Comments
Description
Transcript
(5)地域研究員制度の運用例 小千谷市立小千谷小学校の福島ひろみ
資料3 Ⅲ 特別支援教育に係わる新カリキュラムの改善 1.附属学校園等において実施されたカリキュラムの評価 <附属幼稚園での成果と課題> ○担当:藤井和子 週 1 回(1 回あたり約 3 時間)の実習を年間を通して実施することによって、対象幼児の発達の経過を詳細に 把握することができた。このことにより、履修した院生1名は、対象幼児についての理解を深めることができたよう である。また、活動場面で生じる支援機会を捉えて、活動の流れを妨げることなく、支援の実習を実施すること ができた。このことによって、履修した院生は、学級経営の視点からの指導法についても考えることができたようで ある。統合教育場面においては、特別な教育的ニーズのある子どもの支援を学級に在籍する子どもたちすべて の教育を行う中で実施しなければならない。学級の他の子どもたちを教育しながら、いかに対象児の特別支援 を行っていくかの視点を得ることができ、対象幼児が在籍している園での実習は有意義であった。 特別な場で特別な支援を行う方法の実習だけではなく、在籍するクラスの活動の中での支援を行っていくため の実習方法については、今後の検討課題でもある。 ○担当:葉石光一 今回の予備観察の目的は、遊びの場面など、集団活動にうまく入ることができないという状況が発生する条 件を明らかにするための観察のポイントを整理することであった。観察の成果は、①自由遊び場面の記録のため に必要な道具立て、方法を明らかにし得たこと、②集団活動にうまく入ることができないという状況を、事例を通 して具体的に理解することができたことであった。またこの観察では、附属幼稚園に配置されている特別支援教 育事業推進コーディネーターの存在により、スムーズに園の状況を把握することができた。このことにより、園での 観察を通した学生指導は効率的に進められた。 2008 年度も観察、調査を継続する予定である。今後の課題は、観察、調査を通して得た情報を園の運営 にとって有益となる形でフィードバックすることである。そのためには、学生の研究内容に関する説明を継続的に 行うことと併せて、園の運営方針に関する情報収集を行うなど、密な協力関係を構築、維持していくことが必 要である。 <特別支援教育事業推進コーディネーターによる附属幼稚園における活動成果と課題> (ⅰ)観 察 時 間 毎 週 水 曜 日 の午 前 中 に幼 稚 園 を訪 問 し,遊 び場 面 や集 団 活 動 場 面 (グループ活 動 やおや つ場 面 など)の観 察 を行 う中 で「気 になる園 児 」に関 する情 報 収 集 を行 った。観 察 時 間 を Table 1に示 す。 Table1 幼 稚 園 における観 察 時 間 (2008/3/14 現 在 ) 時間 4月 5月 6月 7月 9月 10 月 11 月 12 月 1月 2月 3月 12 15 15 13 12 11 9 9 15 12 6 (ⅱ)支 援 内 容 「 気 になる 園 児 」 に 関 す る 情 報 収 集 を行 う 中 で 必 要 に応 じ て支 援 を行 った。学 年 別 の 支 援 内 容 と人 数 を Table2に示 す。 Table2 学 年 別 の支 援 内 容 と人 数 学年 支 援 内 容 (人 数 ) 3歳 児 4歳 児 ○コミュニケーション(3名 ) ○発 達 (2名 ) 5歳 児 ○コミュニケーション(2名 ) ○発 達 (1名 ) 4歳 児 の 1名 につい ては,上 越 教 育 大 学 特 別 支 援 教 育 実 践 研 究 センタ ーの教 育 相 談 を昨 年 度 より実 施 し,現 在 も継 続 指 導 を行 っている。3歳 児 については,観 察 は行 っているが,支 援 は行 っていないことから未 記 入 である。 (ⅲ)その他 ○教 育 相 談 2名 の保 護 者 からの要 請 により教 育 相 談 を実 施 し た。1名 については,特 別 支 援 教 育 実 践 研 究 セ ン タ ー に て 行 い ,も う 1名 に つ い ては,附 属 幼 稚 園 の 園 長 室 で 行 った。 相 談 内 容 は,家 庭 生 活 におけるトラブルやその支 援 方 法 ,運 動 発 達 面 や言 葉 の発 達 であった。 また,夏 季 休 業 中 に は,特 別 支 援 教 育 実 践 研 究 セ ン ター を会 場 に教 育 相 談 会 を行 い ,1 名 の保 護 者 より申 込 みがあった。 ○支 援 会 議 (対 象 幼 児 :4歳 児 ,1名 ) 特 別 支 援 教 育 講 座 の院 生 1名 が,附 属 幼 稚 園 の 園 児 ( 4歳 児 :1名 )を対 象 に研 究 を進 めており,特 別 支 援 教 育 実 践 研 究 センターにおける指 導 と平 行 して幼 稚 園 での様 子 について観 察 を行 った。また,附 属 幼 稚 園 の先 生 に研 究 の協 力 をしてもらうため,定 期 的 な支 援 会 議 (学 期 に1回 の割 合 )を設 け,情 報 交 換 を行 った。支 援 会 議 参 加 者 は,附 属 幼 稚 園 の先 生 2名 , 院 生 ,大 学 教 員 ,特 別 支 援 教 育 事 業 推 進 コーディネーターの5名 である。 ○院 生 の観 察 今 年 度 は2名 の院 生 が附 属 幼 稚 園 にて園 児 の様 子 について観 察 を行 った。1名 は昨 年 より 継 続 しており,今 年 度 は 30 日 (90 時 間 )の観 察 を実 施 した。また,もう1名 については, 2008 年 1月 より観 察 を開 始 し,7日 (12.5 時 間 )の観 察 を行 った。附 属 幼 稚 園 では遊 びを教 育 の中 心 に据 えていることから,一 緒 に遊 ぶ中 で観 察 を行 い,必 要 に応 じて支 援 を行 った。 (ⅳ)院 生 の関 わり方 の可 能 性 について 附 属 幼 稚 園 では,年 齢 に関 係 なく園 舎 全 体 を使 って教 育 を行 っていることから,特 定 の幼 児 を抽 出 して,幼 稚 園 内 で個 別 の支 援 をすることは不 可 能 である。しかしながら,観 察 をする日 程 や時 間 を決 めて,観 察 実 習 を行 う中 で必 要 に応 じて支 援 を行 う方 法 が考 えられる。支 援 を行 う 際 は,特 定 の幼 児 のみに支 援 を行 うのではなく,他 児 との関 係 構 築 に向 けた視 点 を取 り入 れて 行 く必 要 がある。また ,幼 児 の遊 びは日 々,変 化 をしているため院 生 が遊 びを設 定 するのではな く,幼 児 が遊 んでいるそばに行 き,一 緒 に活 動 を行 う中 で関 わりをもつことは可 能 である。 また,幼 稚 園 段 階 における発 達 を考 慮 すると,障 害 名 の診 断 は難 しいことから,「気 になる園 児 」という抽 象 的 な観 点 になってしまう。しかし,早 期 発 見 ・早 期 療 育 ,就 学 前 ,小 学 校 への移 行 など,幼 稚 園 段 階 におけるニーズも確 実 に存 在 することから,このような観 点 で院 生 が関 わって いくことは可 能 であると思 われる。 <附属小学校での成果と課題> ○担当:大庭重治 附属小学校における臨床実習の実施により,以下のような成果が得られた。 1.特別な支援を必要とする児童に対して具体的な支援を実施することができ,児童本人,保護者,担任教 諭のニーズに応じることができた。 2.実習が学級の中で展開されるため,対象となる児童のみならず,他の児童も視野に入れた支援のあり方を 常に考える機会を院生に提供することができ,臨床研究・教育の方向性を考える上での資料を得ることがで きた。 3.特別支援教育事業推進コーディネーターの関与により,学校現場において生じている特別支援教育に関 する問題を,学校現場の中で解決していくための体制づくりに関する基礎的資料をうることができた。 4.特別支援教育事業推進コーディネーターや大学の教員が附属小学校における特別支援教育に積極的に 関与することができ,附属小学校と大学の連携のあり方について検討する機会を得ることができた。 また,今後の検討課題として,以下のことがあげられる。 1.附属小学校における実習は,特別支援教育事業推進コーディネーターによる学校と大学との間の調整機 能が大きな役割を果たしている。すなわち,コーディネーターは,いわゆる小学校における「特別支援教育コー ディネーター」の役割も果たし得るが,それ以上に実習を計画的に実施するためのコーディネートに関する役 割が大きい。したがって,特別支援教育事業推進コーディネーターのような機能を果たしうる人材を常に確保 していくことが必要である。 2.今年度の事業の実施により,附属小学校と大学との連携が昨年以上に密接なものとなり,実習内容も充 実させることができた。特別な支援を必要とする児童を対象とした実習を今後も継続していくためには,小学 校と大学の間の更なる信頼関係を構築し,学内における人的資源の有効活用を図っていくことが必要であ る。 <特別支援教育事業推進コーディネーターによる附属小学校における活動成果と課題> (ⅰ)観察時間 附属小学校では授業観察を実施し、児童の情報収集を行った。授業観察の実施数を表1に示す。 また、給食や清掃、休み時間等にも情報収集を行った。 表 1 授業観察実施時数(1 単位時間=30 分) 2007/03/14 現在 学年 4月 5月 6月 7月 9月 10 月 11 月 1年 47 45 8 14 12 10 6 2年 7 6 5 3 4 10 3年 1 4 1 3 3 4年 6 5 46 19 5年 4 4 4 6年 0 3 2 12 月 1月 2月 3月 5 17 12 2 15 6 16 22 10 1 9 1 2 7 2 8 12 24 17 3 12 0 6 4 14 7 4 9 9 2 6 3 10 1 3 0 3 0 (ⅱ)児童の実態と支援内容 特別な支援を必要とする児童についての詳細を表2に示す。授業観察を実施する中で、必要に応じて支援 を行った。また、検査の実施状況を表3に示す。 表2 学年別の支援内容 学年 内容 (人数) 1年 学習・コミュニケーション(1名) 2年 学習・コミュニケーション(1名) コミュニケーション(1名) 3年 学習(1名) 4年 発達(1名) 5年 コミュニケーション(1名) 6年 学習(2名),発達(1名),コミュニケーション(1名) 表3 検査の実施状況 学年 実施検査 1年 ・WISC-Ⅲ ・ S-M 社会生活能力検査 2年 ・WISC-Ⅲ ・ ベントン視覚記銘検査 (ⅲ)その他 ○教育相談 教育相談の実施件数を表4に示す。 表4 教育相談実施件数 2007/03/07 現在 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10 月 11 月 12 月 1月 2月 3月 1 1 0 1 0 2 1 2 0 0 0 1 ○院生の臨床実習について 本年度 6 月末より週 1 日、院生が一人 5 年生のクラスに入った。対象児 1 人に関わるのではなく、クラス 全体の補助をしながら、対象児と関わることとなった。クラスの児童が対象児を特別視することのないように、 対象児が欠席した時にもクラスに入った。 来年度も対象児の学級に入る予定である。また、他にも支援対象とする児童がおり、保護者からの了承 が取れれば、新たに院生が入ることが可能であると考えられる。 新3年生は支援を必要とする児童が複数在籍しているために、学級に入り、全体をフォローするように支 援することが有効であると考えられる。 <特別支援教育事業推進コーディネーターによる附属中学校における活動成果と課題> (ⅰ)観察時間 附属中学校では,4 月当初から各学年の授業観察を実施し,情報収集を行った。観察実施時間数の詳細 は,表 1 に示したとおりであった。 表 1 附属中学校観察時間数 月 学 年 1 年 2 年 3 年 計 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 計 3 13 11 11 13 8 15 20 10 10 10 11 3 3 3 12 16 9 13 18 12 12 14 9 12 12 15 14 12 4 15 16 3 9 4 0 129 151 95 27 32 45 31 9 37 43 35 39 30 34 11 375 ※時数は 2008 年 3 月 14 日現在.附属中学校の 1 単位時間は 50 分. (ⅱ)支援内容 生徒の情報収集を行う中で必要に応じて支援を行った。学年別の支援・経過観察内容を表 2 に示す。 表 2 学年別の支援と経過観察の内訳 学 年 1 年 2 年 3 年 支援内容 (人数) ○コミュニケーション(1名) ○学習(1名) ○コミュニケーション(1名) ○学習(2名) ○その他(1名) ○コミュニケーション(1名) ○発達(2名) そのうち数名の生徒に対しては長期にわたり継続的な支援を実施した。2 年生の 1 名には,授業中の板書を デジタルカメラで撮影した画像データを使用し,学習支援を行った。3 年生の 1 名については,学習およびコミュ ニケーション支援を行った。 (ⅲ)その他 ○生徒を語る会 各学期初めの生徒を語る会(4 月,8 月,1 月)に参加し,観察によって得られた生徒の情報ならびに実際に 支援を行っている生徒についての支援内容・方法について,附属中学校の教職員との情報交換を行った。 ○特別支援部会 副校長,教頭,教務主任,学年主任,学年担当職員,養護教諭,介護員で構成されたケース会議に出 席し,今後の学校側の方針等について協議した。 ○教育相談 ・保護者を対象とした相談 学校側の要請により,支援の対象となる生徒の保護者との教育相談を附属中学校にて実施した。時期は 学期中および長期休業中を中心に行った。実施回数は,のべ 8 回であった。夏季休業中には,特別支援教 育実践研究センターを会場とした教育相談会を実施した。附属中学校の保護者 2 名が来談した。 ・生徒を対象とした相談 学校ならびに保護者からの要請により,支援の対象となる生徒との教育相談を実施した。実施時期は主に 学期末に行った。相談の内容は,学習支援で実施している方法とその活用についてであった。 (ⅳ)諸検査 ○発育測定 4 月 10 日に養護教諭からの依頼で学校保健法に基づく聴覚選別検査(対象学年は 1・3 年,239 名)を実 施した。さらに要再検査となった生徒を対象に再検査ならびに精密検査(純音聴力検査)を実施した。 ○障害理解啓発授業 前年度に続き,学校側の依頼で障害理解啓発を目的とした授業を行った。対象は 1 年生全員で各学級 1 時間(合計 3 時間)の内容であった。具体的な内容は,障害の種類と分類,障害に対する偏見や差別等の問 題,障害についての正しい理解,バリアフリーの考え方,身近な問題として生徒が自分でできることを考える,と いうものであった。 (ⅴ)来年度からの院生の関わり方についての可能性 附属中学校では授業時間割が毎週異なるので,継続的に教科等を決めて支援を要する生徒に対して関わ る場面を設定することは困難である。そのため臨床実習として継続的な指導・支援を行うことは不可能である が,通常の中学校の授業における特別支援を念頭においた観察実習,もしくは学校の長期休業中に行う教 育相談や諸検査などに参加することが考えられる。また中学生を対象とした障害理解啓発授業実習・授業分 析なども可能であると思われる。 <地域小学校における実施状況> ○担当:大庭重治 上越市内の小学校において,発達障害のある児童を主な対象として定期的に放課後学習会を開催した。 その中で,実践的臨床に関する科目である『軽度発達障害教育臨床実習』及び『知的障害教育臨床実習』 の一部を実施した。 特に『軽度発達障害教育臨床実習』は平成 19 年度に新たに開講した科目であり,また扱われた内容が発 達障害児の学習支援に関する臨床であったため,実習形態は実施していく過程で常に検討がなされた。原則 として,毎週水曜日の午後,小学校に出向き,約 1 時間半の実習を実施した。院生を3グループに分け,グル ープのリーダーを中心にそれぞれ読み,書き,コミュニケーションに関する学習課題を毎回作成して実施した。終 了後,大学において参加した院生全員と担当教員でカンファレンスを開き,その日の活動を振り返るとともに, 次回の実習計画について討論する場を設定した。これによって,多様な状態を示す子どもたちを小集団の中で 支援していく方法について,毎回議論を行うことができた。 また,臨床実習に関連させて,研究法の習得に関する科目である『特別支援教育研究法演習』『障害者心 理検査法』『特別支援教育実践学研究セミナー』の一部も実施した。具体的には,これらの科目の中で扱わ れた知能検査を新 1 年生 14 名を対象にして実際に実施する機会を提供するとともに,検査結果をその後の 支援に反映させるための一連の手続きについて学習する機会を設けた。またセミナーに関連して,1 名の院生 が,「小集団学習を活用した特別な教育的支援を必要とする児童の学習意欲を高めるための支援方法に関 する研究」として,実習の成果を修士論文にまとめた。 以上のような内容の実習を通して,発達障害児の評価・診断,発達支援に必要とされる基礎的な知識や 技能の習得を促すことができた。来年度以降は,専門的知識の習得を目的とした講義科目との連動をいっそう 意識的に組織し,講義,演習,実習における学習成果が総体的に高度な実践的指導力に結びつくような工 夫をしていくことが必要である。そのような専門性こそが,まさに特別支援教育コーディネーターに求められる資質 であると考えている。