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米国外食市場のトレンド変化と日本食ビジネスの好機
今月のトピックス 米国外食市場のトレンド変化と日本食ビジネスの好機 みずほ銀行 国際営業部 調査役 湯 進/徐 海芳 図表. 米国の主要日系外食ブランド (5店舗以上) 米国では、近年消費トレンドが 「健康志 いる。 LAはアジア系移民が 向」 に変化しつつあり、 またアジア系移民の 多いため、 日本食文化に対す 増加にともなう日本食ブーム等、 外食市場の る理解が深く、 NYは消費者 吉野家 1975 牛丼/FF 100 多様化が進んでいることを背景に、 日系外 の健康志向および日本食レス 紅花 1964 鉄板焼/DR 72 食企業が米国への進出を加速させている。 トランの増加により、全米の 牛角 2001 焼肉/FR 23 元気寿司 1993 寿司/FF 17 日本食情報の発信元となっ 消費トレンドの変化 ~健康志向へ~ ている。上記2都市から米国 米国経済が緩やかな回復基調が続い 企 業は多く、 「日本 流サービ ている中、消費者心理が改善され、世帯あ ス」 (店舗運営やきめ細かい たり外食支出額は2013年に3,850ドル サービス) 、 「現地嗜好に適合」 事業をスタートする日系外食 /年とほぼリーマン・ショック前の水準に回 (日本にはない 味 付けや 料 復している。肉類・乳製品や甘食・ファース 理の組み合わせ) 、 「本 物 志 トフードを特徴とするアメリカンフードが米 チェーン名 進出年 形態/分類 店舗数 味千ラーメン 2001 ラーメン/FF 12 トニーローマ 1972 ステーキ/DR 8 山頭火 2004 ラーメン/FF 8 CoCo壱番屋 1994 カレー/FF 7 くら寿司 2009 寿司/FF 7 がってん寿司 2010 寿司/FF 6 出所:各種報道より (2013年12月時点) 、 みずほ銀行国際営業部作成 FF:ファーストフード、DR: レストラン、FR:ファミリーレストラン 向」 (「日本風」 ではない本物の味) により、 国消費者の嗜好であり、米国大手外食企 成功を収めている。 業はそれに応じた新商品の投入やクーポ 紅花は1964年にマンハッタンに進出 ン券の配布を通じて、消費の喚起に力を し、派手なパフォーマンスを交えながら鉄板 入れている。 焼を顧客の目の前で調理するというコンセ 一方、近年、米国ではアメリカンフードの プトで好調を維持している。元気寿司は、 高カロリー・高糖分による肥満問題が深刻 2009年にシアトルに進出し、 スタイリッシュ 米国吉野家の健康メニュー:野菜丼 (2.89ドル) 化され、 外食に対する健康志向の向上が見 な和風インテリア店舗で、本場の「定番ネ 考えられる。 られている。 これに対して、外食企業は 「遺 タ」 から米国風にアレンジされた豪華な天 今後、 米国進出を検討する日系企業は、 伝子組み換え食品・保存料の不使用」等、 ぷらロールまで豊富なメニューを提供して 日本食の「ヘルシー」 かつ「美味しい」 をア 健康や安全への配慮を積極的にアピール いる。日本と同様な回転寿司の感覚でカ ピールしたうえ、以下の点にも留意していく することや、 ヘルシーメニューの充実および ジュアルに寿司を味わうことができることか ことが必要であろう。 Facebookを活用するメニュー開発等に取 ら消費者に評価されている。2012年にマ ①現地嗜好に配慮した味やメニュー、価 り組むことで、 顧客の獲得を図っている。 ンハッタン1号店をオープンした大戸屋は、 格設定。例えばソーシャルメディア (消費 60種類以上の定食を提供し、ディナーメ 者の意見) を活用したメニュー開発の導 日本食進出の加速 ~高級志向から大衆向けへ~ ニューには居酒屋風料理も加えている。単 入検討。 米国では、 1970年代の寿司ブーム以 本場の日本食を売り物とし、 ニューヨーカー クスカジュアルサービス (ランチはスピー 降、 日本料理が米国市場に浸透している の人気を集めている。 ディ商 品、ディナーはテーブルサービ 価が日本より高く設定されているものの、 が、近年、 日本食の進出は、高級志向の日 ②消費者のライフスタイルに応じた 「フレッ ス) 」の導入。 本料亭から、 大衆向けのレストラン・専門料 日本食ビジネスへの展望 理店へシフトしている (図表、写真) 。現在、 「アジア系人口の増加」や「日本食= 衛生管理と高度な接客サービスを実現 全米の日本食レストランは1.7万店を超え 健康志向のイメージ」が、米国における日 するために、現地スタッフと価値観を共 ており (2000年比約3倍) 、主にロサンゼ 本食の拡大を後押ししており、 日系企業に 有した外国人労働者を含めた人材育成 ルス (LA) とニューヨーク (NY) に集中して とっては参入しやすい環境が整っていると システムの構築。 22 mizuho global news | 2014 MAR&APR vol.72 ③日本食レストランの優位性の1つである