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神経と神経系
生物基礎 テレビ学習メモ 第 22 回 今回学ぶこと 体に張り巡らされた神経は脳に情報を伝 神経と神経系 えたり、脳からの指令を体に伝えたりする 役割をします。神経の集まりである脳が指 令中枢としてはたらき、大脳は主に意識的 監修講師 な調節を、脳幹は無意識的な調節を担当し 井口 藍 ます。また、神経は細長い細胞(ニューロ 調べておこう・覚えておこう ン)でできており、電気信号と神経伝達物 質という化学物質により情報や指令を伝え 大脳/大脳皮質/脳幹/神経系/ 神経細胞(ニューロン)/伝導/ 伝達/神経伝達物質 Point ています。 大脳のはたらき 大脳は脳の 80%を占め、「痛い」とか「冷たい」といった体の外からの刺激を認識し、それ ▼ に対して動こうと判断して反応するという、意識的な活動の司令塔である。見たり、考えたり、 喜怒哀楽の感情などの精神活動を行っているのも大脳である。視覚情報を受取る部分は目、聴覚 情報を受取るのは耳であるが、その情報が大脳に届いたとき、ヒトは「見えた」、「聞こえた」と 認識できるのである。 具体的には、大脳の表層部の大脳皮質というところがはたらくが、目や耳などから伝わる情報 の種類によって大脳皮質のはたらく場所は異なる。 MRI(磁気共鳴画像法)により大脳の役割分担を調べることができる。これにより、「右視野 を見る」ときには大脳皮質の後頭部左側がはたらき、「左視野を見る」ときには後頭部右側がは たらくことがわかる。また、「右指を動かす」ときには大脳皮質の側頭部左側がはたらくことが わかる。それ以外の刺激に対しても、大脳皮質のはたらく場所がそれぞれ決まっている。 − 43 − 高校講座・学習メモ 生物基礎 Point 神経と神経系 脳幹のはたらき 体内環境を無意識の内に調節するのは「間脳」、 「中脳」、 「延髄」である。これら 3 つを合わせて「脳 幹」という。 例えば、運動して汗をかくという現象を考えてみる。運動したことで体内では血液の温度上昇 が起こるが、脳に流れてきた血液により間脳が温度上昇を感知する。そして、間脳が(体温が上 がりすぎないように)皮膚に汗を出すように指令を出す。また、心臓の拍動の調節は延髄が大き くかかわっている。これらの調節は無意識のうちに行われ、調節する中枢は内容によって分かれ ている。特に、間脳の「視床下部」とよばれる部分は体内環境の変化を常にチェックしていて、 それぞれの器官を無意識の内にコントロールする、統合的な指令中枢としての役割を担っている。 Point 神経細胞と指令の伝え方 体内で情報や指令を伝えているのは神経であり、脳自体も神経でできている。脳からの指令 は神経を通って手足や内臓などの各部分に届く。このような神経による体内の調節システムを 神経系という。神経系は大きく 2 つに分けられる。脳や脊髄といった司令塔を「中枢神経系」 といい、中枢神経系と各部をつないでいるものを「末梢神経系」という。また、末梢神経系は さらに 2 つに分けられる。見る・聞くなどの意識的な反応は「体性神経系」、汗をかくなど無意 ▼ 識な反応は「自律神経系」である。 実は、神経も体内の構造物であり、例外なく細胞でできている。神経細胞はニューロンとも よばれ、細長いものから短いものまでさまざまであるが、ざ骨神経の細胞のように 1 mになる ものもある。ただし、神経は 1 本ではなく、通常何本もの神経細胞が並んで束になって構成さ れている。 1 本の神経細胞では、末端まで電気信号で情報や指令を伝えている。これを「伝導」という。 一方、神経細胞から別の神経細胞、もしくは、神経細胞から筋肉に情報を伝えるときには、神 経伝達物質とよばれる化学物質で情報を伝えており、これを「伝達」という。 このように、神経系では体の各部からの情報が中枢神経系に集まり、中枢神経系からまた体 内を調節するために末梢神経系が指令を伝えることで全体として統制のとれた調節を行ってい る。そして、この神経系を動かしている最小単位は神経細胞(ニューロン)であり、電気信号 と化学物質で情報を伝えるという仕組みに支えられているのである。 − 44 − 高校講座・学習メモ 生物基礎 神経と神経系 体内環境を意識的に調節する体性神経系の中枢は大脳であり、無意識に調 節する自律神経系の中枢は間脳である。しかし、大脳で生じた感情などが、 脳幹のはたらきに大きく影響することも知られている。 column もう半歩 先に 体性神経系は意識的にはたらくと説明してきたが例外もある。 例えば、熱いやかんに手を触れてしまったときには、とっさに手を放す。このときは、大脳に情 報が達する前に手が動いている。これを「反射」といい、体性神経系と脊髄により意識しないうち に起こる。その後、大脳にも情報が伝わり、起こったことを認識する。この反射は、身の危険を即 座に回避するために体に備わった反応だと考えられている。 * * * 脳の機能やしくみはまだわかっていないことが多い。脳内において「グリア細胞」とよばれる神 経を取り巻く細胞が、さまざまな重要なはたらきを担っていると考えられ、現在、脳研究はこのグ リア細胞に注目が集まっている。 神経の末端からは、神経の役割に応じて異なる神経伝達物質が分泌され、50 種類以上が知られ ている。番組内でアメフラシの口の内側にかけた神経伝達物質はアセチルコリンである。これは、 運動神経の末端から分泌され、筋肉を収縮させる指令として筋肉に受容される。 − 45 − 高校講座・学習メモ