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油圧制御弁におけるスプール回りの加れの数値解析

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油圧制御弁におけるスプール回りの加れの数値解析
43巻 1号 (19911)
`
生 産
研
究
65
1 1 1 1 1 : l l l l l l l l l l l l l l l l l : l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l l ! │ │ │ │ │ │ 1 l l l l l l l l l l l l l l l l l l究
l l l l l速
l l l l l報l l l l l l l l l l l l
特
集
12
UDC 532 52 :532 517 4 : 62-822
油圧制御弁 にお けるスプール 回 りの流れの数値解析
A numerical study of floM′ around a spool in a hydraulic control valve
小
林
敏
雄
* ・住 田
Toshio KOBAYASHI
l . :ま じ め
隆
**
and Takashi SUMITA
に
油圧機器の性能を改善するために内部の流れの状態を
定量的に把握する必要性が近年 ますます強 くなってきて
いる。流れの様子 を理解す る一 つの有力な手段 として
CFD(数 値流体力学)が あ り,最 近のスーパ ・コンピュー
タの目覚 ましい進歩 により,CFDは その応用分野 を広げ
つつある。
油圧機器 の内部 の流れの解析 において もCFDを 用 い
のは過去にい くつか は見 られるが,そ れ らは 2
た研究1卜
出日
次元流れおよび軸対称流れあるいは層流 に限 られていた。
しかし,現 実の油圧機器 においてはこのような制約条件
入
回
図 1 解 析対象
が常 に成立 しているわけではない。 そこで本研究では油
圧機器の内部流れを対象 として,よ リー般性のある 3次
称 でないので,ス プール 回 りの流れ は強 い 3次 元性 を示
してい る。.
元のた ε乱流モデルによるCFD解 析 を行 い実験結果 と比
較検討することによ り,油 圧機器の内部の流れ解析 にお
ズの方向切替 弁の寸法 に相 当す るもの を使用 した。
図 1に 示 され る寸法 は市販 され てい るCETOP3サ
けるCFD解 析 の可能性 を検討する。
2.計
算 対 象
油圧機器 として基本的な機器の一つであるスプール弁
を対象 として,ス プール回 りの流れを計算対象 にする。
具体的な解析対象の形状 を図 1に 示す。スプールバルブ
本体 には円筒上の同軸の穴が開いてお り中にスプールが
入っている.バ ルブ本体の各チャ ンバ ー と呼ばれる部分
には一本ずつチ ャネル と呼ばれる横穴が通 じてお り,こ
れ らはそれぞれ入口,出 口につながっている。入 口か ら
入った油は入 ロチャネル,入 ロチャンバ ー を通って,バ
ルブ本体 とスプールで構成 されるオ リフィスで絞 られて,
出ロチャンバー,出 ロチャネルを通って出口へ と流れて
い く。スプールが動いてオ リフィス部分 の開口面積 (ス
プール開度)を 変えることにより流れを制御 している。
スプール と各チャンバー室は軸対称 な形状であるが,
チャンバ ー室に油の流入,流 出するチャネル部分が軸対
ホ
東京大学生産技術研究所 第 2部
ホ
*民
間等共同研究員 (0ト キメック)
3 計
3.1 基
算
手
イ
法
礎方程式
解析 に際 して 2つ の仮定 を置 いてい る.1)流
体 は非
圧縮性である。2)流 れの中でキャビテー シ ョンは起 こ
らない。 この仮定 の もとで力 εモ デル を用 いた 流れの支
配方程式 は次 の ようになる.
連続の式 は
離
=0
(1)
運動方程式 は
十
物%D=者
(:十
│)
3給
者
《
芳
詠
十
十
(″
(3芳
)) (2)
:ち
:緒
ここで, 渦 粘性ν
は
ι
1/r=《
また,力 とεの輸送方程式は
‖l l lIⅢ
1 1 1 : │ │ │ l l l l l l l l l l l lⅢI
l lIlIlIlIlIlIlllIllIllIllIllllllIll:IlllⅢ
ll lⅢ
lllIllIllIllIⅢ
Ⅲ
I I I I I l lI lI lI II II II Il Il Il ll ll Ⅲ
l l │l │l │l ‖
l l l l l l lI lI lIllⅢ
llⅢ
ll ll‖
IⅢ
llll
65
43巻 1号 (19911)
速
生 産
研
究
lllllllllllllllll::lllllllllllllllllllllllll:│││llllllllllllllllllllllllllllllllllll
報
表 1 計 算手法
乱流モデル
力 εモデル
座標系
円筒座標系
グ リッド
スタ ッガ ー ド
時間解法
1次 のオイラー陽解法
空間の離散化
2次 の中心差分
θ
L″
(対流項のみQuick)
θ
L
″ ―S MAC
圧力解法
入 口条 件
一様流入
定菱k ( 力= 3 . 2 × 1 0 3 , c = 7 . 1 ×1 0 4 )
速度
力, ε
壁 面条件
速度
壁関数
力, ε
壁関数による補正
口傾Jチャネル (/=75mm)
図 3 チ ャネルの接合部分 (スプール開度0 25mm)
の=&(景
)+Gε
雛+&(場
;力
ε
)=&鐘&)
各+t(笏
自由流出 (勾配が 0)
出口条件
出口側チャネル (′=9mm)入
十Cl,G―
可
表 2 計 算条件
スプール開度 0.25, 0.5,10mm
レイノルズ数
ここで,生 成項 Gは
424× 104, 212× 104, 106× 104
度
量 粘
流 動
メッシュシ ズ 48× 32× 46, 48× 32× 46, 54× 32× 46
401/min
(6)
ッシュについて
計算領域 をチャンバ こ室内に限定すると形状的には軸
32 メ
20cSt
時間ステ ップ 1/1000(無 次元時間)
モデル定数
G=均
)髭
(髭十
:附
対称 で,流 れの様子 は 3次 元性があるので円筒座標で取
り扱 うことにする。 また,少 ないメモ リー容量で計算精
度 を保つために不等間隔格子 を使用 した。図 2に スプー
εグ= 0 . 0 9 , C l = 1 . 4 4 , C = 1 9 2 ,
G=10,ぁ =1.3
ル 開度025mmで のメッシュの分割図 を示す。 この場合,
軸方向に48,半 径方向に32,角 度方向に46分割 してお り,
′―θ断面 (チャネル側)
(a)チ
ャネルの反対側 (γ―″断面)
(b)チ
ャネル側 (′―χ断面)
999m/s
643m/s
(C)入
″―θ断面 (オリフィス側)
図 2 メ ッシュ分割図 (スプール開度025mm)
図
ロチャネル側 (′―θ断面)
(d)出
ロチャネル (″―θ断面)
4 速 度ベ ク トル図 (スプール開度025mm)
llllllll:lllllllllllll:llllllllllllllillllllll::lllllllllllllllll:││││││││││││llllllllllll11111111:││││││llllll1lll
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43巻 1号 (1991.1)
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│ : l l l l l l : │ │ │ l l l l l 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 : ! │ │ 1 l l : │ │ │ │ │ │ │ │究
│ l l l速
l l l l l報
lll:│││││││
流入 とした。力はLauferによる発達管内乱流の実測値つに
より,εはたの実測値 と局所平衡の仮定か ら計算 される値
□: 計 算値
+ : 実 験値
により,た,ε とも断面内の平均値 を用 いている。出口条
[
≧]L 択せヽ
件 は速度,た,ε とも勾配が 0の 自由流出条件 を用いてい
る。壁面境界条件 は,壁 面摩擦応力 と速度勾配 を 2層 モ
デルの壁関数 を用 いて与える方法を使用 している。.
計算条件 を表 2に 示す。計算の初期値 はすべての点の
速度 を 0と している。スプール開度 をパ ラメータとして,
0.25,05,1.Ommの 3ケ ースについて計 算 を行 ってい
る。 レイノルズ数はスプール長さを代表長 さとし,オ リ
口
フィス部分 の平均速度を代表速度 として計算 してい る.
カーεモデルの各定数の値 は表 2に 示すつ。
.
4 計 算結果 と考察
1
スプー ル開度 χl[mm]
計算はVP100を使用 した。各ケース ともCPU時 間は約
10時間である。図 4に スプール開度025mmで の各断面
の速度ベ ク トル図の計算結果 を示す。 この図をみると,
図 5 流 体力
7-θ 断面ではチャネル方 向 に対 する流れの対称性が再
現 されてお り,χ―″断面ではチャネル側 と反対側で流れ
の様子が異なってお り,強 い 3次 元性が示 されているの
訃□.El十
日+F
一
ミ ミ]く R
+ロ
ロ
+□
□: 計 算値
+ : 実 験値
00赫
位 置
図6 出
ん [mm]
がわかる。
計算結果の検証 は,ス プールに作用する軸方向の流体
力 と出口側のチャンバー室のチャネル と反対側の壁面上
の圧力分布 を測定 して計算結果 と比 較す ることによ り
行った。CFDの 計算 による流体力 はスプール端面の圧力
を積分することにより求めている。図 5が 流体力の結果,
図 6が 3ケ ースの中で圧力の変化が一番激 しいスプール
開度0.25mmで の圧力分布 の結果 である.こ れをみ る と
圧力分布 はかな りよく一致 してい る。流体力について は
定性的な傾向は良 く合っているがぅ数値的には最大25%
ロチ ャ ンバ ー 室壁 面上 の圧 力分 布
(スプ ー ル 開度025mm)
' □ ◇: 計
算イ
直
+ X : 実 験値
要素数の合計 は 7万 点 を越 えている。
入口,出 口にあたるチャンバ ー室 とチャネルの接合部
3.3 計 算手法 と計算条件
計算手法を表 1に 示す.各 基礎式を円筒座標で表記 し
たものに対 して離散化 を行 い,差 分法 により数値的に解
いた。差分格子 はスタガー ド格子 を用い,離 散化 の手法
[
≧]L ミせ環
分は,計 算 を簡単にするために図 3に 示すように階段上
にチャネルの円形部分 を近イ
以している。
は,時 間方向 には 1次 の陽解法,空 間方向 には 2次 の中
心差分 を用 いた。ただ し,対流項 は空間的にはQuick法に
より離散化 した。連続の式 と運動方程式の結合には,速
度圧力の同時緩和法であるHSMAC法
を使用 した。
境界条件 として,入 口条件 は流入速度が一定値 の一様
Ob
1
スプー ル 開度 χ lmm]
2
図 7 流 体 力 (流れ方 向 の影 響 )
llllll!llllll:llllllll:││llllll!lllllll111111111111:│:IIIII:lllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllll
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研
究
43巻
速
1号 (1991.1)
生 産
研
究
報 l::llllll::::llll:llllllll::lllllllllllllllllllllllllll:llllllllllll
位の違 いがある.こ れは,本 計算結果 は定性的には流れ
の様子をよく再現 してい るが,メ ッシュサイズ,対 流項
の計算スキーム,乱 流モデル等,定 量的にはまだ改善す
で あ る。 しか し,CFDに
べ き個所があることを示唆 しているもの と思われる。 こ
実用化 のた め に は まだ定 量 的 に改善 す べ き点 も残 され て
れは今後 の研究課題 である。
い る。
最後 に,流 れ方向を逆にした場合の流体力の実験結果
と計算結果を付け加 えた ものを図 7に 示す。 これは形状
は多大 の有 益 な助 言 をいただ きま した。 こ こに記 して厚
などは全 く同 じで,流 れの入口と出口だけを逆にした場
く感謝 の意 を表 す る もの ですら (1990年 10月25日受理)
合 である。実験値 は流れを逆にすると流体力が1/2から1/
3程度に小 さくなることを示 している。
従来,ス プールに作用する流体力の評価 は流れを2次
元 として扱 い運動量理論 より行 ってきた。その場合,流
体力はオ リフィス部分の噴流の速度 と噴出角度 により決
まる。2次 元で仮定すると噴出角度は流れ方向 には関係
な く,ス プール開度や スプール とバルプ本体の穴 のク リ
アランスにより決 まる。。すなわち,従来の流体力の評価
り,従 来 説 明 ので きなか った現 象 が計 算 に よ り再 現 され
るな ど,CFD計
算 に よる油 圧機 器 の流 れ解 析 は十 分有 効
よる油圧 機 器 の 内部 流 れ解 析 の
本研 究 を進 め るにあた り,小 林 研 究室 の 森 西洋 平氏 に
参
1) Hayashi,S,Ⅳ
考 文 献
Iatsui,T.and lto,I.,Study of Flow and
Thrust in Nozzle‐Flapper Valves,Trans ASME,
Series D,Vo1 95,39/50(1975)
2) Pountney,D C"Weston,W.and Banieghbal,M R。
,
A numerical study of turbulent flow characteristics
of servo‐
valve oriices,Proc lnstn ⅣIech Engrs,Vol
方法では,流 れ方向による流体力の違いは求 まらない。
実際の流れにおいては,こ こに示 したように流体力が流
203,139/147(1989)
3)郭 ,中野 :境 界要素法 によるスプール弁内流れの数値解
析,油 圧 と空気圧,20-6,546(1989).
4)中 野,渡 辺,郭 :ス プール弁 の流体力軽減法 に関する実
れ方向により大 きく変わるとい うことは, 2次 元 とい う
仮定 にかな り無理があることを示唆 している。スプール
験的研究,油 圧 と空気圧,18-6,475(1987)。
5) Laufer, J, The Structure of Turbulence in Fully
回 りの流れを 3次 元の乱流 として取 り扱った本研究では,
図 7に 示 される ように流れ方向による流体力 の違いが
はっきりと再現されているのがわかる。 これは本研究の
有用性 を示す一例であると考 える。
5。 ま と
め
油圧制御弁の スプール 回 りの流れ を力 εモデル によ
り, 3次 元乱流解析 を行 い,ス プールに作用する流体力
Developed Pipe Flow,NACA,Rep.1174(1953),1
6) Amano,R.S,Development of a turbulence nearwall
model and its application to separated and reatta‐
ched flows,Numerical Heat Transfer,Vo1 7.59/75
(1984)
7)Patel,V.C,Rodi,W.and Scheuerer,G,Turbulence
Models for Near‐ wall and Low Reynolds Number
Flow:A Re宙 ew,AIAA,J23-9,1308(1982).
8) Lee, S Y. and Blackburn, 」
F" Contribution to
Hydraulic Control,1. Steady‐State Axial Force on
とチャンバ ー室の壁面上の圧力分布により計算結果 を検
Valve Pistons,Trans ASME,74, 1005
Control‐
証 した。定性的には流れの様子はかな りよく再現 してお
(1952)
:││llllllllllll!│::lllllll:│││llll:lllllll:llllllllllllllllllllllllllllllllll::lllll:lllllllllllllll:
68
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