...

H17第一回研究運営会議議事録

by user

on
Category: Documents
18

views

Report

Comments

Transcript

H17第一回研究運営会議議事録
地球観測システム構築推進プラン
21−01「海大陸レーダーネットワーク構築」第1回研究運営委員会議事録(案)
(書記:立花義裕、荻野慎也
文責:山中大学)
日時:2005年12月21日(水)14時-17時
場所:独立行政法人海洋研究開発機構 横須賀本部 本館3階 大会議室
参加者(敬称略):
委員:木村富士男(筑波大),中澤哲夫(気象研),深尾昌一郎(京大),山中大学(JAMSTEC/
神戸大),橋口浩之(京大),川島正行(北大),城岡竜一(JAMSTEC),伍培明(JAMSTEC),
立花義裕(JAMSTEC/東海大)
オブザーバ:溝部隆一(文科省),森下秀昭(文科省),大塚清(JAMSTEC),大畑哲夫(JAMSTEC),
宮下貴志(JAMSTEC),島倉信雄(JAMSTEC),一柳錦平(JAMSTEC),廣辻日出夫(JAMSTEC),
荻野慎也(JAMSETC)
欠席:森修一(JAMSTEC)
1. 達成目標・研究組織・年次計画について(山中)
・研究成果の学術的かつ実用的な意義: 季節内変動と雲の組織化の理解.
・研究成果の波及効果: 現地周辺の防災 → 邦人駐在員、旅行者の安全確保.
・研究実施体制:
- サブ課題I,素過程研究,スーパーステーション方式
- サブ課題II: 結合過程,各種データ結合,観測・モデル結合,観測ネットワーク方式
・達成目標:
- 前半3年間:海大陸観測ネットワーク構築、季節内変動の実態を東西4地域において解明,
各位相・各地域に特有の天気予報.
- 後半2年間:データ自動送信システムによる海大陸レーダーアメダス.天気予報.オン
セット予測.モデルを併用し,日変化降雨の量的予測.衛星リアルタイム通信.
・GEOSS10年の中で「海大陸センター」設立を視野に入れて計画を進める.
<質疑>
溝部:海大陸センターとは? 国際的な認知はどうなっているのか?
山中:2つの側面がある。ハワイ,アラスカのJAMSTECのセンターと同様,地域の観測セン
ターとしての側面.また,インドネシアでは日本がイニシアティブをとって,キャパ
シティービルディングを進める必要があるため教育機関としての側面を持つ.
1
溝部:データをGTSに載せると気象庁がフィルターをかけることになるのか?
山中:客観解析などの整理されたデータは天気予報やモデル研究などにはむしろ都合が良
い.プロセス研究には生データが必要だが,その場合にはリアルタイムである必要
はなく,事後に現地から入手すればよい.
溝部:ひとつの成果物としてデータセットは重要である.
3. 本年度の経過
1) インドネシア政府との交渉経過について(II-4山中)
・交渉は順調に進んでいる。
・すでに合意している事項:インドネシア側カウンターパートはBPPT(科学技術評価応用庁),
MOU記載事項,レーダー使用周波数,観測地域(スマトラ,カリマンタン,スラウェシ,ビア
ク),他計画との相互連携(IORGC中期計画,MAHASRI等).
・要検討事項: 現地本部をどこに置くか.インドネシア側他機関(BMG,LAPAN)との連携.特
にBMGの現業気象レーダー拡充計画との関係.
・日本側他機関との連携:JICAの枠組みを利用した現地本部,NICTのレーダーを譲り受ける可
能性.
<質疑>
中澤:BMGレーダー網との連携の可能性は?
山中:ある程度独立にやりたい.
2) 第一観測点候補地:西スマトラの状況について(I-1橋口・(II-1森)・I-2川島)
・橋口: 特定領域研究「赤道大気上下結合」などによって赤道大気レーダーを中心とする観
測装置が整備されてきた.JEPPの中でも重要な観測点として運用していきたい.
・川島: 気象ドップラーレーダーの観測候補地について.現在スマトラ島内陸で稼動中の北
大XDR(既存)およびJAMSTEC-XDR(新)を西部海岸に移設する観測対象は海洋から移動してく
る雲群の構造とその上陸に伴う変化,内陸起源の降水系の沖合への移動メカニズム.海側に
置いた方がよくわかる.Pariaman, MIA, Tiku, Tabing の4つの候補の中から,12月23日か
らの現地調査により決定する.
<質疑>
木村:今の候補地は沈降域で対流の活発域はもう少し沖の方.観測範囲に入るのか?
城岡: 150 km 程度届くのでぎりぎり入るのでは.
木村: 期待している.
3) 気象ドップラーレーダーの機種選定について(I-3城岡・(II-1森))
2
以下のような条件を満たす気象ドップラーレーダーとしてX帯のレーダーの仕様を決定した.
長期連続して降水を観測できる,自動運用が可能,観測研究に使える,北大レーダーとの
デュアル観測が可能.日本無線が落札し,現在製作中である.詳細な仕様の説明(資料あり).
<質疑>
中澤:150km だと折り返し周波数が短くなるのでは?
城岡:(single PRFだと)8m/sで折り返すが,(dual PRFをもちいることで,例えば8m/sと6.4m/s
でデータを取ると32m/sの折り返しになるので実質的には)折り返し補正は必要ない.
中澤: 遠隔からの操作について.制御は簡単だがデータ取得は難しいのでは?
城岡: 通信回線の太さなどインフラに依存する.十分太ければ外部からデータ取得可能で
ある仕様になっている.
(その他、レーダーの回転速度など技術的な議論)
溝部: 免許取得についてはどうか?
山中: 届けはきちんと出すので特に問題ない.
4) 陸面大気相互作用観測に対応した領域モデル開発状況について(II-2伍)
・なぜスマトラ近海は夜に多量の雨が降るのか?
・特にスマトラで顕著な降水移動現象を領域モデルMM5で再現した.
・TRMMのデータとも整合性のある結果が出ている.
・降水域の西進は西側への新しい降水の生成によることなどがわかった.
<質疑>
溝部:5年間のスケジュールの中で,このような研究の位置づけはどのようになっているか?
山中:伍はGPSを担当する.領域モデルを用いた研究は観測を解釈するためのものであり観
測支援という位置づけ.4年目以降の天気予報や観測・モデル統合はもっと大きなス
ケールの話である.独自にモデル開発をすすめるかもしれないし,他のプロジェク
ト(佐藤CRESTなど)との連携によるかもしれない.
中澤: 科学的に面白い。加えてインドネシアにとってみれば災害予測へのフィードバック
が重要であり,インパクトも大きいであろう.
(他に中緯度のスコールラインとの違いや出現特性に関する活発な議論があった)
5) 海大陸∼アジア大陸間の熱・水蒸気収支研究状況について(II-3立花)
・インドシナ半島など亜熱帯域は海大陸で上昇した空気が降りる場所である.
・雨季直前のインドシナ半島には強い逆転層が存在し,エアロゾルが蓄積する.また下層雲の
発生地域も対応する.
・放射が重要ではないか? → 放射ゾンデを用いて放射の鉛直プロファイルをきちんと測る.
3
4. 来年度計画
1) 現地本部、第一・第二・第三観測点の設置について(II-4山中)
・4つの候補(パダン、マナド、ビアク、バリクパパン).西スマトラに気象レーダー,あと3
点はウインドプロファイラ.前半3年で設置する.
・インドネシア側も独自にレーダー網を作ろうとしている.しかし,これから入札が始まる段
階であり,レーダー設置は早くても2年先だろう.また,運用予算や人的資源に不安がある.
そこで,いくつかの対応策を考えておく.少なくとも最初はこちらの計画をある程度独立に
進める.もし本当にインドネシア独自レーダー網ができれば,連携したい.例えばマナドは
観測点が重なるが,ウインドプロファイラ(日本)と気象レーダー(インドネシア)なのでむし
ろ都合が良い.また,インドネシアのC帯気象レーダーと日本のX帯気象レーダーを組み合
わせれば他の観測量が得られる可能性もある.
2) ウインドプロファイラの導入について(I-1橋口)
・住友電工と新しく共同開発しているルネベルグレンズアンテナを利用したプロファイラを導
入する.3つの特徴がある.
i) 部品点数が減らせるため,故障が減り,費用が低く抑えられる.
ii) 故障箇所が遠隔地からモニターできる.
iii) 拡張性があり,予算が許せばパワーアップすることも可能.
3) 季節内変動・雲群のインド洋→海大陸上陸過程の観測について((II-1森)・山中)
・来年度の目玉である.
・インド洋の「みらい」観測との連携も.
・来年度はレーダー設置のためマンパワーが必要だがサイエンスもやる.
・雲群そのものの観測について,詳細は後日に森から報告予定(1月に班員会議を開いて内容
を詰める).
・山中個人は対流の力学を研究したい.
5. 総合討論
中澤:THORPEXでは1週間から2週間程度の予測精度向上を目指している.予測精度があがら
ないことの一つの原因は季節内変動の理解不足.THORPEXの立場からも海洋大陸観測
に期待している.
山中:観測データを予報にも役立ててもらえれば有難い.
木村:モデルの立場からは降水メカニズムを明らかにする必要がある.このプロジェクトで
4
の観測,モデルに期待している.しかし,予報に役立てる,というところがよくわ
からない.前半3年の観測は雲解像モデルの検証データとしては活かされるが,それ
が後半の予報研究にどうつながるのか? プロセススタディによる現象理解を予報
につなげては?
中澤:佐藤CRESTとのリンクがうまく図れれば良いのではないか.
山中: 今後は佐藤CRESTとの連携も密にしてゆく.第2回の会議までにはなんらかの進展を
したい.
深尾:我々は大気を上下結合の観点から捉えて,西スマトラ・ブキティンギに様々な装置を
置いて観測的研究を進めている.山中JEPPを我々のプロジェクトの直接の延長とし
て位置づけることができる.また面的な発展としても期待している.モデルに関し
て言えば全部を山中JEPPでやる必要はない.今はもっと初期的なフェーズであろう.
領域モデルを用いた研究などを地道に積み重ねていくのが良いのではないか.
山中:観測的研究にはとんでもない発見もあるから,それにも期待している.
中澤:キャパシティービルディングについて.気象レーダーはインドネシアにとってもなじ
みやすいのでは? 技術移転をどのように考えているか?
山中:GEOSS計画ではキャパシティービルディングも謳われているが,予算も減り少し難し
い.ただし,オペレートをお願いする中で必然的に勉強してもらうことになる.ま
た,自身はジャカルタに滞在して気象の面白さを一般市民へ伝えていきたい.それ
以上はJICAと連携してやる必要があると考えている.海大陸センターの柱の一つは
キャパシティービルディングだと考えている.
深尾:日本は地球科学だけでも相当のお金をつぎ込んでいる.にもかかわらず,社会にあま
り認知されていない.もっと目に見える形にできた方が良いのではないか.日本政
府はそういうことをもっとアピールすべきである.海大陸センターにそのような機
能をもたせると良いのでは?
山中:それこそGEOSSである.そういうところを目指して準備をしていきたい.
溝部:モデルに関しては深尾先生が言われたことと同感である.モデルの開発まである程度
研究が及んでもいいのだろうが,それは本事業の主目的ではないと思う。
溝部:この事業は観測網の構築がメイン.だが,観測だけでは3年後5年後目に見える成果を
出すのは難しい.当初の目標に忠実に研究を進め科学的成果も出していってほしい.
中間評価に向けて確実な成果が必要である.来年度予算は厳しいかもしれないが,
これらの状況に留意するようお願いしたい.
山中: 観測点を作るという成果は,2年後に確実に出せる.擾乱の海大陸上陸という観測研
5
究で科学的成果も出せる.
森下:なぜここにドップラーレーダーが必要なのか?
山中:季節内変動はインド洋から海大陸に上陸する.まずその玄関口で捉える必要がある.
また,風を直接測るためにはドップラーレーダーである必要があり,3次元のベクト
ルを得るために2台のレーダーを設置する.
森下:観測空白域を4箇所で埋められるのか.
山中:5千kmの現象を最低限分解しようとすると,最低4点必要.もちろん十分ではない.し
かし,これまでは観測空白域であったので,これが初めてなのでやる価値はある.
我々は4点でできることにチャレンジする.それ以降はインドネシア気象庁などが
やっていくべきもの.
立花:理想的には何点あれば?
山中:現象のことを考えればインドネシアの各島の両岸に配置したかった.我々は与えられ
た予算の範囲内で最大限のことをやる.
森下:新しい装置ではすぐに使えない,もしくは故障時に迅速に対応できない,などの懸念
はないか? また,盗難対策は考えているか?
山中:予備部品やセキュリティー対策の費用も考えている.レーダーの台数を減らしてでも
万全の体制を整えている.新しいから立ち上げに時間がかかるというものでもなく,
これまでの経験からある程度の見通しを立てて準備しているので大丈夫である.
深尾: すでによく似たことを2回やっており,どちらも順調に運用されている.我々にはノ
ウハウの蓄積があり,臨機応変に対応できる.懸念されることはないと思う.
次回(第 2 回)は 2 月 24 日頃の予定.
6
Fly UP