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名取川閖上地区における水辺を活かしたまちづくりについて 仙台河川
名取川閖上地区における水辺を活かしたまちづくりについて 仙台河川国道事務所 工務第一課 ○工務第一課 工務第一課 課長 計画係長 計画係員 松芳 倉本 片野 健一 洋平 美紀 1.はじめに 名取川河口部右岸の閖上地区は、古くから海や川の恩恵を受け漁港町として栄え てきた。また、近年では「ゆりあげ港朝市」、「ゆりあげビ-チ」、「なとり夏ま つり」など、隣接市町からも多くの人々が来訪する交流の場として、水辺と共生す る「まち」のイメ-ジを形成していた。 しかし、東日本大震災により閖上地区の中心市街地では建物の流失や損壊など、 壊滅的な被害を受けたことから名取市では「名取市震災復興計画」を策定し、産学 官民連携の地域力による閖上地区の復旧・復興に向けたまちづくりを進めている。 このような背景のもと「かわまちづくり」と「河川防災ステーション」は、地域 の復興に資すること、名取市震災復興計画に基づく施設整備と足並みを揃えて遅滞 なく整備することが不可欠である。 このため、施設整備計画の策定にあたっては 学識者、地域住民、関係機関等から指導・助言 を仰ぐことを目的として「水辺を活かしたまち づくり検討会」を設立し進めた。 本報告は、施設整備計画の策定に向けた取り 組みについて報告するものである。 図-1 各自事業エリア 2.整備方針 「施設整備計画の策定」にあたっては、以下の整備方針に基づき進めた。 2.1「かわまちづくり」整備方針 ① 閖上地区が本来有する豊かな水辺空間(川、海、運河)やあんどん松等の歴史 的資源を活用した整備 ② 閖上地区居住者の日常的な「憩い」や「やすらぎ」の活動の場としての利用だ けでなく、地区外からの来訪も想定した整備 ③ 現在みられる河川空間利用を踏まえるとともに、魅力あるまちづくりに向けた 新たなニーズを把握した整備 写真-1 あんどん松 図-2 側帯整備イメージ 図-3 高水敷利用イメージ 2.2「河川防災ステーション」整備方針 ① 緊急時における効率的・効果的な復旧活動を踏まえた適切な施設配置等に留意 するとともに、かわまちづくりと一体となった平常時利用も配慮した整備 ② 復旧資材の備蓄については、安全管理や地区住民の居住空間等からの景観に配 慮した整備 ③ 水防センターは、平常時においても地域の交流拠点となるような利活用方策に ついて地域のニーズを反映した整備 図-4 平常時イメージ 図-5 洪水時イメージ 3.施設整備計画の策定に向けた取り組み 3.1 検討部会の設立 主に緊急時の活動拠点や緊急資材のストックヤードとして整備する「河川防災ス テーション」と、平常時の利活用に主眼を置いて整備する「かわまちづくり」を有 機的に結びつけ、相乗的な活用効果が図れる整備の検討にあたっては、検討会に加 えて、「防災拠点」と「かわまちづくり」に係る 2 つの検討部会を立ち上げ、専門 的・技術的観点から計画の具体化を図った。 図-6 水辺を活かしたまちづくり検討に係る体系図 3.2 地域住民意見・要望の聴取と反映 将来的に利用される地域住民の意見と、閖上地区の歴史・文化・地域特性を踏ま えた“かわ”と“まち”が一体となった利活用や景観への配慮が不可欠である。し かし、閖上地区においては、復興事業を鋭意進めている段階であることから地域に 居住されている方がいない状況である。そのため「まちづくり協議会の枠組みの活 用」および「報告会の開催」により地域の意見・要望を聴取し、計画・設計等へ反 映した。 写真-2 市民への検討状況報告 写真-3 報告会での市民からの意見 3.3 ICT技術の活用 報告会、検討会および検討部会の説明においては、イメージパースとあわせて“C IMによる3次元モデル”と“UAVによる空撮動画”及び“模型”を活用した。 これにより、整備範囲全体の様々な視点からの景観的特徴のほか、平面的に確認す ることのできなかった傾斜や高低差の変化を立体的に把握することができ、検討内 容の理解促進や相互理解、合意形成に寄与したと考えられる。さらに各施設設計の 可視化により干渉チェックができたため、設計初期段階での見直しにも役立った。 写真-4 CIM による 3 次元モデル 写真-5 CIM を活用した説明 写真-6 UAV 空撮動画を活用した説明 写真-7 アニメーションを活用した説明 3.4 委員意見の反映 委員からの指導・助言および意見の反映については、次回の検討会等までにそれ らを反映した修正(案)を作成し、検討会および検討部会へフィードバックすること で衆議一決し、より良い施設整備検討を行うことができた。 ≪第 1 回資料≫ ≪第 2 回資料≫ 図-7 委員意見を反映した一例 3.5 維持管理の考え方 施設整備計画の策定にあたっては、整備後の維持管理を 見据え、施設規模・機能と維持管理のトレードオフを考慮 しバランスのとれた検討を実施する必要がある。 維持管理については、これまでの導入事例を参考とし、 維持管理の容易性・持続性を考慮し、閖上地区に適した維 持管理計画の考え方を提案した。 図-8 トレードオフ概念図 4.今後の展開 オープンフェ等の出店を希望されている事業者の方々や名取市等により構成さ れる運営協議会を設立し、関係者が一体となって具体的な利活用および維持管理等 の運用計画について検討を進めていくことを予定している。 また、将来的には、「閖上地区の担い手となる方々」および「水辺に関心を寄せ る方々」とともに、「河川協力団体による維持管理」や「ミズベリング・プロジェ クト」も視野に入れた積極的な水辺利活用の検討を予定している。 5.まとめ 「かわまちづくり」と「河川防災ステーション」については、名取市復興計画に 基づく土地区画整理事業と併せた整備を進め、地域の復興・再建を支援すること、 施設整備検討段階で整備後の利活用・動線・景観・維持管理を見据えた検討を行う ことがもっとも重要である。 また、整備後には「かわ」と「まち」が有機的に結びついた水辺空間の創出によ り「安全・安心かつ憩い・やすらぎのある地域」、「地域資源・地域特性を活かし た魅力的かつ賑わいのある地域」となり、多くの方々から親しまれる河川空間とな ることを目標に引き続き事業を進めていきたいと考えております。