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解析 II 演習 (2016/5/6) 解答・解説(テイラー展開と収束半径)
解析 II 演習 (2016/5/6) 解答・解説(テイラー展開と収束半径) 以下で収束半径を r とする。テイラー級数は収束半径内で絶対(値)収束するから(命題 4.2.3)、項の順番 は自由に入れ替えることができる(定理 4.1.23)。そこで既知のテイラー級数への加減乗除・合成(代入)な どを利用するのが簡便である。 定義に基づいて f (n) (x) を直接求めるのは大変だが、3ページ目にまとめて記す。 1. f (x) = 1 1 − x2 ∞ ∑ 1 2 4 6 f (x) = = 1 + x + x + x + ··· = x2n (r = 1) 1 − x2 n=0 本問は簡単で、等比級数 g(x) = f (x) = g(x2 ) = { つまり an = 1 (n は偶数) 0 (n は奇数) 1 = 1 + x + x2 + · · · の x に x2 を代入すればよい。 1−x 1 = 1 + x2 + x4 + · · · 1 − x2 f (x) の収束範囲は、g(x) の収束範囲 −1 < x < 1 の x に x2 を代入した −1 < x2 < 1 を満たす x の全 体である(実際には x2 の取りうる値は 0 ≤ x2 < 1 の範囲ではある)。したがって収束半径 r は(g(x) と同じ)r = 1 である。 別解 部分分数分解して: ( ) ) ( )} 1 1 1 1 {( 1 1 + x + x2 + x3 + · · · + 1 − x + x2 − x3 + · · · = + = 2 1−x 2 1−x 1+x 2 それぞれのテイラー展開の項を足し合わせると、奇数項同士は打ち消しあって上のように偶数項が残る。 2. f (x) = sin x cos x sin x cos x を積と考えて ( ) ( ) x3 x5 x2 x4 x− + − ··· × 1 − + − ··· 3! 5! 2! 4! を展開することは、できないではないにしてもちょっと手に負えそうもない。倍角の公式を使うのが簡便 である。 f (x) = sin x cos x = ∑ ∞ 1 ∑ (−1)k 1 sin 2x = (2x)2k+1 2 2 (2k + 1)! k=0 an xn の形にするために、まず (2x)n などは分離して 2n xn とし、2n のほうは係数 an に組み込む。 n = 2k + 1 の k を n で置き換えると: ∞ 0 (n は偶数) k 2k+1 ∑ 1 (−1) · 2 n−1 n−1 n−1 f (x) = · x2k+1 つまり an = 2 2 · 2 (−4) (−1) 2 (2k + 1)! = (n は奇数) k=0 n! n! 収束半径は sin x, cos x と同じ ∞ である。これまたちゃんと確かめるなら、奇数次の項にダランベール の判定法を適用して: n+1 an+2 (−4) 2 n! 4 = × →0 n−1 = − an (n + 2)! (n + 1)(n + 2) (−4) 2 1 3. f (x) = (1 + x)ex f (x) = (1 + x)ex = 1 + ∞ ∑ 2 3 4 n+1 n x + x2 + x3 + · · · = x 1! 2! 3! n! n=0 (r = ∞) つまり an = n+1 n! ex のテイラー展開と xex のテイラー展開とを足し合わせればよい。xex のテイラー展開は、単に ex の テイラー展開に x を掛けたものである。 ∞ ∑ 1 1 1 xn x + x2 + x3 + · · · = 1! 2! 3! n! n=0 ∞ ∞ ∑ ∑ xn+1 xn 1 1 1 xex = x + x2 + x3 + x4 + · · · = = 1! 2! 3! n! (n − 1)! n=1 n=0 ex = 1 + したがって xn (n ≥ 1) の係数 an は an = 1 1 1 n n+1 + = + = n! (n − 1)! n! n! n! これは n = 0 のときの a0 = 1 にも成り立つ。ex の収束半径は ∞ だから、f (x) の収束半径も r = ∞ である。ちゃんと確かめるなら、ダランベールの判定法により: an+1 n+2 n! n+2 = × = →0 an (n + 1)! n + 1 (n + 1)2 練習: 様々な関数のテイラー展開を使って、実際に関数値、さらには様々な定数(e, π, ...)の近似値を計算 してみよ。精度評価も行うこと。 2 別解: f (n) (x) を直接求める。 定義: f (x) = ∞ ∑ f (n) (0) n x に基づいて、f (n) (x) を直接求める解法を以下に記しておく。 n! n=0 もちろんこれでも正解だが、一般には f (n) (x) を簡単に表すのは困難なことが多い。 1. f (x) = 1 1 − x2 さすがに直接微分していくのはムリがある。別解のように、部分分数分解してから微分してゆく。 ( ) 1 1 1 1 = + 1 − x2 2 1−x 1+x ここで: ( )′ ( )′ 1 n = (1 − x)−n = −n(1 − x)′ (1 − x)−n−1 = n (1 − x) (1 − x)n+1 ( )′ ( ) 1 −n ′ = (1 + x)−n = −n(1 + x)′ (1 + x)−n−1 = (1 + x)n (1 + x)n+1 したがって n = 1 から順に適用していくと: ( )(n) 1 n! = 1−x (1 − x)n+1 ( )(n) 1 (−1)n n! = 1+x (1 + x)n+1 したがって: f (n) (0) n! + (−1)n n! an = = = n! 2 · n! { 1 (n : 偶数) 0 (n : 奇数) 2. f (x) = sin x cos x 直接微分していくこともできるが、やはり倍角公式を使ったほうが扱いやすい。 1 f (x) = sin x cos x = sin 2x 2 ′ f (x) = cos 2x f ′′ (x) = −2 sin 2x f ′′′ (x) = −4 cos 2x f (4) (x) = 8 sin 2x f (5) (x) = −16 cos 2x このように、三角関数部は周期 4 で一巡するが、2n が掛かってくることに注意。 (以下略) 3. f (x) = (1 + x)ex ′ ((n + x)ex ) = nex + xex + ex = {(n + 1) + x}ex したがって n = 1 から順に適用していくと: (n) f (n) (x) = ((1 + x)ex ) = (n + 1 + x)ex f (n) (0) = n + 1 (以下略) 3