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簡易なトラップによる琵琶湖産エビ類のモニタリング調査
琵琶湖生態系修復総合対策研究 簡易なトラップによる琵琶湖産エビ類のモニタリング調査 井戸本 純一 2.方 法 トラップは、塩ビ板を曲げた四角柱の一方 だけを細かい網地でふさぎ、内部に人工産卵 藻(きんらん)を立体的に格納した(図1)。 水産試験場の船溜まりの3カ所(水深約4m、 泥底)にトラップを1つずつ沈め、週2回の 頻度で手早く引き上げて内部の生物を捕獲し た。 底層水温(℃) 30 25 20 15 10 5/11 5/21 図2 5/31 6/10 6/20 2012年 6/30 7/10 7/20 7/30 トラップ周辺の水温変化. 100 スジエビ 80 捕獲個体数 1.目 的 近年漁獲量が減少している琵琶湖産スジエ ビの資源動向を把握し、原因究明と漁況予測 につなげるため、簡易なトラップを用いた定 量的なモニタリング調査を試みた。 テナガエビ ヌマエビ類 60 アメリカザリガニ 40 20 0 5/1 5/11 図3 5/21 5/31 6/10 6/20 2012年 6/30 7/10 7/20 7/30 エビ類捕獲個体数の推移. 80 砂 ひも 23cm 湖 23cm 1.5mm メッシュ 20 30cm ② 1 3~ 12 13 1 2~ 1 1~ 11 1 0~ 0 9 ~1 8 ~9 7 ~8 ③ 6 ~7 ~4 0 5 ~6 ① 40 4 ~5 琶 琵 抱卵雌 無卵雌 その他 60 標本個体数 浜 N 頭胸甲長(mm) 砂浜 図4 滋賀県水産試験場 (調査船溜まり) 人工産卵藻 (延長3m) 50m 図1 期間中捕獲されたスジエビの体型組成. 被覆針金 モニタリング装置の概要. 3.結 果 トラップで捕獲された生物は、甲殻類(ス ジエビ、テナガエビ、ヌマエビ類、アメリカ ザリガニ、ヨコエビ類、エビノコバン)、魚類 (ヌマチチブ、ヨシノボリ属、ブルーギル、 オオクチバス、ビワヒガイ、ウキゴリ、イサ ザ、ナマズ、ギギ、ワカサギ仔魚)、貝類(ヒ メタニシ、カワニナ属、サカマキガイ、マメ タニシ)のほか、ウシガエル幼生、ヤゴ等多 岐にわたった。 スジエビは6月の上旬から中旬にかけて卓 越して多くの個体が捕獲されたが、そのほか の時期はテナガエビのほうが多かった(図3)。 捕獲されたスジエビの 42%は側甲の形状か ら雌と判定され、そのうち 72%は抱卵してい た。頭胸甲長の中央値は抱卵雌では 8.58mm、 卵を持たない雌では 7.45mm、その他(雄と未 成熟雌)では 5.86mm であった(図4)。 スジエビの捕獲結果は、繁殖にともなう蝟 集行動を時系列で捉えたものと考えられ、今 後も同じ調査を継続することによって資源の 水準や再生産の状況を評価する指標の一つに なりうるものと期待される。