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本文ファイル - 長崎大学 学術研究成果リポジトリ
NAOSITE: Nagasaki University's Academic Output SITE Title 中国企業の海外進出 : 2005∼2007年(笠原俊彦教授定年退職記念号) Author(s) 井手, 啓二 Citation 經營と經濟. 2007, 87(3), p. 169-184 Issue Date 2007-12 URL http://hdl.handle.net/10069/21385 Right This document is downloaded at: 2017-03-29T09:26:48Z http://naosite.lb.nagasaki-u.ac.jp 経営 と経済 第 8 7 巻 第 3号 1 6 9 2 0 0 7 年1 2 月 中国企業の海外進出-2 0 0 5 -2 0 0 7 年 井 手 啓 Abs t ract 〟 Thi sar t i c l ei st heaut l l Or' st hi r dconc e r nl ng gOl nggl o bal "of Chi ne s eEnt e r pr l S e S .I nf o r me ra r t i c l e s ,t hea ut ho rha ss t r i ve dt ot r a c e t hehi s t o r i c a lde ve l o pme nt s ,c ha r ac t e r i s t i c so fChi ne s eent e r pr l S e S a br o a d.I nt hi sa r t i c l e,t hea ut ho rc o nc e nt r a t e so nr e vi e wl ngr e c e nt c ha nge sa ndne wt r e ndsi nt hi sa r e a・ Thef i r s tpa r to ft hi spa pe rc l a r i f i e sChi na' Sl e a pf o r wa r di nt hewo r l d e c o no my,e s pe c i a l l yi nt hewo r l dGDP,t r a de,FDIe t c.Chi na' sFDI s t o c kha sr ea c he d9 2. 6 3bi l l i o n,a ndannua lFDIf l o wr e c o r de d21. 1 6bi l l i o ni n2 0 0 6・Thes e c o ndpa r to ft hepa pe ri nt r o duc e sa nde xa 一 mi ne st hea na l ys e so fUNCTAD " Wo r l dI nve s t me ntRe po r t2 0 0 6"O n Chi ne s ee nt e r pr i s e so pe r a t i ngi no ve r s e as .Thet hi r dpa r to ft hepa pe r o ve r vi e wst hego ve r nme nt a la nnua lr e po r to nFDIi n2 0 0 6・Thef i na l pa r to ft hepa pe ri l l us t r a t e sChi ne s ee nt e r pr i s e si nAf r i c aa ndChi na' s FDIt oAf r i c a nc o unt r i e s. Thea ut ho rc o nc l ude st ha tChi ne s ee nt e r pr l S e SWi l lgoa br o a dmo r e a ndmo r ei nt hene a rf ut ur e.Chi na' so ut wa r dFDIwi l la l s or e a c ht he l e ve lo fJ APANi nt hene xt1 0ye a r s ・ Keywords;Chi ne s ee nt e r pr l S e;go i nggl o ba l ;Chi na' sFDIo ut f l o ws; Af r i c a はじめに 1 9 79 年1 1 月に改革 ・ 開放政策開始後の最初の海外進 出企業 が東京 に誕生 し 1 7 0 経 営 と経 済 た。その後中国の海外進 出企業の数 と規模 は次第 に拡大 し,2 0 世紀末の 1 9 9 8 年前後 か ら,中国企業の海外進 出は本格化の段階を迎 えている。国内外の二 go i nggl o ba l ) つの市場 ,二つの資源 を経済発展 に役立て る とい う 「 走 出去」( はすでに中国の重要 な国家戦略の一つ となっている。 小論は,拙論① 「中国企業の国際化,多国籍企業化の現段階」 ( 『アジア経 0 号 ,2 0 0 4 年 5月 ,5 7 -6 8 ページ),② 「中国経済 の国際化 と中 営研究』第 1 0 0 7 年3 国企業の海外進 出」 ( 『中国における国際化への課題』中央経済社 ,2 月, 3-1 9 ページ,7 1 -7 9 ページ)の続論である。 前 2稿 では中国企業 の海外進 出の歴史的展 開 お よび現段階 の特徴 を扱 っ た。後者 についての主要な暫定的結論 は次の ようであった。 ① 中国企業の技術的優位性は高 くない。 したが って先進 国型の海外進 出 とは,様相が異なる。国家 を背景 とす る資源獲得 ・開発型の投資,ア ジア,アフ リカ,ラテンア メ リカ等のニ ッチ市場 ,ニ ッチ製品を核 と す る海外進 出が特徴的であ る。 ( ∋ 海外進 出 目的 ・動機 で も,後発性か ら くる市場 ・ 資源獲得,先進的技 術 ・管理経験獲得型の進 出が特徴的である。 ( 勤 中国企業 が競争優位性を もつのは,漢方薬 ,中華料理な どの伝統産業 及 び織維 ・ アパ レル産業,汎用 タイプの電機 ・電子産業 ,靴 ・鞄 な ど の皮革産業な どの軽工業である。 ④ 私企業の海外進 出 も増加 しているが,なお主力は国有 ・準国有企業, 外資 と提携 した中国企業 ( 外資系企業 とされ る)である。 本稿では, Ⅰにおいて中国経済の躍進の動 向を例示 し,中国企業の多国籍 化問題分析の重要性 を浮彫 りにす る。 Ⅱにおいて貴重な情報 と分析 を豊富 に ふ くんでお り,研究の到達点を代表的 に示 している UNCTAD 『 世界投資報 告 2 0 0 6 』 における中国多国籍企業分析 を紹介する。 Ⅲにおいて 「 2 0 0 6 年度 2 0 0 7 年 9月)を用 いて,2 0 0 6 年 の到達状況をみる。 中国直接投資統計公報 」( 最後 に, Ⅳにおいて,近年拡大が 目覚 しい対 アフ リカ直接投資 にふれる。 中国企業の海外進 出 -2 0 0 5 -2 0 0 7 年 1 71 Ⅰ 中国企業の海外進出一 最近の動向 中国経済の躍進が続いている。2 0 0 7 年 に 2桁成長は 5年 目を迎える。2 0 0 5 年 にフランス,イギ リスを抜いて GDP規模 は世界第 4 位 とな り,2 0 0 7 年に 位 となることが確実視 されている。 GDP規模 は は ドイツを上回 り世界第 3 2 0 0 6 年 には世界の GDPの5 . 5 %, 日本の 6割強 ( 6 0. 6 %)に達 した。 日本 を上回 り,世界第 2位になることはほぼ,射程距離に入っている。中国の貿 0 0 4 年にはすでに 日本を上回 り,その後 も日 易規模 も急拡大を遂げてお り,2 2 0 0 6 年 は1 . 4 4 倍) 。貿易規模は,2 0 0 6 年には,世界 本 との差を拡げている ( . 2 %を占め ,2 01 0 年以前に世界最大 になると予測されている。2 0 0 5 貿易の7 年 から中国の外貨準備高は激増 し,2 0 0 6 年 には, 日本を抜 き世界経済史上最 高を記録 したが,その後 も増大を続けている。中国対外直接投資フローは, 2 0 0 5 年 ∼2 0 0 6 年 に1 2 2. 6 -2 1 1 . 6 億ド ルに達 し, 日本の 2分の 1の規模 に迫 って いる。中国は,近い将来アジアでは 日本 と並ぶ対外投資国 となろう。中国国 , 0 0 0 社をこえ,海外直接投資企業数は 1万社 を 内の海外進 出企業はすでに5 超 えている。以下,中国の対外直接投資,中国企業の海外進 出に関連する最 近の注 目すべ き動向のい くつかを列挙する。 1)2 0 0 6 年単年度の非金融対外直接投資フローは 1 7 6. 3 億ド ル,金融関連対 5. 3 億ド ル,対外直接投資は,合計 2 1 1. 6 億ド ルであ る。 外直接投資は ,3 2 00 6 年末の非金融対外直接投資残高は7 5 0. 2 億ド ル,金融関係のそれは 1 5 6. 1 億ド ルであ り,合計9 0 6. 3 億ド ルである ( 2 0 0 6 年度公報) 0 0 0 4 従来,中国では種 々の対外直接投資統計 が発表 されて きたが,2 年 か ら国際基準 にしたがった新 しい統計が発表 されは じめ徐 々に統計 2 0 0 3 -2 0 0 6 年度の中国対外直 が整備 されて きてお り,現在 この統計 ( 接投資統計公報)が最 も詳細で包括的である ( 詳 し くは拙稿②参照) 0 ただ し, Ⅱでみる UNCTADの数字 とは多少異なる。 その理 由は不詳 9 9 億ド ル( 2 0 0 2 年),3 3 2 である。例えば,先の公報では対外投資残高は2 1 7 2 経 営 と経 済 億ド ル( 2003 年 ),4 48億 ド ル( 2004年),57 2 億ド ル( 2005 年 ),9 06. 3 億ド ル ( 2 0 0 6 年)であ る。一方,UNCTAD数字 は,2 0 0 5 年 は4 6 3. 1 1 億ド ルであ る。 2)商務省の 「商務発展第 1 1 次 5ヵ年計画綱要 」( 0 6 年)の 6大発展 目標 の 6番 目に走 出去戦略の大躍進 が挙 げ られ, 5年間の対外 直接投資累 計 6 0 0 億ド ル,対外請負工事 1 , 3 0 0 億ド ル,労務輸 出2 5 0 億ド ル( 新規 1 5 0 万人)の 目標 が掲げ られた ( 0 6 年1 0 月1 1日) 0 ( 社会科学院の江中洞 は, 5ヵ年累 計は8 0 0 億ド ルに達 する と予測 している) 0 3)中国の貿易 と貿易黒字の急拡大,それに ともな う外貨準備高の急増 が 顕著 であ り,その対処 が必要 とな っている。 その対策の一 つ として,対 2 0. 9 億ド ル 外直接投資 の拡大 が推進 され よう としている。貿易黒字 は ,3 ( 2 0 0 4 年), 1 , 02 0 億ド ル( 2 0 05 年), 1 , 7 7 5 億ド ル( 2 0 0 6 年) とな り,外貨準 備高 は2 0 06 年 2月に 日本 を抜 き,年末 には前年比2, 47 3 億ド ル増の 1 0, 6 6 3 億ド ルと世界史上最高を記録 した。 この趨勢は2 0 0 7 年 も続 き, 9月末 には 1 4, 3 3 6 億ド ルに達 した。 この ことは 『 世界投資報告 2 0 06 』で も指摘 してい るように,プラザ合意以後の 日本 と同 じ く対外投資のブーム期 を迎 えて いることを意味 している。人民元 レー トの上昇傾向を考慮 すれば,一層 そ うである。 中国企業 に とっては,先進 国企業 の M&A を通 じての先 進的設備 ・技術の獲得, 競争力強化 の時代 を迎 えた とい うこ とであろう。 2 0 07 年 9月 には2, 0 0 0 億ド ルの資金で政府系外貨運用会社 を発足 させて も いる。 4)中国対外直接投資残高の6 割強 ( 6 3. 8 %,2 00 5 年) を占め る香港 を別 格 として,近年急増 をみてい るのは,貿易 と同様,ASEAN諸国 ( シン ガポール,ベ トナム, タイ),アフ リカ諸 国 ( スーダン,アルジ ェリア, ザン ビア)への直接投資 であ る。対 ASEAN非金融直接投資 は ,2 0 06 年単年度 3. 3 6 億ド ル,累計 1 7. 6 3 億ド ルであ る。2 0 0 6 年単年度 の対 アフ リカ 諸 国への非金融 直接投資 は5.2億 ド ル,2 0 06 年 末残高 2 5. 6 億ド ルであ る。 中国企業の海外進 出 -2 0 0 5 -2 0 0 7 年 1 73 対アフ リカ直接投資残高は,総額 に占める比重は低い とはいえ,中国 に隣接する対アセアン諸国投資をすでに上回っている。 Ⅱ 『世界投資報告 2 0 0 6 』の中国対外直接投資分析 『 世界投資報告 2 0 06』1 )は,途上国 ・ 移行国の多国籍企業の分析 に焦点 を当てている。 したがって,本書は UNCTADによる最初のま とまった中 国対外直接投資の分析 といえる。そこでは,中国文献ではなかなか得がたい 以下の ような,①国際比較,( 参個別企業 レベルのデータが提供 されている。 1)2 0 05 年の中国の対外直接投資は 1 1 0 億ド ルであ り,世界第 1 7 位の投資国 となった。途上国・ 移行国では,投資残高では,シンガポール,ロシア, 番 目の規模である。2 005 年単年度フローでは第 1 位 ブラジル に次 ぐ第4 である。 しか し中国企業 に よる大規模 な対外 M&A は,国外 か らの融 資 によるものが多いため,対外直接投資規模は著 し く過小表示 とな っ 55億 ド ル (1 990年 ),277. 68億 ド ル て い る。対外 直接投 資累計 は ,44. ( 2 0 0 0 年),4 6 3. 1 1 億ド ル( 2 0 0 5 年)であ った。2 0 05 年の対外投資ス トッ 5ド ルで きわめて低い。 クの GDP比は 2%,人口一人当 りは3 主要対外投資先は,香港 ,ケイマン諸 島,ヴ ァージン諸島,アメ リ カの順であ り,対外投資の 4分の 3は,香港 に向かっている。 2)投資分野は,①貿易関連,②鉱業,③石油関連である。近年,製造業 2 0 0 5 年は6 0 %を占めている。 と鉱業 ・石油関連への投資が増大 してお り, 3)1 9 8 7 -2 0 05 年の途上国 ・ 移行国企業 による国境をこえる大規模 M&A の上位 25 位の第 8位 に中国石油 ( CNPC)によるペ トロカザフスタン 41. 41 億ド ル) 0 ( カナダ)買収が入 っている ( 4)2 0 0 4 年の非金融多国籍企業の世界上位 1 0 0 社 ( 国外資産規模順位)の 4位 に CI TI C (中国中信集団公司) グループ 1社 が入 ってお り, 第9 1)UNCTAD ` ẁo r l dl n ve s t me ntRe po r t2 0 0 6 " ・ 1 7 4 経 営 と経 済 CI TI Cの国外資産 は1 4 4. 5 億ド ル,国外販売高 1 7. 5 億ド ル,国外雇用 1 5, 91 5 人,多国籍度2 0. 4 %である。 5)2 0 0 4 年の途上 国 ・移行国の非金融多国籍企業q) 上位 1 0 0 社 には,l o柾 CI TI C) , 中 国遠 洋 運 輸 集 団 が 入 って い る。 中 国 中信 集 団 公 司 ( ( COS C O) ,中国建築工程総公司,中国石油天然ガス集団公司 ( 中国石 油),中国石油化工 ( 中石化),TCL集団有限公司,中国海洋石油総公司, 中国五鉱集団公司,中国糧油食品集団公 司 ( 中程),京東方科技集団公 39. 5 億ド ル), 司である。その中では,国外販売高 では中国石油化工 (1 4 7, 2 31 人),国外拠 点数 では中国遠洋運輸 ( 4 0 ), 国外雇用では TCL ( 多国籍度では中程 ( 8 6. 6 %)がそれぞれ第 1位である。 6)以上のほか,本書ではコラムにおいて,走 出去戦略および海爾,華為 を とりあげ,独 自取材 にもとづいてかな り詳 し く記述 している。『 世界 投資報告2 0 0 6 』は,中国対外直接投資についてバランスよ く描 き出 して いるが, とくに貴重なのは 4), 5) にみ られ る個別企業 に関する情報 を提供 している点にある。 7)なお,最近 ( 2 0 0 7 年1 0 月)出版 された 『 世界投資報告 2 0 07 』は,鉱山 ・ 採掘産業におけ る FDIに焦点をあてている。2 0 0 5-2 0 0 6 年度の最新統 0 0 6 年度版 と若干の数字 ・順位異動 があ るが,上記 に 計を挙げている。2 かかわる部分では大差はない。『 世界投資報告 2 0 0 7 』 によれば ,2 0 0 6 年 61 億ド ル,世界第 1 8 位 としている。 の中国の対外直接投資額は,1 Ⅲ『 2 0 0 6 年度 中国対外直接投資統計公報』 ( 2 0 0 7 年 9月)にみる 中国企業の海外進出 2 0 0 3 年度以降国際基準にしたがって,商務省,国家統計局,外国為替管理 局 ( 2 0 0 7 年 か ら)の三者共 同で発表 されは じめた上記 『公報 』 2)は,逐年的 2) 中華人民共和 国 ・商務部 ・国家統 計局 ・外 貨管理 局 『 200 6 年度 中国対 外直接投 資統 計 公報』20 07 年 9月。 1 7 5 中国企業の海外進 出 -2 0 0 5 -2 0 0 7 年 に内容が充実 し,提供情報量が増 えている。2 0 0 6 年度公報 は,本文 3 4 ページ で,金融関係直接投資,海外販売高,海外就業者数な どに初めてふれ る等, 新 しい情報 を提供 している。注 目すべ き点は,以下の とお りである。 1)2 0 0 6 年単年度の対外直接投資 フローは ,2 1 1 . 6 億ド ル( 非金融 1 7 6. 3 億ド ル, 5. 3 億ド ル)であ り,その内訳は新規股木 ( 資本 ・株式)投資 5 1 . 7 億 金融3 2 4. 4 %) ,利潤再投資 6 6. 5 億ド ル( 31. 4 %) ,その他投資 1 9 7. 1 億ド ル ド ル( ( 4 4. 2 %)であ る。2 0 0 6 年末の対外直接投資累計純額 ( 以下,残高 とす 0 6. 3 億ド ルであ り,その内訳 は,股木投資 3 7 2. 4 億ド ル( 4 1 . 1 %) , る)は,9 3 6. 8 億ド ル( 3 7. 2 %) ,その他投資 1 9 7. 1 億ド ル( 2 1 . 7 %)であ 利潤再投資 3 る3)0 2)2 0 0 6 年単年度の金融関連対外直接投資は,3 5. 3 億ド ルであ り,その うち 5. 0 8 億ド ル( 71 %)を占め る。2 0 0 6 年末の金融関連対外投資残 銀行業 が2 高は,1 5 6. 1 億ド ルであ り,銀行業が 1 2 3. 3 6 億ド ル( 7 9 %) ,保険業 7 . 7 6 億ド ル ( 5 %)であ る。2 0 0 6 年末 に中国国有商業銀行は ,2 9ヵ国 ・地域 に4 7 分 1 付属機構 ,1 2 代表事務所 を もち,外 国人雇用者 は2 万人 を超 えて 行 ,3 い る。保険業は海外 に1 2 機 関を擁 している。 3)2 0 0 6 年単年度 の非金融対外直接投資 は,1 7 6. 3 億ド ル( 対前年比 ,4 3. 8 %増),海外企業販売 高は 2 , 7 4 6 億ド ル,海外納税額 は2 8. 2 億ド ル,海外企 業就業者数 は 6 3 万人 , うち外 国人雇用数 は2 6. 8 万人,海外進 出企業 を 通 じる輸 出入額 は9 2 5 億ド ルである。 4)2 0 0 6 年単年度の対外直接投資 に占め る M&Aの比重 は3 9 %,非金融 投資 7 0 億 ドル ,金融 関連投資 1 2. 5 億ド ルの計 8 2. 5 億ド ルであ る。非金融投 資額 の 5割 は,国内投資主体 か らの融 資であ る。前年 に較べ ,利潤 か らの再投資 の比率が大幅 に高 まった。 なお,中国企業 に よる これまで の M&Aは,金額的 には採掘業が圧倒的 ( 約7 0 %)であ り,ついで I T 3)「股本投資」以下の各項 目の定義は次を参照。高 経済科学出版社 ,2 0 0 5 年2 月 ,1 3 3 -1 3 5 頁。 敏雪編 『 対外直接投資統計基礎読本』 1 7 6 経 営 と経 済 産業 関連 ,先進 的技術取得 を 目的 とす る製造業企業 に集 中 してい る。 5)2 0 0 6 年単年度 の対外 直接 投資 フ ロー 2 1 1 . 6 億ド ルの業種別 構成 は,採 鉱 5. 4 億ド ル( 4 0. 4 %) ,商務 サー ビス業 4 5. 2 億ド ル( 21 . 4 %) ,金融 業 3 5. 3 業8 億ド ル( 1 6. 7 %) ,交通 ・運輸 ・倉庫 業 1 3. 8 億ド ル( 6. 5 %) ,卸 ・小売業 1 1 . 1 億ド ル( 5. 2 %) ,製 造業 9 . 1 億ド ル( 4. 3 %) ,不動 産業 3 . 8 億ド ル (1 . 8 %), . 9 億ド ル( 0. 9 %)の順 であ る。 農林 ・水産業 1 2 0 0 6 年 末対外 直接投資残 高 9 0 6. 3 億ド ルでみれば,商 務 サー ビス業 1 9 4. 億ド ル( 2 1. 5 %) ,採鉱業 1 7 9 億ド ル( 1 9. 8 %) ,金融業 1 5 6. 1 億ド ル( 1 7. 2 %, 6 うち銀行業 が 7 9 %を占め る),卸 ・小売 業 1 2 9. 6 億ド ル 5. 7 億ド ル 運輸 ・倉庫 業 7 ( 1 4. 3 %) ,交通 ・ ( 8. 4 %) ,製造 業 7 5. 3 億ド ル( 8. 3 %) ,不動産 業 2 0. 2 億ド ル( 2. 2 %) ,建 築 業 1 5. 7 億ド ル( 1. 7 %),情報 通信 ・計算機 サ ー 4. 5 億ド ル (( 1 . 6 %) ,住民サー ビス業 1 1. 7 億ド ル( 1 . 3 %) ,技術 サー ビス業 1 1 . 2 億ド ル( 1 . 2 %) ,水利 ・環境 ・公共 施設管理業 9 . 2 ビス ・地 質探査 業 1 億ド ル( 1 % ),農林 ・水産業 8 . 2 億ド ル( 0. 9 %) ,その他 5 . 3 億ド ル( 0. 6 %) であ る。 6)2 0 0 6 年 の非金融対外 直接投 資 フ ロー 1 7 6. 3 億ド ルの地域別構成 は, ラテ 4. 7 億ド ル( 4 8 %, うち 8 3. 6 8 億ド ルは,ケ イマ ン諸 島 ・ヴ ァー ンア メ リカ 8 6. 6 億ド ル( 4 3. 4 %, うち 6 9. 3 億ド ルは香港 へ ジン諸 島へ の投 資 ),アジア 7 . 9 億ド ル( 3. 4 %, うち 4. 5 2 億ド ルは ロシアへ の投 資 ), ア の投 資),欧 州5 フ リカ5 . 2 億ド ル( 2. 9 %) ,北 米 2 . 6 億ド ル( 1. 5 %) ,大 洋州 1. 3 億ド ル (1. 3 % ) で あ る。 した が って, ラテン ア メ リカ とア ジア で 9割 強 を 占め て い る。 2 0 0 6 年末非金融直接投資残 高 7 5 0. 2 億ド ルの地域別構 成 は,アジア4 7 9. 7 億ド ル ( 6 3. 9 %) , ラテンア メ リカ 1 9 6. 9 億ド ル( 2 6. 3 %) ,ア フ リカ2 5. 6 億 3. 4 %) ,欧 州2 2. 7 億ド ル( 3 %) ,北米 1 5. 9 億ド ル( 2. 1 %) ,太平 洋州 9 . 4 ド ル( 億ド ル( 1. 3 %)で あ る。 した が って,単 年 度 フ ロー と同 じ く9 割 強 をア ジア, ラテン ア メ リカが 占め てい る。 と りわけ,香 港 , ケ イマン諸 島 , 中国企業の海外進出- 2 0 0 5 -2 0 0 7 年 1 7 7 ヴ ァージン諸 島で81 . 5% を占めていることが中国対外直接投資の大 き 地域 に続 くのは,米国の 1 2. 3 8 億ド ル,韓 国の9. 49 な特徴である。 この3 億ド ル,ロシアの9. 30 億ド ル,オース トラ リアの7. 9 4 億ド ルであ り,以下マ カオ,スーダン, ドイツ,シンガポール,モンゴル,カザフスタン, サウジアラビア,ザンビア,ヴ ェ トナム,アルジ ェリア,タイ,イン 2. 2 4 億ド ル )である。 日本は第2 0 位 に位置する。 ドネシア, 日本 ( 2 0 0 6 年度公報」の主要内容である。 これについて若干のコメン ト 以上が 「 を述べておこう。 0 0 6 年度公報は,2 0 0 3 -2 0 0 5 年度公報 に較べ, 第 1は,既にふれたように,2 叙述 も詳細にな り,かつ従来公表 してこなかった情報を開示 している。公報 としては,①金融関連対外直接投資を初めて明 らかにした。②海外進出企業 販売高,海外進出企業納税額,海外進出企業就業者を明 らかにした。以上 2 点が主要な点である。① により,中国銀行業の多国籍化がかな り大規模に進 んでいることが明 らかになった。②により,海外進出企業就業者に占める中 国人の比率の高さが明らか となった。 これが何を意味 しているかについては 解釈の余地があるが,海外進出の初発段階における雇用の現地化の遅れ,お よび請負工事の多さと関係 していよう。 0 0 5 ,2 0 0 6 年 から急増を開始 してお り, 第 2は,対外直接投資フローは,2 0 0 4 年か ら急増 している。それは何故か,2 0 0 4 年あるい 対外直接投資残高は2 0 0 5 年か らの急増をどう解釈すればよいか ?それは一時的 もしくは一過性 は2 8 5 億ド ル)の動 きに の ものか ?とい う問が生 じよう。ユノカル買収 ( 撤退 ,1 もみ られるように,数十億 ド ル規模の M&A も現れているので,年度 によ り 変動は生 じるが,一過性 とはみ られず,当面の増勢は続 くであろう。 9 9 2 年以降,中国企業 による M&A が次第 に大規模化 して きた 第 3は,1 00 5 年 ,2 0 06 年の両年の M&A は,2 0 0 2 -2 0 0 4 年の 1 0. 5 -1 6. 5 億ド ル台 が,2 2. 8 億ド ル,8 2. 5 億ド ルに拡大 した。中国企業による M&A は, か ら一気に,5 採掘業,先端産業 ・技術,銀行業 に集中 しているが, この ような M&A の 1 7 8 経 営 と経 済 動 向が注 目され る4)0 第 4は,中国企業の海外進 出に ともない,関係邦語文献 も増 えてきたが, なお不明の点が少な くない。対香港投資はかな り明 らかにされているが,対 ケイマン ・ヴ ァージン諸島投資, 商務サービス投資等の内容は定 かではない。 国別 ・産業別 ・企業別の詳細な調査 ・分析の課題はなお多 く残 されている。 Ⅳ 中国企業のアフ リカ諸国への進出 2 0 00 年前後 か ら中国 とアフ リカ諸 国 との経済関係の緊密化 の進展 が著 し い。中国はすでに,アメリカ,フランスに次 ぐアフ リカ諸国の第 3位の貿易 相手国である。 まず これ らの点を確認 してお こう5)0 1)中国 とアフ リカ諸国 との貿易は,2 0 0 0 年 に対前年比 6 3. 3 %増大 し,初 0 0 億ド ルの大台 ( 1 0 8 億ド ル)に乗 り,歴史上最高を記録 した。その後 めて 1 も,0 2 年1 2 3. 9 億ド ル,0 3 年1 8 5 億 ドル,0 4 年2 9 4. 6 億ド ル,0 5 年3 9 7. 4 億ド ル, 0 6 年5 5 5 億ド ル,0 7 年 1-9 月5 2 6. 0 億ド ル, と急増を続けている。なお,2 0 0 6 年1 1 月に北京でアフ リカ5 3ヵ国の うち48ヵ国の3, 0 0 0人が会 して開かれ た中国 ・アフ リカ協力フ ォーラムでは,2 01 0 年 までに両者間の貿易 を 1, 0 0 0 億ド ルとする 目標が合意 されている。 2)中国からアフ リカへの主要輸出品は,機械 ・電機 ,紡織 ・アパ レルで あ り,中国へは圧倒的に原油 ( 最大の供給先,約7 0 %),鉱石,原材料 である。 3)現在の主要貿易相手国は,南ア,アンゴラ,スーダン,ナ イジ ェリア, コンゴ,アルジ ェリア,エジプ トである。 4)以上の中国 とアフ リカ諸国 との貿易関係拡大の背景は,①アフ リカに 4)詳細 は,次を参照。慶運夙編 『中国企業海外併購案例分析』企業管理 出版社 ,2 0 0 7 年 4月。 5)李 桂 芳編 『中国企業対外直接投資分析報告』 中国経済 出版社 ,2 0 07 年 6月 ,1 7 91 8 7 頁。 中国企業の海外進 出 一2 0 0 5 -2 0 0 7 年 1 7 9 おけ る地域大 国であ る南 アフ リカ共和 国 との 1 9 98 年の 国交 回復 に象徴 され る,アフ リカ諸国 との政治 ・外交関係の改善 であ る。②経済の高成長 に とも ない中国がますます必要 としている原油,鉱物資源の確保であ る。③先進 国 との貿易摩擦 回避のためのアフ リカ諸 国の途上国待遇の活用,新市場獲得の 必要である。④ 中国の経済力の強化 と中国企業の対アフ リカ進 出であ る。 中国のアフ リカ諸 国進 出は,なお開拓段階 にあ ると考 え られ るが,中国 と アフ リカ諸 国 との経済関係拡大 について見逃せないのは,中国が比較優位 , 0 05 年単年度のアフ リカ 国際競争力を もつ対外工事請負,労務輸 出である。2 におけ る請負工事 ・労務輸 出額 は,6 2. 4 億ド ルであ り,2 0 0 5 年末 までのそq) 累 計完成額は2 8 9. 5 億ド ルとな っている。2 0 0 5 年 の上記 にかかわ る中国人労働者 2 万人であ る ( 2 0 0 7 年 には 1 0 万人を超 えた) 。アフ リカにおける請負工事 ・ は8. 労務輸 出は,その後 も拡大の趨勢 にあ る。 スーダン,アルジ ェリア,エジプ トな どでは,橋梁,道路,発電 ・変電所,港湾,ホテル建設 な ど大規模な イ 1. 9 億ド ル), ンフラ建設 を請負 っている。アルジ ェリアでの外務省 ビル建設 ( 6 2. 5 億ド ル,2 0 0 6 年),スーダンでの発電所建設 ( 1. 49 億 国際高速道路建設 ( 0 01 年),ダム建設 (6億ユーロ,2 0 0 3 年)はその代表的な ものであ る。 ド ル,2 9 9 0 年代初めか ら開始 されている。中国の 中国の対アフ リカ直接投資は ,1 0 0 3 年 ∼2 0 0 6 年 の各年末でそ 対 アフ リカ直接投資残高は,先 の公報 によれば2 91 億ド ル,9. 0 0 億ド ル,1 5. 9 5 億ド ル,2 5. 5 7 億ド ルである。単年度フロー れぞれ ,4. は,上記期間にそれぞれ ,0. 7 5 億ド ル,3. 1 7 億ド ル,3. 9 2 億ド ル,5. 2 0 億ド ルであ る。 2 0 0 6 年末の直接投資残高は,スーダン ( 4. 9 7 億ド ル),ザンビア ( 2. 6 8 億ド ル), 2. 47 億ド ル),ナ イジ ェリア ( 2. 1 6 億ド ル),南ア ( 1. 6 8 億ド ル), アル ジ ェリア ( エジプ ト ( 1. 0 0 億ド ル)の順 に多 い。2 0 06 年 単年度 フローではアル ジ ェリア ( 0. 9 9 億ド ル),ザン ビア ( 0. 8 7 億ド ル),ナ イジ ェリア ( 0. 6 8 億ド ル),スーダン ( 0. 51 億ド ル),南ア ( 0. 41 億ド ル)の順である。 商務省発表 の別 の数字 も挙げてお こう。『中国商務年鑑 2 0 06 』に よれば, 2 0 0 5 年 にアフ リカ諸 国で新設 された非金融 中国企業は,9 8 企業 ( 2 0 0 2 年3 6 企 1 8 0 経 営 と経 済 莱 ,2 0 03 年5 3 企業),中方協議投資額 3. 5 億ド ル,中方投資実行額 2. 8 億ド ルであ る。2 0 05 年末 までに商務省が設立 を批准 ・準備中の非金融中国企業は,81 3 企業,中方協議投資額 1 7. 1 億ド ル,中方直接投資累計額 1 1. 8 億ド ル,アフ リカ4 9 ヵ国に及ぶ とされている。 上記公報の2 0 06 年末 ,2 5. 5 7 億ド ルという直接投資残高は,それほ ど大 きい ものではない。む しろ,増大のテンポの急激 さ,および上記数字の捕捉率 に 注 目 ・留意 してお く必要がある。例 えば,2 0 0 6 年 1月に中国海洋石油はナ イ ジ ェリア南大西洋石油会社 か ら2 2. 6 8 億ド ルの現金払 で海上石油採掘権益の一 部 を取得 した。 この 1件のみで対アフ リカ直接投資残高に比肩する。 しか も アフ リカは,中国の最大の石油輸入先であ り,ウラン,クロム,鋼,鉄鉱砂 な ど中国が必要 とす る鉱物資源 にも富んでお り,原油 ・天然ガス,鉱物資源 の大規模 開発 プロジ ェク トへの参加があいついで計画 されているか らであ る。 この開発輸入の動 向は注 目すべ き点である。 中国はアフ リカ5 3カ国中の4 8ヵ国 と国交を有 し,その全ての国に直接投資 をおこなっている。ニジェール ( 1 9 9 6 年国交回復)では,0 6 年現在21 企業が 進 出し最大投資国である。アフ リカ中南部 における商品集散地で もある南ア フ リカ共和国には,現在首都 ヨハネスブルグを中心 に1 0-1 5 万人の中国人商 人が暮 らしていると言われているが,アフ リカ各国への中国商品,中国人商 人の進出は相当に大規模である。 これ らの商人や商店の投資は小規模投資で あ り,その大半は統計 に捕捉 されていないが,その集積は無視 し得ない。 統計,情報収集の制約か らアフ リカにおける中国企業の直接投資の具体例 は十分な形で示す ことがで きない。得 られた文献,情報 に精粗があ り,全体 像は描 き出せないが,以下に代表的 と思われ る 5ヵ国の事例を挙げ,その一 端 をうかがっておこう。 *スーダン ( 1 9 5 9 年国交樹立) ① ハルツーム石油精製会社 - 1 9 9 8 年 5月建設 開始 ,2 0 0 0 年 5月操業開 00 万 t予定。 中国に とり, 始。中石油 とスーダン政府 の合弁,年産 5 中国企 業の海 外進 出 -2 0 0 5 -2 0 0 7 年 1 81 石油精製会社 の合弁第 1号。 上海 ・スー ダン製薬有限会社 - 1 9 9 9 年 9月建設 開始 ,2 0 0 0 年操業 開 ② 始。上海市医薬有限会社 とスー ダン政府衛生部直属企業 との合弁。総 投資額 1 8 0 万ド ル,中国側 5 5 %出資。 *ザンビア ( 1 9 6 4 年 国交樹立) 2 0 0 4 年末現在 ,1 4 0 企業,総投資額 2 . 7 5 億ド ル以上,中国側人員 2 , 0 0 0 人が 従事 している。 江蘇農墾新洋農場 - 1 9 9 0 年 に1 8 0 万ド ルで 1万 ムー ( 6 6 7 ha )の中国 ・ ① ザンビア友誼農場 を購入 ,1 9 9 4 年 には さ らに6 0 万ド ルで2 1 万ムー ( 3, 0 0 0 )のザン ビア中墾農場購 入。小麦 ,大豆 , トウモ ロコシ,養豚 , ha. 肉牛 ,乳牛 を生産 ・飼育 し,両農場 の 1 9 9 8 年 の生産額 は 1 6 2. 2 万ド ル, 利潤額 は4 2. 9 万ド ルであ った。 なお,中国農墾集 団は,アフ リカ 9ヵ国 6 7 万h aの農地 で 11プ ロジ ェク トの農業生産 ・加工事業 を実施 し, 1. を経営 してい る6)0 ( 参 紡織会社-ザンビア最大 の紡織工場 ,1 9 9 7 年 ,合弁。 ③ 無機鋼缶工場 一 合弁。 ④ アフ リカ最初 の中国経済貿易協 力区の設置 - 2 0 0 7 年 2月合意 。6 0 企 億 ドル ,6 , 0 0 0 人の雇用 を計画。 業 ,8 *アルジ ェリア ( 1 9 5 8 年 国交樹立) ① So r a l c hi n一 石油精製会社 ,中石油 との合弁。 ② 石油 ・ガス販売会社 - So r a l c hi nとアル ジ ェリアの国有石油 ・ガス販 売会社 Na f t a l tとの合弁。 1 9 9 8 年 国交樹立) *南アフ リカ共和 国 ( 2 0 0 5 年現在 で中国銀行,華為 ,中興通訊 ,海爾,三九集 団な ど1 0 0 余企 業 が進 出 してい る。南 アはアフ リカの GDPの 2割 を占め る経済大 国で 6)播 偉光著 『 経済全球化与中国農業企業跨国発展』中国農業 出版社 ,20 04年 6月,88 -91 頁C 1 8 2 経 営 と経 済 あるが,中国は,すでに南アに とりドイツに次 ぐ第 2の輸入先である。 ① 上海広電 - テレビ組立工場 ,1 9 9 3 年。 ( 参 上海服装公司 - 1 9 9 5 年 ,9 8 万ド ル投資 ,5 0 0 人雇用。 海信集団南アテレビ工場 - 1 9 9 7 年 に韓国 ・大字の南ア工場を,3 7 4. 5 ③ 万ド ルで買収テレビ市場のシ ェアは1 2. 5 %。なおテレビの中国製品シ ェ アは2 5 %前後である。 ④ クロム鉱業会社-2 0 0 2 年設立 ,2 0 0 6 年採鉱開始,酒泉鋼鉄集団 との合 弁 ,フ ェロ ・クロム生産 も開始。2 0 0 4 年総投資額 1 . 5 7 億ド ル,中方 2 6 %。 6) S a ma nc o rクロム鉱業会社-2 0 0 7 年設立,合弁,中鉱集団が 2億 ドル, 5 0 %出資,クロム採鉱 ・フェロ ・クロム精錬。 *ナイジ ェリア ( 1 9 7 2 年国交樹立) 中石化,中海油,中興通訊,中国水産集団総公司,華為,湛江軽騎,金 城モーター,嘉陵モーターな どが進出。ナイジ ェリアは,人 口 1億人を こえるアフ リカ第一の人 口大国である。 以上のほか,アフ リカ1 0ヵ国への中国企業の進出状況を文献 ・ネ ッ トで調 べて印象的だ ったのは,以下の点である。 ・ ( ∋ 中国企業のアフ リカ諸国進 出は,商業のみな らず極めてアクテ ィブで あ る。進 出分野 も石油 ・天然ガス,鉱業,繊維 ・ アパ レル,自動車 ・ オー トバ イ組立,製革,製薬,ホテル,建設,通信,農水産業,セメン ト な ど多業種 に捗 っている。 ② 中国企業 が,家電,繊維 ・ アパ レル分野で高い国際競争 力を有 してい ることは,広 く知 られているが,アフ リカ諸国においては,農業 ・ 農 産物加工 ( ギニア,ジンバブエ,タンザニア,スーダンで大規模農場 ・ 農産物加工工場を経営 している)分野での進 出が 目覚 しい。 ③ 通信企業の中興通訊集団のアフ リカ進 出は顕著である。2 0 01 年 にニジ ェール電信公司の5 1 %の株式 を2, 41 3 万ド ルで取得,同年 1 1 月 コンゴ ・ 1 %,8, 0 0 0 人民 中国通信会社 を設立 ( コンゴ政府 との合弁 ,中興 が5 中国企業の海外進 出 - 2 0 0 5 -2 0 0 7 年 1 8 3 元出資) している。 ④ 中国企業は,一部産業では,ローカル技術への適合 という意味での技 術優位を有 している。 おわ りに 対外直接投資は,いずれの国で も中小企業か ら始 まる。華僑 ・華人企業を 度外視すれば,中国では順序が逆である。企業の海外進 出は国家の許認可事 項で,厳 し く規制 されていたためである。現在,漸 く中小企業 ・私企業の海 外進 出が開始 された ところである。中国の代表的大企業集団 とな らんで,中 小企業の海外進出は,これか ら同時並行的に進行するであろう。また製品輸 出の拡大に企業の海外進 出が続 くことが一般法則 とすれば,2007 年 に ドイツ を,201 0 年以前 にアメリカを上回ると予測 されている中国貿易の急増は,相 応の中国企業の海外進出に導 こう。 改革 ・開放政策後 の中国企業の海外進 出の歴史 もすでに四半世紀 を こえ る。東京か ら開始 されたが,日本への生産企業の進出は,まだ限 られている。 秋山印刷機械 ( 2002 年,上海電気集団 と英国企業の連携,各 450万 ド ル,中国 企業 による M &A の成功例 とされている),東亜製薬 ( 2003 年 ,三九集団) 池貝 ( 2 004年,上海電気集団,株式の65% を取得 ,4. 1 6 億 円),MSK の M &A が 目立 つ くらいであ る。 2006 年の中国太陽電池大手の尚徳 に よる MSK 買収は約 3億 ドル と過去最大である。 しか し中国企業 による先進的 ・革新的 技術 を もつ企業の M &A は著増 しているので対 日本のケース も増加す るで あろう。おそ らく,香港 と東南アジアが中国企業の海外進出の跳躍台 となろ うが,中国企業の海外進 出の今後の推移は注 目される。 小論では,中国内外の最新の 2つの報告 に依拠 して,中国企業の最近の対 外直接投資 ・海外進出の動向を措いてみた。またその具体的事例の一端 とし て,対 アフ リカ投資 ・進 出を概観 してみた。中国企業の多国籍企業化は,す 1 8 4 経 営 と経 済 でに3 0 年 に近い歴史をもつが,その本格化は前世紀末から開始されたばか り である。 またそれに関するマクロ ・ミクロ分析 も同様で,今後に残された課 題は多い。