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米国の商業規模の第二世代バイオリファイナリーの状況

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米国の商業規模の第二世代バイオリファイナリーの状況
JPEC レポート
JJP
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EC
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レポ
ポー
ートト
2014 年度
第5回
平成 26 年 6 月 27 日
米国の商業規模の第二世代バイオリファイナリーの状況
米国では次世代型バイオ燃料の技術開発および事業
【内容】
化がエネルギー省(DOE)および農業省(USDA)の
1.
強力な支援により行われているが、商業設備の建設お
2.1) KiOR 社の状況
p.3
よび稼働は当初計画から大きく遅れている。第二世代
2.2) Ineos Bio 社の状況
p.5
バイオリファイナリーには、商業生産を開始したプロ
2.3) POET 社の状況
p.6
ジェクトもあるが、技術面・財政面の課題からくる計
2.4) Abengoa 社の状況
p.7
画の遅延が多く見受けられ、取り巻く環境は厳しさを
2.5) DuPont 社の状況
p.8
増している。今回は、米国内の商業規模第二世代バイ
2.6) Fiberight 社の状況
p.9
オリファイナリーの最新状況を報告する。
3.
p.11
各 PJ の状況概要
今回報告のまとめ
p.1
1. 各プロジェクトの状況概要
米国環境保護庁(EPA)が 2013 年 11 月に発表した 2014 年の自動車用ガソリンと軽油に
混合するバイオ燃料の義務量案は、初めて当初目標値を下回る結果となった。米国内のエ
タノールの
「ブレンドの壁」
(参考を参照)
、
ガソリンの需要の停滞から減少への予測変化、
再生可能識別番号(RIN)クレジット価格の変動などに加えて、第一世代のエタノール製
造の中心原料であるトウモロコシ価格の不安定など、バイオ燃料を取り巻く環境は厳しい
ものがある。
さらに第二世代バイオ燃料に関しては、EPA は 2013 年セルロース系バイオ燃料義務量
を、2007 年制定時の 10 億ガロンから、600 万ガロンへ引き下げた後、再度 81 万 185 ガロ
ンに大幅に引き下げたと発表した。また、2014 年の同義務量を 1,700 万ガロンと提案した
ものの、最終決定には至ってはおらず、不透明な状態が続いている。
今回の報告では、
既に出荷を開始したものと 2014 年末までに運転開始予定の第二世代バ
イオリファイナリー6 商業プロジェクトの最新情報を、インターネット情報をもとに報告
する。各プロジェクトの概要を表 1 に示す。KiOR 社は生産停止中、生産出荷しているの
は Ineos Bio 社のみである。今年の夏頃までに立ち上げ予定が 2 プロジェクト、年内予定が
1
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2 プロジェクトである。Abengoa Bioenergy は 1 月時点では数週間内に生産開始予定と発表
されていたが、複数のメディアで遅れる可能性が報じられている。
参考:http://www.marubeni.co.jp/research/report/industry/global/data/Diamond140212MM.pdf
表1 商業規模の第二世代バイオリファイナリーの概要(運転中と建設中)
主企業名と実施場所
現在の状況
備 考
KiOR
ミシシッピ州
Columbus
製品:バイオ燃料(ガソリン、ディーゼル油)
能力:年産 約 1,300 万ガロン
技術:流動接触分解
原料:北米産のマツ科の針葉樹
状況:2013 年 3 月から出荷開始したが
現在生産停止中
Ineos Bio
フロリダ州
Vero Beach
製品:バイオエタノール
能力:年産 800 万ガロン
技術:熱化学・バイオケミカル複合プロセス
原料:都市固形ゴミと木質バイオマス
状況:2013 年 8 月から出荷開始済み
DOE のデモ段階の
プロジェクト
POET-DSM
Advanced
Biofuels, LLC
アイオワ州
Emmetsburg
製品:バイオエタノール
能力:年産 2,500 万ガロン
技術:バイオケミカル プロセス
原料:トウモロコシの穂軸と茎葉
状況:2014 年 6 月までには運転開始予定
DOE の商業化
プロジェクト
Abengoa Bioenergy
US Holdings, LLC
カンザス州
Hugoton
製品:バイオエタノール
能力:年産 2,500 万ガロン
技術:バイオケミカル プロセス
原料:麦わらが主の農業残渣
状況:2014 年後半までには運転開始予定
DOE の商業化
プロジェクト
DuPont
Industrial Biosciences
アイオワ州
Nevada
製品:バイオエタノール
能力:年産 3,000 万ガロン
技術:バイオケミカル プロセス
原料:トウモロコシの茎葉や収穫残渣
状況:2014 年第 4 四半期に運転開始予定
Fiberlights, LLC
アイオワ州
Blairstown
製品:バイオエタノール
能力:年産 600 万ガロン
技術:バイオケミカル プロセス
原料:都市固形ゴミ
状況:2014 年末までには運転開始予定
2
USDA の支援
プロジェクト
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2. 各商業プロジェクトの状況
1)
KiOR
本社:テキサス州パサデナ
事業場所:ミシシッピ州コロンバス
採用技術:流動接触分解プロセス
投入原料:サザンイエローパイン(北米産のマツ科マツ属の針葉樹)ほか
日量 500 乾燥トン
製造規模:石油代替ガソリンおよび軽油 年産 約 1,300 万ガロン
(約 49,000 キロリットル)
【事業概要】
KiOR は、2007 年に Khosla Ventures(KV)と、一段触媒プロセスでセルロース系再
生可能燃料を造る思いを持っている触媒化学者たちで創業された会社である。採用技術
としては、製油所などで一般的に用いられている流動接触分解(FCC:Fluid Catalytic
Cracking)プロセスを採用し、新たなプロセス開発によるリスクを下げると共に、製品
の石油代替燃料も既存の石油インフラを活用することでコストダウンを図っている。創
業後にパイロットプラントによるプロセス基本評価を実施し、2010 年年初には 400 倍
のスケールアップでデモンストレーション装置(原料 10 乾燥トン/日、生産量 15BPD)
が完成し検討を行ってきた。
2010 年 9 月、
ミシシッピ州の州議会が KiOR の商業設備の建設に 7,500 万ドルの無利
子融資を承認し、2011 年の第一四半期からミシシッピ州 Columbus で商業生産設備の建
設(原料 500 乾燥トン/日)を行っていた。2012 年 11 月からスタートアップを行い、2013
年春から製品出荷を開始している。更に Columbus で製造能力が約 4,000 万ガロン/年の
標準型生産設備(原料 1,500 乾燥トン/日)の建設を行っている。KV は、米国内で幅
広く取り組みを行っているベンチャーキャピタルの一つで、セルロース系エタノールの
製造会社と石油代替燃料をターゲットに投資を行っている。KiOR に対しては、技術実
証の為の研究開発プログラムとパイロットプラントでの試作評価の段階において 1,000
万ドルを投資するなど、本事業の牽引役となっている。
しかし、2014 年 1 月にミシシッピ州の同施設でのバイオ燃料製造を停止を発表し、
さらに経営難のため、2,500 万ドルの融資を受ける事を 4 月に発表した。一定の生産量
が期待されていた KiOR の失速などにより、EPA は RFS2 の 2013 年セルロース系バイ
オ燃料義務量の大幅な下方修正を余儀なくされている。
【技術概要】
技術の中心は、FCC プロセスである。原料のバイオマスは工場近隣から調達できる
非食用のものであり、主に Southern Yellow Pine が低コストで価格が安定し米国南東部に
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豊富に存在することから主原料となっている。その他の原料としては幅広いバイオマス
が使用可能で、トウモロコシの穂軸などの農業残渣、スイッチグラスなどのセルロース
系バイオマス、サトウキビのバガス(搾汁残渣)などがあげられている。
原料はバイオマス処理プロセスで調整後、ライザー反応器に挿入され触媒再生塔か
らの高温の触媒と合流し、短時間の滞留時間内に接触分解により再生原油と軽質ガスお
よびコークを生成する。セパレーター上部からの再生可能原油と軽質ガスおよび水分は、
冷却されて生成油回収槽に送られ、液化した再生可能原油は次工程の水素化処理装置で
改質後にガソリンとディーゼル油に分離される。
触媒とコークは、ライザー反応器の上部に設置されたセパレーターで分離され、触
媒再生塔に送られて付着コークを燃焼させて触媒の再生を行う。再生触媒は反応器に送
られ、循環使用される。生成油回収槽の上部から分離された軽質ガスは、コジェネレー
ション設備に送られて蒸気発生と発電に使用される。蒸気と電力は、装置内で利用され
る。
製品のガソリンとディーゼル油のブレンド基材は、国内の既設の輸送施設を有効利
用しながら、製油所や燃料ターミナルなどに出荷される。
【参考情報】
KiOR 社は、燃料引取り契約(Fuel Offtake Agreement)を Hunt Refining Company(本
社;アラバマ州タスカルーサ)
、Catchlight Energy(本社;ワシントン州フェデラルウェ
イ)および FedEx Corporate Services(テネシー州メンフィス)など数社と既に締結して
いる。
Catchlight Energy は、木材販売大手の Weyerhaeuser Company(本社;ワシントン州フ
ェデラルウェイ)とエネルギー大手の Chevron Corporation(本社;カリフォルニア州サ
ンラモン)の子会社の Chevron Technology Ventures との 50-50 合弁会社で、木材ベース
のバイオ燃料の事業化を目的に設立された会社である。
参考:http://www.kior.com/
http://www.kior.com/content/?s=6&s2=55&p=55&t=Virtual-Plant-Tour
http://www.huntrefining.com/About.aspx
http://www.catchlightenergy.com/
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2)
INEOS Bio
本社:イリノイ州ライル
事業場所:フロリダ州インディアンリバー郡ベロビーチ
採用技術:熱化学・バイオケミカル複合プロセス(注1)
(注 1:熱化学プロセスと発酵プロセスの両方を含むもの)
投入原料: 野菜くず、庭園の雑草、都市固形ゴミと木質バイオマス
日量 300 乾燥トン
製造規模: エタノール年産 800 万ガロン(約 24,000 トン)
、発電量約 6MW
【事業概要】
スイス本社のグローバル化学企業 INEOS 社のビジネス部門 INEOS Bio 社は、事業パ
ートナーの New Planet Energy, LLC(本社:テキサス州 League)とインディアンリバー
バイオエネジーセンターを設立し、
インディアンリバー郡のゴミ埋立場に隣接して工場
を建設し 2012 年 7 月に完成、その後は多様な原料を用いての試運転を経て 2013 年 7
月末から商業生産を開始し、8 月から製品を出荷している。しかし、2013 年末の発表で
は、2014 年の安定運転に向けてプロセス改善に取り組んでいると報告しており、商業
生産については課題を抱えている。
プロジェクト費用は 1.3 億ドル以上と報告しており、今までに DOE の助成や USDA
から保証枠の承認を得て推進して来ている。
【技術概要】
ガス化と発酵の複合プロセスで、主要な 4 工程から構成されている。原料はプロセス
廃熱で乾燥後、2 段ガス化の第 1 工程に送られる。第 2 工程は発酵工程で、第1工程か
らの合成ガスは天然の嫌気性バクテリアを用いた発酵槽で選択的にエタノールに変換
される。第 3 工程は精製工程で、前工程からのエタノールは精製され、脱水後にガソリ
ンとブレンドされてフロリダ州の E10 グレードの製品となる。
第 4 工程は廃熱回収で、
スチームを発生させプラント内で使用すると共に 6MW の発電を行い、余剰分は外販さ
れる。
参考:http://www.ineos.com/businesses/INEOS-Bio/Company/
http://www.ineos.com/Global/Bio/Company/Ineos%20US%20Bio%20bro_AWFinal.pdf
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3)
POET-DSM Advanced Biofuels, LLC (Project LIBERTY)
本社:サウスダコタ州 スーフォールズ、 事業場所:アイオワ州エメッツバーグ
採用技術:バイオケミカルプロセス
投入原料:主にトウモロコシの穂軸と茎葉、日量 700 乾燥トン
製品内容:エタノール年産 2,500 万ガロン、電力 25MW
【事業概要】
事業主体は、Poet 社とオランダの Royal DSM N. V.の合弁の POET-DSM 社になってい
る。プラントは POET Biorefining の Emmetsburg 工場(エタノール年産 5,500 万ガロン)
に隣接して 2012 年に建設を開始している。隣接工場と道路などのインフラを共用する
と共に、
バイオリファイナリーからの余剰電力は隣接工場で有効利用される計画である。
2014 年 2 月時点の発表では、既に 1 月からコミッショニング作業が始まっており、
第 2 四半期中に完成の予定で、6 月までには運転を開始する予定と報じられている。原
料としてトウモロコシの穂軸と茎葉を用い、今年の生産量は 700 万ガロンから 1,200 万
ガロンの計画である。立ち上げ時の製造能力は年産 2,000 万ガロンで、徐々に計画能力
へ増強予定。プロジェクト費用は約 2.5 億ドルである。
DSM 社は酵素と酵母の技術や化学プラント関連技術を保有し、Poet 社はバイオプロ
セス技術や原料調達の知識を保有、オランダの Novozymes 社が商業運転用酵素の最適
化に関して共同取り組みを行っている。
資金面では、DOE からの補助と債務保証、アイオワ州関係機関からの資金援助など
を受けている。
【原料調達】
2013 年秋にスタートアップ用として半径 40 マイルの農家から約 10 万トンのバイオ
マスを収穫済みで、
この量で 2014 年秋の収穫時期まで対応すると報告されている。
2014
年には、
半径 30 マイル内の 12 万エーカーの農地からトウモロコシの茎葉を集める計画
である。
過去に農地の収量に影響を与えない収穫方法の検討をアイオワ州立大などと共同で
行っており、2011 年には 5 万エーカー、2012 年には 8 万エーカーからトウモロコシの
茎葉の梱を収集し、テストを重ねてきている。フル操業時には、畑作面積が 500 から
750 エーカーの 425 農家から 60 万梱のトウモロコシの茎葉を集める計画である。トウ
モロコシの作付面積 1 エーカー当り 1 トン(バイオマス総量の 25%以下)の原料バイ
オマスを収集可能としており、バイオマス収量の 75%は農地管理用として畑作地に残
す必要があるとしている。他の会社の商業化プロジェクトでも、同様な考え方である。
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【技術概要】
原料のトウモロコシの穂軸などを前処理し、酵素加水分解と発酵処理を行い、エタノ
ールを製造する一般的な製造工程である。
プロセスからのリグニンを含む固形分等は、
嫌気性消化装置に送られてバイオガスに
転換され、新設のセルロース系エタノール製造装置の動力源となると共に、既設のエタ
ノール装置で使用されている天然ガスの 80%を置き換える計画である。
【関連情報】
POET 社は、米国内の 27 ヶ所のエタノール製造工場で年間 15 億ガロン以上のエタノ
ールを製造している。
参考:http://www.poet.com/
http://poetdsm.com/liberty
http://www.poet.com/innovation/cellulosic/projectliberty/index.asp
4)
Abengoa Bioenergy U.S. Holdings, LLC
本社:カンザス州ヒューゴトン、事業場所:カンザス州ヒューゴトン
運営者名:Abengoa Bioenergy Biomass of Kansas
採用技術:バイオケミカルプロセス
投入原料:農業残渣(麦わらが主) 日量 1,200 トン
製品内容:エタノール 2,500 万ガロン、電力 22MW
【事業概要】
スペインの Abengoa Bioenergy が推進しており、2007 年に DOE の補助が決定、2009
年から何度か事業内容の見直しを行い、2011 年 7 月にプラント建設を開始した。装置
の完成は 2013 年 4Q を予定しており、2014 年 1 月時点で数週間内に運転開始との報道
が見られたが、最新の複数の報道では今年後半に運転開始となっている。
プロジェクト総費用は 2011 年時点の見込みで 3.5 億ドル超と報告されており、DOE
が 2007 年に助成金 7,600 万ドルを承認、2011 年 8 月に債務保証 1 億 3,200 万ドルを承
認している。
【原料調達】
2014 年 1 月時点の報道によれば、2014 年の必要量は約 10 万トンで、フル操業では年
間 32 万トンが必要である。原料バイオマスはエタノール製造用と発電ボイラー用を合
わせて日量 1,000 トンと報告されている。
原料の麦藁の収穫時期は 6 月から 7 月にかけて、
トウモロコシの茎葉の収穫は秋にな
るため、バランス良く原料の確保が出来ると期待している。
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【技術概要】
原料は前処理工程で微粉砕され、
酵素加水分解および酵母発酵によりエタノールを製
造する。
ボイラー燃料にはエタノール製造プラントからの発酵残渣中のリグニン等固形
残渣と排水処理設備からのバイオガスを一緒に用いて熱源確保と発電を行い工場内に
供給する。
【関連情報】
パイロット装置はネブラスカ州ヨーク(能力;年産 75 トン)に、デモ装置はスペイ
ンのサラマンカ(能力;年産 4,000 トン)とフランスの Arance(能力;年産 40,000 ト
ン)に設置されている。
参考:http://www.abengoabioenergy.com/web/en/index.html
http://www.abengoabioenergy.com/web/en/acerca_de/oficinas_e_instalaciones/bioetanol/
eeuu/kansas/index.html
5)
DuPont Industrial Biosciences
本社:デラウェア州ウィルミントン、 事業場所:アイオワ州ネバダ
採用技術:バイオケミカルプロセス
投入原料:トウモロコシの茎葉などの収穫残渣物 年間 375,000 乾燥トン
製品内容:エタノール年産 3,000 万ガロン
【事業概要】
DuPont は 2000 年からセルロース系エタノール製造用の酵素研究を行い、バイオマス
前処理の幅広い条件にも耐える酵素を開発している。
2010 年から、アイオワ州で原料のサプライチェーンの検討を複数年計画で開始して
いる。
工場の建設は 2012 年 11 月末から始まっており、2014 年の中頃に建設を終了し第 4
四半期には運転を開始する予定。建設費用は、DuPont のプロジェクト資料では約 2 億
2500 万ドル、
報道では2 億6 千万ドルとされている。
新工場は、
既設のLincolnway Energy,
LLC のトウモロコシ原料バイオエタノール工場(2006 年稼働、年産能力 5,000 万ガロ
ン)の側に建設され、既設の公共インフラの活用や原料運搬、製品物流などで相乗効果
が期待できると報じられている。
【原料調達】
DuPont は 2013 年時点で、半径 35 マイルの範囲内の 225 軒の農家と契約を結び、概
ね 6 万エーカーのトウモロコシ畑のトウモロコシの茎葉を抑えている。しかし、フル操
業のためには約 500 件の農家との契約が必要としており、約 20 万エーカーのトウモロ
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コシ畑から約 60 万梱の収集が必要とされる。
工場では 10 エーカーの原料貯蔵サイトに
最大4万梱のトウモロコシの茎葉を貯蔵可能で、今年2月初旬で 90%の貯蔵率と報告
されている。
【技術概要】
製造工程は、
原料の粉砕、
前処理、
独自開発の酵素によるリグノセルロース類の糖化、
5 糖類と6糖類の酵素発酵によるエタノールの製造、および分離の工程から成り立って
おり、一般的なバイオケミカルプロセスと考えられる。
【関連情報】
テネシー州ボノアで、2009 年から年間処理能力 25 万ガロンのパイロット装置を用い
てトウモロコシの茎やスウィッチグラスを用いて検討を行って来ている。
参考:http://biofuels.dupont.com/
http://www.dupont.com/corporate-functions/news-and-events/corporate-news-releases.ht
ml
http://biofuels.dupont.com/cellulosic-ethanol/nevada-site-ce-facility/
6)
Fiberight LLC
本社:メリーランド州ケイトンズビル、 事業場所:アイオワ州 Blairstown
採用技術:バイオケミカルプロセス
投入原料:都市の固形ごみ 日量 650 トン
製品内容:エタノール年産 600 万ガロン
【事業概要】
Fiberight 社は 2007 年に創業されたが、社長の Craig Stuart-Paul はメリーランド州で最
初の少量生産のビール製造会社を立ち上げ、酵素発酵で約 20 年の経験を有している。
また、1994 年からメリーランド州やバージニア州で幅広くリサイクル業を行い、2004
年には 1996 年に立ち上げた Fairfax Recycling, Inc.を Fortune 50 企業に売却するなど、廃
棄物処理分野でも幅広い経験を有している。
2008 年から 2009 年にかけてパイロット装置での研究を行い、2009 年 11 月に
Blairstown にある閉鎖中のドライミルタイプのトウモロコシ原料エタノール製造工場
(15 年間使用、製造能力 540 万ガロン/年)を購入、初期投資額は工場の改造費を含
めて 4,000 万ドルと報じられている。今回の改造により 27 基の貯蔵タンクが追加され
る計画で、工場敷地は既設エリアの 5 倍に拡張される予定。既に 4 月から建設資材の搬
入が始まっており、改造工事は近く始まる予定である。
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JPEC レポート
Fiberight 社は 2012 年 8 月に EPA から工場の建設許可を得ており、2013 年 8 月にはア
イオワ州のマリオン市と資源回収契約を締結した。マリオン市との契約で、2015 年 1
月 1 日までの運転開始が義務付けられている。
今回の装置はプロトタイプの商業設備と位置付けられており、
処理能力は半径 5 マイ
ルに 10 万人以上が住むエリアをマーケットとして設定している。バージニア州で 7 年
以上研究開発を行っており、デモ装置で 3,500 時間の連続運転実績がある。今回は 5 倍
のスケールアップとされる。
本プロジェクトの資金調達は、USDA が 2,500 万ドルの債務保証を実施、Iowa Power
Fund から 290 万ドルの補助金、民間投資が 2,000 万ドルとなっている。
【原料調達】
立ち上げ当初には日量 350 トンの廃棄物収集車で集められたゴミが、マリオン市が
1,200 万ドル以上をかけて建設した物質資源回収施設(Material Resource Recovery
Faculity)に運ばれる。最初の分別では、猫のトイレの砂や小石のような小さな物質と
大きめのゴミが分離される。残存物はコンベアで優れた自動分別システムに送られ、プ
ロセス処理するものとリサイクルするものに分別される。食品廃棄物、堆肥に出来るも
の、再利用不可能な紙類や他の有機物ですりつぶしてパルプ化できるものは、回転式ド
ラムの粉砕機に送られ、加熱・清浄化される。ポップコーン状になった原料は篩分けで
更に清浄化され、Blairstown の工場に送られる。
有機物を含んだ洗浄水は、マリオンにある Fiberight 社の嫌気性の圧力釜を持つ処理
設備に送られ、圧縮天然ガスに変換される。本設備の費用は、初期費用 1,000 万ドルと
報じられており、
拡張工事に 500 万ドルが掛かる予定である。
リサイクル可能なものは、
紙類、プラスチック類、金属、他のリサイクル可能物などに分けて梱包し、処理業者へ
と送られる。20%の残存物は、埋め立て処理される。
【技術概要】
工場で受け入れた有機ゴミは、大型ドラムに入れられ、分別、洗浄、前処理が行われ
糖化される。糖化液は、既設工場の酵素加水分解および酵素発酵工程に送られ、エタノ
ールに転換された後で分離工程を経て蒸留工程へと送られる。
分離工程からのケーキ状
未反応物は、嫌気性条件の圧力釜に送られ、バイオガスに転換される。バイオガスは、
工場内で補助燃料として使用される。製品はエタノールとバイオガスで、酵素は低温の
水循環システムにより循環利用される。
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【関連情報】
マリオン市は、州都デモインから西北西に約 200km 離れた Cedar Rapids メトロ地区
の北西部に位置する。周辺の市も本プロジェクトに関心を持ち、Fiberight 社とコンタク
トしていると報じられている。
参考:http://fiberight.com
3. 今回報告のまとめ
米国の第二世代バイオリファイナリーは、商業生産がはじまったものもあるが、技術
面・財政面の課題からくる計画の遅延が多く見受けられる。
各社の採用技術の特徴は、既に長年の実績があり確立されたプロセスを中心部分に据
えて技術的ハードルを下げ、原料の調達・前処理技術や触媒・使用酵素に独自性を持た
せていることである。既存技術を採用したといっても、KiOR社の採用した流動接触分解
プロセスでは、反応塔と再生塔の熱バランスの最適条件や反応率を見ながら検討するな
ど困難な課題が存在しており、今後の生産実績を見ながら技術確立の状況を見守ってい
く必要がある。
採用原料は様々であるが、トウモロコシの茎葉などの農業残渣を原料とする3プロジェ
クトでは、最大能力での商業生産時に年間を通じて安定的に十分な原料を確保できるか
が大きな課題になっており、各社各様の工夫で対応を考えている。
複数の会社が、稼働中のトウモロコシ由来エタノール工場に隣接して第二世代バイオ
エタノール工場を設置するメリットを指摘している。インフラの共用による投資の抑制
や、出荷設備の共用による効率化などが上げられている。既設のエタノール工場の経営
も不安定な中で、今後の取り組み方として有力な方法となりうるかを含め、今後の展開
を、継続して注視する必要がある。
以上
本資料は、一般財団法人 石油エネルギー技術センターの情報探査で得られた情報を、整理、分析
したものです。無断転載、複製を禁止します。本資料に関するお問い合わせは[email protected]
までお願いします。
Copyright 2014 Japan Petroleum Energy Center all rights reserved
次回の JPEC レポート(2014 年度 第 6 回)は
「インドネシアのエネルギー産業」
を予定しています。
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