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Title 原発性膀胱上皮内癌8例の臨床的観察 Author(s)
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原発性膀胱上皮内癌8例の臨床的観察
村瀬, 達良; 伊藤, 博; 大石, 睦夫; 高士, 宗久
泌尿器科紀要 (1989), 35(4): 583-585
1989-04
http://hdl.handle.net/2433/116509
Right
Type
Textversion
Departmental Bulletin Paper
publisher
Kyoto University
';1ut
N尿 糸己要35:583-585,1988
583
原発性膀胱上皮内癌8例 の臨床的観察
名古屋 第一赤十字病院泌尿器科(部 長=村 瀬達良)
村瀬
達 良,伊 藤
博,大 石
睦夫
名古屋 大学医学 部泌尿器科学教室(主 任:三 宅弘治教授)
高
CLINICAL
士
OBSERVATION
IN SITU
Tatsuro
久
OF 8 CASES
OF THE
MuRASE,
宗
URINARY
Hiroshi
OF CARCINOMA
BLADDER
ITO and
Mutsuo
OISAI
From the Department of Urology, Red Cross Nagoya First Hospital
Munehisa
TAKASxi
From the Department of Urology, Nagoya University
We encountered 8 patients with primary carcinoma in situ of the bladder.
All the cases had
cystic irritation symptoms, and diagnosis was confirmed by urinary cytologies and transurethral
biopsy. Total cystectomy was performed in 5 of the 8 cases during the course of disease. Bacillus Calmette-Guerin
(BCG) instillation
therapy was instituted in 4 cases, in two cases of which
bladder malignancies were abolished after BCG instillation therapy.
In one case treated by total
cystectomy, histopathological
study disclosed malignancies
that invaded to the bladder musculature.
(Acta Urol. Jpn. 35: 583-585, 1989)
Key sords:
Bladder
cancer,
緒
Carcinoma
in situ
い ずれ も頻 尿,排 尿 痛,尿 道 痛 な どの膀 胱 炎 症 状 を 主
言
訴 に 来 院 して い る.初 発 症 状 か ら膀 胱 生 検 に よる確 定
膀 胱 内に 隆 起
診 断 まで に1ヵ 月か ら4年 に 及 ん で い る.内 視 鏡 所 見
性 の病 変 を 形 成 せ ず,粘 膜 上 皮 内 の み癌 が 認 め られ る
で は 粘 膜 の発 赤 が み られ るの み で いず れ も隆 起 性 の 病
膀胱 癌 であ る.CISは
変 を 欠 い て いた.す べ て の 症例 で 複数 回 の尿 細 胞 診 で
膀 胱 上皮 内癌(以 下CISと
略 す)は
膀 胱 癌 の 発 育進 展 を 知 る上 で
重要 で あ るが 自然 経 過 は 多様 で あ り診 断,治 療 に 問 題
2回 以 上 陽性 を示 し て い た.尿
点 が 多 い.
と共 に 白血 球 が 中等 度認 め ら れ,い
われ わ れ は8例 の膀 胱CISを
経 験 した の で そ の 症
pyuriaの
例 の経 過 とそ の 治療 につ い て報 告 す る.
・・.年
令性
1983年 よ り1988年 ま でに 膀 胱CIS8例
臨床 経 過 を 観 察 して い る.本 報 告 で のCISは
原発 性 膀 胱CISで
あ り,随 伴 性 のCISは
る,ま たUICCI)の
すべて
除いてあ
規 定 とや や 異 りgradellの
細
胞 異 形 の もの も入 って お り,症 状 と して 頻 尿,排 尿痛
な どの 膀 胱 刺 激 症 状 を 伴 うUICC分
類 で い うtype
1を 対 象 と して い る.
Table1は8例
の 概 要 を 示 す が,年
ら78歳 であ る.男6例,女2例
齢 は48歳 か
で あ る.こ れ ら8例 は
症 状
発 性 膀 胱CISの8例
、
聡 臨
頻 尿151男
排 尿 痛
排尿 困難274女
排 尿 痛
頻 尿371男
排 尿 痛
頻 尿465男
排 尿 痛
陰 茎 痛548男
頻 尿
排 尿困難659男
尿 道 痛
排 尿 痛764女
頻 尿
を経 験 し,
878男
わ ゆ るaseptic
状 態 を示 し てい た.生 検 の 組 織 像 は いず れ
Tablc1.原
対象 および経過
所 見 で は沈 渣 で血 尿
排 尿 痛
12M
lM
器鶉
3
全摘・有無 備 考
全摘
尿道再発
BCG
2-3
24M
2
全摘
3M
3
全摘
48M
3
全摘
18M
2
13M
2
3M
2
BCG
BCG
BCG
全摘
584
泌尿 紀 要35巻4号1989年
2
1
Year
5
4
3
No.1,51♂
2.74♀
3.71♂
4.65♂
5.48♂
6.59♂
7.64♀
8.78♂
圏 殿 轍 症状
㎜
〉麟 識
皿CisOBCG;主
。
。,
入
■inVaS・ve圏neg・tiVeCyt。1。gy
Fig.i.CISのclinicalcourse
も移 行 上 皮 癌 で あ り,細 胞異 型 はgrade皿
が5例,
る こ と もあ り,microinvasionを
含 め て 明 らか な 腫
gradeilh:3例
症例 は1
瘤形 成 を認 め ない もの をCISと
して 取 り扱 った 方 が
で あ った.な
回 目の膀 胱 のrandombiopsyで
お,NQ.4の
は,膀 胱 炎 とい う病
理 診 断 であ った が1ヵ 月後 の 再度 の生 検 でCISと
診
CISの
診 断 は膀 胱 刺 激 症 状 か らCISを
疑 う こと
か らは じま るが,特 に 男 で膀 胱刺 激 症 状 が 頑 固 に 持続
断 で きた.
8例 の経 過 をFig.1に
示 す.8例
過 観 察 中 に 全 摘 し て い る.全
pTisと
実 際 的 だ とい う意 見 は 多 い.
の うち5例 は経
摘 標 本 で のstageは
病 理 診 断 した の は4例 で,No.3の
症例 は前
す る 時 は精 査 が 必 要 で あ る.わ れ わ れ の 症 例 で は 全 例
にascpticpyuriaの
原 発 性 のCISで
所 見 を 認 め て お り,黒 田3)ら も
血 膿 尿,膿
立腺 内に も移 行 上 皮 癌 が存 在 し,ま た膀 胱 の 筋層 まで
して お り,Smith4)ら
癌 が 浸 潤 して お りpT4と
が 多 い と報 告 して い る.
診 断 され た.膀
胱 全摘 時 リ
ンパ節 癌 清 を 行 って い るが 全 例 リンパ節 転 移 を認 め な
か った.No.1の
症 例 は 膀 胱 全 摘 時CISで
が,全 摘 後3年2ヵ
あ った
月 で尿 道 再 発 と両 側 そ け い 部 リン
尿 の 率 は46%で
もsterilepyuriaの
あ った と
例 にCIS
初発 症 状 か ら診 断 確 定 ま で に あ る程 度 の 時 間 の経 過
が あ るの が普 通 で あ る.Farrow5)ら
は69例 のCIS
で 診 断 確 定 まで に平 均32,2ヵ 月 か か って い る と報 告 し
パ 節 へ の転 移 を きた し,尿 道 全 摘 そ け い部 の リンパ 節
て い る.し か し最 近 で はCISの
切除 を 行 い術 後2年6ヵ
た こ とに よ り早 め に 診 断 が つ く よ うに な って きて お り
月経 過 した 現在 再 発 な く健 在
で あ る.な お,尿 道 の 病理 組 織 もCISの
所見のみで
あ った.こ れ 以 後,膀 胱 全摘 例 では 男 で は全 例 尿 道 切
除 も同 時 に施 行 して い る.4例
80mgを
週1回,計8回
にCISと
診 断 後BCG
膀 胱 注 入 を 施 行 した が,2例
黒 田3)ら は平 均17.4ヵ 月 と報 告 して い る.わ れ わ れ の
症 例 で は 平 均15・4ヵ月 で あ った.
CISで
最 も興 味 の あ る と ころ は 浸 潤 癌 に 至 る 経 過
で あ る・Melamed6》
は 注 入 後,頻 尿,排 尿 痛,膀 胱 部 痛 が 悪 化 し全 摘 に 至
で9例 が7-8ヵ
った.2例
い る.
はBCG注
入 後症 状 は 軽 快 し,尿 細 胞 診
も陰 性 化 し,注 入 終 了 後4ヵ 月∼5ヵ 月 後 の膀 胱 生 検
で も癌 は認 め ずBCG注
らは25例 のCISの
経過の観察
月 の後 に 浸 潤 癌 に な った と報 告 して
本 邦 に お い て もCISの
報 告 が 最 近 で は ま と ま った
入 の 効 果 を 認 め た.No.8
の症 例 は膀 胱 の刺 激 症 状 が 比 較的 軽 微 で あ り待 機 的 に
経 過 を 見 て い るが,尿 細 胞 診 は な お 陽性 が 続 き,BCG
注 入 を 予 定 して い る.
考
概 念 が認 識 され て き
察
膀 胱 のCISは1964年Melamed2)の1例
の 全 摘症
Table2.
原 発 性 膀 胱 上 皮 内 癌 の 本邦 報 告 例
著
例 数
者
長 山1)(1972)
6
4
0
3
中 野e)(1978)
3
3
0
1
福 井9}(1982)
6
3
0
1
湯 下le}(1983)
2
2
1
0
大和田tt)(1984)
例 の 詳 細 な 報 告 に よ りそ の臨 床 像 と病 理 組 織 が 確 立一
(職業 性 膀 胱 癌 は 除 く)
全摘数
全辞電の 癌 死
黒 田3)(1985)
2
0
25
22
8
10年生存準re.7%
1
0
般 化 され,そ の 後 あ いつ い で 多 数 の 報告 が な され て い
赤 座12)(1986)
4
3
1
る.CISは
田 中11)(1987)
12
12
3
1
自 験 例(1988)
8
5
4
0
病 変 が 粘 膜 内 に限 局 して い る と い う病 理
組 織 学 的 な概 念 で あ るが,膀 胱 生 検 でCISと
診断 さ
れ て も全 摘 時 詳 細 に みれ ばmicroinvasionが
み られ
585
村 瀬,ほ か=膀 胱 上 皮 内癌
形 で報 告 され る よ うに な った.Table2は
これ まで
た そ の 周辺 の疾 患 で あ る.総 数 自験 例 を 含 め て64例 で
45例,70.3%が
献
文
の職 業 性膀 胱 癌 を除 く複 数 例 で の原 発 性 膀 胱CISま
1)Carcinomainsitu,Bladdercancer.In:
UICCtcchnicalreportseries.Editedby
全 摘 され て お り,ま た 全 摘 時 の病 理 組
SkrabanekPandWalshA.vol。60,pp.31-
織 の深 達度 でpTisの
%)の
ま ま で あ った の は16例(25.o
37,UICC,Geneva,1981
み で あ り膀 胱 全 摘 は や む を えな い 撰 択 と思 われ
る.CISの
2)MelamedMR,GrabstaldHandWhitmore
発 育 進展 形 式 で は 浸 潤 癌 に 移 行 す る 際 も
WFJr:Carcinomainsituofbladder=
clinico-pathologicstudyofcasewithasug.
隆起 牲 の 病 変 を 形 成 せ ず,長 山7)の 報 告 の ご と く
t"silentbladdercancer"と
して 進 行 す る型 が 多 く膀
胱 癌 の特 異 的 なtypeと
推 測 され る.た だCISの
ま
gestedapproachtodetection.∫UrQI96:
466-471,1966
3)黒
まか な り長 期 間 と ど ま る例 も か な りあ り,抗 癌 剤,
BCGな
どの 膀 胱 注 入 法 が 試 み られ る余 地 が あ る.最
近CISに
対 してBCGの
膀 胱 内注 入 が 効果 的 で あ る
瘍 の消 失 を み た が,2例
は増 悪 し,8回
2501,1976
6)MelamedMR,VoutsaNGandGrabstald
H:Naturalhistoryandclinicalbehaviorof
insitucarciniomaofthehumanurinary
膀 胱 の表 層 が 脱 落 し
注
bladder.Cancer17:1533-1545,1964
7)長
入 に よ り臨床 症 状が 増 悪 し全 摘 を余 儀 な くされ た が,
た だBCGの
注 入 の 効 果 はhighgradeで
有効であ
対 す るBCGは
今 後期 待 で き る療 法 と思
8)中
野
海 七 郎:い
つ い て.日
博,藤
わ ゆ るSilentbladder
泌 会 誌63:427-437
井 元 広,石
野 外 勝,松
浦 博 夫:慢
例.泌
井
9)福
尿 紀 要24:417-4271978
厳:膀
胱 非 乳 頭 状 上 皮 内癌 お よび そ の境 界
病 変 に 関 す る 臨 床 病 理 学 的 研 究.日
155-168,1982
わ れ わ れ の 初 期 の症 例 で膀 胱 全 摘 した 際,尿 道 切 除
10)湯
下 芳 明,今
龍 夫,松
両側 そけ い 部 リン パ 節 転移 を来 た した 例 が あ りCIS
村 厚 志,城
代 明 仁,下
崎 幸 康,林
進 藤 和 彦,斉
藤
泌 会 誌73:
幹 男,草
秦3慢
前 英 司,清
場 泰 之,金
性 膀 胱 炎,前
の 症 状 を 示 し た 膀 胱 上 皮 内 癌 の2例.西
場 合が あ り,尿 道 切 除 の重 要 性 を あ らた め て 感 じた.
55=IG95-IlOl,1983
11)大
8例 の 原発 のCISを
経 験 しそ の経 過 を 観 察 した.
の う ち5例
は経 過 中膀 胱 全 摘 し
た.5例
の うち1例
は 全摘 標 本 で 浸 潤 癌 とな っ て い
た.4例
にBCGを
膀 胱 内に 注 入 し て 効果 を みた が
2例 は現 在 の と こ ろCancerfreeと
島 純 一,斉
胱 上 皮 内 癌 の2例.埼
805,1984
いず れ も膀 胱 刺激 症 状 を 持 ち,尿 細 胞 診,膀 胱 生 検 で
確 定 診 断 し た.8例
和 田 文 雄,安
語
な って い る.
12)赤
座 英 之,新
島 端 夫:原
藤
隆,加
原 正 通,浅
野 友 彦,飯
日泌 尿
納 重 一:膀
発性 膀 胱 上皮 内癌 の臨 床
発 性 上 皮 内 癌 の 病 理 学 的 検 討.臨
1987
田 一 巳:表
原
洋,
玉 県 医 学 会 雑 誌19:803-
的 観 察.日
泌 会 誌77;1296-1299,1689
13)田 中 正 敏,藤
本
博,小
川 秋 実,万
14)萩
武
立 腺 炎 様
は膀 胱 のみ な らず,尿 管,尿 道,前 立 腺 に も併存 す る
結
性
膀 胱 炎 と の 鑑 別 が 困 難 で あ っ た 膀 胱 上 皮 内 癌 の3
わ れ る,
を施 行 しなか った 症 例 で 後 に 尿 道再 発 を来 た し,更 に
山 忠 雄,片
cancerに
り,か つ 膀 胱 内の 腫 瘍 の 量 が 少 な い場 合 に 有 効 で あ
り,CISに
原
patientswithearlybladdercancertreated
withtotalcystectomy.CancerRes36:2495・-
残 存 し て い た.一 方 結 核 結 節 が 多数 認 め られ
状態 の激 しい もの はBCGの
治,清
phologicalandclinicalobservationsof
の 注 入 後,頻 尿,排 尿 痛 激 し く全 摘 し
denudingcystitisの
恒
胱上皮内癌の臨
5)FarrowGM,UtzDCandRifeCC:Mor-
は 注 入直 後 か ら膀 胱 刺激 症状
膀 胱 結 核 とな って お り,CISで
内 利 明,沐
武 敏 彦:膀
bladdersimulatingchroniccystitis.BrI
腫
た.組 織 標 本 で は膀 胱 粘膜 は全 部 脱 落 し,一 部 の みに
CISが
茂,木
Urol93-991964
腫 瘍 の消 失 効 果 が あ った と され る 。 われ わ れ も本 症 例
入 療 法 を 試 み たが2例(50%)に
木
佐 見 道 之,古
床 的 観 察.日
泌 会 誌77:260-267,1986
4)smethJc,BadenochAwlcarcinomaofthe
との報 告 が 散 見 され,萩 原14)らの 集 計 で は59∼94%に
中4例 にBCG注
田 昌 雄,細
久 和,宇
井 善 一 郎=原
泌41:33-38
ケ谷 知 彦,塚
本 祐 司,西
在 性 膀 胱 腫 瘍 に 対 す るBCG膀
胱注
入 療 法 の 検 討一 乳 頭 状 腫 瘍 に対 す る縮 小効 果 。 日
本 稿の 要 旨は 第37回 日本泌尿器科学会 中部総会 で報告 し
た.
泌 会 誌77:1623-16301986
(1988年5月13日
受 付)
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