大してきており、
同国の交通網の整備が迅速に進められている。実際、大規模な高速道路網および鉄道網の
建設は、同国中央政府の大型投資計画の主要部分になっている。
中国での高速道路網の整備は、2013 年末時点で
約 105,000km(日本の高速道路 約 9,300km、2015
年)が整備されており、さらに 2030 年に向けて延
伸(約 118,000km)が計画されている(図 7 参照)
。
このような高速道路網の整備は、軽油の需要量増大
に好影響を与えると予測される。また、都市部での
交通渋滞緩和および大気汚染問題を改善のために、
燃料品質の改善(S 分含有量の低減)が優先的に進
められている。
図 7 中国の高速道路網(2015 年)
中国での高速鉄道の整備は、
2007 年より建設が開
始され、2014 年末時点で約 16,000km(日本の新幹
線 約 2,900km、2015 年)が整備されている。同国
では、さらに約 25,000km に向けて新線の建設も進
められている(図 8 参照)
。また、在来線において
も 10 万 km 以上が整備済であり、かつ電化区間も
伸びてきている。このような鉄道網の整備は、軽油
の需要量の減少の要因になると予測される。
10
図 8 中国の高速鉄道網(2013 年)
JPEC レポート
6. まとめ
軽油は、中国の石油総消費量の 32.2wt%を占め、最も広く利用されている石油製品であ
る。同油は、主に輸送車両用燃料としての利用されている。また、農業、漁業、各種工業、
建設、民間企業、発電所および民生用にも広く利用されている。2014 年 中国での同油消
費量は、1 億 7,350 万トン/年(約 354 万 BPD)である。
中国において全石油消費量が増加していく中、重要な役割を担ってきた軽油は、近年の
緩やかな経済成長と共に大きく低迷し始めた。さらに、同油は、消費構造においても消費
量に特徴が表れている。また、同油消費量は、代替燃料(天然ガス、バイオディーゼル、
CTL 由来ディーゼル油、燃料メタノール)の影響も受けてきている。
改革開放政策後の中国経済は、それぞれ異なる発展段階(地域)により、5 地域に分け
ることができる。沿岸部の先進地域では、輸出志向型経済と軽油消費量は他の地域よりも
早い時期からより強く世界金融危機の影響を受けた。しかしながら、その回復過程におい
ては、他の地域に勝る力強さと安定性を示した。一方、北部ならびに西北部地域では、資
源型工業経済および軽油消費量は、
生産工場の操業停止と工業力低下などの痛手を被った。
また、西南部の発展途上地域は、世界金融危機による影響はその経済力ゆえ、それほど大
きな影響を受けなかった。
中国では、経済、環境およびエネルギー状況は国内外的にも変革期の渦中にある。軽油
消費量減少および需要量低下は、先進地域における産業構造の調整および工業化急進地域
で起きた生産設備の一時停止によるものであった。
中国は、今後も工業化と都市化路線を推進して行くことが予測される。全体として軽油
消費量の増加は、経済成長に比例して推移する可能性が高い。同油需要量は、今後数年間
で徐々に回復することが期待され、2020 年には同油消費量が 2 億 400 万トン/年に達する
と見込まれている。
<参考資料>
・本報告書中のデータは別途特記されている場合を除き、すべて 3E データベースから
得たものである。
本資料は、一般財団法人 石油エネルギー技術センターの情報探査で得られた情報を、整理、分析
したものです。無断転載、複製を禁止します。本資料に関するお問い合わせは[email protected]
までお願いします。
Copyright 2015 Japan Petroleum Energy Center all rights reserved
次回の JPEC レポート(2015 年度 第 14 回)は、
「カナダの石油産業動向」を予定してい
ます。
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