...

欧州の第二世代バイオリファイナリーとその技術展開

by user

on
Category: Documents
30

views

Report

Comments

Transcript

欧州の第二世代バイオリファイナリーとその技術展開
JPEC レポート
JJP
PE
EC
C レ
レポ
ポー
ートト
2014 年度
第7回
平成 26 年 7 月 17 日
欧州の第二世代バイオリファイナリーとその技術展開
米国では政府の継続的な支援によ
り次世代型バイオ燃料の技術開発お
よび事業化がすすめられているが、
米国以外でも取り組まれている。
1. Inbicon 社(デンマーク) の状況 .................. 1
2. Beta Renewables 社(イタリア)の状況.......... 4
2.1. 事業及び技術概要....................................... 4
2.2. PROESA 技術の展開.................................. 7
3. 今回報告のまとめ .................................................. 9
欧州では、第二世代バイオリファ
イナリーの商業化デモプラントの建設、および連続運転実績の積み重ねの他、他地域への
技術ライセンス供与の動きも出てきている。今回は欧州の第二世代バイオエタノール製造
に関する二つのプロジェクト及び、技術ライセンス供与について報告する。
1. Inbicon 社(デンマーク) の状況
【基本情報】
本社: デンマーク フレゼリシア市 Skaerbaek
事業場所: デンマーク Kalundborg 市
事業内容: 商業化デモプロジェクト
採用技術: バイオケミカル法
投入原料: 麦わら 年間処理能力 30,000 トン(時間 4 トン)
製造規模: エタノール 年産約 5,400 キロリットル(93BPD)
リグニン 年産 13,100 トン(燃料用ペレット)
C5 糖蜜(炭素数 5 の糖類が主の糖蜜) 年産 11,250 トン
ほか
【事業概要】
Inbicon A/S 社は、デンマーク最大のエネルギー企業 Dong Energy A/S(本社:デンマー
ク フレゼリシア)の 100%子会社であり、2003 年にバイオマス精製技術の開発のため
に設置された。
Dong Energy は 1990 年代にエタノール製造と発電の複合システムを着想し、2003 年に
最初のパイロット装置(バイオマス前処理能力 1,000kg/h)を建設した。2007 年にパイロ
ット装置の運転会社として Inbicon が位置づけられるとともに、デンマークのエネルギ
ー庁からのデモプラントの補助金(1,030 万ユーロ)も決定。本プロジェクトは、早期の
段階から EU の補助(900 万ユーロ)も受けている。
1
JPEC レポート
デモプラントは、約 6,400 万ユーロのプロジェクト費用をかけ、首都コペンハーゲン
の西 120km に位置する Kalunborg 市にある Dong Energy の Asnaes 石炭火力発電所の側に
設置され、2009 年 11 月にプラントの建設が終了して 2010 年下期から出荷を開始してい
る。2013 年 6 月には運転時間が 15,000 時間を越えたと発表している。Kalunborg 市では
Asnaes 発電所と隣接の Statoil(本社:ノルウェー王国 Stavanger)の製油所を中心に大規
模なスチームと電力の授受を中心とした共益(Symbiosis)システムを構築しており、デ
モプラントもその一角を占めることでエネルギー効率の向上や投資削減を行っている。
Inbicon 社は、世界中で Inbicon 技術を用いた商業規模プラントの建設を働き掛けてお
り、標準的な条件としてはバイオマス処理量が日量 1,320 トンの場合、セルロース系エ
タノール生産量は年産 3,000 万ガロン(2,000BPD)
、リグニンは年産 18 万トンになると
している。商業プラントの建設に当っては、リグニンを燃料とする熱電併給プラントと
の統合システムや、第一世代エタノール工場と熱電併給プラントとの統合システムの構
築など、エネルギー効率が高くコスト競争力の高いシステムの構築を提案している。三
井造船は2011年2月より同社技術
(ソフトセルロース系バイオマスの水熱法前処理技術)
を適用したデモプラント実証試験をマレーシアにて同国政府補助を受け実施している。
その他、
中国、
北米およびブラジルへ商業化を目的とした技術の売り込みを行っている。
Inbicon Biomass Refinery 技術の北米でのライセンス業務に関しては、2008 年から
Inbicon 技術の北米展開を担当してきたコンサルタント達が 2011 年に立ち上げた
Liefmark 社(本社:米国ペンシルバニア州 Leola)が推進している。
参考:http://www.inbicon.com/Pages/index.aspx
http://www.dongenergy.com/en/Pages/index.aspx
http://www.statoil.com/en/Pages/default.aspx
http://www.symbiosis.dk/en
http://www.lampindex.com/2011/10/the-kalundborg-symbiosis/
http://www.leifmark.com/
http://www.mes.co.jp/mes_technology/research/pdf/207_04.pdf
【技術概要】
原料としては、麦わら、トウモロコシの茎、エネルギー作物やサトウキビの搾りかす
など、幅広いバイオマスが使用可能である。
前処理工程は Valmet 社(本社:フィンランド共和国 Espoo)の Steam explosion system を
採用しており、原料の麦わら(ヘミセルロース 20-25%、セルロース 30-40%、リグニン
15-20%)は Asnaes 発電所から供給される高圧スチームで連続的に加熱加水分解処理さ
れ、麦わらの植物繊維が解砕される。解砕後の工程で固形分濃度を 30%に調整し、現在
2
JPEC レポート
は DuPont 社の事業部門 Genencor 社(本社:カリフォルニア州 Palo Alto)の Accellerase
(登録商標)などの酵素を用いて、酵素加水分解法によりバイオマス原料中のセルロー
スとヘミセルロースを発酵性の糖(六炭糖:グルコースなど、五炭糖:キシロースなど)
に分解する。建設当初のプロセスでは、発酵工程は天然酵母を用いてグルコースなどの
六炭糖を主にエタノールに変換し、変換が困難なキシロースなどの五炭糖はバイオガス
に変換していた。
2013 年春から発酵工程の改良のために設備の再構築を実施し、遺伝子組み換え酵母を
使用出来るように、酵母の外部への漏出を避けるために廃水系もクローズドシステムを
採用している。改良型プロセスとして、遺伝子組み換え酵母を用いセルロースとヘミセ
ルロースの両方を同時にエタノールに変換する計画を発表している。2013 年 12 月の発
表では、Royal DSM(本社:オランダ Heerlen)の新しい酵母を用いてセルロースとヘミ
セルロースを同時に発酵させ、エタノール収率を 40%向上させたと報告している。酵素
の供給メーカーは、DuPont Genencor、Novozymes(本社:デンマーク Bagsvaerd)と Royal
DSM である。
製品エタノールは、長期契約により近接のスタットオイルの製油所に供給され、E10
ガソリン燃料に使用される。発酵残渣のリグニンは、ペレット化されて隣接の石炭火力
発電所に送られ、グリーン電力燃料として使用する他、
、副生物の C5 糖蜜は、家畜飼料
やバイオガス燃料などに利用する計画がある。
参考:http://www.eia.gov/biofuels/workshop/presentations/2012/pdf/paul_kamp.pdf
http://www.valmet.com/
http://www.dsm.com/corporate/home.html
http://biosciences.dupont.com/locations/palo-alto-california-usa/
http://biosciences.dupont.com/duponttm-genencorr-science/
http://www.bioenergy.novozymes.com/en/pages/default.aspx
【参考情報】
デュポンは 2011 年 5 月、事業部門 Genencor を含む Danisco 社の 92%以上の一般株式
を公開買い付けにより取得したと発表した。この結果、Genencor の酵素事業は現在デュ
ポンの事業部門内で運営されている。
Dong Energy は、コペンハーゲンの南西近郊の Avedore 火力発電所の燃料としてバイオ
マス(麦わら;最大 500kg 梱を時間当り 50 個)や木材ペレットも使用しており、麦わら
梱の収集・搬送にも十分な経験を有している。Avedore 火力発電所では併熱供給を行っ
ており、エネルギー効率が高いことで有名である。
2014 年 3 月、Neste Oil(本社:フィンランド Espoo)は Dong Energy と協力して再生可
能ディーゼル燃料と航空燃料の製造プロセスを開発すると発表した。上流の発酵工程ま
では Inbicon 技術を使用し、後段のディーゼル燃料等の製造に Neste Oil の Microbial oil
3
JPEC レポート
process 技術を用いると報告している。
Patriot Renewable Fuels(本社:米国イリノイ州 Annawan)は 2014 年 5 月、イリノイ州
Annawan の穀物原料エタノールプラント(年産 1.3 億ガロン、8,500BPD)の敷地内に
Inbicon 技術でのバイオマスリファイナリを建設する検討のために、Liefmark 社を用いる
と発表した。計画の事業モデルは、トウモロコシの茎葉を原料に日量 1,320 トンを処理
し、セルロース系エタノールを年産 2,500 万~3,000 万ガロン(1,600-2,000BPD)および石
炭代替となる高純度リグニンを年間 17 万トン製造するものである。
参考: http://www.patriotrenewablefuels.com/
2. Beta Renewables 社(イタリア)の状況
2.1. 事業及び技術概要
【基本情報】
本社:イタリア ピエモンテ(Piedmont)州 Tortona
事業場所:イタリア ピエモンテ州 Crescentino
事業内容: 商業規模デモプロジェクト
採用技術:バイオケミカルプロセス
投入原料:農業残渣(米藁、麦藁)
、 ダンチク(暖竹、Arundo donax)
、
非食用のエネルギー作物など 年間 160,000 乾燥トン
製造規模: エタノール年産 75,000 キロリットル(1,300BPD)
【事業概要】
Beta Renewables 社は、2011 年 10 月にイタリアの Gruppo Mossi & Ghisolfi (M&G)グ
ループの Biochemtex 社(本社:イタリア Tortona、Chemtex 社のイタリア国内部門が分離
独立)と米国ファンドの TPG Capital(旧 Texas Pacific Group、本社:米国テキサス州 Fort
Worth、TPG Biotech を含む)が 2.5 億ユーロ(3.5 億米ドル)を出資し、M&G グループ
が開発した PROESA(PROduzione di Etanolo da biomasSA -Production of ethanol from
biomass)技術の世界でのライセンス展開のために設立した合弁企業である。2012 年 10
月には Novozymes 社が 0.9 億ユーロ(1.15 億ドル)で株式の 10%を取得し、合弁企業に
加わっている。
本合弁事業は、Biochemtex 社が 2006 年から 7 年の研究期間と 1.5 億ユーロの投資によ
り開発したバイオ燃料とケミカル中間体を製造する「PROESA process」の、商業規模で
の実証と世界への技術ライセンスの展開が目的である。PROESA 技術の世界展開に当っ
ては、当初から技術開発を進めてきた M&G Chemicals Group のエンジニアリングおよび
研究開発部門である Chemtex 社(本社:米国ノースカロライナ州 Wilmington)および
Biochemtex 社と、M&G グループの中核会社で PET 樹脂の世界 3 大メーカーの一つであ
る M&G Chemicals(本社:ルクセンブルク)が積極的に推進中である。
4
JPEC レポート
Beta Renewables 社と Chemtex 社は、2012 年 1 月に米国の Genomatica 社(本社:カリ
フォルニア州サンディエゴ)と戦略的提携契約を締結、2013 年 4 月には Canergy 社(本
社:カリフォルニア州サンディエゴ)と第二世代エタノール工場の新設契約を締結、2012
年 5 月にはブラジルの GranBio(旧社名:GraalBio Investimentos )S.A.社と第二世代エタ
ノール工場の建設の契約を締結している。
また Beta Renewables は、今回の Crescentino プラント建設に 1.5 億ユーロ、2011 年以降
の研究と技術開発で 2 億ドル以上を投資したと発表している。業界情報では、プラント
建設コストの 36%がボイラー関連設備で、セルロース系バイオリファイナリー本体の建
設コストは約 0.9 億ユーロである。自家発電での余剰電力は、外部に売電される。
本プロジェクトは欧州委員会の研究技術開発プログラムのサポートを受けており、プ
ラントは 2011 年 4 月に竣工式を実施、2013 年 1 月からスタートアップ運転を行い、2013
年6 月から試作製品の出荷を開始、
2013 年10 月に大々的に操業開始の発表が行われた。
パイロットプラント(バイオマス処理量:当初は日量 1 トン、現在は時間 1 トン)は、
ピエモンテ州南部の Rivalta にある Rivalta Scrivia 研究センターに設置されており、2009
年 6 月から運転を行っている。
参考:http://www.betarenewables.com/
http://www.gruppomg.com/en
http://www.biochemtex.com/
http://www.chemtex.com/en
https://tpg.com/
http://www.tpgbiotech.com/
http://www.bioenergy.novozymes.com/en/pages/default.aspx
【技術概要】
Crescentino工場の敷地面積は15ヘクタールで、
従業員数は約100 名と発表されている。
原料としては多様なバイオマスが使用可能であるが、本プラントでは地域に豊富に作付
されている米藁を主に工場周辺 70km の範囲から収集する。
プロセスの詳細は発表されていないが、前処理工程では原料バイオマスは乾燥や粉砕
無しに直接投入され、特別な薬品の添加無しにスチームで処理される。スラリー溶液の
粘度を調整した後、次工程には同社独自の糖化並行発酵 SSCF (simultaneous
saccharification and co-fermentation)プロセスを採用している。また、加水分解工程でのス
ラリー濃度は 40%以上で、酵素の投入量も削減できていると報告している。SSCF プロ
セスは第一世代エタノールの製造プロセスでも採用されているが、酵素加水分解による
糖化とエタノール発酵を同時に行うことにより、酵素加水分解の反応阻害物質であるグ
ルコースやセロビオースを発酵により減少できるため、より効果的に全体の反応効率が
上がると言われている。また発酵槽を別に設ける必要が無いため、建設費の削減効果も
5
JPEC レポート
非常に大きいと言われている。
Novozymes 社は、Crescentino 工場で使用する酵素を最新の Cellic CTec3(商品名)とす
ることで、従来酵素と比較してバイオマスの糖類への変換率が 20%上昇したと報告して
いる。糖化液は同じ反応槽内でアルコールに変換される。反応槽内から連続的に反応液
が抜き出され、その後にリグニンが分離される。PROESA 技術の特徴は、セルロースの
効率的な糖化技術とされている。
リグニンはボイラー燃料として使用され、13MW の発電を行っている。プロセス処理
中にバイオガスが発生、熱源として使用される。装置内の水は 100%循環使用され、プ
ロセス廃水の外部排出は無い。製品製造コストは 60~70 ドル/bbl(38~44 セント/リット
ル)と発表している。
参考:http://www.bio.org/sites/default/files/beta%20renewables%20proesa%20technology%20ju
ne%202013_bio_michele_rubino.pdf
【参考情報】
Beta Renewables 社は、PROESA 技術を用いて酵素加水分解で生成した発酵可能な糖類
を分離し、発酵工程とは別の工程に送って幅広い樹脂などの製造原料として使用出来る
と発表している。
発酵可能糖類を原料とすることで、
バイオジェット燃料やブタノール、
脂肪酸アルコールや 1,4 ブタンジオールなどのバイオケミカル、フェノールやキシレン
などのリグニン由来ケミカルなど、幅広い高付加価値な製品展開が可能であるとしてい
る。
米国の Genomatica 社(本社:カリフォルニア州サンディエゴ)は 2011 年 4 月、M&G
グループとの間で包括的な戦略的提携契約に調印したと発表した。提携の内容は、バイ
オマスの糖化までの工程に PROESA 技術を適用した Bio-BDO(1,4-ブタンジオール)を
製造する第二世代プロセスの開発、バイオマスから Bio-BDO のデモプラントによる製造、
などから構成されている。
Biochemtex 社は 2014 年 5 月、イタリア政府との間で新たに 3 基の第 2 世代エタノー
ル製造プラントの建設で合意したと発表した。建設場所は Sulcis、Termini Imerese、Puglia
が予定されている。新規事業に関して、イタリア投資誘致・事業開発公社(INVITALIA)
に開発計画の正式提案を行うと報じている。
参考:http://www.genomatica.com/
http://www.invitalia.it/site/eng/home.html
6
JPEC レポート
2.2. PROESA 技術の展開
Beta RenewablesはCrescentinoバイオリファイナリーによる第二世代技術を用いた運転
実績を積み重ねてきている。前章でも述べたように、同社 PROESA 技術を用いたバイオ
リファイナリーを他国へ展開する動きがある。現在進行中の 4 つのプロジェクトについ
て紹介する。
2.2.1. 米国
(1)ノースカロライナ州(Project ALPHA)
Biochemtex 社は現在、米国ノースカロライナ州 Clinton に PROESA 技術を用いて統合
化バイオリファイナリーの建設を推進しており、プラントの建設費用は 1.9 億ドル、プ
ロジェクト費用は 3 年間で 2 億ドルと報道されている。2012 年 8 月には米国農務省
(USDA)から 9,900 万ドルの制限付き債務保証枠を得ている。Biochemtex 社は、2013
年初めに Carolina Cellulosic Biofuels をプロジェクト遂行会社として立ち上げている。
本プロジェクトは、
スウィッチグラスなどのエネルギー作物を原料
(年間 35 万トン)
に、
エタノール年間 2,000 万ガロンを製造する。2013 年 12 月に竣工、建設作業の開始は 2014
年 2 月、
運転開始は 2016 年第一 4 半期の予定である。
また、
プロジェクトは Biomass Crop
Assistance Program (BCAP) からの支援も受けている。
(2)カリフォルニア州
Canergy 社(本社:カリフォルニア州サンディエゴ)は、先進型バイオエネルギー会
社としてカリフォルニア州 Imperial Valley の農業関係者が 2010 年 6 月に創業し、2013 年
には巨大企業である米国農業協同組合(CHS Inc.、旧名:Cenex Harvest States)が参加す
るとともに出資も行っている。Canergy 社は 2013 年 4 月、Biochemtex 社および Beta
Renewables 社と協力し、トウモロコシの茎とわらを原料としてエタノール年産 3,000 万
ガロン以上の製造プラントをカリフォルニア州の Imperial Valley に建設すると発表した。
プラントの建設は 2013 年 12 月に竣工し、
プラントのスタートアップは 2016 年の計画で
ある。
原料としては、繊維質の多いサトウキビ族の Energy Cane を用いる。採用技術として
は、第一世代技術でサトウキビの前処理に用いられる液汁抽出プロセスと、搾りかすの
バガスや穂軸・茎葉をセルロース系糖類に変換する第二世代バイオマス処理プロセスの
両方を使用する。第二世代処理プロセスとして、PROESA 技術を採用する。副生成物の
リグニンは、ペレット化して発電用燃料として使用される予定である。
参考:http://www.canergyus.com/
http://www.chsinc.com/
7
JPEC レポート
2.2.2. 中国(Project Fuyang)
M&G Chemicals は 2013 年 11 月、世界初のバイオマスからモノエチレングリコール
(MEG)を製造するバイオリファイナリーを中国の Anhui(安徽)省 Fuyang(阜陽)市
に建設すると発表した。計画では、バイオマス(麦わらとトウモロコシの茎葉)処理量
は年間 100 万トンで、エタノール製造量は年間 20 万トン(4,300BPD)
、イタリアの
Crescentino 商業デモプラントの 3 倍超の大きさになる。
プロセスの前段の工程には PROESA 技術を用い、
セルロース加水分解用の酵素は Beta
Renewables 社との戦略的提携契約により Novozymes 社から 15 年以上供給される。MEG
は、ポリエステル繊維の合成や PET 樹脂の主要原料として使用される。
副生成物のリグニンは、同時に建設される 45MW のコジェネレーション発電所の燃料と
して用いられる。
本プロジェクトは、中国の Anhui Guozhen Group(安徽国禎集団、本社:安徽省合肥市)
との合弁事業で、M&G Chemicals がバイオリファイナリーの株式の過半を保有し、
Guozhen Group がコジェネレーション発電所の株式の過半を保有する。また、Guozhen
Group が原料の麦わらとトウモロコシの茎葉を年間 100 万トン確保する。建設は
Biochemtex 社が担当しコストは 5 億ドルとの報道があり、M&G Chemicals は資金繰りに
目処がつき次第建設を開始する計画である。発表では、2014 年 6 月に竣工し、2015 年 1
月から土木工事の開始、2015 年末から運転開始の予定である。また Novozymes 社の発
表では、M&G Chemicals へ 3,500 万ドルの経済的サポートを行うとしている。
本プロジェクトに関しては、ザ コカコーラ カンパニー(本社:米国ジョージア州ア
トランタ)が 2020 年までに世界中で使用している PET ボトルの原料をバイオマス由来
に変更する動きも視野に入れている。
現在のコカコーラ社の飲料容器の一部
(PlantBottle)
には、既にサトウキビ由来の PET 樹脂が用いられている。
参考:http://www.mg-chemicals.com/en
http://www.ahgze.com.cn/
http://www.coca-colacompany.com/our-company/plantbottle
http://indoebtke-conex.com/assets/files/Discussion%20Bioenergy/Mr.%20Pierluigi.pdf
2.2.3. ブラジル(Project Bioflex 1)
GranBio S.A.社(本社:ブラジル連邦共和国 Sao Paulo)は 2011 年 6 月設立で、ブラジ
ルの富豪であるGradin 家の持株会社Gran Investimentos S.A.傘下のバイオテクノロジー企
業である。GranBio 社は PROESA 技術のライセンスを受け、現在ブラジル北東部の
Alagoas 州で南半球最初の第二世代エタノール工場(製造能力:年産 82,000 キロリット
ル(1,400BPD)
)を建設中である。São Miguel dos Campos 工場では、サトウキビの茎を
主原料にして 35 万トンのバイオマスを使用する計画である。
8
JPEC レポート
2012 年 11 月に竣工、建設作業は 2013 年 2 月から始まっており、2014 年の第二 4 半期
にはスタートアップの予定である。プロジェクトの運営は、GranBio 社の子会社の Bioflex
Agroindustrial が行う。Biochemtex がエンジニアリングを請け負っている。プロジェクト
費用は、約 1.15 億ユーロと報じられている。
参考:http://www.granbio.com.br/en/
http://www.biochemtex.com/references/4/granbio
http://www.renovenergia.2100.org/annexes/Sessions/5.2_Session_B1/LB.1/LB.1_text.pdf
3. 今回報告のまとめ
欧州においても第二世代バイオリファイナリーの技術開発は商業デモプラントの段階ま
で進んでいるが、Inbicon 社は政府補助金を受けてのプラント操業である等故、助成期間終
了までの技術を確立や、その後の技術のライセンス供与による横展開におる利益創出が課
題と言える。
Inbicon 社の Biomass Refinery 技術と Beta Renewables 社の PROESA 技術に共通するとこ
ろは、原料前処理工程において下流側の工程が煩雑にならないように特別な薬品を用いな
いで高圧スチームでのセルロースの解砕を行うこと、最新の酵素を用いることによるセル
ロースの効率的な糖化、などがあげられる。
また、セルロースの糖化工程の異なる利用法として、セルロース系糖類を他のバイオプ
ラスチックなどの原料として用いる動きも出てきた。今回は米国での 1,4-ブタンジオール
の製造と中国でのモノエチレングリコールの製造の取り組みを報告した。今後第二世代バ
イオリファイナリーによる高付加価値の下流製品製造の可能性もある。
酵素加水分解工程では、酵母発酵工程との一体化による工程の簡略化と反応阻害物質の
抑制も技術的な前進と考えられる。また、酵素技術の改良によりバイオマス糖類への変換
効率向上、エタノール酵母発酵でのヘミセルロースの同時処理も報告されている。
以上
本資料は、一般財団法人 石油エネルギー技術センターの情報探査で得られた情報を、整理、分析
したものです。無断転載、複製を禁止します。本資料に関するお問い合わせは[email protected]
までお願いします。
Copyright 2014 Japan Petroleum Energy Center all rights reserved
次回の JPEC レポート(2014 年度 第 8 回)は
「コロンビアとエクアドルの石油・エネルギー産業」
を予定しています。
9
Fly UP